【 ν猫ねこ帝国興亡記 】

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●第拾話   『 落胆・失望 』
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   10
 
 
 時は○○暦150年。
 ここは『極東皇国』
 ガチ国プレイと電波な魅力で一癖も二癖もある国にゃ。
 この私。神風猫の生まれ故郷でもあるにゃ。
 先代の王は『たれちゃん』(リアル工房)
 現在の国王は『狐さん』(萌え絵師)
 影の策士『たなぼたん』(清廉潔白な変態)
 今は旅に出ている伝説の御意見番『護国の鬼』(百鬼夜行)
 ねこの国との外交担当は『紫朗ねこ』(後で説明するにゃ)
 ……とまあ、話し始めると止まらないほど個性的な面々が、他にもまだまだ居る訳なのだけど、今回はねこの国の話だから割愛するにゃ。
 
 
  極東皇国城、城門。
 折から降り出した雨が、幅広の堀にいくつもの波紋を描く。
 城門は開け放たれたまま、それに続く跳ね橋はおろされたままになっている。
 お堅いイメージが先行しがちな極東だけど、意外と開放的であることはあまり知られていない。
 水たまりに飛沫(しぶき)を上げ、追われるように駆け込んできた騎馬の三匹。
 神風猫さま御一行にゃ。
「…………ふにゃぁ」
 懐かしの地だけど、正直、私のテンサヨンは下がりまくりんぐだったにゃ。
 ねこは雨の日が大嫌いなのだにゃ。
 なんでかって言うと雨の日は手足が濡れるからにゃ。
 それがなんでダメかって言うとねこは手足が濡れるのが嫌いだからにゃ。
 なんで手足が濡れるのが嫌いかって言うと。私のテンサヨンが下がりまくりんぐになるからにゃっ。
 
 控えの間に通されて、体中の湿気という湿気を取り除き、ようやっと一息つけた私たちは。懐かしの面々との挨拶もそこそこに、『たなぼたん』さんの案内で紫朗ねこさんの執務室まで連れてってもらうことになったにゃ。
 けっきょく最後まで連絡つかなかったけど、極東の人も昨日から紫朗ねこさんの姿を見ていないらしいにゃ。
 
「おかしいですねえ、居るはずなんですけど」
 こっちはせっぱ詰まってるのだけど、たなぼたさんは淡々と話している。
 で、執務室の前。
「紫朗さーん。ねこの国から神風猫さんが来られましたよー」
 返事がない、ただのしかねばのようだ。
 何度呼びかけてもノックしても返事がないにゃ。鍵もかかってるみたいで、居ないのかなあとか思った時。たなぼたんさんが”あ、もしかして ”と言いながら合い鍵の束を取りだしたにゃ。
「はいりますよー」
 鍵を開け、すたすた入って行った。ねこ三匹もすぐに続く。
 いたにゃ。
 紫朗ねこさんはいた。
 そして電話にもノックにも返事できない理由が分かったにゃ。
 がんじがらめに縛られて床に転がっていたにゃ。猿ぐつわもされていて、しゃべれないみたいにゃ。
 普通なら外交担当が拘束されてるんだから上へ下への大騒ぎになるはずだけど、たなぼたんさんは平然として、
「『ほうちぷれい』でもしていたんでしょう」
 と短く説明された。
 
 まず天青ねこたんが
「……変態。にゃね」
 次に私が
「うにゃ、変態だにゃ」
 最後にクラウディオにむが
「変態ニダ」
 トドメにたなぼたんさんが
「ええ、どう見ても『ドM』ですね」
 
 背中を蹴りつけながら、
「もう、趣味は休みの日にやって下さいって言ったでしょう?」
 猿ぐつわでうめき声をあげたにゃ、でもなんか身もだえしているにゃ。
 やっぱり変態にゃ。
 私たちも面白がってケリ回してみたにゃ。
 でも、どれだけ蹴っても歓喜のうめきを上げるから、そのうち気持ち悪くなって、ほどくことにしたにゃ。
 
   ・
 
  しばらくして。
 
「すまんすまん。はっはっは」
 (なにが ”すまん ”にゃ)
 こんな変態に頼らなければならない我が身を心底のろったにゃ。
 
  例によってかくかくしかじか説明したにゃ。
 
「……うーん、どうだろう」
 私たちが話し終わった後、しばらく難しそうな顔で腕組みしたまま考えこんでるにゃ。
 変態のくせにいっちょまえに考えるにゃっ。
「ていうか、ウチ『りゅん♪』から布告されてるしw 少し前にその事でねこさんに使者を送ったんだけど、もしかして入れ違いになった?」
「にゃにゃ? りゅんと戦争? ねこに使者送ったにゃ?」
「うん、153年に開戦だからお金貸したりとかしてる余裕はないねえw ……というかウチとしてはぶっちゃけ支援して欲しいんだよねw」
「ふ、ふにゃぁぁ……」
 私は最後の望みを絶たれてがっくりと肩を落としたにゃ……。
 利己的な変態なんて最低にゃ。こんな奴一生独身にゃ。
「そんなにがっかりしないでさw みんなでウチに来て『ν猫ねこ♪愚連隊』とか作ったらいいやんww」
 変態なんかに頼ったのが間違いだったにゃ。
 ……私は、もう終わったにゃ。
 失意のうちによたよた帰ろうとすると、部屋を出る前に呼び止められたにゃ。
「そうだ、使者と入れ違ったんだったら狐さんの提案も知らないよね?」
「……にゃ? 狐さんからの提案にゃ?」
 
 ――取りまとめて説明するとこんな内容だったにゃ。
 たなぼたんさんが近々引退するから戦争指揮経験者が欲しいらしい。
 で、ねこが当面戦争しないみたいなので、極東に知り合いの多い私に一時移籍してくれないかと言う事だったにゃ。
 私はそれどころじゃねーにゃっ!
 
「神風猫さんが来てくれたら俺休めるしw」
 糞がっ。変態の鱸乗りめ。貴様にはもう言葉も無いわっ。にゃっ。
「それ多分無理にゃ……いちお、本人に直接断ってから帰るにゃ」
 
 失意倍増。よたよた度倍増で狐さんの所に行くことにした。
 狐さんは今、城の中庭にいるらしい。
 
 外を見ると雨は上がっていたにゃ。
 
 
  続く。