<1月15日>
川原には、いろんな音や、光や、匂いがあります。遠くを走ってる自動車や電車の音。風の音。鳥の声。
刻々と変わる空の色。草や水や誰かのオシッコの匂い。ボクには、全部、ちゃんとわかります。
でも、このごろ、そういうものじゃない何かが、時々、突然に、ボクを呼ぶのです。
それがどこから来るのかは分かりません。きっと、どこかにボクのまだ知らない世界があるのでしょう。
ボクたちを包んでいる、もっと大きなものがある…。だとしたら、ボクはどこから来たのでしょうか?
これからボクは、どこに行くのでしょうか? どうしてボクは、今、ここにいるのでしょう?
そんなことを考えはじめると、ボクは、もう立っていられなくなって、お座りしてしまいます。
じっと耳をすましても、お鼻をクンクンさせても、やっぱり答えは見つかりません。
そんな時、お父さんは「シロ!」と呼んで、ボクの体を力いっぱい、ぎゅうっと抱きしめてくれます。
ボクたちがどこから来てどこに行くのか、多分、お父さんにも分からないのです。
でも、ボクたちが、今、ここに一緒にいるのだけは確かだって、お父さんは教えてくれているのだと思います。