肉体の慰めは、マルキオンがその新たなる法の中で示した秘密である。この秘密により、人々はみずからを悩ませる間題から解き放たれるために、世界の資源を扱うことが可能になった。たとえ欠陥や愚考がこの世界に満ちていたとしても、マルキオンの法に従う者はその肉体が滅びた後に、栄光の慰めという魂の楽園において、完全なる保護と永遠とを得ることができるのである。肉体の慰めとは、この世には唯一度の生以上の何かが存在することを教えている。それは、正義と共に生涯を歩む者はこの世界から完全に消え去ることはないという教えなのである。
マルキオン教略史(Nick Brooke, Tales of the Reaching Moon #13, The World Great Tornament )より抜粋。
マルキオン教徒
ジェナーテラの西方世界は見えざる神とその預言者マルキオンの宗教によって支配されている。異なる教会と教派に従うすべての者が、自分たちをマルキオン教徒と呼んでいる。もっとも傑出したマルキオン教の教派はセシュネラとラリオスのロカール派、そしてロスカルムと城塞海岸のフレストル派である。しかしながら非常に多くの教派と異端が存在し、それらは変化に満ちた歴史の一部であり、異なる発展を遂げてきた。ラリオスの歴史時代初期には広く異なった宗教の流行が満ちている。第1期、その地はナイサロールの黄金帝国によって形成されたが、帝国は英雄アーカットによって破壊された。アーカットの影響下で、暗黒帝国がラリオスを支配した。第2期には神智者が西方の大部分を掌握した。第3期にはこの地を変えようとする試みが、セシュネラとロカール派教会の十字軍によって幾度となくなされたのである。ロカール派十字軍の最終目的は、この地域の異端的集団を一掃する事である。
今日のラリオスの教派の中で注目すべきはボリスト派であり、この地の教派の中でももっとも嫌悪され、もっとも神秘的である。彼らの敵は、ボリスト派の者たちが特定の儀式に混沌を必要とする事から、彼らのことを“イカ”と呼んでいる。彼らは数の上では少ないものの、大半のマルキオン教徒はそれを深刻な異端と考えており、ボリスト派は自分のプレイヤーを困らせようと奇妙な者たちを探しているGMの大きな興味を引くだろう。統制ある中央権力の欠如と、組織構造の完成度の低さから、ボリスト派はプレイヤーの便利な味方、もしくは敵になるだろう。
歴史
ボリスト派聖教会はグバージ戦争の最中、聖なる修道僧クァンタン・ヴァン・ディーンによって創設された。彼はグバージとしても知られている悪魔の手先が、ラリオスの人々を誘惑して悪魔的な異端に従わせようとしていることを知った。この邪悪と戦うために、彼はボリスト聖騎士団を創設した。彼に従う者の中には、西方から来たアーカットという名の、この時代の偉大な英雄の一人となる騎士も含まれていた。邪悪なる僕の秘密をボリストに示したのもアーカットであった。その秘密は“啓発”と呼ばれていた。啓発は悪霊の隠された生態を理解することを可能にし、戦士がそれらと容易に戦うことができるようになる。しかし啓発された者はまた、暗黒面の犠牲となる危険性を背負うこととなる。この危険の認識に際し、ヴァン・ディーン・ボリストは《清めの儀式》を編み出した。
この儀式は、悪魔の誘惑と罪の穢れからボリスト教会のすべての構成員を守る。余所の神や誤った預言者にかしずくボリスト派の者は清めを受けることができず、従って慰めの救済への道を閉ざされ、呪いを受けて永劫の厄災へと至る。ヴァン・ディーン・ボリストはまた混沌の生物の生命力を《切開》する儀式も教えていた。これは混沌の生物がその内に持つごくわずかな“よきもの”を純粋で扱うことのできるエネルギーへと変えるために、ボリスト派の者が混沌の生物を破壊する事を認めたのである。ボリスト派の儀式は混沌の敵なる存在に、グバージを破壊するために必要な力を与えていた。
この時以来混沌と戦うボリスト派の戦士たちはグバージの教えのラリオス全土への拡大に抵抗を続けてきた。西方には未だ混沌が多く存在しており、またボリスト派の者は、《清めの儀式》を受け入れない者が混沌の横行の潜在的土壌となり続けるであろうと信じている。
アーカットがボリスト派教会を離れ異教の蛮族の教えに従ったとき、彼は教会を去る前に、グバージを破壊するために蛮族を結集させるつもりだと、クァンタン・ヴァン・ディーン・ボリストに約束した。しかしアーカットは、混沌との戦いの中で究極的には裏切り者、悪霊となり果てた。戦いが終わったとき、アーカットはラリオスへと戻り悪魔的な暗黒帝国を建国した。彼が本当はいったい何者であるか、それを理解し得た者はほとんど存在しなかった。彼は“悪魔”グバージの化身だったのである。
ボリスト派聖教会はラリオスの極東部へと退くことを余儀なくされたが、騎士団は混沌との戦いを続けていた。混沌の僕はボリスト派を破壊し尽くそうと躍起になっていた。しかしボリスト派の者たちは自分たちの秘密を守り、誘惑されたり、その救済の道からはずれることをかたくなに拒否した。悪魔が依然存在していることに気付くと、彼らはその僕を常に警戒していた。今日に至り、ボリスト派は悪魔の帰還を確信しており、悪魔が自分に敵対したもの、とりわけボリスト派の者すべてに対して復讐を果たそうとするその日に備えているのである。
神智者がラリオスへやって来たとき、悪魔的な暗黒帝国との戦いに際してボリスト派は彼らの助力を得た。魔術師たちは異教のオーランス信徒を打ち倒す手助けをしてくれたが、彼らの知識への渇望が最終的には彼らを滅ぼしてしまった。そう時をおかずして神智者は悪魔自身の下僕となってしまったのである。ボリスト派の者たちは神智者の裏切りを察知し、ボリスト派秘密名簿を作り出した。名簿に名のある者だけがボリスト派のもっとも内なる秘密に参加することが許されるのである。秘密名簿はすぐに神智者たちを恐怖に陥れた。臆病にも神智者たちは明らかな戦いを嫌い、ボリスト派の同盟者たちによる直接行動を思いとどまらせた。その結果、ボリスト派聖教会は敵を秘密裏に抹殺するために、彼らの戦士たちを派遣する必要があった。こうしてボリスト聖暗殺騎士団は創設されたのである。
神学
この世に神は唯一見えざる神しか存在ぜず、マルキオン、フレストルはその預言者である。見えざる神を助けうる神など存在しない。悪魔はこの世に生きるものすべてのまわりに存在する。ボリスト派の司祭の手による清めの儀式にその身を委ねる者のみが混沌から自由でいられる。彼らの罪は許され、慰めは果たされるであろう。混沌と悪魔の破壊こそ我々の教会の聖なる目的である。その目的のために我々はいくつもの手段を講じている。
1.ボリスト聖騎士団我々はマルキオンの法に従っている。なぜなら我々は愛する者を傷つけはせず、ただ我々の敵を破壊するだけである。我々は《切開》が混沌の生物とボリスト聖教会の敵、すなわち悪魔の手先を破壊するためだけに存在することを知っている。
彼らは混沌に対抗するための傑出した戦士達である。彼らは混沌による恐怖や混乱に苛まれることがない。マルキオン教徒の中のあらゆる不信心者から聖なる教会を守ることこそ彼らの任務である。
2.ボリスト聖暗殺騎士団
一般の者たちの間でその教えを広める隠されし悪魔と隠密裏に戦うことこそ、彼らの任務である。彼らは聖教会の秘密の敵がどこに隠れていようとも、それらを破壊する。
3.ボリスト聖司祭
ボリストの司祭は一般人の罪と悪魔的な影響を浄化する。彼らは悪魔とその落し仔の生命力を奪い取る。その上で悪魔の罪を悪魔自身に送り返すことで、人々を罪から開放するのである。
我々は四つのカースト、農奴階級、騎士階級、司祭階級、領主階級の存在を信じている。あらゆる魂は自分自身のカーストに生まれる。自身のカーストを捨てようとする試みはマルキオンの法を犯すこととなる。聖なる者だけが自信のカーストを変えることができる。見えざる神の敵は悪魔と呼ばれ、“暴君”、“欺くもの”グバージと呼ばれている。それは堕落した混沌の神々からなる悪魔の軍勢を導いた。混沌は邪悪であり、常に見えざる神の信仰を破壊しようと努めている。“欺くもの”アーカットはグバージのデーモンの一柱であり、遂にはその主人悪魔を伴って帰還するであろう。その時我々は必ずアーカットを破壊する。いつの時代でも、あまりに弱く混沌にあらがう事ができずに、悪魔の誘惑への犠牲へと落ちる者たちが常に存在している。彼らはボリスト派の聖なる炎によって、その罪を清められる。
女性というものは男性に比べて、劣った意志と弱い肉体しか持たない。女性の面倒を見る事、女性に与える事は男性にその責任がある。女性たちの魂は著しく傷つけられているので、騎士や司祭としての勤めを果たす事ができない。
位階
ボーリンに座するボリスト派聖教会の大司が教会の指導者である。彼は教会の大騎士、暗殺長たちを任命する権限、そして彼らが聖教会の法を犯した際に彼らを罷免する権限を有している。教会の司祭たちは彼が平和をもたらし、信仰心篤き魂を救済する事に助力する。
重要な聖人
預言者マルキオン
人々に見えざる神の言葉をもたらした者こそマルキオンである。彼は人々に大暗黒を生き抜く術を示した。彼は法と、人々がどのように四つの異なるカーストで生きなくてはならないかを人々に教えた。
預言者フレストル
この預言者はブリソス人のマルキオンの法に対する硬直的解釈がいかなる過ちを犯しているかをあらゆる者に示した。彼はその自己犠牲の振る舞いによって、栄光の慰めを通じての永遠の救済がどのように達成されるかをあらゆる者に示した。彼はまた名誉と騎士道の概念を教える事から崇拝されている。
聖クァンタン・ヴァン・ディーン・ボリスト
ボリスト派教会の聖なる創始者であり、その教えと定めたる所は信仰の原理となっている。彼は信仰篤き者を罪と混沌から開放するために、《清めの儀式》をもたらした。彼は堕落した混沌の生物を破壊する術として人々にそれらの生物を《切開》することを教えた。彼こそあらゆるボリスト派教徒の栄光に満ちた規範であり、あらゆる美徳の体現者である。
ボーリンの聖ラディエール
彼はボリスト派聖教会の大騎士であり、混沌はいかなる方法を持ってしてもボリスト聖騎士の活力の前に抵抗することができない事を証明した。彼はグバージ戦争の最中数多の混沌の存在を殺し、ボーリン王国を打ち建てた。
他の教派に対する態度
ロカール派
この教会はかつてあらゆる者の自由と平和に立ち戻ったことがあった。彼らはより低次の神の存在と悪魔の率いる混沌の軍勢の存在を認めていない。それ故犠牲者を自分たちの罪へと陥れてしまっている。彼らはその道具、悪魔的な異端審問によってボリスト派を破壊しようとしている。
フレストル派
フレストル派の者たちはカーストの廃絶を説いているため、マルキオンの法を犯している。彼らは悪魔グバージ/アーカットの存在に疑念を抱いている。そのため彼らは混沌が彼らの間にもたらす穢れを見ることができなくなっている。もし速やかに自分たちの過ちをたださないのであれば、彼らは混沌に飲み込まれてしまうだろう。
ガルボスト派
この教会は我々と最も近い関係にあるものの、我々が邪悪であるという悪霊の偽りにだまされ、我々と接触する事を拒んでいる。しかし我々の教会とノミアの教会は常に平和的な協力関係にあり続けている。
アジロス単神教会
アジロス伯がこの“教会”の指導者である。彼は自分がアーカットの末裔の1人であると主張している。彼はそれゆえ悪霊の血を引くものであると公言しているのである!彼の“教会”は邪悪であり、破壊されなくてはならない。
オトコリオン単神教会
この教会は、下級の神の一柱であるオーランスが見えざる神それ自身であるという主張で異端的思想を進めている。これらの単神教徒はマルキオン教徒ではなく下級の神の信奉者であり、彼らは異端的な過ちを広めているのである。
ナスコリオン暗黒異端派教会
この教会は裏切り者アーカットを聖人として崇拝している。彼らはアーカットが帰還した後、彼らの教会を創始したと主張しており、アーカットの持つ悪魔的な本質を否定している。この教派は悪魔の落とし仔であり、抹殺せねばならない!
上記のボリスト派像は幾分理想化されたものである。これらはボリスト派教会がいかにあるべきかを下位の信者たちに示したものである。司祭や魔術師の多くは教会が確実に生き残るために多くの変化を受け入れ、同時にその素地が汚染されてきたことを知っている。それ故我々は、教会の歴史的な困難について知る司祭から与えられるであろうボリスト派教会に関する以下のコメントをここに提供しておく。ボリスト派教会はラリオス全土で最も古い存在の一つである。我々は常に我々の敵に耐えてきた。たとえそれが我々にボリスト派秘密名簿による秘密活動を余儀なくしても、である。このことは我々が過去数百年にわたり、さらに今日も直面している問題を生み出している。
ボリスト派教会は光の面と闇の面の2つの側面を持つ。これは聖ボリストによる教会の分散体制によってもたらされた。それぞれの大司が、中心的な権力に従うのではなく、別々の街で、自分が適切であると考える通りに信者を導いているのである。かつて、神智者がラリオスに現れる以前にはボリスト派の中心的権力が存在していた。しかし神智者の到来がその組織に終わりをもたらしたのである。それ以来、聖ボリストの信仰に関する2つの異なる解釈が現れるようになった。2つの教派の最終的な目的は同じであったが、闇の面の信奉者は自分たちの目的のために混沌を利用する様になった。最悪の例は混沌僧であり、彼らは混沌と変異を世界中に広めることに喜びを見出し、そのため新たなる狂信者を自分たちの仲間に加えることを推し進めた。
他者の浄化を重ねることによって蓄積された混沌から自分自身を清めるという目的のために、多くの司祭が混沌の生物を利用したのは事実である。新しく生み出された混沌の生物を、ただ破壊するためだけの供犠として信者に与える事は、時代を経るにつれ受け入れられるようになってきた。この儀式は会衆の信仰を強め、あらゆるボリスト派の者の内に隠された破壊的な力を明らかにするものである。
ボリスト派教会の位階はある意味で断裂しており、それぞれの助祭、従軍司祭、司祭が独立して活動している。しかしそれでも我々は支持者を得ている。あらゆる人間は自身の創造主に罪から自由な姿で対面する事を望んでいる。《清めの儀式》は罪なる生涯を送りながら、宮廷司祭の簡便な儀式によって汚れから解放されることが可能である。このことは多くの司祭が貴族に対して影響力を持つことを可能にしている。貴族たちはその時から我々のアーカット、そしてグバージに対する戦いに進んで参加するのである。私はその方法を受け入れ、なおかつ有益であると考えている。
信者から集まる罪のエネルギーはそれぞれの司祭に大きなよくない兆しに悩ませることになる。そうしたエネルギーを集めすぎた司祭が啓発の暗黒面の犠牲に倒れたり、最悪の場合司祭自身が混沌の生物に変異してしまう事が、ボーリンでは時折ある。グバージと戦う者は常に危険を冒しているのだろう。かつては良きボリスト派司祭であった、歪んでしまった者たちや歪んでしまったモノは今でもボーリン城の地下納骨堂で生きている。この忌まわし運命から、我々の敵なる者たちは我々の事を“イカ”とあだ名している。
マルキオン教の他の教派は我々のことを軽蔑している。その理由は我々が混沌と関わりを持っている事にある。彼らは我々が世界を混沌の脅威から世界を守っている者であるということを知らない。我々は近年多くの予言を耳にしているが、それらはアーカットが帰還しラリオスを破壊すると告げている。多くの信仰がグバージと手を組むことで勢力を拡大しようとしているが、我々はそれを阻止するだろう。
アーカットに死を!
ボリスト派魔道呪文
教派特殊呪文《清めの儀式》
接触、受動、持続
この呪文はボリスト派の間ではもっとも古く、もっとも重要な呪文の1つである。呪文は特殊な告解の儀式を通じて、司祭が自分と同じ種族の仲間1人のすべての罪を清める事を可能にする。この儀式では対象は能力値やPOWを失う結果となる。この儀式を成功裏に完成するためには、信者は進んで司祭に従わなくてはならない。信者が清められた時、罪の重荷は呪文を投射した司祭へと受け渡される。それ故この呪文は術者にとって、潜在的に非常に危険な呪文である。
呪文のプロセスは苦痛に満ちたものであり、(不幸にも標的が《切開》を受けた経験があるのであれば)標的となる信者からみれば、《切開》のように感じられる。しかしながら長年に渡り《浄化の儀式》を繰り返すと苦痛の衝撃は徐々に弱いものになる。信者は、罪の蓄積を防ぐために毎年少なくとも一度は儀式を受けねばならないため、ついには苦痛に対する耐性を得ることになる。幼い頃から信仰の中で育っていない部外者にとっては、このプロセスはより困難なものになる。混沌僧の犠牲者や、成長してからボリスト派教会に参加した者は(通常)深く罪に冒されている。彼らの受ける最初の清めは大きなものになりやすく、従って苦痛に満ちたものになる。
この呪文では、罪は罪塊という単位で計算される。ボリストは教会の一般的な農夫は1年の間に1つの罪塊を蓄積し、戦士は2から3、ブルーは10から20の罪塊を1年で蓄積する。一般的なマルキオン教徒は年に1つから3つ程度の罪塊を蓄積する。混沌の神性魔術を学んだり混沌のカルトに参加する事は、もちろんかなりの量の罪塊をみずからに科す事になる。
罪塊は通常の状況では何の視覚的効果も持たない。これは罪人の周囲に見られるオーラと比較する事ができるが、それを見ることができるのは《罪の目》の呪文の対象となっているボリスト派の司祭だけである。特殊な状況下では罪のオーラは活性化されることがあり、その場合罪のオーラは罪人に混沌の諸相をもたらす。そのためみずからの信徒から集めた巨大な罪の重荷を魂に抱えるボリスト派の司祭にとって、罪は大いなる脅威なのである。100人の普通の農民たちを清めた司祭は、5匹のブルーが抱えているよりも多くの量の罪塊を抱えることになる。そうした罪の蓄積は身の毛もよだつ混沌の怪物へと変異する危険性を司祭に科すことになる。この厄災を阻止するには転移の呪文(下記参照)を用いて、他の生物に蓄積された罪を移すしかない。緊急の場合で他に標的となる生物がいない場合には、魔道師がみずからの罪を取り除くために使い魔に転移の呪文を使用することで、使い魔を混沌の生物に変えてしまうことがある。
呪文に用いる〈強度〉3ポイントごとに司祭は標的の罪塊を1D6ポイント清めることができる。罪塊は呪文の持続時間中、一定のペースで標的の信者から取り除かれる。呪文を投射する司祭は、呪文の持続時間を長くするために《延長》を用いることもある。これは標的の感じる苦痛を弱め、司祭、信者双方の危険を減らすことにつながる。 儀式を通じて、清められている標的は罪塊1ポイントごとに1ポイントFP、1ポイントのMP、1ポイントのトータルHPを失う。もし40歳の人物が初めて《清めの儀式》を受け、1度の儀式でそのすべての罪を清めようとすれば、その結果として標的は儀式を行う司祭にエネルギーのすべてを吸い取られ、ほぼ確実に死に至る。死を避けるために儀式は何度かに分けて行われ、何日にもわたって繰り替行われる。最低10分を要し、混沌の罪深き存在を浄化する事で、司祭は犠牲者の破壊と救済を同時に確信する。それ故ボリスト派の観点から見た救済は、他人に残酷な死をもたらしているようにも見える。
浄化と転移の呪文は腐敗の異常な流れと蓄積を生み出してしまう。この異常な操作は混沌の汚れを、起こりうる副次的な効果へと変えてしまう。これらの呪文を使わず、普通通り罪塊を溜め込んだとしても、他の世界、非ボリスト教徒の間では混沌の腐敗を引き起こすようなことはない。邪悪な非ボリスト教徒、たとえその邪悪が巨大なものであったとしても、その結果としてその者が混沌に姿を変えるということはないのである。 原注:《浄化の儀式》の呪文では混沌の存在から混沌の汚れを完全に取り除くことはできない。取り除かれた罪の大きさから死に至る生物もあるが、どのような場合でも《浄化の儀式》が混沌の諸相や混沌の汚れの本質を取り除く事はないのである。
この呪文は Peter Metcalfe、Ingo Tschinke、Sandy Petersenによって生み出された。
《毒の中和》
接触、瞬間
呪文の詳細は『グローランサの神々』P.82を参照のこと。
《罪の目》
遠隔、能動、持続
この呪文により、ボリスト派の司祭はある生物の罪のオーラが見えるようになる。〈強度1〉で司祭はある生物の内にある清められていない罪の存在を感じる事ができるようになり、その生物がかつて《清めの儀式》を受けたかどうかが分かる。〈強度5〉で目にした生物が持つ罪塊を±5ポイントの範囲で分かるようになる。〈強度10〉では司祭は正確な罪塊のポイントが分かり、加えてその生物が(もし受けたことがあるのであれば)それまでに受けた《清めの儀式》の回数も分かる。〈強度10〉ではまた、呪文を投射した司祭は目にしたボリスト派の信者が嘘をついているかどうかが分かる。
《転移の儀式》
接触、能動、持続
この魔道呪文はボリスト派の司祭が《浄化の儀式》によって信者から集めた罪を、別の生物に移すために用いられる。標的は混沌の生物でもふつうの動物でもよく、抵抗を試みる事ができる。この場合呪文を投射した司祭は抵抗ロールに打ち勝たねばならない。
呪文の〈強度〉3ポイントごとに100ポイントの罪塊を司祭から犠牲者へと移すことができる。呪文の投射には少なくとも〈強度3〉が必要である。司祭は100ポイントより少ない罪塊を移す事を、1-99ポイントの範囲で選ぶことは可能であるが、その場合でも少なくとも〈強度3〉は必要とされる。
急激な罪の蓄積は標的の生物を混沌による腐敗の危険にさらす。標的の罪塊の合計がPOW×100を越えていた場合、標的はPOW×5のロールを行わねばならず、失敗すれば混沌の諸相を受けることになる。罪塊の合計がPOW×100の2倍、3倍に達するごとに、POWロールの倍数は1段階悪化し、さらに追加のPOWロールが必要となる。たとえば蓄積した罪塊が標的のPOWの200倍に達した場合、標的はその時点で混沌の腐敗を避けるためにはPOW×4のロールが必要となる。さらに300倍に達すると、その時点でPOW×3のロールを行わねばならなくなる。罪塊の合計が標的のPOW×600に達した時点で腐敗を避けるためのロールはPOW×1となる。さらにこれ以後は1ポイントでも罪塊が増えるたびに、即座に腐敗を避けるためのロールが必要になる。
原注:罪塊の蓄積から(もしくは他の理由から)1つ以上の混沌の諸相を獲得してしまった司祭は、自分自身の混沌の汚れや混沌の諸相を清める事はできない。たとえすべての罪塊が取り除かれても、混沌の諸相と汚れは残る。
呪文のプロセスは喜ばしいものではないため、標的となった生物は通常抵抗を試みる。その結果として、司祭はカエル、ガマガエル、ニワトリ、トカゲといった小動物にのみこの呪文を投射する傾向がある。司祭の中には小さなゴープといった、大きな危険のない、すでに混沌の存在である生物に罪塊を移すことを好む者もいる。標的が混沌へと変化した場合、ボリスト派の者は《転移の儀式》が完成した後にその生物を殺してしまうことを選ぶ。また、信者たちが供犠に捧げることのできる混沌の“敵”として、その生物をさらに利用する者もいる。標的が《切開》の対象とされることもある。混沌僧ギルドはこの呪文を人や家畜を腐敗させるために用いる。この事は1618年から1619年に渡って続いたティスコスの暴動でも有名である。ボリスト派司祭の多くは、マルキオンの法の厳正な適用から、非混沌の知的生物に対してこの呪文を投射することはない。
推奨呪文:《師弟の契り》、《魔法眼》、《中和》、《混沌感応》、《命の皮》、《耐魔》、《耐霊》、《麻酔》、《切開(能力値)》、《見えざる神礼拝》。
一般呪文:《使い魔創造》、《深傷》、《耐傷》、《STR減退》、《STR向上》、《足かせ》、《魔力封印呪付》、《麻痺》、《魔法円》、《突出(感覚)》、《黄金感応》、《魔術感応》、《呪文封印呪付》。
禁忌呪文:《バジリスク創造》、《ヴァンパイア創造》、《不死》、《変身》、《死体動作》、《スケルトン動作》、《神性魔術精霊制圧》、《ゴースト制圧》。
本テキストはIngo Tschinke氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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