もりをつくろう(1)
まちのもりづくり

 「森や林にまつわる話」を少しづつ。できる範囲で私なりに。

まちのもりづくり・・・とあるまちで植樹祭が行われました。
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2000年、2000人で苗木を植えよう。川のほとりにもりをつくろう。

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同時開催の「森づくり講演会」(↓参照)の資料はちっとも堅苦しくなくて、
大人が子供に読み聞かせるのにも良さそうな内容。
講演会だけでおしまいにするなんてもったいない!
もっとたくさんの誰かにも読んでほしい。
・・・そんな単純な動機から、ここでご紹介しようとおもいます。

なお、このページの話題は
場所を特定する固有名詞などはあえて省いてあります。
もし支障があるようでしたらメールにてお知らせください

もりづくり講演会の資料から

○冬

木は春の目ざめの準備をしています。
硬くとじた冬芽に太陽の光をあび、
ゆびおり数えて春のおとずれを待つのです。
なんにちもの日の流れを、芽をおおう殻のなかで足し算して、
冬芽は春を待つのです。

気温は年によって寒かったり、暖かかったりするので、
植物たちは、昼間の長さの変化で、「春が来た!」と感じるのです。
昼間の長さは、地球の同じ場所なら変わりませんからね。
だから、冬、木は眠っているのでもなければ、死んでいるのでもありません。
つぎのいのちへの用意をしているのです。

○春

春のおとずれにいちばん敏感な木が最初に目を覚まします。
ゆっくりと目を開き、周りをそっとみまわして、
「春が来た!」と赤ちゃんの芽がせのびをします。
けれど、生まれたての葉っぱはよわよわしくて、
冷たい風に弱く、虫にも負けてしまいます。
だからたいていの木の芽は、やわらかなうぶげでおおわれて、
早春の光の中に体をさらすのです。

春のはじめ、木の芽がめざめることを「芽ばえ」といいます。
いのちが湧き上がるという意味をこめて「萌える」ともいいます。
名前に「萌(もえ)」というのがありますね。
たぶんその子は、春の早い時期に、
木の芽といっしょに命の声をあげたのでしょう。

この時期の若葉の色はさまざまです。
「新緑」ともいいますが、けっして緑ばかりではありません。
赤、黄、青、紫、白っぽいもの、本当にさまざまな色あいをしています。
夏にはほとんど緑色になってしまうのに、おかしいですね。

生まれたての木の葉が、ぶじに大人の葉になれるように、
体温が上がりすぎて弱らないように、光を反射して身をまもっているのです。

○夏

強くなった太陽の光をあびて、木はせいいっぱい育ちます。
自分の体を大きくし、葉をしげらせ、根をのばしながら
来年の芽ぶきや花づくりにむけて、準備もしています。
光と炭酸ガスでつくったものを、その年につかいつくしてしまうのではなく、
きちんと来年のためにたくわえておくのです。
木の今年は来年のためにある、ということがよくわかりますね。

「木をそだてる」ということは
「木がすごしていく時間をそだてる」という意味ももつのです。
「いまがよければいいんだ!」なんて考える人間より
よほど木のほうがかしこいですね。

○秋

春と同じように、植物は昼間の長さの変化によって、秋のおとずれを知ります。
また、気温の変化によって、木の葉は「秋色」に変わっていきます。
こうよう(紅葉、黄葉)といいますが、
ほんとうはじつにさまざまな色あいをみせるので
木の葉は「秋色」にかわる、と言ったほうがいいですね。

そして、来年めぶく「冬芽」がじゅうぶんにできたら、
葉は落ち、冬の準備がととのいます。

冬芽ができあがるのがおそい種類の木は、
まだじゅうぶんに育たない冬芽をまもるために
冬になっても枯葉をつけているものもあります。
これも、木の示す「さまざまないのちのドラマ」です。

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○心はおなじ

川のながれにひかりかがやく、緑いっぱいの森を、
みんなで心をこめて、力を合わせてつくっていこう、そだてていこう、
そんなよびかけを私たちは、みなさんにいたしました。

こどもたちにとっては、自分たちがそだっていくのと同じ時間を
今日うえた苗木がすごしていくんだという感激があります。

大人たちにとっては、このさき自分がすごすことのできない長い時間を
苗木にたくして植えたんだ、という感慨があります。

どちらも、「いのちの時間」を木にたくしている、という心はおなじです。

○育てよう

木は生きものです。
そして、一本一本がそだってできていく「森」も、「おおきな生きもの」です。

たくさんの生きものたちをそだてながらいっしょにすごす一生、
こんな素敵なことがほかにあるでしょうか。

一年、四季をさまざまに生きている木のすがたを、
素直な目で見、やわらかな心で感じ、そしてやさしく手をそえてそだてていく、
そんなことがおおぜいの仲間たちといっしょにできるのです。

今日うえた苗木が立派にそだち、この森ができるころには、
わたしたち、そしてあなたがくらすこのまちぜんたいが、
きっとすばらしい「いのちのもり」になっていることでしょう。

それをねがい、また信じ、力を合わせて、森を育てていきましょう。

○みんなが主役

森はたくさんの木があつまってできています。
それぞれに個性のある木が、「それそれが主役を演じながら」なりたっています。
上下の関係はありません。

それは、もりづくり、もり育てにかかわる
社会のありかたそのものを示しているとも言えましょう。

そんな森をみんなで作ってこそ、
ほんとうに住みよいまち、安心できるまち、そして世界にほこれるまちが
できるのではないでしょうか。

空にむかってますぐのびる木
空をだくように大きくえだをひろげる木
浅い緑の落葉樹 濃い緑の常緑樹
さわやかないのちの香り 夏の木陰のすずしさ
心をなぐさめてくれる木 勇気をふるいおこさせてくれる木
川の流れがすき 月光色にかがやく稲穂の波がだいすき

私たちをいつまでもだきとめてくれる ふるさとのもりを
私たちは育てていきたい それが、私たちのいのちのあかし


--四季は冬春夏秋(とうしゅんかしゅう?)--

寒さに耐えながら冬が始まり、次の芽吹きに備えて秋が終わる・・・。
季節は一巡りして終わるけれど命は次に託されている・・・。

そういうふうに四季の見方を変えると、もりの命は時を越えてひとつながりに廻っている、そしてそれはすべての生きものに通じている、と素直に思えてきます。

それぞれの木々が個性を発揮、どの木も主役、そしてその木々が集まる森もたくさんの命を育てる「大きな生きもの」…。おだやかで優しい風景です。

こどもたちにも知って欲しい話です。あと少〜し易しい文にしてきれいな挿絵をつけたら素敵な絵本になりそうです。



講師  林  進 (はやし すすむ)
プロフィール
1940年生まれ 和歌山県出身。
農学博士 現:岐阜大学農学部教授
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岐阜県下の名桜と称される樹木の延命・保存をすすめている
主な著書:「森の心 森の智恵」「森林ーー日本文化としての」(共著)
       「バイカル湖」(共著)など多数

2000/10/8