越前リョーマ13歳、中学1年生。
そんな年齢に似合わない格好……白いシャツはともかくとして、黒い上下のスーツに黒いネクタイをしめ、彼は黙って座布団に正座していた。
母親が死んで天涯孤独の身になってしまったと思っていたところへ、ちょっとばかり財産があったせいか、遠い親戚だと名乗る連中がぞろぞろと現れ、誰が自分を引き取るか――正確には誰が財産を手に入れるか――で、現在もめている真っ最中なのだ。
まだ初七日も済んでいないと言うのに、誰一人リョーマの母親の死を悼む者はいない。
「だから私達が引き取りますよ、子供も居ないし」
「あら、あなたのとこ借金で首がまわらないって聞きましたよ?」
「まさか越前の家の財産を狙ってるんじゃないかね?」
「そうよ、越前とはうちが一番血縁が近いのでうちが!」
「いや、私が――」
「何言ってる、財産目当てが!」
「そっちこそ!」
こんな連中の世話になるのは真っ平御免だと思いながら、リョーマは冷めた目で醜い争いを繰り広げている大人達を見ていた。
そんな時、キンコン、と玄関のチャイムが聴こえた。
また強欲な親戚が現れたのだろうか、といい加減うんざりしながらも、仕方なくリョーマは玄関へと向かう。そして、ガラガラッと開き戸を開けた途端、リョーマは現れたその男にいきなり抱きつかれてしまった。
「リョーマくんっ、大丈夫!? パパがリョーマくんを守りに来たよ!」
突然の抱擁に驚いて、更にそのセリフにリョーマはもっと驚いた。
もちろん驚いたのはリョーマだけではない。言い争うのに忙しかった大人達も、突然玄関先から聞こえたその言葉に慌てて皆集まってきた。
「だっ、誰だ君は……この子の父親は、この子が生まれる前に亡くなっているんだぞ」
親戚の一人が血相を変えて言うと、若い男はけろりと答える。
「ああ…新しい父ってことです。あ、僕は不二周助と言います」
そう言ってリョーマを抱いたまま、にっこりと笑った。その微笑みに親戚達の主に女性陣が立場も忘れてうっかり見惚れている。
「新しい…?」
「あんた! 財産目当てかい? 私のところが一番血が近いんだよ!?」
リョーマが訊ね返そうとするより先に、我に返った親戚の一人が不二と名乗る男に向かって叫んだ。
「財産はリョーマくんの物です、僕はいりません。それに親族なら僕が一番近いかと思いますが……」
そう言いながら一枚の紙を取り出し、広げて見せる。
「リョーマくんとは全然血は繋がっていませんが、一親等です。正確に言うと、僕は倫子さんの夫です」
燦然と輝く戸籍謄本を手に、不二は再びにっこりと微笑ってみせたのだった。
「はい、どうぞ」
「……どうも」
リョーマは不二が煎れてきたお茶を、一応礼を言ってからずずっと啜った。来たばかりの人間にお茶を煎れさせるのはどうかとも思ったが、もともと自分でお茶を煎れる習慣がなかったリョーマは、いそいそとキッチンに向かう不二をあえて止めようとはしなかったのである。
結構大きな家だねぇキッチンも広かったし、なんてキョロキョロ家の中を見回している不二を、リョーマは未だ多少混乱した頭のまま湯飲み越しに見つめていた。
「親戚の人達、皆納得してくれてよかったね」
「………」
納得…したと言っていいのだろうか。どちらかと言うと唖然呆然としている間に、目の前のこの男に追い払われたようにリョーマには見えたのだが。
というか、リョーマ自身がまだ納得していないのだ。
「あの……不二…さん?」
「あ、周助でいいよ。もちろんパパでもいいけど♪」
「………」
「リョーマくん?」
「………あんた、本当に母さんと結婚してたの? ていうかあんたいくつ?」
開き直ったリョーマに”あんた”呼ばわりされた不二は、しかしまったく怒る様子もなく、リョーマの質問に答える。
「18歳だよ。なったばかりだけどね」
「18歳!?」
オレと5つ違い!?確かに若く見えるけど、物腰からしてもうちょっといってると思ったのに……ていうか母さんより全然年下じゃないか!一体何考えてるんだよ母さん!ていうかコイツも!!
と、リョーマが頭の中で天国の母親と交信しようとしているのを、一見黙り込んでしまったように見えた不二が何を勘違いしたのか慌てて説明する。
「あ、でも大学を15で出てるから、仕事もちゃんとしてるんだよ」
ちゃんとリョーマくんを養っていけるから安心して!と胸をたたく不二を、別にそんな心配をしたわけじゃない…とリョーマは呆れた目で見る。そして更に怪訝そうに訊ねた。
「15で大学卒業って何? 日本の大学にスキップ制度なんかあったっけ?」
「ああ、アメリカの大学だよ。そういえば、リョーマくんは小さい頃アメリカに住んでいたんだよね。アメリカのどこに住んでたの?」
「どこって…えっと……って、そうじゃなくて!」
頬杖をつきながらにこにこと訊ねられて、うっかりそのまま答えそうになったリョーマだが、その寸前で今は世間話をしてる場合ではない事を思い出し、椅子から立ち上がって叫んだ。
「―――約束していたんだよ」
不二は座ったまま、立ち上がったリョーマを見上げながら真っ直ぐに言う。
「僕が18歳になったら籍を入れようって。やっと18になったのに…」
そうしたらその日に死んでるなんて、と哀しそうに俯く不二を見て、リョーマは頭がくらくらした。
「…ホントに母さんの恋人だったんだ…? 年が全然離れてるのに」
「年齢なんか関係ないよ、僕達は愛し合っていたんだから」
「あ、愛って…」
聞き慣れない言葉にリョーマは顔を赤くする反面、そんな事をさらりと臆面もなく言ってしまう不二に呆れもする。
「と、とにかく、母さんが死んでるから結婚は無効になるんじゃないの?」
「え? 何で? 無効なわけないよ」
「だってこんな紙切れで……あんただって母さんが死んでたら意味ないだろ!」
「!! 意味がないことなんかない! 倫子さんを死んでも愛してる!!」
バン!と机を叩いて今度は不二が立ち上がった。しかしすぐにそのまま泣き崩れてしまう。
「倫子さん……っ」
「………」
そんな不二の勢いに流されてしまったわけでは決してない。
ただ、このいきなりやって来た『父』だと名乗る人間が、初めて母親のために涙を流したので……、だからちょっとだけ、ちょっとだけ様子を見ることにしよう、とリョーマは思ったのだった。
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別名パクリネタ劇場でした(笑)
〜 白泉社花とゆめコミックス『パパゴト』喜多尚江著 〜
とってもかわいいお話です!ラブ!(絵もかわいい!)
設定や台詞とかほとんどそのまま使ってます。(ので小説とはいえないんですが^^;)
とても親子に見えない親子が仲良くおかしく(?)ラブラブに暮らす…
という設定(というかパパに見えない可愛いパパ)にハマってしまって、
是非とも不二リョでこれをやって欲しい…!むしろやらせろ!
というわけで不二リョでパパゴトってみました♪
不二×リョまでもってけたらよいのですがもしかしたらギリギリ不二&リョかも…
でもギリギリ親子ってかえってやらしくないですか?え?私の頭がやらしいだけ?(笑)
天然白不二パパを目指してますが、早くも挫折しそうです。
油断してるとすぐに黒くなります。恐るべし不二周助…!
そんなわけで二人が仲良くなるまで続きます。
暇な人はお付き合いください(*^∇^*)
2003.9.26 あいりん
