好きだからキス



 時計が2時を回る頃になると、リョーマは落ち着いていられなかった。何しろもうすぐここに部長が来ることになっている。部長とはもちろんテニス部の手塚部長のことで、ただいまテニスの次に彼のあまたを占めている人物だ。
 リョーマとふたつしか年が違わない筈なのに、部長はすごく大人に見える。いつも落ち着いているし、何しろテニスも上手い。それにとても優しくて、いろいろと面倒も見てくれる。更にこの間なんか…
 数日前の部室でのことが蘇ってきて、リョーマは頬が熱くなるのが判った。初めてそういう意味でキスをした。勿論、唇に。してとお願いしたのは自分からだけど、部長は優しく笑って眼鏡を取るとちゅっ、としてくれた。
 そして今日は彼が初めてリョーマの家にやってくる。遊びに来て、とお願いしたら快く承諾してくれた。あまりにもその返事が早かったので、もしかしたら深くは考えてないのかもしれない。
 キスをした仲なのに…
『なんとなく鈍感そうではあるけどね』
 でも初めてキスした後に好きだと言ったら、俺もと答えてくれた。友達が好きの好きとは違うんだからと言ったら、少しの間びっくりした顔をしたけど次の瞬間には楽しそうに笑い出した。
『友達にキスをする趣味はない』
 そしてそう言った部長は、今度はぎゅっと抱き締めてくれた。
 あれからあの腕の力強さを思い出して、何度うっとりしたことだろう。次に抱き締められた時には、もっと親密なつきあいをするんだと思いながら。自分でもこんなに部長のことが好きになるなんて思わなかった。最初は何とも思ってなかったのに。やっぱり練習試合とはいえ負けたのは大きかったかもしれない。どうせ好きになるのなら、自分よりも強い人って決めていたから。
 不意にピンボーンとチャイムが鳴った。文字通り飛び上がったリョーマは玄関にダッシュしてドアをあける。すると思った通りそこに部長が立っていた。テニスウェアでも、制服でもない私服の部長が。
「どうかしたのか?」
「…なんでもない。それよりも、いらっしゃい」
「お邪魔します」
 さすがに見とれていたとは言えなくてそう言って入る様に促すと、部長は礼儀正しく言って玄関の中に入ってきた。
「誰もいないから、ゆっくりしてってね」
 実は口実を作って追い出したんだ。だって部長とゆっくりしたかったから。できればもっと親密になりたいし。
 リョーマは部長を部屋に通すと、自分はキッチンに飲み物を取りに行った。でかける前に用意してもらっていたお茶菓子を持って戻ると、そこで部長は窓から外を見ている。たぶんテニスコートを見ているのだろう。彼は本当にテニスが好きだ。でも今日はテニスよりも自分を見て欲しいとリョーマは思う。
「いいコートだな」
 けれど部長の口から出た言葉はそれで、リョーマの頬は自然と膨れる。
「どうかしたのか?」
「別に…」
 あんたの頭の中はテニスしかないのか、と言ってやりたかったけど、それは呑み込んだ。それについては自分もそうだから、あまり人のことはいえない。
「そうだ、これお土産なんだが…」
 ふと思い出した様に部長が白い箱を差し出してきた。それを受け取り開けると中に入っていたのはシュークリーム。
「これ…」
「前に好きだといっていたろう?」
 唐突に言われて更にびっくりした。まさかこの人がそんなことを覚えているとはまったく思わなかったから。
「…覚えていてくれたんだ?」
「あぁ」
 小さく頷く部長は照れた様に顔を背ける。その似合わない仕草に胸が熱くなった。
「部長、大好き!」
 そう言いながら飛びつくと、しっかりと受け止めてくれる。
 あの大きな力強い腕が。
 だからリョーマは今度は自分が彼に口付けた。
 この間よりもちょっと大人のキスで。




fin.






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もーりんさんからテニプリページオープン祝いに戴きました♪
初々しい塚リョです〜v特にリョーマさんがっvv
「部長、大好き!」ですからね〜〜イヤンvvv(笑)
私がシュークリームが食べたいと言ったら、
部長が買ってきてくれました♪キャー!!
ケーキ屋さんに入る部長!!!!!(興奮)

もーりんさん、ありがとうございました〜(*^^*)

2001.2.8