そう、あれは2日前のこと・・・。
放課後、リョーマは職員室に呼び出された。
その理由は、リョーマが国語の中間テストで、壊滅的な点数をとってしまったからだった。
・・・・0点。
今時、そんな点数をとる奴が本当にいるのか!?と疑いたくなるような、ある意味驚異的な数字である。
国語教師はリョーマに「朝補習を受けに来るように」と告げた。
しかし、朝にはテニス部の朝練がある。
なので「それをさぼるわけには行かない」と言ったら、「それが始まる前にやろうか?」と返された!
近年まれにみる熱血教師ぶりであるが、これはリョーマにはたまったものではない。
朝練は朝の6時50分から始まる。その前、30分くらい、毎朝一ヶ月間やろうと言われたのだ。
現在6時20分に起きているが・・・そうすると、5時50分には起きなくてはいけない。
なによりも、リョーマは朝が苦手なのだ。
大好きな部活も遅刻の常習犯だというのに、さらに30分早く起きるなんて絶対にできるはずがない。
泣きそうな気分になりながら、抗議していたリョーマを助けたのは、不二周助だった。
「じゃあ、部活が終わってからボクが越前君に勉強教えましょうか?」
どこからわいてきたのか、不二がいつものにこにこ笑顔で会話に入り込む。
そして、いくら「リョーマが自分で勉強するから」と言っても折れなかった教師が、あっさりとそれを認めた。
「不二に任せておけば安心だろう。いい先輩を持ったな」
そして、今リョーマは、そのイイ先輩と一緒にお勉強をしている。
場所はなぜか不二の自室。
テーブルの上には越前の好物のファンタとえびせんべいがおいてある。
「で?国語・・・なにが分からないの?」
「・・・全部」
笑顔で尋ねる不二に、リョーマは無愛想に答える。
「全部って言われても、困るんだけど・・。そうだ、国語の問題と答案用紙持ってきたよね?それ、見せてくれる?」
首を傾げて考えてから、不二がにっこりとそう言った。
「これ」
ムッとしながら、リョーマはそれを差し出した。
その答案のあまりのすばらしさに、不二は思わず笑い出す。
「ぷっ!ちょっと、なにこれ!?」
まず、その点数もさることながら、解答が愉快すぎる。
『Q:このときの主人公の気持ちを20字以内で述べよ。
・・・A:別になにも考えていなかった』
『Q:どうして主人公はそういう行動をとったのか
・・・A:そうしたかったから』
不二は、そのままたっぷり数分間、床の上で笑い転げていたのだった。
しばらくして、不二は涙を拭いながら、何とか復活した。
リョーマは不二を「キッ」と睨み付ける。
「ごめんごめん。あんまりキミらしい解答なんで、笑っちゃった。悪気はないよ?」
「どうだか・・・」
リョーマはむすっとしたまま、えびせんべいを食べ続けている。
「まあ、漢字は自分で10回ずつくらい書いとけば覚えられるよね?」
「たぶん・・・」
返事を返しながらも、目は不二を睨み付けている。
笑われたことによっぽど腹を立てているらしい。
「だって、この答案すごいよ?どうして主人公はそういう行動をとったのか。に対する答えが、そうしたかったからって・・・」
「したかったからしたんでしょ?そんなのにいちいち理由があんの?」
不二はそれに満面の笑みを向ける。
リョーマはまたバカにされた、と思って、さらに目つきを鋭くする。
「ええとね、国語のテストって言うのはね、出題者がなにを答えさせたいかを考える、出題者との心理ゲームみたいなものなんだよ?」
不二の不可解な説明に、リョーマは胡散臭そうな顔をした。
「このときに主人公がなにを思って行動したかなんてどうでもいいんだ。結局、この問題はね、問題を作った人が、この主人公がどうしてそう言う行動をとったと思ったのかを答える問題なんだ」
「・・・?」
不思議そうな顔をしているリョーマに、不二は困ったように首を傾げる。
「あれ?わかりにくかった?・・・だからねえ、このとき主人公がどう思ったかなんて、キミの言うとおり、どうでもいいことなの。ここで、いったいなにを答えさせたいのか、出題者の心理を読むんだよ」
「なに?国語のテストって、いちいちそんな変なこと考えながらやるもんなの?」
「うん。ボクはそうだけど?面白いじゃない、こういうのって。そう思わない?」
「別に・・・。なんか納得いかないっス」
「え?面白くない?でも、テニスやるときとかも、相手がどう思ってるかとか、次はこう来るだろうとか、考えたりするじゃない?それと同じようなものだと思うけどなあ」
「テニスやるとき、そりゃ少しは考えますけど、考えるより先に体が動いてるし」
リョーマの答えに、不二は大きく頷く。
「ああ。越前君ってそう言う感じのテニスだよね」
「どういう意味っスか?」
喧嘩を売る気ならば、受けて立つ!と言わんばかりの目で不二を睨み付ける。
それを不二はふんわりとした笑顔で軽く流してしまう。
「そう、例えば、ボクの言ったそう言う感じのテニスっていうのはどういう意味か?とかね。たぶん、ボクとキミの間で、認識が異なってると思うんだ。不思議だね?」
「は?」
リョーマは、不二の頭の中身を疑った。なんとか天才は紙一重とか言うけど、そのものズバリなのではないかと・・・。
「いやだなあ。ボクの事バカだと思ってる?」
不二がリョーマの心を読んだかのように、笑顔のままで尋ねる。
次に、リョーマの頭に浮かんだのは・・・。
「からかってるわけでもないからね?」
にっこり笑って先手をとられる。
まったく、不二周助は食えない奴である。
「あ、でも、ちょっとからかっちゃったかもね〜♪」
「なに!?」
にこやかに告げられて、リョーマは再び警戒態勢に入る。
「ええとね・・・。はい、これ」
そういって不二がリョーマに差し出したのは、国語の教科書と同じ柄の、ちょっとだけ厚い本だった。
「なんスか?」
受け取りながら、リョーマが不思議そうに本を見ている。
「ん?教科書ガイド。中学の授業はねえ、指導要綱があって、それに沿って先生が教えてるの。だから、国語ってねえ、あらかじめ答えが決まってるんだよ。この指示語がなにを指すかとか、このときの主人公の心理とか、全部傍注が振ってあるから、これ覚えれば、バカでも点とれるよ♪」
ぺらぺらとページを繰りながら、リョーマは不機嫌な顔になる。
「なんか、おかしい事ない?」
「うん。おかしいね。でもそう言うもんなんだから、それでいいんじゃないの?」
「そうかもしれないけど、納得いかない。先輩も、こんなの見て勉強とかしてんの?」
「ボク?まさかあ。そんなの見なくってもテストなんて楽勝だよ」
にこやかに笑いかけ、「キミの答案だけ見るのって卑怯だよねえ」とか言いながら、引き出しから、返してもらったばかりの答案用紙を数枚、リョーマに手渡した。
国語・・・100点。
理科・・・100点。
英語・・・100点。
「ムカツク!」
思わず、リョーマは腹が立ってその答案用紙を真ん中から破り捨ててしまった。
しかし、相変わらず不二はにこにこ笑っている。
不二は笑顔のまま隣にやってくると、じーっとリョーマの顔を見つめる。
「じゃあ、問題。今、ボクがなにを考えてるか当ててみて?」
「怒ってるんじゃないの?」
破いた答案用紙に目をやりながらリョーマが答える。
「違うよ。はずれ」
不二はクスっと悪戯っぱく笑って告げると、ぼんやりしているリョーマの唇に、自分のそれを重ねた。
リョーマは、慌てて不二を押し戻す。
「なに考えてんの!?」
「ん?キスしたいなあと思ったの。じゃあ、今はなにを考えているか分かる?」
「ふざけんな!分かるわけないじゃんそんなの!」
慌ててそばから離れようとするリョーマを不二はあっさり捕まえると、そのままベッドの上に押し倒した。
「またまたハズレだよ」
にっこり笑って告げながら、不二はリョーマの服を脱がせ始める。
必死でリョーマも抵抗したが、華奢に見える不二の体をなぜか押し戻すことができない。
不二はその間に、シャツを脱がせて、手際よくそれで両手を拘束する。
「正解できなかったから罰ゲームね♪」
「ふざけるな!」
暴れるリョーマを不思議そうに見下ろして、不二はにっこりと笑った。
「ボクは大まじめだよ?」
(なおさら悪い!)
と叫ぼうとしたリョーマの口を、不二が塞いだ。
リョーマはベッドの上に転がったまま不二を睨み付けていた。
裸になった体のあちこちに赤い痕がつけられている。
「いきなりなにすんだよ!」
睨み付けてはいるものの、涙目になっているので、少しも迫力はない。
まあ、本気でにらんだところで、それが通じる相手でもないのだけれど。
「え?なにって・・勉強教えあげてるし、教科書ガイドもあげたからから、そのお礼と・・・。問題答えられなかった罰だけど?」
何事もなかったような顔で服に袖を通しながら、不二が軽く答える。
「冗談!教科書ガイドや家庭教師料より、こっちのがずっと高いじゃん!」
怒って、ベッドから立ち上がろうとし・・・リョーマは下半身に走った激痛に顔を歪める。
「あ、無理しないほうがいいよ?」
「・・・って、誰の所為でそうなったと思ってんだよ!」
「ん?ボクの所為?」
それ以外になにがあると言わんばかりの目で、不二をきつく睨み付ける。
「じゃあ、かわりにボクの体をあげようか?おつりはいいよ?」
「それって、さっきのと、どっか違うとこでもあんの!?」
「ん?キミが上に乗っていいよ♪」
別にリョーマは不二にそんなことをしても、うれしくも何ともないのだが、仕返しができるのならば、しない手はない。
「じゃあ、それでいいっスよ」
答えて、腕をつかんだリョーマに、不二はにっこりと特上の笑顔を向ける。
「そのかわり、上って言っても騎乗位だけどね」
その言葉に、リョーマの動きが止まる。
「キジョーイ?なにそれ?」
「分からないの?国語の勉強しっかりしないと駄目だね。じゃあ、分かるまで、おあずけね」
リョーマは思い切り顔をしかめる。
そんなリョーマに、不二は笑顔で問題を出す。
「じゃあ、なんでボクがこんな事したのか分かる?」
「変態だからじゃないの?」
リョーマの答えに、「またハズレ」とにこやかに告げる。
そして、耳元に口を寄せて小さな声で囁いた。
「愛してるからに決まってるじゃない」
その答えに、リョーマは手近にあった枕を不二の顔面めがけてたたきつけた。
そして、その後・・・
部室でリョーマは部長に、この前、不二が言っていた言葉を聞いてみた。
「ねえ、部長。キジョーイって何か知ってる?」
尋ねられ、手塚はそのまましばらく硬直する。
そして、リョーマの言った言葉を聞き間違えたのかと、もう一度聞き返してみた。
「だから、キジョーイ!」
それを横で聞いていた菊丸が、ひょこひょことリョーマのそばにやってくる。
「ねえ、おチビ。にゃんでそんな事知りたいの?」
「不二先輩が・・・」
リョーマの言葉に、部室にいた全員が驚きと、納得がごちゃ混ぜになった顔でリョーマの方をまじまじと見つめた。
「ふうん、えっとねえ、騎乗位っていうのはねえ・・・」
菊丸が耳元でリョーマに説明する。
それを聞いて、リョーマの顔はみるみる赤くなっていった。
そこへ、この騒ぎの元凶が顔を出す。
「あれ〜、みんな怖い顔してどうしたの?」
リョーマは不二を見つけると、彼めがけて学生鞄を投げつけた。
しかし、不二は素早くそれを交わす。
鞄は壁に当たって、床に落ちた。
「この変態!」
そして、そのままリョーマは部室から走り去っていった。
「不二、越前に変なことを吹き込むな!校庭20周だ!」
厳しい顔で告げる手塚に、不二は楽しそうににっこりと笑う。
「ね、もしかして、騎乗位?手塚知ってたの?」
尋ねられて、手塚が顔を真っ赤にした。
「校庭50周だ!」
そして、その日を境に、手塚部長はむっつりスケベであるという噂が流れたとか流れないとか・・・。
fin.
----------
なぎさんからテニプリページオープン祝いに戴きました♪
不二リョDEお勉強会です〜v
すっ飛ばされてますけど違うお勉強もしてますね!(嬉)
不二先輩、手ぇ早いです!(天才不二周助のテは手が早いのテ!)
ええ、そんなこたもちろんわかってましたけどね―っvvv(笑)
なぎさん、どうもありがとです〜♪
次はキジョーイですねっv(ええ!?)
2001.2.6
