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ようこそ秘湯ほむら湯へ(笑)
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レッドドラゴンが棲むという洞窟。
付近は木々も疎らな険しい山脈、人の気配といえば麓の小さな村くらいだ。
ドラゴンについての情報収集をしてみたが、何故か村人は多くを語らない。
もしや支配下に置かれていて迂闊に喋ると首をはねられるとか…まぁそんな推測はともかく、ドラゴンと渡り合って勝てたならそれはそれで名声が得られる。
運が良ければ長旅からも解放されるかも知れない。
意気揚々と装備を固めて、早速洞窟攻略を始めてみた。
・・・・・・・
洞窟の天井は所々穴が開いていて、外界からの光の柱が至るところに伸びている。道のりは地下へと潜っていくなだらかなスロープだ。徐々に光も届かなくなり、空気にも妙な臭いが混ざり始める。
静かな唸りが聞こえた。奴がいるようだ。松明の灯を消し、忍び足で最深部へと進む。最深部に近寄るにつれ、何故か再び光が蘇ってくる。
この光は何だろうか…鉄を熱した時の紅に似ているが…
・・・・・・・
とうとう奴がいた。人間と比較するとその比は蟻と象以上、とんでもない巨躯の主だった。それがのんびりと肘をついて、光の根源と思しき煌めきを熱心に眺めている。
この身を震わせるは歓喜か恐怖か。逸る心を抑えて剣を構え、竜に一歩一歩近寄っていく。
と、奴がこちらに気付いた。
しまった、と舌打ちした刹那には、そのほっそりとした顔がこちらを向いていた。
そして一言。
「あ、よーこそ秘湯ほむら湯へ☆」
・・・はぁ?
「いやいや旅人さん一番乗りだねぇ。今人肌にぴったりな温度に仕上がったところ。ささ入って頂戴」
「あの…ちょっと。ノリがついていけないんですが」
ようよう突っ込みを入れた所で、ドラゴンはああ、と納得したように、
「もしかして村の人が何も言わないから俺がさぞかし凶悪な奴と思ったクチでしょ?あれはねー、このほむら湯をメジャーにしちゃうといろいろ困るからお願いしたのよん」
「……」
「折角の秘湯なのに、遠くからの客がごりごり来たら雰囲気台無しだし。何より絶対大金持ってきて所有権主張するおばかちゃんが出てくるし。妙なイザコザも喧騒もご勘弁なのサ」
「そ、そうですか」
「ちなみに入り口は足下からだから、ちょっと回り込んできてくれると嬉しいかなー」
・・・・・・・
取り敢えずしっちゃかめっちゃかになった頭の中を整理し、まぁ折角なので秘湯とやらを満喫することにした。
不思議な光を放つ湯船につかりながら、番台のレッドドラゴンと一緒に鼻歌なんぞ歌いつつ。
こんな旅も悪くない、と呟いてみた。

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