両備バスは言うまでもなく、県下最大のバス会社である。歴史も古く、かつては県南全域はおろか、
バス黄金時代には鳥取や江見・大原、国道フェリーを介しての高知(四国側は南四国急行バス)、
通称「黒潮ライン」まで存在した。変わり種で岡山−児島バスセンター線には準急も存在した。
その後、時代の流れと共に消え、高速道路の開通により、これらは再び高速バスとして復活されて
ゆくのであった。さて現在の両備バスの特急・急行であるが、以前「岡山駅−新岡山港」が存在した
が岡電バスとのダブルトラックによる「かもめバス」の運行で消えてしまった。また、パークアンドバス
ライドの一連で西大寺と岡山市内を結ぶ特急「シビルライナー」が開設された。朝西大寺からの片便
で3便運行されている。最後に渋川特急であるが、こちらは言わずとも知れた両備の看板路線であ
り、運行当初よりバス業界に与えた影響は大きく、当社のドル箱路線といっても過言ではなかろう。
久しぶりに登場した同路線専用の新車はバリアフリー法の影響を受け、観光車ベースではなくなっ
たがあらゆるところにアイデアが盛り込まれ、カリスマ的存在のこの路線に合いふさわしい車輌と
なっている。平成16年8月30日未明、大潮の満潮という最悪の条件の中、岡山に上陸した台風
16号による高潮の被害で両備バス玉野営業所が冠水してしまい、路線バス47台が被災した。
渋川特急専用車も全車冠水、先に導入された新車2台を除く8台が廃車に追い込まれた。予想
だに出来なかった災害であったが、1ヶ月で通常運行に復旧した。被災された玉野営業所殿に
お見舞い申し上げるとともに完全復活を祈りつつ、これらの車輌を紹介したい。
(MS系車種のみクリックすると大画像になります)
岡山の特急バスを語るのに忘れてはならない存在である「渋川特急」。瀬戸大橋開通により玉野市はJR快速
が無くなり、また岡山駅までの直通列車が減少し不便になるため、出来る限りいい設備の特急バスの運行を開
始した。運行開始にあたり、同社内でプロジェクトが組まれ、路線バスとしては破格の、独立3列シート、飲み物、
雑誌、定期券の予約席、マッサージ席など至れり尽くせりのサービスが提供された。これらのサービスが話題を
呼び、全国にその存在を轟かしたのは言うまでもない。現在、便数も増え車輌も増えたため、これらのサービス
は車両によってまちまちとなっている。とはいえ、利用者にも大変好評で、増便に次ぐ増便で30分ヘッドで運行
されている。平成16年9月に上陸した台風16号が大潮の満潮という最悪の条件で岡山に上陸し、海辺より近
い玉野営業所が高潮の影響で冠水、渋川特急専用車すべて被災してしまい、あっけなく廃車に追い込まれた。
平成3年以降、貸切転用などで増便分をこなしており、新車の導入は行われていなかった。
代替時期が近づき、いざ新車を導入しようとすると時はバリアフリー時代。バス車輌にもバ
リアフリー法が設定され、路線バスとして登録するにはワンステップバス以下でなければな
らなくなってしまった。しかし特例があり、50kmを越える長距離路線や自動車専用道路を
経由する路線などは申請すれば除外されるというものである。ところが渋川特急は距離は5
0km以下しかも一般道経由のためこの条件には当てはまらない。宇野駅近くに玉野競輪
があり、「競輪選手が移動にバスを使う際、自転車を積む為にトランクが必要」というこじつ
けの理由で観光タイプの車輌も導入できたとか・・・・。しかし流石!正当法でアイデア満載
の渋川特急にふさわしく、非常にすばらしい新車が2台登場した。早速ご紹介しよう。
(車内の撮影はもちろんドライバー氏の許可を得て撮影)
13年ぶりの新車! |
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13年ぶりに登場した新車はバリアフリー法を受け車体前部3分の1がワンステップ構造、後部3分の2が徐々に床が上がっていくシアター構造という他所では見られない完全オリジナル特注車で登場。シャーシはM尺を1ストレッチし、ホイールベース6500mmを確保し車長12mのフルサイズとなっている。エンジンは直6ターボをチョイス、MPではあるがパワフルで余裕の有る走りを堪能できる。尚、ボディーは西日本車体工業製E型を袈装している。 | |
0412 KL−MP35JM改 平成16年式 | |
リアスタイル。 デザインは一新されたものの、従来の愛称「レインボー」を継承し、両備の定番になった水戸岡氏のデザインによるレインボーカラーに身をまとっている。 |
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車内前方より ワンステップ部に車椅子を搭載できるように跳ね上げシートを2脚設置、タイヤハウス部分は荷物置き場と給湯器、新聞・雑誌置き場のサービススペースとなっている。 |
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車内後部より 僅かに傾斜がつき、後部より前方が見渡しやすくなっている。シートは岡電リムジンバスに引き続き、オレンジ系統のモケットがチョイスされている。 |
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前方機器類 運賃表示機は従来のものであるが、運賃箱は車椅子乗車時に回転し、通路幅を確保できるように工夫されている。FM文字放送も設置されている。 |
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天井 幅広ラインライトで明るい車内。に棚はボックスタイプであるが、手荷物搭載が確認できる透視窓付き。画像ではわかりにくいが人工皮革風の内張りも張られている。
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車椅子搭載部分 シートを跳ね上げるとこのようになる。 |
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車椅子搭載部分2 通常はシートを戻したこのような状態で使用される。この部分はリクライニングしない。 |
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サービスコーナー部分 ワンステップ部分には3人分のシートと水戸岡氏こだわりの木材でできた仕切板を設置、ミネラルウォーターと給湯器がセルフサービスで利用できる。 |
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エントランス部分 ワンステップゆえ、タイヤハウスのでっぱりが大きい。前ドアの幅は車椅子乗車のため幅広タイプになっている。 |
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後部タイヤハウス部分 後部は床上げ無しでシアタータイプの傾斜がつくためタイヤハウスの出っ張りは画像のように少なくなっている。シートには格納タイプの補助席もついている。 |
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トランク部分 ワンステップにもかかわらず、トランクまで設置されている。トランク内には車椅子用のスロープが格納されており、車椅子乗車時に画像の様に使用される。 |
久々の衝撃的な明るい話題に沸いていたのもつかの間、8月末に上陸した台風16号によって
渋川特急の車輌群は壊滅的なダメージを受け、開設以来はじめて危機にたたされた。しかし、
公共の重要な足であり、両備バスにとっても重要な路線であるこの路線は迅速な対応により、
他営業所から貸切・高速・一般路線車の応援で何とか路線運行を維持、更に余剰車輌を運用
することにより代替車輌を捻出し、急遽代替専用車が登場した。その期間僅か1ヶ月であった。
2004年9月〜12月の車輌群 |
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両備バスより岡山交通に移籍した車輌が再び両備バスに返り咲いた。 元社番はF8538⇒9270 |
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0424 P−MS725S 昭和60年式 | |
元岡電バス⇒岡山交通。 まさかの渋川特急抜擢で旧岡電貸切色車が路線車として運行される何ぞ夢のようなことが現実になった。 元社番808 |
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0425 P−MS725S 昭和59年式 | |
貸切より転属。 85モデルなので燃料タンクに幅を取られ貫通トランクが1本狭い。 元社番F8811 |
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9475 P−MS725S 昭和63年式 | |
貸切より転属。 こちらは88モデルになったため、貫通トランクが大きく、フロントバンパーも後期タイプとなりすっきり としている。 元社番F8841 |
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9566 P−MS725S 昭和63年式 | |
貸切より転属。 上記車輌とは連番。 元社番F8843 |
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9567 P−MS725S 昭和63年式 | |
貸切⇒高速「サンサンライナー」からの転用車。 元年式よりエアロバスMスタイル(通称クィーンバージョン)となる。 元社番F8947 |
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9581 P−MS725S 平成元年式 | |
大阪帰りの貸切転用車。 元社番F9015 |
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9679 P−MS725S 平成2年式 | |
大阪帰りの貸切転用車。 実は両備バスにたった2台しか存在しないU−のエアロバスMスタイル。これ以降当分の間、ハイデッカーの増備は無かった。 元社番F9033 |
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9681 U−MS726S 平成2年式 | |
元川鉄営業所車でまさかの渋川特急抜擢。トップドア&P尺で一昔前の特急バスの雰囲気を醸し出している。 | |
8546 P−MP618P 昭和60年式 |
年の瀬の迫った2004年12月末、なんと!先般復旧工事に里帰りしていた西工E型が華麗なる
復活を成し遂げた。更に驚くべきことに同型車の新車3台も登場し、一挙に新型車が半数にまで
勢力を伸ばした。新車導入により暫定車輌の入れ替えも行われている。まさに両備バスの底力
をまじまじと見せ付けられた今回の台風騒動であったように感じる。
現在の車輌群 |
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復活したネオ渋川特急専用車。 | |
0411 KL−MP35JM改 平成16年式 | |
復活に際し、行き先の表示方法が白地に青で判りづらかったものを、色を青地に白と反転させ見えやすい表記に変更されている。 | |
0412 KL−MP35JM改 平成16年式 | |
年末に登場した新車。西工E型の2次車となるが、行き先の表記の変更のみでリピートオーダーのようである。 | |
0430 KL−MP35JM改 平成16年式 | |
画像の他、岡山200か647・社番0429も在籍する。 | |
0431 KL−MP35JM改 平成16年式 | |
リアスタイル。 2分割3連テールランプがシブい。 |
増備車登場! |
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衝撃の西工車デビューから2年後、水害代替車両の入れ替えを行うべく、新車が導入された。 今回は三菱ふそうが面目回復のためか、純正ボディーで登場した。 |
0612 PJ−MP35JP 平成18年式 | |
排ガス規制や投下規制の影響を受け、西工のような3連テールをつけるわけにはいかず。在来路線車と変わらぬ造りとなっている。 | |
純正ボディーとは聞こえがいいが、西工のように融通が利く製造が出来ないため、MPでホイールベースが一番長いP尺での登場、よって全長がフルサイズとはなっていない。 | |
0613 PJ−MP35JP 平成18年式 | |
この車両の最大の特徴は、苦肉の策ともいえる、車椅子専用ドアの設置である。高速道路を走行しない路線であるため、バリアフリー法の適用除外が受けられず、西工車のように前ドアからの車椅子乗車が可能な作りが出来ないために編み出された。またもや両備の底力を見せ付けられた感がある。 | |
0614 PJ−MP35JP 平成18年式 | |
写真では分かり辛いが室内は西工と同じく、シアター風の座席配置となっている。 | |
0615 PJ−MP35JP 平成18年式 |
特急バスの新しいスタイル |
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西大寺からのパークアンドバスライドは岡山市内へ直行する特急運用であるため、貸切の格下による専用車輌が導入された。朝のシビルライナーを担当した後は日中間合いで普通便に使用され、乗客に好評の様子である。 | |
9366 P−MS725N 昭和61年式 | |
この車輌の運用は平日のみで日曜祝日は車庫で寝ている。 | |
9374 P−MS725N 昭和62年式 | |
久々の貸切格下車 |
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確認はしていないが、朝のシビルライナーに運用されている模様。こちらの車輌は純粋な格下車的存在のようで、休日も運用されている模様。 | |
9565 P−MS725S 昭和63年式 |