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おかえりなさい |
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「やだ、先輩くすぐったいよ」 「越前くんは本当に感じやすいね……」 ゆっくりと、リョーマの身体の上を不二の白い手が這いまわる。その滑らかな動きを止めることなく、不二はその耳元にフッと小さく息を吹きかけた。ひゃぅ、と想像通りの可愛いらしい声を上げるリョーマを、不二は楽しそうに見つめている。 「もぅ………」 頬を膨らませてリョーマは不二の首筋に思いきり吸いついた。そして赤く残った跡を指でそっとなぞりながら見上げると、不二はふふ、と変わらぬ微笑を浮かべている。 「先輩が不感症なんじゃないの?」 「そんなことないよ。ちゃんと感じてるよ」 「ホント?」 「ホント」 ほら、とリョーマの手を導いて服の上から触らせる。熱く固くなっているそれを確かめて、リョーマは満足げに笑った。 甘く淫らな空気が辺りを漂う。 どちらとも言えない微かな笑い声が、衣擦れの音と共に密やかに揺れる。 「越前くんのも熱いね……どうする?」 「どうするって?」 「入れたい?入れてほしい?」 不二の問い掛けにリョーマは少し考える風にして首を傾げてから、不二の耳元にこしょこしょと囁いた。それを受けて不二が笑いながらOK、とリョーマに口付ける。そしてそのまま自然に深く唇を合わせようと、お互いに口を開きかけたその時…… 「………何をしているんだ、お前達は」 熱のこもった空間を打ち砕くように、冷静な声が響いた。 「あ、部長、おかえりなさい!」 「おかえり、手塚」 「……………」 手塚の怒気を孕んだ声にも全く怯む様子もなく、ふたりは満面の笑みを浮かべている。もちろん悪びれた様子は全くといっていいほど、無い。 「何をしているんだと聞いている……」 「え、何ってナニに決まってるじゃない。ねえ?」 「ねえ?」 不二とリョーマはお互い顔を見合わせてクスクスと笑う。その醸し出される妖しさと美しさについ引き込まれそうになる自分を抑えて、手塚は唸った。 「ここは俺の部屋だ!」 そう、ここは正真正銘、手塚国光の自室であった。 しばらく留守にしていたものの、しっかりと几帳面に片付けられた部屋。余分な物は何一つ置いていない整頓された机。磨かれた窓。そして綺麗にメイクされたベッド……の筈が、その上で不二とリョーマが戯れていたので今は少なからず皺が寄せられていたが。 「そんなのわかってるよ。部長の匂いがするからいーんじゃん、ねえ?」 「ねえ?」 そして再びクスクスと笑う。 「大体、部長が山なんか行っちゃうから悪いんだよ」 「そうそう、あんまり僕達を放っておくと何するか分からないよ?」 そう言って不二の眼がこれ以上ないくらいに妖しく光った。思わず後退りしそうになる手塚をすかさずリョーマが引き止める。 「逃がさないよ、部長」 「そうそう、安心して。お母さんならさっき買い物に出かけたから」 「オレ達、留守番頼まれたもんね?」 「ねえ?」 視線を絡めてクスクスと笑う二人を見て、手塚は本気で逃げ出したくなってきた。しかし悲しいことにそれは不可能だと身をもって知っている。だからせめて代わりに、深い溜息を吐いた。 「部長ってば何疲れた顔してんの?山で精気を養ってきたんでしょ?」 「越前くん、そういうのは普通『鋭気を養う』って言うんだよ」 「どっちでもいーじゃん、そんなの」 「まあ、それもそうだね……」 口を尖らせて手塚の首に腕を絡めるリョーマに、不二もにっこりと笑いながら答えた。 その微笑みに手塚の背中がひやりと冷たくなる。山よりも明らかに気温は高くなっているはずなのに…… 「部長、寒いの?」 「僕が温めてあげようか?」 「ダメ!オレが先!」 そしてその後手塚が温められたかどうかは……後のベッドの皺の数を見れば明らかであった。 |
fin. |
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written by あいりん |