エルマル

    - The Cult of Elmal -

copyright 1998, Nicholas Effingham
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,1999 [1999.12.23].



David Dunham、Maurice Beykeの記述を元にしている。さらにGreg StaffordとSandy Petersenのイェルマリオについての記述も参考にした。


神話と歴史

  エルマルは皇帝の息子である。彼は強力な炎の馬の上から彼に与えられた領域である天を支配していた。エルマルは世界の人々に生命を与えた。だが彼は、自分が与えた生命はその魂が死んでおり、他の生物の中に目にすることのできる生命力を欠いていることを知ったのである。彼は自身が冷たい光の送り手であることを知った。これを変えるために彼は古き男を探し出した。彼はエルマルに黄金の丘でその秘密を見つけることができるかもしれないと語った。エルマルは炎の馬から降り、黄金の丘へと旅立ったのである。ここに至って彼は、みずからの吐息が肉体だけでなくその魂においても、世界にぬくもりを与えるための秘密を見つけ出すだす機会を与えてほしいと宇宙に呼びかけた。その時オーランスが現れ、太陽神の要請を聞いたのである。みずからを証明しようと考えたオーランスはエルマルの前に姿を現し、彼に戦いを挑んだ。エルマルとオーランスは黄金の橋の上で戦い、オーランスはエルマルを水の中へと叩き落とした。エルマルは落ちる際にオーランスをつかみ、彼も水の中に引きずり込んだ。しかしエルマルは寒さに慣れておらず、また泳ぐことができなかったため溺れてしまったのである。水がエルマルを自分のものとする前に、彼はオーランスに助け出された。そしてエルマルはそのオーランスの姿に、彼が人々に与えたいと望んでいた強い自発性と活気とを見出したのである。エルマルは力強き嵐の神を駆り立てているのと同じ力を自分は探しているのだということをオーランスに告げた。

  オーランスはエルマルにそれを見せることを承諾し、彼に嵐の秘密を教えたのである。それから彼はアーナールダに会い、そのステッドに招かれ、そこで彼らの娘である馬の女神ヒッポイに心を奪われた。エルマルは彼女が自分と結婚してくれるかどうかを尋ねた。彼らは驚いたがその結婚を認め、“異邦人の婚礼の儀”が生み出されたのである。その後ヒッポイはエルマルと天で一緒になり、以後すべての馬は「火」と「太陽」と「天空」とに関係を持つようになった。

  オーランスが皇帝を殺害し、混沌が世界へと侵入してきたとき、エルマルは天に座す彼の玉座から、彼が忠誠を誓った君主オーランスの傍らへとやって来た。エルマルがこうして玉座を降りたとき世界は永遠に続く夜となり、暗黒が訪れた。太陽は永遠とも思えるほど長い間戻って来ることはなかったのである。

  エルマルは彼の主と共に戦い、“落嵐の戦い”では混沌の獣と悪魔の一群すべてに傷を与えた。彼はヴィンガと共に遠く、様々な場所まで冒険を行った。それはヴィンガがエルマルの炎の力を盗もうとした“トロウルの黒き主”から彼を救ってくれたためである。彼は生き残ったもののその傷は完全には癒えず、炎の力とのつながりを永遠に失った。だが従士や戦士である彼の息子や娘たちの多くは、黒き主に盗まれ失われた力と盗まれた武器とをなんとか取り返したのである。エルマルは妻、偉大なるヒッポイに乗り、従士の真の力を多くのオーランス民に教えた。“冬の太陽”イェルマリオが天上のエルマルの地位を盗もうとしたとき、エルマルは黄金の丘を訪れ彼と戦った。エルマルはイェルマリオを打ち倒し、その鎧を奪った。現在エルマルが身につけている鎧こそがこの時の鎧であり、盾はオーランスがしばしば手にしている。イェルマリオは彼の望みであった太陽になることはできなかったのである。

  オーランスが“光持ち帰りし者たちの探索”に旅立ち、エルマルはオーランスが不在の間ステッドを守ることとなった。オーランスはエルマル滞りなく任務を果たせるよう彼の力とエネルギーとを与えた。エルマルは、あらゆる任務に挑み、そのすべてをうまくこなした。オーランスが地界の“蜘蛛女”の座す場所へと、みずからのステッドの者たちを呼び寄せたとき、エルマルは彼らを率いて行った。だが暗黒の神々は太陽神が新たなる宇宙に存在することを受け入れることができず、妥協案としてエルマルはその存在の半分を地界で費やすことを受け入れた。これこそ網が投げられたとき、エルマルが天を旅するようになった理由である。

  第1期にはナイサロールが生まれ、その瞬間エルマルは恐怖にたじろいたが、冷静に心を決め、邪悪なる混沌と対峙した彼の主を助けるため、2度目の降下に備えた。もちろんそのようなことを蜘蛛女が許すはずもなく、オーランスは盟約を守ることをエルマルに頼んだため、エルマルは天を移動し続けたのである。彼のカルトは邪悪なロカヤマドンの下に栄え、エルマルはこれを阻止することができなかったが故に、ロカヤマドンを憎んだ。   太陽の従士ではなく皇帝イェルムこそが太陽であると主張し、エルマルを破壊しようとするイェルマリオ信徒の爆発的な増加によってエルマルのカルトは打ちのめされ、抑圧された。そうした侮辱から残忍な襲撃と戦争とが引き起こされ、現在ではエルマルはわずかなオーランス信徒の土地でのみ信仰されている。

  カルトでは信心深い信徒は死後、天国でエルマルと永遠の至福を享受することができると保証している。その一部、あるいはそのすべてに関わらず、すべての義務を果たすことに失敗した者は、その罪に見合った時間の間オーランスの歩哨として見張りとして立たねばならない。ほとんどの信徒は少なくともここに短い時間立つだけですむことを期待している。ダーカ・ファールの法廷から戻って来ることができなかったエルマル信徒の肉体は、布で包まれ、実際の肉体の死から7日後の最初の見張りの交代の時に火を放たれる。その肉体は夜の始まり、すなわち宵の門が開くときまで燃やし続けられる。その魂は彼らの主に続いて地獄へと向かい、エルマルは彼らに死者の地への道を示すのである。

  エルマルは「光」と「真実」のルーンに関係があり、「死」と「風」のルーンにも弱い繋がりを持つ。時折「光」は「壊れし炎」として知られるルーンに置き換えられることがあるが、そのルーンの存在は神知者によって破壊されたと考えられている。


カルトの生態

  このカルトはオーランス社会で重要な位置を占めているために維持されている。すべてのハウスカールは少なくともこのカルトの入信者の地位であることが期待されている。エルマルに対する礼拝は、彼がその年の作物に祝福を与えてくれるようにと、新たな耕作の始まりの時期に行われる。エルマルはオーランスの従士というその地位故に、ハウスカールたちからも崇拝されている。彼は聖祝期に行われる大規模な儀式の大半において祈りが捧げられる。彼の信徒は鉄の評議会のあらゆる会合に際して外の見張りに立つ。

  このカルトはゾラーク・ゾラーンのカルトを嫌っている。それはゾラーク・ゾラーンがエルマルからその力を奪おうとしたからである。またイェルマリオは、太陽の力をわずかながら持っていることを鼻にかけ、それを語ったり、振る舞ったりするに値するような名誉と考えるような愚かで、あまやかされた傲慢な男であるが故に嫌われている。またエルマルはほとんどの天空の神も嫌っている。彼らは魂無き存在であり、無関心で、感受性に乏しく、真の感情持たないためである。

  カルトはオーランス、アーナールダ、地方の穀物の女神、ヒッポイ、そして神代にエルマルと多くの冒険を果たしたヴィンガと深い友好関係を築いている。

  カルトの聖祝日は、各季の「真実の週」「火の日」、大聖日は「嵐の季」の聖祝日である。


世界におけるカルト

  第3期にこのカルトは、純粋なエルマル信徒を“冬の太陽”イェルマリオの信徒に改宗させようとする、イェルマリオ信徒の姿を借りた大規模な反乱を経験した。そのため多くの地域ではエルマルは忘れ去られていたり、エルマルに対する崇拝を拒絶するようになっている。

  (私の考えでは)エルマルはビリニやランクスト、そしてより小規模な、他の様々なオーランス人の居住地で信仰されている。注目すべきなのは、エルマルはラリオスの暗黒異端派のどの教派でも信仰されていない、ということである。

  寺院は一般に小寺院かそれ以上の大きさであり、社は小村にのみ存在する。それらは通常一つの寺院をオーランスと共用している。太陽の近侍の長は氏族の要望に答えられるようすべての配下のハウスカールを編成する。これはしばしば風の王の立ち会いの元に行われる。エルマルの下位の信徒の大半は下級のカールであり、一時的な信徒は奉仕として見張りを申し出ることになる。こうした彼らの行動が想定されているめに、彼らはしばしばグラウンドカールと呼ばれている。

  太陽としての彼の役割から、1年に1度エルマル信徒の太陽の近侍が、地方の大地の女神の女祭から召集を呼ばれ、大地を祝福するための特定の儀式を行う必要がある。   社では《光目》を教えている。


入信者

  すべての候補者は成人したオーランス人であるか、オーランス人でない場合は、このカルトの“異邦人の婚礼の儀”を受けなくてはならない。候補者は願者は〈動物知識〉〈捜索〉〈騎乗〉〈(弓又はジャベリン)攻撃〉の試験に合格せねばならない。その後、1ポイントのPOWをエルマルに捧げねばならない。彼らはみずからの時間と収入の10%をカルトに捧げなければならず、加えてステッド、もしくは首長の館を守る義務のために10%の時間を捧げねばならない。これは、もし氏族が恒常的な戦争状態にある場合、増加する可能性があるものの、比較的平和な場合には逆に変更されることもある。

  エルマル信徒は氏族から馬を購入する場合、常に値を引いてもらえる。これは忠誠心にあふれたあらゆるオーランス信徒が監視する厳正な義務である。ほとんどの場合馬は通常より3割ほど安くなる。エルマル信徒は加護を選択する必要があり、その加護に応じた数の制約を受ける。入信者は神性介入を試みることができる。また精霊魔術を学ぶことができ、神性呪文を一回限りで獲得することができる。入信者は100時間のカルト技能の訓練を無料で受けることができ、それ以後は通常の半額でカルト技能の訓練を受けることができる。

  人生をエルマルに捧げることを決めた入信者は、氏族の長から給金を受け取る。給金は通常各季ごとに、住まい、食料、幾ばくかの金銭や現物の形態で、彼らを維持するために支払われる。結婚したり、男やもめとなった信者がそのような要求される事柄の多い地位に従事することは非常に希である。

精霊呪文:《鋭刃》《機敏》《敵の検知》《遠視》《光》《光の壁》《防護》《修復》


太陽の近侍(ルーンロード)

  太陽の近侍はカルトのルーンロードであり、同時にルーン司祭であり、氏族の従士やハウスカールとして仕える。候補者は〈弓攻撃〉もしくは〈ジャベリン攻撃〉と〈(任意の)受け〉技能に少なくとも90%の成功率を有しておらねばならず、加えて以下の技能のうち3つの技能にも90%の成功率を有しておらねばならない:〈(他の任意の)攻撃〉〈捜索〉〈騎乗〉〈動物知識〉。さら〈浄化〉技能について30%の成功率を有しておらねばならない。太陽の近侍となるためには聖試験に合格せねばならず、これは抽象的にはPOW×3以下をロールすることで表される。またみずからの主君、通常は“神々の王”オーランスの司祭に対して鉄の忠誠を捧げる誓いをたてねばならない。彼らは時間と収入の90%をカルトに捧げねばならず、通常それらは鉄の輪だけでなく氏族や村への奉仕に費やされる。太陽の近侍は最初に馬を選ぶことを許され、さらに彼が選んだアーナールダの女祭に対して求婚する権利が与えられる。彼はヴィンガの信徒に対して厚情ともてなしの心を示さねばならず、みずからの民を救うための命令を拒否してはならない。

  しかしながら、彼はイェルマリオやイェルムの信徒に対して同様、暗黒の生物に対しても儀式的に挑戦せねばならない。

  彼らはルーンロードに与えられるすべての権利と(1D10の神性介入や武装、鎧など)、司祭に与えられるすべての権利(神性呪文を再使用可で獲得することなど)を獲得する。余り命の危険は無いものの、決して簡単ではない英雄の道程を踏破した場合、武器に宿るか、馬が覚醒した同盟精霊が与えられる。彼らは新たなエルマルの加護と制約を受け入れねばならず、もし望むのであれば、複数の数の加護と制約を受け入れることができる。

一般神性呪文:すべて。
特殊神性呪文:《収穫祈願》《光眼》《鉄呪鍛》《鉄呪鍛》《冷気抑制》《盾》《神槍》


カルト特殊神性魔術

  《光眼》は《猫目》と同じ。他の呪文に関しては『太陽領』P.22-23参照のこと。

《冷気抑制》 Hold Frost
3ポイント
儀式(浄化)、再使用可
  この呪文はヒーロークエスト用の儀式呪文である(HeroQuest Notes参照)。太陽の近侍だけがこの呪文のためにPOWを消費し獲得することができる。この呪文の投射には丸1日の時間が必要になる。呪文は丸1季の間、地上の1エリアを冬の冷気による被害やそれに類する苦境から守る。これは長い冬は依然危険であり、その場合魔術的な冷気や冬は依然大地を傷つける、ということを意味している。主語の対象となる大地は呪文に込められる呪文1ポイントにつき、1エーカーである。この儀式が繰り返し投射されることがあるが、その場合でも儀式の間は、共同体が霊的にも物理的にも危険にさらされることになる。


下位カルト

復讐の精霊

  精霊は“従士の息子”スポーリンである。彼らはその祖父の“炎の武器庫”から《太陽槍》を奪い、それを扱う技を他の者に教えていた。彼は背教者に《太陽槍》を見せることで彼らを攻撃する。背教者はその罪に応じた数の複数の《太陽槍》に打たれることになり、その数はわずかなカルトからの持ち出しのような軽い罪の場合の犯した罪1つにつき1本から、カルト全体を巻き込む異教的行動様なの場合10本まで様々である。これらの《太陽槍》はもっとも効果的な瞬間に犠牲者の前に現れる。

  この精霊のカルトに加わることもでき、それによって《太陽槍》呪文を獲得することもできるが、それは大司祭の位階に達した太陽の近侍だけである。もしその人物が大司祭の地位を失った場合、《太陽槍》呪文は一回限りとなり、それ以上獲得することができなくなる。

“炎の槍”タレム

  この下位カルトはオーランスの槍持ちとしてのエルマルを表している。タレムは彼がヒッポイに生ませた息子である。タレムは地獄へ行き、そこで重い鉛のドアを打ち破り、ゾラーク・ゾラーンが彼の父から盗んだ武器と防具を取り返したと言われている。この下位カルトに加わるためには、候補者はカルトへの忠誠とその信心深さを示したことがあり、1年に1度だけ試みることのできる小規模な儀式に成功せねばならない(POW×3以下をロールすることで表される)。この下位カルトの者は《サラマンダー支配》、《サラマンダー召還》の神性呪文だけでなく、《火剣》《火の矢》の精霊呪文も獲得することができる。



友好カルト

ヒッポイ

彼の妻は《馬祝福》を提供する。

オーランス

エルマルが忠誠を誓うすべての神々の王は《稲妻》を彼に与える。

ヴィンガ

神代にきわめて親しい間柄であった彼女から、エルマルは《命中》を獲得する。


その他

加護と制約

以下は候補者は以下から加護を選択する。
    (制約の数)加護
  • (1)  信者の選んだ技能が10%上昇する。
  • (2)  信者の選んだカルト技能が30%上昇する。
  • (2)  恒久的な《遠視》の能力を得る(精霊呪文と同じ)。
  • (3)  〈弓攻撃〉の技能が90%に上昇する(技能修正値も含む)。
  • (3)  〈槍攻撃〉の技能が90%に上昇する(技能修正値も含む)。
  • (3)  〈槍投げ攻撃〉の技能が90%に上昇する(技能修正値も含む)。
  • (2)  《光目》の呪文を再使用可として獲得する。
  • (2)  馬と意志疎通(自動的な《霊話》として扱う)が可能になる。
  • (2)  信者の選んだ能力値が上昇、上限はない。
  • (2)  魔力ポイントが2倍の速さで回復する。
  • (2)  疲労ポイントが2倍の速さで回復する。
  • (2)  睡眠を取る必要がなくなる。
  • 1D100 制約
  • 01      エルマルの好意により、制約はなし。
  • 02-10  「火の日」には禁欲しなければならない。
  • 11-15  「真実の週」には禁欲しなければならない。
  • 16-20  襲撃されない限り、見張りをしている間話してはならない。
  • 21-25  通常の2倍の時間、見張りに立たなくてはならない。
  • 26-40  いかなる場合でも、混沌に話しかけたり、助けたりしてはならない。
  • 41-43  嘘をついてはならない。
  • 44-48  むやみに馬を苦しめてはならない。
  • 49-53  むやみに猫を苦しめてはならない。
  • 54-60  混沌から逃げたり、それらに降参してはならない。
  • 61-65  嵐の神の信者からの援助の要請を拒否してはならない。
  • 66-70  大地の神の信者からの援助の要請を拒否してはならない。
  • 71-75  大地の神の信者以外と性交したり、結婚したりしてはならない。
  • 76-78  大地の神の女祭以外と性交したり、結婚したりしてはならない。
  • 79-82  暗黒の生物に対しては常に攻撃しなければならない。
  • 83-85  イェルム信徒やイェルマリオ信徒に対しては常に攻撃しなければならない。
  • 86-90  剣を使用してはならない。
  • 91-95  カルト武器以外を使用してはならない。
  • 96-98  さらに2回振る。
  • 99      さらに3回振る。
  • 00      ゲームマスターの選択。あるいはもう1度ロール。


  本テキストはNicholas Effingham氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
  テキストは公式版ではありません。この文章を使用するにあたっては、各人の判断でご利用下さい。この文章の使用により何らかの損害があっても著者並びに翻訳者は一切関知致しません。


トップページに戻る。 コンテンツに戻る。 翻訳ノートへ