練習試合が終わった後で…


 白熱の不二VS越前の練習試合が雨の為に中止になった時、どれほど手塚はほっとしたことだろう。何しろ対戦しているのはあのふたりなので、彼は試合をしている間、ずっと生きた心地がしなかった。唯一忘れられたのは桃城相手に試合をしていた時だったのだが、相手の力不足かすぐに終わってしまい、すぐに地獄は戻ってきた。だから雨がふってきた時は本当に嬉しかった。
 何しろどちらが勝っても、手塚にとっては怖いことにはかわりない。たぶん勝った方と今夜はとことん付き合わなくてはならず、明日は負けた方を慰めまくることになるだろう。
『どうして中学生らしい、健全な付き合いができないのだ、あいつらは』
 そんなことを思って手塚は溜息をつく。彼だってふたりのことが嫌いではない。テニスプレーヤーとしてはライバルだと認められるし、不二は同級生として、越前は後輩として好きではある。
 だけど今のふたりとの関係は、人には言えない三角関係なのだ。
 男同士で!
 しかもたまには3人で!!
 本当にこんなことでいいのだろうか?
 いや、いい筈がない。とは思っても押しの強いふたりにタッグを組まれている以上、手塚に対抗する術はない。しかもふたりのことを彼も好きだからよけいに悪い。
 なので手塚は部室に引き上げながら、溜息をついていた。眉間にはトレードマークにさえなっている皺が深く刻まれている。
「手塚!」
「部長!」
 しかし部室の近くまで来た所で、悪魔の様な声に同時に呼び止められた。瞬間、腰が引けたのはいうまでもない。
「ねぇさっきの試合、ボクの方が優勢だったよね?」
「そんなことない。試合はこれからだったんだから」
「…不二、越前…」
 思わずそのパワーに襲われながら、手塚は後退れした。誰か助けてくれと視線を泳がすと、そこにいた桃城が慌てて横を向いた。どうやら巻き込まれることを恐れたらしい。
『桃城…』
 助けをもとめたかったが、彼では相手にならないだろう。何しろ越前の下僕というか、アッシーとなり果てている彼なのだから。
「だからさ、今夜はボクと付き合ってくれるよね?もちろんふたりっきりで!」
「そんなにズルイ!」
 そんな手塚の心情などまったく無視して、ふたりはどんどん会話を進めていく。
「あのまま続けてたら、オレが勝ったかもしれないのに!」
「でも、負けたかもしれないよ」
 手塚はにっこりと微笑みながら交わされるそれに耐えられず、こっそりとその場から逃げ出そうとした。
「どこに行くの、手塚?」
「そうだよ、どこ行くの部長〜」
 けれどそう呼び止められた上に、しっかりとふたりに腕を掴まれては逃げられない。
「…着替えないと、風邪を引くと思うんだが…」
「風邪!手塚が風邪ひいたら大変だ!」
「そうだよ、部長!早く部室に入って着替えようよ」
「それはそうだが…腕を放してくれないか?」
「嫌だよ」
「やだ!」
 同時に言われて手塚は硬直した。今からこれでは今夜のことが思いやられる。
『なんでこのふたりを対戦なんかさせたんですが、竜崎先生…』
 手塚は初めて尊敬するテニス部顧問、竜崎スミレをちょっとだけ恨む。
「それじゃしかたがないな…三人で一緒に行こうか?」
「…なんか釈然としないけど、それしかないか〜」
 更にそんなことを言い合ったふたりは、手塚の両方の腕にぶら下がって歩き出した。というか嫌がる手塚を引きずるように歩き出す。
 もちろんその頃テニス部の部室ではレギュラー+乾以外の部員が慌てて着替えていたことはいうまでもない。
 そしてその夜の手塚国光の運命やいかに!!


fin.

written by もーりん
2002.5.25ちょっと改稿

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