このリレー仮想戦記「蒼い光」は、当掲示板において1999年11月3日から11月11日の期間に行われたリレー仮想戦記を集約・校正し、写真を補足したものです。従って、ストーリー的に矛盾する部分や誤字脱字等については、掲示板管理者が修正を加えており、オリジナルと異なる部分がありますことをリレー参加者の方々はご了承下さい。

 

 気分を高揚させて読む場合は、BGMをどうぞ.........produced by まけらいおん
                                     

注意) このページは地雷犬の幽霊が出現することがあります。





           リレー仮想戦記No.1 投稿者:高橋 慶史  

 1945年4月16日(月曜日)の午後、ホッホブリュッケRAD見習士官は、パンツァーファウストを握り締めて塹壕にいた。場所はミュンヒェベルク近郊の高速道路脇で、ここからベルリンまでは僅かに40kmしか離れていなかった。

 どうやら前面の前線は突破されたらしい。砲撃が段々近づいて来る。
 
 この塹壕には、ヒトラーユーゲント所属で15歳のキルシュバウム、68歳で第一次大戦の時でさえ予備役だったマケレーヴェン元大尉のほかには、最近になって部隊に拾われたドイツ語が片言しか話せない信用できないハンガリーSS義勇兵3名しかいない。
 
 唯一、頼りになるビッテンフェルト中尉とシュタイナー少佐がいる本部の塹壕は、ここから300mは離れており、いざという時には役に立たない。
 
 が、しかし、装備は思いのほか上等で、ホッホブリュッケを喜ばせていた。

 時々突っ込みを起こすMG42が1挺、
ゲレート・ポツダム 2挺、パンツァーファウスト5発、それに弾薬が50発しかついていない15mmブルーノ重機関銃 (どこからもってきたのであろうか?)……この他に最貧部隊の友ゴリアテが1台、吸着地雷5個も与えられていた。
 
 また、本部の塹壕にはすごい新兵器が隠されているとのもっぱらの噂であり、いざとなれば期待が持てそうであった。さらに、ここから2km離れたところに、クンマースドルフ実験場から来た戦車部隊がいると昨夜誰かが話していたが……。

 おや、あれはなんだ?
 敵だ!!「JSII型約20両接近!! 」ホッホブリュッケが絶叫する。




           リレー仮想戦記No.2 投稿者:kimkim  

 小山のように茶色い荷物を積んだ緑色の重戦車が、高速道路を時速20kmぐらいでこちらに向かって来る。一瞬、呆然としてしまったホッホブリュッケRAD見習士官は我を取り戻し、狼狽することなく、職務に忠実なドイツ兵士の端くれとして奇跡的につながっていた電話でシュタイナー少佐に報告を行った。
 
 後から、彼はこの時のことを呪ったものだ、何故あの時「すぐに逃げなかったのだろうか」と……。しかし、このとき彼はRADの見習士官でありながら、古参のプロイセン将校のように冷静であったのだ。
 
 「ミュンヘベルク東方、2kmの地点に敵戦車部隊出現!跨乗歩兵を伴う重戦車20両、わが陣地に向かって前進中!!」

 この報告を受けた本部は狼狽した。まだこの近辺にはロスケの準備射撃も始まってなく、砲声は近づきつつあるものの、ここからは遠方に聞こえている。準備射撃の標定をする間もない程、素晴らしい速度でわが陣地を突破して来たのだろう。
 
 シュタイナー少佐は思った。
 「ふむ、ロスケは本当に素晴らしい生徒だ、電撃戦の極意を会得している。」
 
 冷静なようでやはり焦っていたのだろうか?彼は考えていたことを口にしていたことを気づいていなかった……。
 
 呑気な事を口走る指揮官を見て副官のゲルマー上級曹長は「うちの指揮官は冷静なんだろうか?それともいかれてしまったのだろうか?どっちにしてもこれだからプロイセン将校って奴は始末に終えない……。」と常日頃考えていたことをこの非常時に考えていた……。    

 つまるところ本部に出来ることは無かったのだ、既に麻痺した感覚で呑気な事考えるほかに……。
 
 電話から伝わってくる緊張感に我を取り戻したシュタイナー少佐は、戦車部隊に増援を求めることと、陣地確保の命令を伝えて電話を切った。
 
 「いまさらこんな増援の与太話を信じる奴も、死守命令を遂行する奴もこの辺にはおるまいよ、そんな酔狂な奴らはみんなベルリンに行っとるだろう……すぐにここも危険になるな。」
 
 シュタイナー少佐はRAD見習士官などになんの期待も抱いていなかった……。
 
 すぐさま、恐らく戦闘には間に合わないであろうクンマースドルフから来ている戦車部隊に一応連絡し、頼りになる副官に左翼側面に展開しているドンツァー臨時集成戦車大隊へ迎撃命令を下したのだった。

 そのころ「前線突破さる!!」の報告を受けたドンツァー戦車大隊では右へ左への大騒ぎだった。なんせ部隊の所有する戦車は、IV号戦車1両、III号戦車3両、これまた何処から見つけてきたのだろうか?ポーランドのTKSが3両に、7TPが1両という内容だったのだ……。
 
 IV号戦車は長砲身型ではあるが、車体は旧式のC型であり、増加装甲が装備されていなかった。そして3両あるIII号戦車、これが曲者だった。1両は工場防衛用として存在していたE型改修の短砲身50mm装備、1両は指揮戦車のD型、最後の1両は脱力以外の何物でもないA型の車体にL型の砲塔を積んだという奇怪な代物だった……。 
 
 しかも砲塔はゲルプで、車体はグラウで塗装されていた。冗談にしては性質が悪かった……。そして、戦力として考えるのも馬鹿らしいポーランド戦車達……指揮官のドンツァー少尉は思った。
 
 「なんでポーランド戦車なんかが……みんなクロアチアに売っ払ったんじゃないのか!きっとパレードかなんかに使われたか、民間人に捕獲兵器として展示されたかした後に、忘れ去られて倉庫で眠ってたんだろう。どうせなら最後まで眠っていればいいものを……。」

 ドンツァー少尉の目前では整備兵達が出撃準備をしている。

 「IV号もIII号も転輪のゴムや履帯が磨り減りきっている……随分乗り心地が悪そうだな……III号の装備がせめて短砲身75mmならないかなぁ……。」
 装備に不満を漏らしつつも、短砲身75mmならスターリンと戦う気になれる彼もまた、勇敢で不屈の精神をもつドイツ戦車兵であるといえるだろう。
 
 彼らは前線に向かうために準備をしているのであり、戦車と戦うために戦車を持っているのだ。出撃準備は大急ぎで進められ、部隊は指揮官の命令を待つだけとなった。
 
 ドンツァー少尉はあまりに優秀な整備兵に微量の殺意を覚えつつ、命令を下すのだった。
 
 「パンツァー マールシュ!!」
 
 「あぁ、俺はまるでニュース映画で見たグーデリアンの戦車部隊みたいじゃないか……。目的地はフランス! 立ち止まるな、目標はダンケルク! そんな時代があったとは俺には信じられんよ……。」

 ドイツ側指揮官たちの思惑など関係無くソ連重戦車はベルリンに向けて驀進する。見ればウォッカ片手に「ロシア我が祖国」を大声で歌っている者までいる始末だ。

もはや彼らの前進を止めるものはいないのであろうか?




            リレー仮想戦記No.3 投稿者:かば◎  

 アカーイェフ中尉にとってすれば、もう戦争は終ったも同然、今こなしている仕事といえば、すでに腹一杯食って、皿の縁にちょっと残ったボルシチを黒パンで拭い取るくらいのものという心積もりだった。エンジンデッキに鈴なりになった歩兵連中もそれは同じ、どこから手に入れたか、酒を回し飲みして、歌をがなる奴まで出て来る始末だ。
 
 有り難いことに、今乗っているコイツは、いざとなると止まっちまうカ・ヴェみたいな気難し屋じゃない、しかも積んでいる筒は122mm、ファシストの「虎」だって、一発で仕留められるという触れ込みだ。グルジア野郎の名前が付いてるにしちゃ上出来さ、と、アカーイェフ中尉は、政治将校には絶対に聞かせられないような台詞を喉の奥でごろごろと唸った。

 「……上出来さ」
 
 と、それでも漏れ出た最後の言葉を聞きとって、操縦手のポポフが「は、何か?」と聞き返して来る。
 
 「いや、何でもない。そのまま前進だ、アナートリィ・ニコラエヴィチ」
 
 「由緒正しい」貧農の生まれのポポフにすりゃ、今の世の中は万万歳なんだから、下手すりゃそのまま政治将校に御注進なんてことにもなりかねない。
 
 もちろんそれを言うなら、アカーイェフ中尉だってもう2度も勲章を受けた国の誇りだ。
 
 この親衛重戦車連隊にあって、ピカイチの戦車将校と言っていい。けれども、とアカーイェフ中尉は思う。どう考えたって、革命的に正しく考えて行動するのと、戦争の駆け引きとはどうにも合わないよな。ピカピカに磨き上げた政治将校がやってきて言うことには、ファシストを殲滅せよ、一歩も引くな、突っ込め、だけだ。そんなことじゃあ、命が幾つあっても足りやしない。まともな兵隊なら誰だって判ることだ。が、そこで頭に来て「馬鹿野郎、そんならてめぇで行ってみろ。素人は黙って俺らに任せろ」と言う奴は、よくて懲罰大隊行き、下手すりゃその場で銃殺だ。
 
 しかし、やることは一緒でも「判りました。もちろんそれでも敵を蹴散らして見せます。が、ここはちょっとファシストのやり口を逆にあいつらにぶつけてみて、正しい革命思想と愛国心を持っていれば、それが数倍の力になるんだってことを見せ付けてやりましょうや」と言えば、生き残りも出来るし、勲章だって貰える。要は口の利き方だ。
 
 こんなことをつらつら考えながら進撃できるのも、もう皿の縁をぬぐっているだけの戦争だからだ。本当なら、突破作戦にそんな余裕はない。が、ここ数日、アカーイェフ中尉が片づけた敵と言えば、トラックが2台と、今まで見たこともない「新型戦車」が1両だけだった。その新型戦車、馬に引かれて、荷台には、申し訳程度にブリキをまとって、ぶっといジャケット付きの骨董品の機関銃を搭載しているという代物。いきなり街道を曲がったところで出くわしたが、撃つのも追うのもためらわれたほどだ。
 
 2号車のセルゲイは道すがら戦車を2台やったと言っていたが、後から見てみたら、そいつはセルゲイのうちのばあさんの時代からそこにあったと言えるくらいに錆付いていた。   

 まともなファシストの戦車なんてもんは、ここ半月見ていない。
 
 今日だって、カチューシャがひとしきり、前線に穴を開けたら、あとはほとんど抵抗らしい抵抗もない。確かに、ファシストの「火矢」は食わせモンで、こいつを持った歩兵が一人でもその辺に潜んでいて、いきなり目の前でぶっ放されたら、このイーエスだって一巻の終わりになっちまう。だから、家なり木立なりが見えたら、近寄る前に一発、榴弾を放り込んでおかないといけない。が、それを除けば、気楽なものだ。しかも、今日の「出張」は、アカーイェフ中尉の一隊を含めて、イーエスが20両。
 
 後ろの歩兵は、まだ歌をがなっている。誰もそれを止めない。履帯と転輪が、鋼鉄同士、けたたましくぶつかってきしんでいるほうがよほどうるさいのだから、止める方が野暮ってもんさ。

 あと1キロ、手前の丘を制圧したら、仕事は一段落だ。今日の残りは、この楔形に開いた穴を広げることになるんだろう。が、そいつは、また別の部隊のやることだ。
 
 と、思った瞬間に、先頭のイーエスが、いきなり爆発した。たまたまキューポラの中に身をかがめていたアカーイェフ中尉は、したたか頭をぶつけるくらいで済んだが、衝撃で、同乗の歩兵も数人、振り落とされた。

 「敵戦車9時方向! 数量不明! 歩兵降りろ!……」




       リレー仮想戦記No.4 投稿者:あつんど

 「第一撃は成功か……」
 
 塹壕から無線でドンツァー戦闘団を指揮していたシュタイナー少佐は、思わず独り言を口にしていた。素面な時は必要な場合以外ほとんど喋らないことで有名なかれにとっては非常に珍しいことであるといえた。つまりは、眼前の状況が彼に思わず独り言を口にしてしまうようなものだったのだ。
 
 先頭の戦車が撃破されたことで、ソ連軍戦車部隊は大混乱だった。振り落とされる歩兵、あちこちで発せられる怒号、それにつき動かされるように索敵を始める歩兵たち。しかし、奇襲を受けた時点で行われてしかるべき戦車の散開は行われていない。いや、行われてはいるが20両いるうちの3,4両だけが思い付いたように散らばっているだけで大部分は路上で右往左往している。
 
 どういうことなのだろうか。シュタイナー少佐は敵戦車部隊の行動が理解できなかった。彼等の行為は戦車戦の基本すら無視している。東部戦線における歴戦の勇者である(もっとも、そうでなければとっくにロシアの土となっているのだが)シュタイナー少佐は、ソ連戦車兵の戦闘技術が侮れないことを(無理矢理)体に叩き込まれていた。しかし、眼前のソ連兵は彼が幾度も苦杯をなめさせられた赤軍戦車部隊とはまるで別物、独ソ戦開戦直後に上司のフロッシュ中佐(当時)から何度も聞かされた「豚のほうがまだまし」なターキーとおんなじである。
 
 まあいいや。シュタイナー少佐は頭の中の思考を中断させた。作戦は第一段階がとりあえず成功、そして眼前の状況は無理だろうと思っていた第二段階を実行できる環境にある。 

 かれは無線を通じてドンツァーに言った。

 「よし。今度は残ったやつをやるぞ。」


          リレー仮想戦記No.5 投稿者:マイソフ  

 「ガンツェバタリオン(大隊総員)」シュタイナーはUHF無線機のマイクに絶叫した。

 シュタイナーの指揮下にある4台の元戦車と4台の戦車代理は、婉曲にも第1自給自足戦車大隊と命名されている。

 「シュテルンク! シュタウブディアマンテス(ダイアモンドダスト)!」各車の装填手は、エンジン音で聞こえないのをいいことに知る限りの悪態を並べながら、あらかじめ渡された特殊砲弾を装填した。「シュネルファイア(一斉射撃)」号令一下、全車が混乱するソビエト戦車群に発砲した。
 
 もうもうと煙幕が立ち込める。風下にいたホッホブリュッケたちはむせ返った。マケレーヴェンが血相を変えて怒鳴った。「マスタードガスだ。射撃位置に上がれ。ガスは低いところに溜まるぞ。ガスマスクを出せ」
 
 実際には、これは炸薬を節約するために唐辛子の粉を増量剤に使った、ただの煙幕弾であった。
 
 シュタイナーは、車内でくしゃみをするソビエト兵の姿を想像してほくそえんだ。「勝てる。勝てるぞ」シュタイナーは根拠なく叫んだ。「教育してやる。バタリオン、ネーベルフレックスケッテ!(ネビュラチェーン)」全車の戦車長が一斉に顔をしかめ、横を向いたまま身振りでドライバーに指示を出した。
 
 8台の各種車両はソビエト戦車の周りを囲むように走り始めた。「ふははは。逃れられまい。逃れられまいイワンめ。どうした。なぜ攻撃しない」シュタイナーは高笑いをやめた。そこでシュタイナーは思い出した。ドイツ戦車兵は無駄弾を避けるために、停車時でなければ決して射撃しないことを。

 「おのれイワンめ、我々の技をよくぞ破った」シュタイナーは新たな技を指示しようとしたが、それをさえぎるように各車から報告、というより悲鳴が上がってきた。無理な信地旋回を繰り返したため、すべてのドイツ戦車の最終減速機が割れたのである。

 「万事休すか」シュタイナーは肩を震わせた。ポーランド戦車から何か報告が入ってきていたが、シュタイナーは聞き流した。

 一部始終を見ていたホッホブリュッケは、無言でパンツァーファウストを手に取った。やはり最終的に頼りになるのは、こいつだけだ。





         リレー仮想戦記 No.6 投稿者:STEINER 

 パンツァーファウスト60の弾頭部の安全ピンを引き抜き、照門を立て、トリガーストッパーを前方に押し、標的が煙幕の中から出てくるのを待つホッホブリュッケRAD見習士官の脇でマケレーヴェン元大尉は若いキルシュバウムに「お前もガスマスクを装着しろ!。」と怒鳴ったが、キルシュバウムはガスマスクを支給されていなかった。
 
 「ゲッツ!」マケレーヴェンは自分のガスマスクを外しキルシュバウムに投げた。
 
 「こんな物でも無いよりはましだ!。」見れば短い旧型のフィルターのスタンプは1939年製を示していた。

 キルシュバウムがその骨董品を拾おうと屈んだ時、本部よりビッテンフェルト中尉が兵数名を連れて塹壕に飛び込んで来た。

 兵は各々パンツァーファウストを2本ずつ持ってきた。

 塹壕の縁にパンツァーファウストを立てかけると、首から下げた手榴弾袋から発煙手榴弾を取り出し、手際よく安全キャップを外して中の陶器製の握り玉を出して、塹壕の縁に並べ出した。

 ビッテンフェルトは手短に状況を説明した。涙と鼻水でグショグショになったマケレーヴェンは、マスタードガスの正体を知って悪態をついた。
「クソ!ガスにやられなくとも戦車に踏みつぶされるのか!」

 シュタイナーは自分の判断と現在の状況を呪っていた。

 何故こんな時に限って戦車が増援に来たんだ!?しかも全くあてにしていなかったRAD見習士官迄が死守命令を守るとは……。ここまで来て無駄に兵を殺す事があるのか?

 しかし、状況はその様な事を考える事を許さなかった。
突然、ホッホブリュッケの塹壕の方から聞き慣れたMG42の射撃音が聞こえた。

 パンツァーファウストを握り締め、敵戦車を待ち受けていたホッホブリュッケが最初に見たのは敵の随伴歩兵だった。

 ビッテンフェルト中尉の命令でMG42が吼えた!

 煙幕の中から出てきたロシア兵がバタバタと倒れた。
 「射撃ヤメ!」「発煙手榴弾を!」

 兎に角この煙幕が消えた時が、彼らの生命の灯が消える時なのだ。




           リレー仮想戦記 No.7 投稿者:Tazipie  

 やがて煙幕の中から次第に、黒く巨大な影が近づいてきた。

 戦車などヘッツァーくらいしか見たことがないホッホブリュッケRAD見習士官にとって凶悪なJS戦車は、後に満州の日本兵が呼んだように「二階建戦車」に見えた。

 「モウ駄目ネ。降伏、降伏!」と後ろにいたハンガリーの義勇兵が言う。

 そんな言葉を無視してホッホブリュケはパンツァーファウストをかまえる。
JS戦車と歩兵が煙幕から完全に姿を現した。

 「神よ、どうか守り給え!」不信心者だったホッホブリュッケも無意識に神に祈っていた。祈りがつうじたのか、なぜか敵は撃ってこなかった。

 JS戦車と歩兵がいよいよ30mまで近づいて来た。
 なんと敵は射撃せずに、ニヤニヤ笑いながら近づいてくる。

 「撃タナイデ!降伏!降伏!」

 振り返ると、あのハンガリー兵がホッホブリュッケのすぐ後ろで白旗を振っているではないか!敵は武装解除するつもりでホッホブリュッケの塹壕に近づいた。

 「情け無用ファイア!」ホッホブリュッケはパンツァーファウストを発射する。

 一瞬のうちに、JS戦車は鉄の棺桶になった。
 同時にMG42とブルーノ機関銃が歩兵たちをなぎ倒す。
 
 ハンガリー兵はパンツァーファウストの噴射煙を受けて、真っ黒になって死んでいた。

 怒りに燃えたソ連軍は、猛烈な射撃を浴びせてきた。

 ホッホブリュッケは塹壕の中で身をかがめ、「もう、降伏はできないな……」と独り言を言った。


   
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         リレー仮想戦記 No.8 投稿者:まけらいおん

 「ベルダンの戦いの時もこんな調子だったのだろうな」
 マケレーヴェン予備役大尉は思った。

 戦場は混乱の極みにあり、何時JS戦車のキャタピラの下に踏み潰されるかどうか判らない状況下であるのに、彼は今や何故か恐ろしいくらいに冷静であった。

 それに引き換え、14歳のヒトラーユーゲントであるキルシュバウムは驚くほどファナティックに目を輝かせて、何事かを呟きながらパンツアーファウストを握りしめてJS戦車の接近を待っていた。

 それを見てマケレーヴェンは、以前に陣地構築の合間に自分は戦争に参加していない第一次大戦の塹壕戦の話を、偉そう自分の体験談としてキルシュバウムに話した事を思い出した。

 その話を聞いている時の目が、今のキルシュバウムの目と同じであった事に気が付いて彼は苦笑した。

 


        リレー仮想戦記 No.9 投稿者:高橋 慶史  

 ハッシー・デロリ空軍中尉は、コクピットで一人喝采を叫んでいた。

 彼は、最後の燃料で愛機を、爆撃で穴だらけのベルリン=ドレスデン高速道路から物の見事に離陸させたのである。

「これだけで騎士十字章ものだな」と彼は独り呟いた。

 独特の金属音を轟かせながらJumo004は快調に動いており、コクピットの前方にはモーゼルMk.214A型50mm機関砲が大きく竿のように機首から突き出ているのが見えた。

 愛機、すなわちMe262A-1a/U4は対重爆撃機用襲撃機として、つい2ヶ月前に初飛行したばかりであり、これが試作1号機であった。50mm機関砲の弾薬は45発で、調子に乗って撃ちまくるとたちまちなくなるので注意する必要があった。

 中尉はゆっくり機を上昇させると北東に機首を定めた。

 あたりに敵機らしい姿はない。ともかく獲物を探さないと燃料が心配だ。

 突然、ガーンと足元に強い衝撃が走り、機は大きく左に傾いた。
 ケロシンの臭いが立ち込める。弾幕が左右に花開く。

 「畜生、味方の高射砲だ!」

 しょうがない。敵味方の区別もつかないRAD女性空軍補助員が操作しているのだ。しかし、よりによってこれが最後の出撃だと言うのに……。彼は歯ぎしりした。

 油圧が急激に低下し、燃料計が徐々に下がり始める。彼は機の態勢を立て直すと、ふらふらと上昇しながら大きく右に旋回した。機首から黒い煙が噴出している。

 地上を確認すると、森の向こうに白い帯のようなものが遠くに見える。
 「しめた、あれはキュストリン=ベルリン高速道路に違いない。不時着できるぞ!」

 周囲で地上戦が行われているらしく、所々に黒い煙が立ち昇っている。
 燃料計を確認する。まだ大丈夫だ。

 「よーし、不時着する前に露助どもに45個の贈り物をしないとな」

 彼は一旦、東に旋回して高速道路の真上に出ると、西に機首を向けてゆっくり降下を開始した。敵の対空射撃が集中する。しかし、あせってはいけない。
 あまり急激に降下するとノーズヘビーのMe262A-1a/U4は失速してしまう。

 機首の煙の合間から、ソ連軍の戦車縦隊の姿が見え隠れする。照準セット、よし。

 「フラー!!」デロリ中尉は絶叫しながら、50mm機関砲の射撃を開始した。

 塹壕で身動きもできないで、呆然と敵戦車が近づいてくるのを見ていたマケレーヴェは、突然、前方で連続した爆発音が響き、閃光がきらめくのを感じた。

 ソ連兵の悲鳴と怒号がこだまする。

 と、けたたましい爆音を発しながら、航空機が1機煙を吐きながら低空で頭上を飛び去った。Me262!友軍機だ!!機首に竿のようなものを突き出している。

旋回してもう一度攻撃するようだ。恐る恐る塹壕から首を出す。

 前方のソ連軍は大混乱に陥っている。少なくとも5両のJSII型が閣座して炎を噴出している。と見る間に誘爆を起こして1両が吹っ飛んだ。

 「よーし、反撃だ。じいさん、行くぞ!」
 キルシュバウムが、マケレーヴェンに声を掛けた。
 やれやれ、戦争ごっこのお付き合いか……。
 
 どっこしょと、マケレーヴェは吸着地雷2個を持って立ち上がった。

 

         リレー仮想戦記 No.10 投稿者:あつんど

 友軍機。甘美な響きだな。シュタイナー少佐は、ただ一機支援のために飛んできたデロリ機を眺め目頭を熱くしていた。友軍機は自分の腕を誇示するかのように機関砲掃射を行い、少なくとも5両を擱坐させている。よし。これで10両が動けなくなっている。いくらロスケでもこれで後退だろう。政治士官だって死にたくはないだろうからな。前線に出張っているかどうかは知らんが。

  畜生。一体なんでこんなことに!
 運良く生き残ったアカーイェフのスターリンは眼前で起こった出来事が未だに信じられずにいた。こんな情景は2年前に終わったはずだった。

 ドイツ野郎の戦車は強力だがいつも少数で(それでも手ごわいが)、数を頼みに叩けば何とかなるはずだった。最近ではその戦車自体も、骨董品としたほうが価値が出そうな程度なものしか出てこなかったのに。
 
 現実に叩かれ続けているのは俺達の方じゃないか!
 アカーイェフは狂い出さんばかりだった。畜生。何で、何で、何で。畜生。悪魔め!

 車内にいる全員がびっくりして彼の方に向き直った。どうやら、最後の方は独り言ではなく、絶叫そのものだったようだ。

 高速道路上はまさに惨状そのもの。見たこともない形状の戦闘機。両翼に樽のようなものをくくりつけて、機首には竿のようなものを突き出している。そして、路上でもたもたしていた戦車はその奇妙な戦闘機の掃射にやられている。確認しただけでも5両がやられている。しめて10両。

 駄目だ。戦車と歩兵だけで突破するにはよろしくない。重砲、でなければドイツ野郎と同じく航空機の支援が必要だろう。とりあえず、後退して、支援を要請だ。また政治士官から嫌味を言われるかもしれないが、死ぬよりましだ。いざとなったらウォトカでも握らせておけばいい。

 彼が支援を求めることを決意した時、装填手が絶叫した。
 「中尉!10時方向より敵歩兵が突っ込んできます!」


    マイソフさんの「外伝」へワープしますか?   Ja
 

           リレー仮想戦記 No.11 投稿者:S.クシマ

 ……その頃、奇妙な一台のトラックがベルリンからミュンヒェベルク近郊の前線に向かっていた。トラックの荷台には、明らかに東洋系と思われるドイツ軍の軍服を着た小柄な兵士の一団が、無表情で乗り込んでいた。

 「彼らはヒヴィでありますか?」
ボマーク4.5t木炭ガストラック を運転しているノインインゼルン伍長は、助手席に座っているSS中尉に尋ねた。だが中尉は全くの無言でノインインゼルンの質問を聞き流した。「知る必要のない者には教えないか……」

 ノインインゼルンは小さく頭を振ると爆弾の孔を避けるべく、トラックのスピードを落とそうとした。

 そのとき「伍長、急ぐんだ。シュタイナーが待っている。」と初めてSS中尉が口を開いた。「彼らはチベット人の義勇兵だ。わざわざベルリンのティーアガルテン地区から抽出した兵士たちだ。」

 「チベット人でありますか。」とノインインゼルンは感心したようにつぶやいた。

 「トミーのグルカ兵に対抗して、我々はチベット兵でありますが?」笑いながらノインインゼルンが冗談を口にしたが、SS中尉は全く表情を変えず、その碧眼の瞳でノインインゼルンを睨め付けて言った。「伍長、おしゃべりの時間は終わりだ。」

 取り付く島もないその態度に、ノインインゼルンは彼と言葉を交わすことを諦め、一人思考に耽ることにした。

 「…チベット人の義勇兵だと?いつから彼らはベルリンにいたと言うんだ。それに彼らの携行している武器といったら。グストロフVK1-5突撃銃、ゲラート3008、エルマ突撃銃、連発式のフォルクスカービン98……。俺は悪い夢でも見てるんじゃないのか。

 それにこの胸くそ悪いSS中尉ときたら!自分の名前くらい名乗ったっていいじゃないか。休暇取消にならなければ、魔女の大鍋のようなベルリンにいやしない。

 連中をシュタイナーとかいうやつのところに降ろせば、俺の任務はそれで終わりだ。

 こんな連中と地獄の果てまでつきあうのは真っ平だ。…」無言のまま1時間も走った頃だろうか。突然上空をMe262A-1a/U4の機影が過ぎった。被弾したらしく機首付近から薄く煙を噴いている。そして地上には何条かの黒煙があがっている。

 「近いな……。」独り言のようにSS中尉は呟いた。そしてトラックの窓から身を乗り出し荷台に向かってなにやら命令を発した。そして「終着駅だ。ご苦労、伍長。ここでいい。トラックは破棄しろ。もう使いものになるまい。お前も我々と行動を共にするのだ。」とまるで刑の執行を言い渡す裁判官のような口調で、ノインインゼルンに告げた。

 ノインインゼルンの表情が凍り付いたとき、荷台の一人のチベット人兵士が呟くブロークンなドイツ語が彼の耳にかすかに聞こえてきた。

 「わし、イワンのボケナス皆殺しにしてやるけんのう。」



         リレー仮想戦記 No.12 投稿者:高橋 慶史

 さらにその頃、もう1台のイタリア製ドブンゲン4tトラックが、ツォッセン=ミュンヒェベルク間道を疾走していた。
 
 「これからどこに行くんです?」カーバ曹長がタバコを吹かしながら聞いた。
 
 「シュタイナーって野郎のとこさ。」助手席のマイソフ中尉が答えた。
 どこかで犬の鳴き声が聞こえた。
 
 「あの荷物はなんですか?」
 「知らなかったのか、お前? 我が軍の最終兵器さ」
 
 「ふーん、どうせろくでもないもんでしょ?」
 犬の声が段々大きくなる。
 
 「まあ、使い方によるがな」
 きゃんきゃん、バウワウバワ、わんわん……。
 
 「こ、こ、これは、に、荷台からですよ!!」
 「うん、ようやく麻酔から目が覚めたらしいな」
 
 「な、な、なんで軍用犬なんか運ぶんです?」 
 「ありゃあ、地雷犬だよ。昨日までシュプレンベアクで訓練をしていたんだ。3日間も餌を食ってない連中さ。」
 
 「へーえ、どうやって訓練したんですか?」
 
 「腹をすかせてから、ディーゼルエンジンの音がする車両の下の餌を採る訓練さ。背中に爆薬がセットしてある。4年前に第4戦車師団の18tハーフに乗ってた俺は、敵軍の地雷犬に潜り込まれてこのとおりのざまさ。」
 マイソフ中尉は義足の左足を叩いて見せた。
 
 「それでシュプレンベアクの実験場分室に通ってたんですね。」
 「ああ……。」

 珍しく遠くに、友軍のジェット機が低空で飛んでいる。どこか破損しているようだ。森の向こうには黒い煙が何本も立ち昇っている。
 
 「さてと、どうやら近いらしいな……。」
 
 きゃんきゃん、バウワウバワ、わんわん……犬の鳴き声はますます大きくなるばかり……。




         リレー仮想戦記 No.13 投稿者:KI-100  

 戦場まで2Kmまでの距離だったクンマースドルフ戦車隊は、あと1Kmまで接近していた。指揮官のハシターカ少佐はイライラしていたが、それも無理のないことである。部隊は見事な寄せ集め戦車隊である。

 パンターII3両、シュツルム・ティーガー2両、ケーリアン3両、ポルシェ・ティーガー1両、そして救援が遅れている元凶のマウスである。

 ヒトラー直々の命令でマウスを戦闘加入させねばならないと言われており、見捨てることができないのだが、こいつのおかげで行軍が遅いのなんのって!
 だが戦闘になれば厚い装甲と128mm砲が役に立つかもしれない。

 「この戦闘で敵を撃滅し、俺は騎士十字章だー!」

 少佐は、今さら何の意味も無いと思われる騎士十字章に執念を燃やしていた。

 「待っていろよ、ロスケの戦車ども!全滅させてやる」

 少佐の目は、突然何かを思いついて、つい通勤電車の中で叫んでしまった疲れたサラリーマンのごとく異様だった。

さあどうなるクンマースドルフ戦車隊!!



        リレー仮想戦記 No.14 投稿者:STEINER

 その頃、マケレーヴェン元大尉とキルシュバウムは敵戦車の機銃に射すくめられていた。砲弾で抉られた窪みから一歩も動くことが出来ない。

 せめてパンツァーファウストなら撃ち返す事も出来たのだが、吸着地雷では為す術も無い。それを塹壕から見て取ったビッテンフェルト中尉が連れてきた部下に二人を助けに行くように指示を出した。

 例によって発煙手榴弾が投げられ、援護のMG42が吼えだした。
 擲弾兵が6人、塹壕から躍り出た。

 6人が煙幕の中に姿を消し、ホッホブリュッケRAD見習士官 とビッテンフェルト中尉には何も見えなくなった。と、その時、すぐ近くに敵の砲弾が落下した。
丁度、塹壕が折れ曲がった先に着弾した為、怪我は無かったが、二人は耳が聞こえなくなった。

 着弾地点に行ってみると先程までいた機関銃チームは跡形も無く、ただ穴が空いていた。

 一方、マケレーヴェン元大尉とキルシュバウムの方には6人の擲弾兵が到着しており、戦力は一気に4倍になっていた。

 マケレーヴェン元大尉の指揮の下、再び攻撃を続行する事になり、発煙手榴弾の煙幕の中、一人が窪みから出た瞬間、敵戦車の機銃に撃たれてしまった。

 そいつは腕を撃たれていたが、弾は骨をそれていたので取り敢えずそいつの野戦服の内側の包帯ポケットから包帯を取り出し、ゴム引きのパッケージの中から油紙に包まれた包帯とガーゼを取り出し、ガーゼの上にタバコの葉っぱを乗せて傷口に当てた。

 その間、キルシュバウムは窪みから這い出し、一台の敵戦車に接近していた。吸着地雷のFZ信管の黄色いキャップをねじって外し、チャンスを伺う。

 突然、何か黒い物が見えた。と、黒い物が素早く後方の敵戦車の下に吸い込まれ爆発した。

 キルシュバウムにはそれが何かはわからなかったが、敵の機銃は沈黙した。

 「今だ!」キルシュバウムは一気に敵戦車に駆け寄り、装甲板に吸着地雷をセットして信管を引き抜いた。



        リレー仮想戦記 No.15 投稿者:S.クシマ

 シュトルモビクの編隊がミュンヘベルク上空に差し掛かった。

 その姿を地上から見とめたハシターカ少佐は、自分の指揮する戦車隊が迷彩塗装はおろか、樹枝等でカムフラージさえされていないことに気がついた。
塗装はドゥンケルゲルプやショコラーデンブラウンといった工場で見つけたあり合わせの塗料をモップで塗りたくっただけ。

 これではかえって逆効果だった。

 うかつにも出撃を急ぐあまり、弾薬を積みこめるだけ積み込むことにしか頭になかった自分のおろかさに気がついたときには、シュトルモビクの編隊は死のサークル描きつつ徐々に高度を下げてきた。

 「シャイセ!」大声で彼が叫んだのと、彼のすぐ後ろを進んでいたポルシェ・ティーガーの砲塔が大音響を立てて吹き飛ぶのとがほぼ同時であった。
……ほんの数分の後、彼が乗車していたパンターIIとケーリアン1台を残して、あとはことごとく無惨なスクラップと化していた。

 愕然とする少佐に追い打ちをかけるかのように無線連絡が入った。

 彼が切り札としていたマウスがエンジンの故障で立ち往生したままになり、修理の見込みは全くなくなったという知らせであった……。



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        リレー仮想戦記 No.16  投稿者:まけらいおん

 キルシュバウムがJS戦車に吸着地雷をセットして飛び出した瞬間、隣の戦車の機銃が唸る様に吼えた。

 キルシュバウムは脚をやられたらしく、転がり落ちる様にマケレーヴェンの壕の中に倒れ込んで来た。それと同時にJS戦車から爆発音と共に破片と黒煙が上がり、壕内の擲弾兵から喚声が上がった。

 でも、マケレーヴェンにはそんな物などは目もくれず、倒れこんで来たキルシュバウムの撃たれた脚に包帯を当て始めた。

 幸いな事に傷は致命傷を反れており、脹脛の肉を削いだくらいのかすり傷であった。

 そこで、マケレーヴェンはキルシュバウムに労いの言葉を掛けようと顔を覗きこんだ。

 だが、それは少し前の紅潮した頬とファナティック瞳を持ったキルシュバウムでは無く、蒼白な顔面に唇を震わせて怯えている子供がそこにいるだけであった。

 「所詮、子供は子供だ。これが戦場だ。これでヒトラーユーゲントの洗脳教育も、もう醒めただろう。でも、もしかしたらドイツ民族が近い内に夢から醒めるかもしれん。」とマケレーヴェンは思った。

 吸着地雷で戦車を1台失ったJS戦車隊は一旦退却すると思われたが、体制を整えて1台がこちらに向かって来る様子であった。

 マケレーヴェンは怯え始めた擲弾兵から手榴弾を集めて収束手榴弾を作り始めた。そして、回りの擲弾兵に叫んだ。

 「怯むな!俺は第一次大戦のカンブレーの戦いで、これでトミーの鋼鉄の化け物を1台破壊したんだ!お前等、俺を援護しろ!」

 無論、マケレーヴェンは第一次大戦には前線で戦っていない。しかし、この収束手榴弾で敵のJSを破壊出来れば、ヴァルハラに居る当時の戦友達に申しわけが立つと共に、当時から自分がずっと引け目にしていた物をここで解消出来ると一瞬思いこんだ。



          リレー仮想戦記 No.17 投稿者:S.シクマ 

 シュトルモビクに続いてツポレフTu-2型爆撃機の編隊が、ミュンヒェベルク上空に現れた。
 
 その姿を地上から認めたハシターカ少佐は、とうとう自分の指揮する戦車隊に最期の時が訪れたと悟らざるを得なかった。1台だけ残ったケーリアンが対空射撃を開始したが、所詮大編隊の前には蟷螂の斧、あっという間にエンジン部に直撃を食らい、一瞬の後にはひしゃげた鉄の塊と化した。そして彼の乗車するパンターIIも至近弾の爆風をもろに受け横転してしまった。彼は砲塔内で頭部を強打し、そのまま昏倒してしまった…。

 そのころシュタイナー少佐の所に到着したマイソフ、カーバの両名は、本部員と共に犬のゲージを荷台から降ろしはじめていた。だが頻繁に飛来する銃弾にじゃまされて地雷犬の準備作業はなかなかはかどらない。それどころか、腹を空かしたライカ犬がカーバの手に噛みついた。 

 腹を立てたカーバがその犬に念入りに地雷をくくりつけて解き放った。さっきキルシュバウムが見た「黒いもの」はこの地雷犬だったのだ…。

 ……名前を名乗ろうとしないSS中尉に率いられた15名のチベット人義勇兵と、無理矢理戦闘に参加させられたノインインゼルン伍長は身を低くしながら、小走りでシュタイナー少佐の待つ本部を目指していた……。

 シュタイナー少佐は硝煙の中を小走りに自分の所にやってくる、一団の兵士の姿を認めた。先頭に立つSS中尉の姿を彼は凝視していた。「あいつはもしかしたら…。」

 ……収束手榴弾を握りしめたマケレーヴェンは、キルシュバウムの顔をもう一度覗き込んだ。そして「俺はもう人生を十分に生きた。だがお前にはまだまだ未来がある。生き残るんだ、七つの地獄を越えて。」と声をかけた。
 
 そして塹壕を飛びだそうとしたが、自分の上衣の袖をキルシュバウムが握りしめて離そうとしないことに気がついた……。




          リレー仮想戦記 No.18  投稿者:KI-100

 「よし!修理完了だ」奇跡の整備兵と呼ばれるキーヒャクウム軍曹が叫んだ。

 1号車はダメだが2号車は動く。新任で名前もよく知らない大尉が砲塔から軍曹に命令した。「操縦士がおらん。軍曹、操縦するんだ」

 キーヒャクウム軍曹は、イヤイヤながらドライバーズシートに座った。

 どこから調達してきたのかクーゲルブリッツが2両随伴している。
 先に出発した部隊が全滅した今、このマウス2号車と対空戦車2両が全戦力だった。

 ノロノロと進んだが空襲はない。先ほどの戦闘でハシターカ少佐の部隊が全滅した為、ソ連空軍は引き上げてしまったらしい。

 マウス2号車はJS-IIの群れに横方向から砲撃できる絶好の位置にいる。
 だが128mm砲はなかなか火を噴こうとしない。分離薬莢方式なので装填に手間取っているのだろう。

 「ヤレヤレ」軍曹はあきれながら逃げてしまおうかどうか真剣に考えてしまっていた。




         リレー仮想戦記 No.19 投稿者:高橋 慶史

 1945年4月17日の夜明けがやってきた。

 いまや戦闘団「シュタイナー」となった寄せ集めの最貧部隊は、なおもハリネズミの陣を張って、ミュンヒェベルク付近の高速道路で頑張っていた。他の地点は圧倒され、たちまちソ連軍に突破されたが、ここだけは驚異的な抵抗を示していた。

 「同志、高速道路はまだ啓開できないそうだが……。」
 重子府、じゃあなかった、ジューコフは低くゆっくりした声で詰問した。

 注意国府、じゃあなかった、チュイコフは緊張しながら答えた。
 「は、相手は防衛部隊の中でも最強の精鋭部隊ですので……。」

 「報告は来ておるのだ!」とジューコフは鋼鉄の声でさえぎった。

 「良く聞くのだ、同志、加藤国府、じゃあなかったカトコフからの報告では、判明している敵部隊は、国民突撃隊1個大隊、第999国犬突撃中隊、クンマースドルフ戦車中隊、モンゴル義勇兵とハンガリー義勇兵の寄せ集めだぞ!その程度の部隊に何をてこずっておるというのだ!攻撃するのだ!!我々が子煮絵府、じゃあなかった、コーニェフの後塵を拝する事態だけは 絶対に防がねばならない。今後の我々の首が懸かっているんだぞ!!」

 「は、同志、それは小官も十分理解しております。しかし、今までの攻撃でスターリン重戦車大隊が全滅し、機械化狙撃兵旅団にも甚大な被害が出ております。まったく、やつらは悪魔の手下です。」

 「言い訳は聞きたくない、同志。至急カチューシャを1個連隊とスターリン重戦車1個大隊を増派する。シュトルモビクも再出撃させる。これでやつらを殲滅するのだ!!!」

 さて、野戦電話でこんな会話がされているころ、戦闘団「シュタイナー」は朝食を食べていた。
 
 「ビッテルフェルト、残存兵力はどれくらいだ?」と、シュタイナーは聞いた。

 「えーと、擲弾兵はざっと66名、地雷犬が29匹、あとマウス1両とクーゲルブリッツ2両、ポーランド戦車1両、重火器はこんなもんです。もう1度攻撃されたらお終いですな。」
 
 最後の馬肉ソーセージを噛みしめながら中尉は答えた。

 「ところで少佐、本部の塹壕の中の秘密兵器ってのはなんです?」
 「うーむ、俺にも実はわからんのだ。最後の最後だけに使用せよということだ。だが、ありゃあどう考えても毒ガス兵器だと思う。」

 馬肉スープをすすりながらシュタイナーが答えた。

 「どんな感じなんです?」人工マーガリンをライ麦パンに塗りながら、中尉が聞いた。
 「それが実に奇妙なのさ。16.6リットルの溶液がジェリカン6つに分けられていてな、それから密閉式攪拌槽ってのがあって、あとはバケツが1個あるだけなんだ。」

 「へーえ、じゃあ、その攪拌槽ってやつにジェリカンに入った化学物質を混ぜると、毒ガスの出来上がりってわけですか?」
 「マニュアルだとそうではないんだが、裏マニュアルってのがあってなあ……。」

 「なんか難しそうですね。でも、この際、兵器であればなんでもOKですよ。」

 「ところで、昏倒したハシターカ少佐の具合はどうだ?」
 「まだ意識がもどっていません。おれはこんな仮想戦記を書いている場合じゃない、会社が忙しいとか、ラスト・オブ・カンプフグルッペの締め切りがどうとか、うわ言を言ってます。」

 「うーむ、彼も突撃砲兵に行ったり、ヘルマン・ゲーリング師団に行ったり、大変だからなあ……。でも、ここでティーガーIIが片付いたんで、ずいぶん楽になったんじゃあないか。上官のイッヒミュラーに随分いじめられてた見たいだしなあ。」

 「でも、俺達、一体いつまでここで頑張るんですか?」
 「援軍が来るまでだ。多分、近くまで来ている。今日の夜、合流できたらベルリン方向へ突破する。それまで頑張るんだ……。」

 その頃、難民がごった返す中を、ベルリンから東の反対方向へ一群の部隊が移動していた。それは第三帝国最後の機甲部隊で、キムーラSS少佐指揮する戦闘団「キムーラ」であった。その装備は、グローストラクトール1両、木炭燃焼式1号張りぼて訓練戦車3両、1次大戦のダイムラー装甲車2両、MG08/15小隊とナイフ装備の人狼1個小隊、その先頭にはサドルのないポーランド製自転車に乗ったキムーラSS少佐が、泣きながらペダルを漕いでいた……。




          リレー仮想戦記 No.20 投稿者:kimkim

 キムーラSS少佐はサドルの無い自転車を懸命に漕ぎながら思った。

 「俺は一体何をしてるんだろう……こんな部隊を率いて何処に行って何をする気なんだ?いや、考えるのはよそう、あの魔女の鍋から逃れらるという僥倖を得たのだから……」

 道路は難民でごった返し、女子供の泣き声で喧騒を極めていた。
 ふと見ると道端に頭を抱えてすわりこむ老人の姿が目に入った。

 キムーラSS少佐は思った「第三帝国は崩壊した…」
 いまさら口に出さずともだれにも判ることをわざわざ考えながら彼は次ぎに起そうとする行動の言い訳を必死に考えていた……。

 そのとき、虎の子のグローストラクタールがマフラーから黒煙と炎を噴出し、がたっと揺れたかと思うと停止してしまった……。

 第一次大戦時に捕獲Mk.IVに乗っていたと得意げに自慢話を繰り返し、この状況下でさえ活き活きとしていた老退役少尉が残念そうに叫ぶ

 「隊長、こいつはもう駄目ですぜ!エンジンが逝かれちまいました!」

 キムーラSS少佐は、こいつは一体何が残念なのだろうと疑問に思いつつ答えた。
「かまわん、放棄しろ!」

 老少尉は答える「爆破しますか?」と……。
 少佐はこの期に及んで律儀な老少尉に答える、「かまわん、爆薬が無駄だ!それにそんなものは無い!」

 少佐は考えた。もうこれ以上国家に忠誠を尽くす必要は無い、事ここに及んでは戦争なんぞしたい奴だけがすれば好いんだ!

 少佐は部下を集め、先ほどから考えていたこと実行することにした。

 「もう戦争は終わりだ!わが部隊は既に唯一の戦闘力を失った。戦闘団キムーラはここに解散するご苦労だった、除隊を許可する、各人自由にしてよし!」

 しかし、この命令に対する部下の反応は鈍かった、もと来た道を戻るもの、命令どおりに前進を続けるもの、所在無く指揮官の周りにたむろするもの……。
結局は皆、この事態において主体的に行動する人間性を失っていたのだった。

 キムーラSS少佐はそんな部下達の反応を見て、痛感した。
 「あぁ、第三帝国は本当に滅亡したんだな。」と……。

 キムーラSS少佐は、残った部下達に1号木炭訓練戦車の張りぼてを剥ぎ取るように命じた

 「これで農業用トラクターの出来あがりだ!とにかくこいつでここを離れよう!」
脱力した元兵士達を積んだ元戦車のトラクターは元来た道でもなく、戦場への道でも無い道へと向かって行った。

 少佐は木炭の燃える臭いを感じながら将来のことを考えていた……。

 「やはり米英軍への降伏を選ぶか… いや、このまま故郷に帰ろう。このトラクターでジャガイモとキャベツを作るんだ。これからは戦車なんかよりもジャガイモの方がずっと必要になるんだから……」


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         リレー仮想戦記 No.21 投稿者:高橋 慶史

 1945年4月17日午後6時、くすぶる廃墟の中で戦闘団「シュタイナー」は、なおも陣地を頑強に持ちこたえていた。

 すでにあたりにはスターリンII型重戦車62両がその鋼鉄の骸をさらしており、敵の遺棄死体420、さらにはクーゲルブリッツにより叩き落とされたシュトルモビクの残骸が散乱し、魔女の釜の様相を呈していた。

 だが、戦闘団「シュタイナー」もまた死につつあった。

 ホッホブリュッケとマケレーヴェンの遺骸は、キルシュバウムにより毛布にくるまれ、塹壕の中にあった。ホッホブリュッケはパンツァーファウストを抱えて突進中にカチューシャの榴弾片により若い命を散らし、マケレーヴェンは吸着爆雷で朝から5両目の戦車に引導を渡した後、心臓麻痺によりキルシュバウムに看取られながら静かに息を引き取った。その顔は義務を果たした兵士の安らかな顔であった。

 ハシターカ少佐は戦闘中に意識を取り戻したが、「2001年3月にはラスト・オブ・カンプフグルッペは発売だあ!!」などと、非現実的なことを口走りながら、地雷犬用爆薬を背負って敵戦車のキャタピラへ身を躍らせた。あまりの職務の多さに発狂したらしい。

 ハンガリー義勇兵もその大半が死に、チベット義勇兵も半数が骸と化し、その中には機関銃弾で蜂の巣となったノインインゼルン伍長の死体もあった。
マイソフ中尉とカーバ曹長は、砲撃に怯えて逃げ帰った地雷犬4匹に飛びかかられ、非業の死を遂げ、そばにはマウスとクーゲルブリッツの残骸が横たわっていた。

 戦闘団本部は、まだ機能していた。

 ビッテンフェルト中尉は、右腕と左脚を打ち抜かれて塹壕の中で呻いており、キーヒャクウム軍曹がこのドイツ版丹下左膳の手当をしていた。シュタイナー少佐は最後のたばこを吸い終えると、そばにいたドンツァー少尉にこう命令した。

 「もうすぐ、暗くなる。19時にお前はチベット義勇兵以外の残兵をまとめて撤退しろ。10km後方に味方の戦闘団「キムーラ」の残余がいるはずだ。指揮官がいなくなったので、お前が来るのを待っている。そこで、お前が指揮を執ってもう一度、抵抗を構築するのだ。俺にはまだ、やる仕事がある。」

 「それまでに何かすることは、少佐?」
 「うむ、この鍵で地下壕の扉を開けてくれ。砲撃でゆがんでいるので簡単に開けらないかもしれんが、なんとか頼む。」

 その頃、チュイコフは野戦電話で咆吼していた。

 「なんでもかまわん。生き残った連中で夜襲をかけろ!俺の首が懸かっているのだ!!」

 アカーイェフも負けずに怒鳴り返した。

 「閣下、残存可動戦車は2両、歩兵は90名ほどです。それほど粛清で命が惜しければここに来て直接、指揮を執ってはいかがですか!」

 「いいか、よく聞けよ、アカーイェフ、俺とお前の親父とは確かに革命時代の古い友人だ。粛清を免れたのもお前の親父のおかげだ。感謝している。しかし、今は話は別だ。お前のお袋と妹が、カムチャッカの鉱山で働く姿をよく考えて見ることだ。それに夜襲に成功すれば、ソ連邦英雄勲章ものだぞ!」

 「……(悪魔の婆さんに食われろ!)」

 19時30分を少し過ぎた頃、アカーイェフは前進を開始した。目標はあのクソッたれの塹壕中央部の丘だ!少数のチベット義勇兵が反撃する。たちまち先頭の戦車がパンツァーファーストで燃え上がったが、一瞬、そのためにチベット兵の姿が闇に浮かび上がり、多数が掃射されて塹壕に転げ落ちた。

 アカーイェフ中尉は、最後の戦車から降りて、PPSHを構えながら用心深くあたりを伺った。とたんに、風のように走る黒い影が前方からいくつも突進して来る。地雷犬だ!辺りかまわずPPSHを乱射する。

 たちまち地雷犬の大量虐殺が始まったが、そのうちの2匹が血だらけになりながらもアカーイェフの戦車後部エンジン室の下にもぐりこんだ。爆発音と絶叫……。
 
 いよいよ、始まったな……。

 銃撃戦の音を聞きながら、シュタイナーはバケツで溶液をかき混ぜ、攪拌槽の小さなのぞき穴に差し込んだガラスの漏斗へ溶液を流し込んでいた。すでに5個のジェリカンは、チベット義勇兵の手で空になっていた。あとバケツ1杯分で、全てを注ぎ終える……。
 
 アカーイェフは突き進んでいた。手当たり次第に撃ちまくり、弾薬が切れると拾った敵のグストロフ突撃銃を撃ちつづけた。母のために、妹のために、そして自分のために……。

 撃たれた左足を引きずりながら、中尉は丘までたどり着いた。

 丘にはくりぬかれた地下壕があり、鉄製扉が開いている。彼はその中にゆっくりと入って行った。銀色に輝く大きな容器があり、そばにバケツを持った将校が突っ立っている。PPSHが火を噴く。将校は一瞬、驚いたように振りかえると、やがてゆっくりと膝から崩れ落ち、空のバケツと伴に仰向けに転がった。

 シュタイナーは、ガラスの漏斗の中に貯まった溶液が、やがて全部攪拌槽に流れ込むのを下からボンヤリと見ていた。俺は義務を果たしたのだ……。

 突然、彼は蒼色に輝く光を見た。それは見たことのない強烈な光で、彼の網膜はその光で一杯になっていった。薄れ行く意識の中で、彼はこれが総統の最終兵器なのだろうかと自答したが、やがて深い闇が彼を覆った。

 一方、アカーイェフもその強烈な蒼い光を浴び、急にめまいと嘔吐がこみ上げて床に倒れた。毒ガスだろうか?友軍に知らせないと……扉の付近まで這って行った中尉は、味方歩兵の生き残りが、ついにチベット義勇兵を皆殺しにしてこちらに歓声を上げて近づいているのを絶望的な気持ちで見つめていた。

 なんとか中尉は叫ぼうとしたが、声が出なかった。
 
 ダメだ、近づいてはいけない、こ、こいつは、……。


 チェレンコフSS中尉は、破壊されたポーランド製戦車の中でこの様子をペリスコープで丁寧に観察していたが、深いため息をつくと大型無線で報告を開始した。

 「こちらドーラ、マムートは失敗した。繰り返す、マムートは失敗した。しかし、ガイガーカウンターは自然値の10万倍を示している。」  

 「そうか、やはり核爆発までには至らなかったか。ウランを精製分離している暇がないので、濃縮液混合だけでやろうとしたのだが……。しかし、臨界までは行ったということだな。あともう一歩だな、中尉。もう少し時間があれば……」

 「ハイゼンベルク博士、これから私はどうすればよいのですか?」
 「故郷に帰るのだ、チェレンコフ君、生きていたらまたどこかで会おう。」

 インドSS義勇軍チェレンコフSS中尉、ことベルリン工科大学物理学科の留学生オマーン・アリヒム・カーン
は、戦車から這い出ると全速力で闇の中に消えていった。



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 1999年10月1日の朝、ここハイデルベルクのハイリゲンシュタット養老院でも、日本の東海村での臨界事故のニュースがもちきりとなっていた。

 ZDFのテレビニュースは繰り返し作業員3名の被爆を報じ、新聞は蒼い光を見たという作業員の証言をセンセーショナルに書き立てていた。

 今年69歳になったオットー・カミンシーマ・キルシュバウムは、震える手でフランクフルター・アルゲマイネ紙を握り締めて泣いていた。

 彼は実に54年ぶりに、破壊されたマウス2号車の砲塔の中に隠れていたときに見た光が、一体何であったかを理解し、そしてマケレーヴェンが彼に言った最期の臨終の言葉をふいに思い出したのである。

「お若いの、注意せんとお前はすぐハゲるぞ......」



                    (完)