遠すぎた橋は、本当に遠かった!!

 
 

 オランダのアルンヘムは、私がヨーロッパに初めて行った時、真っ先に訪れた場所です。ですから、ここは私の戦跡巡りの原点とも言うべき地点です。言うまでもなく、アルンヘムは1944年9月17日に発起されたマーケットガーデン作戦時、イギリス第1空挺師団とドイツ第9SS戦車師団とが死闘を演じた戦場であり、名作映画「遠すぎた橋」でもお馴染みの場所です。
 

 
 

 アルンヘム駅に着いた私は、近くの観光局で貸し自転車を借り、いざ橋へと向いました。橋には駅からは10分ほどで到着。しばし橋周辺を探索した後、いよいよ私は、当時のイギリス第30軍団とは逆の道を進み始めました。 
 そうです。アルンヘムからナイメーヘンまでの17kmを自転車猟兵で行軍しようというわけです。
 

 
 

 
 

 橋は想像以上に長く、河幅はそんなに広くはありませんが、両翼に広がる河原は広大で、牛の牧草地になっています。オランダは車道と歩道の他に自転車専用道があり、快適かつ安全なのでお薦めです。アルンヘム橋を見てもわかる通り、車道の横が自転車道で、一番端が歩道です。

 
 

  上の写真は、1944年9月18日の午後に撮影されたアルンヘム橋の様子で、映画のシーンで有名なグレープナーSS大尉率いる第9SS機甲偵察大隊の車両の残骸が散乱しています。海底の大和の復元などで使用された最新鋭のデジタル画像処理技術を駆使すれば、残骸から車両が特定できるかもしれませんね。
 誰かNHKに知り合いはいませんか?(笑) 

 

 
 

 天気は抜けるような青空で快晴無風状態。ご覧の通り、風車も止まったままです。5月なのですが、暑くてたまりません。
 しかし、この道はイギリス軍は苦労したと思います。なにしろこの写真でもわかる通り、道路はちょうど建物の2階の高さの土手にあり、遮蔽物はありません。逆に両側には家々が散在していて、所々に林や丘が点在するという待ち伏せにはピッタリの場所なのです。
 たとえば、風車右手の丘の上に掩体壕を設けた88mm高射砲が1門頑張っていたら、空軍でも要請しない限りお手上げの状態です。

 

 
 

 こんなのんびり羊がいるところだって、農家に75mm対戦車砲でもあれば、進撃する戦車部隊は地獄です。全く現地の状況を顧みず、ノーテンキな作戦に従って、この一本道を進軍させられたイギリス第30軍団の戦車長達も、良い面の皮です。お気の毒としか言い様もありません。
 

 
 

 ちょっと見えにくいですが、右がアルンヘムへ12km、左がナイメーヘンへ5kmの地点で撮影した道路標識で、エルストから4kmの地点です。あと、もう少しでナイメーヘンの橋ですが、このころから、高温と疲労のため脱水状態になってしまい、脚はパンパンで息も絶え絶えです。おまけにお尻が痛くなり、もうこれ以上進めなくなりました。

 

 
 

 しかし、最後の力を振り絞って走ること40分。
 やりました、遂にナイメーヘンの橋に到着しました。バンザーイ!!
 いやー、しかし17kmなんて馬鹿にして、帽子も被らず水筒も持たないまま出発し、酷い目にあってしまいました。モントゴメリー元帥もこんなノリだったんでしょうなあ・・・・・。

 
 

    『オペレーション・マーケツト・ガーデン』
   (プリンセス・プリンセス「ダイヤモンド」の替え歌)

    ネーデルラインに素足をひたして見上げる大河道路橋
    1個大隊がいるだけ 増援は来ないよ
    III号戦車が街を駆け回る 赤い悪魔は釘付け
    計画時にはわからないSSがいたみたい

    ライン川の橋頭堡 2日の間守り抜け
    それはすてきなoperation ちよっとちよっと雑みたい
    18日も 19日にも 20日にも 誰も来ない

   ※Operation Market Garden ああ(ああ)いくつかの橋梁
    ああ(ああ)うまく取れないけれど 大博打だよ
    あの時感じた ああ(ああ)不安は本物
    ああ(今)橋を脅かしてる フルンツベルク

    遅滞を破って 運河も渡って ナイメーヘンに着いたけど
    ワールを渡る攻撃は手間取って遅れる
    簡易舟艇で溺れもがいても まだ死ぬわけに行かない
    ラインの橋はその向こう 作戦はこれから
    地獄のハイウェイに向かう パンツアーたちを封じ込めろ
    101だけじゃ防げない 増援出さなきやいけない

    攻撃やめて 歩兵を戻し 街道守り やり直すさ

   ※くりかえし

    SS師団に ああ(ああ)お帰り願って
    ああ(ああ)やり直したい夜もたまにあるけど
    あの時感じた ああ(ああ)不安は本物
    ああ(今)橋を渡っていくよ フルンツベルク

   (作詞者 不詳)

 

 
 

 最近はアルンヘムの戦跡を巡るガイドブックが出版されています。
 John Waddy 著 「A Tour of the Arnhem Battlefields」 Leo Cooper出版 がそれです。(ISBN 0-85052-571-3)(12.95ポンド)
 これは、アルンヘム戦における主な戦場46ヶ所について、一番最初の降下地点を皮切りに、当時の写真と地図で解説しているもので、これを見ながらアルンヘムを歩き回れば、貴方も遠すぎた橋のプロというわけです。まあ、しかし3日間ぐらいを必要としますから、相当な覚悟が必要です。


 インターネット時代、バーチャルでどこへでも行ける時代になりましたが、戦跡だけは現地へ行くことをお奨めします。自分の体で体験した戦場の地形や雰囲気は、人生の得がたい思い出になることでしょう。