オトコリオン単神教会

    - The Henotheist Church of Otkorion -

copyright 1998, Nicholas Effingham
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,1999 [1999.12.15].

原文謝辞

今回の作成にあたり、『ゆりかご河』のオーランスカルト、Jeff RichardのComposite Orlanthi Description、David HallのOtkorion Church description、Stephen MartinのOrlanth Rex、Sandy PetersenのSaint notesを参考にした。諸氏に感謝する。またPeter MichaelがMinlister Descriptionを快く提供してくれたことにも感謝する。また私の友人のエイオル派教徒、Joerg Baumgartnerが私を助けてくれたこと、E-mailで議論してくれたことにも大きな感謝を。

原注:これはドラフト版であり、あらゆるコメントを歓迎する。nikk@MailAndNews.comまで。よろしく(訳注:英文で!!)。

カルトの関する歴史的注釈

  ここに記されている教会は、4つのカーストとそれぞれのカーストで崇拝される聖人に関する記述で表されている。この教会はマルキオン教暗黒異端派信仰と“光持ちかえりし者たち”信仰の混合形態である。教会の基本的な構造の中で多数の聖人-特に聖オーランスの様々な側面や、聖ラリア、聖ヴィンガ、バーンター、そして様々な下位カルトが崇拝されている。これらはマルキオン信仰に容易に受け入れられたカルトである。フマクト、ランカー・マイといった他のカルトは、ここに挙げられている聖人と共に崇拝されてはいるものの、マルキオン信仰に加わることに消極的であったこともあり、彼らのゼイヤラン的なカルト構造のかなりの部分をとどめているため、別に紹介している。教会は全ての聖人がカースト制度に統合されることを望んでいる。すなわち魔術師階級は聖オーランスと聖ランカー、聖チャラーナを同時に崇拝し、戦士階級は聖オーランスと聖ヴィンガ、聖フマクトに聖ウロックスを同時に崇拝する、という具合であり、それは他のカーストに関しても同様である。


神話と歴史

  当初オーランスは“偉大なる定命者”にして“死の歩き手”ウマーシルと彼の情人の1人、今日ではもはや忘れ去られてしまった東方のある山の精霊との間の息子であり、力ある英雄であった。オーランスは論理の時代、論理の王国で育った。オーランスは偉大なる戦士であり、指導者であり、魔術の使い手であった。彼は日々目覚めるたびに熱心に彼の神に祈りを捧げ、創造主の祝福に思いを巡らせた。

  宇宙の支配者は皇帝であった。皇帝は地界とそのにあるものすべての支配権を創造主から与えられていた。創造主は創造から目を背け、皇帝があらゆる問題を取り扱うことに満足していた。しかしやがて皇帝は邪悪に、罪に、そして混沌になったのである。ついに彼は“不正なる者”となり、自分に従う者たちに邪悪な事を要求した。彼への崇拝を拒否したオーランスはウマーシルと共に去り、父が新たなる王国を築く手助けをした。しかし世界の人々は、たとえそれが悪しきことだと分かっていても、罪を強制されたのである。

  世界によって引き起こされた罪は引き起こした者たちへと跳ね返り、海は宇宙のすべての者の頭上へと降りかかり、天使たちは安全なる楽園に引きこもり、罪に汚れた者たちはより穢れた、より有害な存在へと変わり果てた。

  ついにオーランスの兄であるフマクトがこの問題の答えを見いだすために遣わされた。彼は創造主自身から祝福を与えられ、新しい力、死を見つけた。死は名誉ある賜物としてオーランスに与えられ、そしてオーランスは皇帝を打ち倒すために死を用いた。中心を失った世界は罪へと転じた。邪悪の軍勢、皇帝のあらゆる僕が襲来し、世界を氷で覆い、太陽は領域を守る助けとなるためにあるべき場所を去った。グローランサは絶え間なき暗黒と憎しみの中に取り残された。オーランスは、みずからが新たな中心となって宇宙の通常の状態への復帰を可能とすることで、あらゆる悪を正そうとうする試みに際し、皇帝の外套を身に付けようとした。だがオーランスが何度試みても、彼自身が殺した敵に取って代わることはできなかった。なぜならばオーランスは、皇帝のように宇宙を支配するよう創造主から祝福されてはいなかったためである。それ故に指導者は見つからず、新たな支配者も新たな皇帝も存在しなかった。

  さして困惑もせず、オーランスは挑戦を続け、とにかく世界に正義をもたらそうとした。死が皇帝の従者の手によって失われた時、オーランスはそれを取り戻すためにフマクトを送った。だが最後には、彼は罪と憎悪とに墜ちた親族と戦うこととなった。彼の兄弟であるヴェイドラスはあまりの憎悪のために理性を失い、敵と戦い尽くした時に、彼は唯一戦う価値のある敵として、オーランスとウマーシルの民に刃を向けた。フマクトはヴェイドラスと何度も剣を交えた。オーランスは王国の指導者たる彼の父の地位のために戦わねばならず、そして勝利をおさめた。オーランスは兄弟である雄牛の家門の一員であるウロックスを押し止め、ウロックスが引き起こしたであろう大虐殺の未然に防いだ。オーランスはさらに“冬の巨人”スリクも殺したのである。

  彼は常に宇宙を元に戻せる可能性のある新たな探索に参加することを望み続けていた。彼は婚約者であるラリア−後に妻となる−を救い出した。彼は干魃の精霊ダーガを打ち負かし、竜の王国の廃墟から生じたアロカを征服した。彼は海の深淵へと旅し、ダーリアスが守っていた知恵の井戸から飲んだ。彼は“戦車”マスターコスに乗って旅から帰還を果たした。

  だが最後にはオーランスは衰え、人々は死んだ。世界は荒廃した。オーランスは突然新たな考えを思いついた。彼が創造主を探す探索に旅立ち、宇宙を支配するための力を創造主から祝福してもらい、その後皇帝の外套を身に付けるのだ、と。オーランスは6人の仲間を選んだ。彼らは総称して“光り持ち帰りし者たち”として知られている。彼らの探索は記憶されている探索の中で最も有名なものとなった。他の探索者は聖フマクト、聖ユールマル、聖チャラーナ、聖ゴールデンタン、聖ランカー・マイ、そしてギーナ・ジャーとして知られている神秘的な存在である。彼らは地獄へ向かい、様々な障害を乗り越え、ついには地界の死の殿堂へと辿り着いた。そこで彼らは創造主と話し合い、創造主はオーランスに全能の力を教え、彼を聖人とした。オーランスは神々の王となり“同等者の中の第一者”となった。彼は世界を時として知られる新たな法秩序に従って世界を変革した。オーランスは皇帝の外套を捨て、その代わりに鉄の輪を作った。これによって多くの者たちのよって定められた掟が、一者による専制を打破することができるのである。皇帝は、世界がそのカージョクの徒の覚醒によって破壊されぬよう、地獄に永遠に捕らえられ、戻ることはできないのである。

  第1期、定命者たちの罪によって皇帝の残滓、彼の第3の目たるグバージが召還された。グバージは悪意をもって支配し、ラショーラン−大暗黒期の全能にして祝福された神−の使徒を装った。報復として聖オーランスは死の天使にグバージを殺すよう命じた。天使は敵を打ち負かすために“フマクトの息子”アーカットを送った。この点に関しては、彼は成功をおさめ、我々と彼の時代人々に対して成し遂げたアーカットの自己犠牲−邪悪なるグバージを殺すためにみずからが慰めに至る可能性を放棄したこと−に永遠の感謝を捧げるのである。

  しかしながら神知者は無知へと陥り、無知をもって見えざる神の真の礼拝が伝えられ、誤ったマルキオン教の教派が形成された。我々の祖先も蛮人の慣習と礼拝に戻った。これは単神教派がジョーストランド王国の繁栄により力を取り戻した時、全て撤回された。

あなたが純粋なる心を持つのであれば、死後慰めへと至るだろう。あなたがささやかな罪を犯し、後悔しているのであれば、霊的な死後の生のある期間聖オーランスに仕え、その後転生するであろう。慰めにおいて、あなたは宇宙の調和と至福とを感じ、何についても心配する必要はなくなるのである。慰めは永遠の続く美徳であり、愛であり、喜びである。混沌ですら慰めにあるあなたに触れることはできない。もしあなたが邪悪なのであれば、死後地獄へと送られ、悪魔に苦しめられる魂となる。信心深い信徒と余裕のある信徒は皆、蘇生の機会が与えられるが、その子細は聖チャラーナのカルトに委ねられている。あなたが死ぬと、その肉体は聖オーランスの寺院の屋根の無い区画で、無償で荼毘に伏される。ルーンの刻んだ丸太が薪として組まれ、儀式に出席した司祭が慰めへ魂を送るためのカルト精霊を召喚するように聖ゴールデンタンに呼びかける。特別な英雄を除き、あらゆる人々が同様の方法で荼毘に伏される。聖フマクト信徒も彼ら独自の制限に従い埋葬される。

  “雷鳴の神”オーランスのルーンは「支配」、「移動」、「風」、そして「風」に関係がある。“四つ武器の神”オーランスは「移動」、「風」、「風」、そして「死」に関係がある。“神々の王”オーランスは「支配」、「風」、「風」に関係がある。“光り持ち帰りし者”オーランスは「魔術」、「風」、「風」、そして「運命」に関係がある。


カルトの生態

  オーランスは宇宙の内に存在するものすべてと、そうでないものの大半の支配者である。オーランスは嵐の支配者であるのと同時にすべての神々の王でもある。彼の徳、信条、力、そして指導力を通じて、宇宙は刷新され、今日の姿にあるのである。聖オーランスはすべての良き者たちが慰めへと達するために従わねばならない掟を定めている。聖オーランスの信者だけがその生涯で何かを達成する望みがあるのである。

  オトコリオン社会に生きる者は皆教会の一員であり、4つのカースト−農夫、戦士、魔術師、領主の各階級−の1つに属している。神と創造主の目から見れば、それぞれのカーストは等しい存在なのである。

  聖オーランスは混沌を憎んでいる。なぜならそれが真に邪悪な唯一の存在だからである。さらにアジロスの暗殺者たちを憎んでいる。それは彼らの特殊な拷問の技術が、本来混沌が引き起こす魂の死を引き起こさないためである。混沌は邪悪な皇帝の僕であり、皇帝こそは全宇宙すべての過ちの原因である。多くの者たちはガーリンのイーヒルムと皇帝とを同一視しているが、この事は教会により偽りであることが勧告されている。我々はグバージと皇帝のすべての仮面を狩り出し破壊する。我々はST.1616年のヴァランティアの改宗という偉大な勝利をもって、神々の真実を知る者たちにすべてを伝えるのである。

  神の6つの美徳とは勇気、知恵、寛大、正義、名誉、そして敬虔である。聖オーランスは、たとえそれが敵のものであっても、この6つの美徳に敬意を払う。もし敵がカージョルクの徒であった場合には、彼らがそれを行うのは利点のためであるから、その徳も偽りとしては無視されることになる。

  教会の聖祝日は毎「風の日」であり、儀式のためにオーランス信徒が集まる。「嵐の季」、「移動の週」、「風の日」が大聖祝日である。聖祝期の2週間と新年の最初の日には“光り持ち帰りし者たちの探索”と宇宙の創造とを祝う祝典が催される。


世界におけるカルト

  聖オーランスとして知られている存在がエイオル派で崇拝されているが、それはこのカルトではない。聖オーランスは見えざるオーランスと神話学上の関係があるが、聖オーランスが崇拝されているのはオトコリオンだけである。この信仰は教会全体の礎であり、他のすべての聖人はその周辺で崇拝されているのである。あらゆる者が教会に属しており、そうでない者は社会の一員ではない。大寺院がフィーシブとヴァランティアに存在し、小寺院は国中に散らばっている。社はすべての村とストームウォーク・ロードに沿って存在している。最大の寺院は北東オトコリオン、サーコリオンとの国境近くに位置するテンペスト・ホールに座している。   教会は集合的信仰構造、すなわちすべての聖人に対する集合的な崇拝の形態を有している。教会に加わるときその者はカーストの1つに加わり、数多のの聖人の1人を崇拝することになる。通常は聖オーランスの一側面を聖人として崇拝する。

  カルトは“非異端者”スランティールに支配されている。彼はオトコリオン単神教会の大司教である。彼の下に司教がおり、それぞれがオトコリオンで“シアゴット”と呼ばれる12の司教区に対応している。もともとは11であったが、ST.1592年にラリアとの国境に位置する場所に12番目のリオネス・シアゴットが創設された。司教の下には、小寺院の大司祭と社を管理する侍祭がいる。情報伝達は意図した者に情報が伝わることを期待して、直接の上司にメッセージを送ることで可能となる場合がある。司教は寺院を治める大司祭を指名する。大司教が死去した場合には、すべての司教、“鉄の輪”と17の有力な家門の首長による投票で、新たな大司教を決定する。

  実際にはこの教会は、ちょうど50年ほど前に存在していた“嵐をもたらす者”アーカット教会として知られた存在が集まったものである。スランティールの支持のもと、フィーシブを支配する家門であるロリマー家の者たちは力をつけ、より小さな勢力を取り込み、類似した教会をその構造へと吸収した。ST.1579年までフィーシブの者はすべて単神教徒であって、今よりも非常に多くの教会が存在したが、独立していた教会はスランティールを首長とする教会の成長を続ける勢力に吸収され、アーカットの称号は単神教信仰の望むままとなったのである。

  主要なカルトの敵はセイフェルスターの他の宗旨(彼らは唯一の真なる道程に“改宗”させるべき存在である)、グーハンのトロウルとオトコリオンの内部に存在するサナターの異教徒たち(“Chaos in Otkorion”にさらに詳しい記述があるのでそれを参照のこと)、ST.1616年のヴァランティア侵略以降、自分たちの教えの生き残りをもくろむ、南オトコリオンのガルボスト派秘密会議の者たちである。   社では《雲海拡散》を教える。


カースト制度

  オトコリオン人は4つのカースト−農夫、戦士、魔術師、領主の各階級−が存在すると考えている。彼らは誰もが特定の階級に生まれる一方で、もしみずからの価値を証明できるのであれば、カースト間の移動が可能であると考えている。それぞれのカーストは異なる制限と特典−例えば魔術技能のような−が存在する。各カーストは異なった聖人群を信仰しているが、どのカーストにも常に聖オーランスの一側面が含まれている。あるカーストから別のカーストへの移動は特定の試験に合格することが要求されるだけでなく、その者の家族、そしてもしくは領主や司祭の後援が必要である。地位ある者がカースト移動を支援してくれるのであれば、候補者がみずからの技量を証明しさえすれば、通常はカーストを移ることができる。


農夫階級

  農夫階級に加わる者は聖ラリアと大地の精霊、そしてラリアの息子“鍬の神”バーンターの道に従うことになる。男性はバーンターに、女性は聖ラリアに従い大地の信者一角をなす。男女はともに働き、ともに信仰するのである。農夫階級はオトコリオン社会の基盤となる職業の大部分を占める。彼らは商人、料理人、洗濯屋、牧夫、農夫、鍛冶屋などである。農夫階級は平均的に他のカーストより貧しいものの、そのすべてが貧乏というわけではない。有力な商人はしばしば莫大な財産を持ち、強力な政治力を行使する。農夫階級の者は〈強度〉を除いていかなる魔術操作も学ぶことができず、土地を保有することができない。彼らはルーン鋼でできた武器を所有してはならない。彼らはしばしば徴募兵や歩兵として戦争に召集される。異教の神の教えに従う者もまた農夫階級となる。エルマルやバービスター・ゴアといった神を信仰する単神教徒をしばしば目にするが、彼らは公的には農夫階級なのである。こうした者者たちは通常、入信者から先に昇進することはまったくなく、カーストの責任に対しても余り興味を持っていないことは明らかである。

入信者

  オトコリオン社会のメンバーは、親のどちらか一方が農夫階級であった場合、1ポイントのPOWを消費することで、農夫階級に即座に加わることができる。オトコリオン社会の外部から、もしくはカーストを移ってこのカーストに加わろうとする者は以下のうち4つの技能に成功せねばならない:〈ラリオス語会話〉〈浄化(オーランス)〉〈植物知識〉〈(任意の)制作〉〈(任意の武器)攻撃〉。こうした者たちもまた1ポイントのPOWを捧げ、試験を1度受けるごとに20オーブを支払わねばならない。

  すべての入信者は収入の5%をカルトに、5%を市民税として納め、時間の10%をカルトに捧げねばならない。彼らは以下に挙げられている魔道呪文を習うことはできるが、熟達した魔道士となることはできない。彼らは司祭が使用可能な神性呪文を1回限りの呪文として獲得することはできる。彼らはこのカーストとともに聖チャラーナと聖ゴールデンタンのカルトに加わることができる。彼らはしばしば異教の大地の精霊に対する崇拝に参加している−農夫階級の者だけが異教の信仰に加わることができるのである。入信の数があまりに多いため、教会による合同入信式がしばしば執り行われる。

侍祭

  みずからを聖ラリアとバーンターの道程に捧げる者はそうすることが許される。彼らは魔術によって畑の世話し、寺院を運営し、女祭を守る事を要求される。一般に金銭的な必要を補うために他の者からの寄進に頼っているが、必要な時には教会から援助を受けることもある。彼らは教会に1,000オーブを寄進し、少なくとも以下の技能について50%の成功率有しておらねばならない。:〈動物知識〉〈浄化〉〈登はん〉〈鉱物知識〉〈植物知識〉。彼らは少なくとも10ポイントの神性呪文を保有しておらねばならず、それらの呪文はオトコリオン農場や牧場に住む者たちの畑やその穀物の世話をするために用いられる。またPOW×3で表される聖試験に合格せねばならない。彼らは神性呪文を再使用可で獲得することができる。教会は司祭の数に制限があるのとは異なり、ほぼ常に多くの侍祭を必要としている。彼らは教会に時間と収入の50%を捧げねばならない。

司祭

  男性はバーンターの司祭となり、女性は聖ラリアのより高い地位に加わる。その儀式と習慣は似通っており、ほとんどの点で同一である。彼らは〈動物知識〉〈浄化〉〈登はん〉〈鉱物知識〉〈植物知識〉の各技能に50%の成功率を持ち、10ポイントの神性呪文を保有している必要がある。その上で神代におけるラリアの救出かバーンターの勲のいずれかを表す小規模な英雄の道程に成功せねばならない。彼らは神性呪文を再使用可で獲得することができ、同盟精霊を獲得する機会が与えられる。彼らは教会に時間と収入の90%を捧げねばならない。

一般神性呪文:すべて。
特殊神性呪文:《収穫祈願》《家の祝福》《雲海集中》《雲海拡散》《ノーム支配》《(任意の家畜)支配》《肉体の治癒》《四肢再生》《STR回復》《CON回復》
魔道呪文:《動作(物質)》《祝福(道具)》《再生》《生命感応》
友好カルト:聖チャラーナ《APP回復》、聖ゴールデンタン(《見張り》)。


戦士階級

  戦士階級の者は男性の場合“四つ武器の神”オーランスに従い、女性ならば聖ヴィンガに従う。彼らは騎士や兵士であり、戦いの場おけるオーランスの6つの美徳の典型ともいうべき者たちばかりである。さらに他の戦争のカルトに参加をする者も戦士階級を通じて参加せねばならない。戦士階級の大多数の構成員は、ファミリーガード(彼らの呼び名に従うならカエル・クルム)、教会軍、市民軍に所属する。これらの地位は良い収入と良き前途ががあるためである。しかしながら、戦士階級の多くが金のために働く兵士や傭兵、勇敢な(そしてしばしば死ぬことになる)冒険者や村の防衛要員となる。護衛として働く者もいる。全ての戦士階級の者は十字軍に参加することが期待されるが、これ以外の場合でも軍に所属しているのであれば、戦争には必ず参加せねばならない。いまだかつて単神教会から十字軍が召集されたことはない。戦士階級だけが呪鍛されたルーン鋼の武器を所有することができる。

入信者

  両親のいずれか一方が戦士階級の構成員であった場合、候補者はPOWを捧げるだけで即座に入信できる。そうでない者は〈剣攻撃〉に加えて、以下の技能のうち4つの技能に成功せねばならない:〈登はん〉〈隠れる〉〈雄弁〉〈騎乗〉〈捜索〉〈忍び歩き〉〈嵐語会話〉〈武器攻撃〉〈武器受け〉。候補者は20オーブと1ポイントのPOWを捧げ、さらに剣と一そろいの鎧を所有していなければならない。彼らはカルトに収入と時間の10%を捧げなくてはならず、捧げた収入の半分は都市税となる。彼らは捧げた時間を教会のための衛兵や見張りとして費やす。例えば侍祭の護衛などである。大半の入信者には軍へ入隊する機会が与えられる。

  すべての入信者は魔道呪文を学ぶことができ、彼らはカルト魔道呪文の専門家として扱われる。すなわち下記のリストの魔道呪文は、[呪文投射成功率/5]のアートレベルで操作し投射することができる。それ以外の呪文は[呪文投射成功率/20]のアートレベルに呪文操作が制限される。彼らは〈強度〉を学ぶ事ができるが、それ以外のアートを学ぶことはできない。彼らは土地を所有することはできない。通常、聖フマクトと聖ウロックスへの参加は認められる。特殊な場合に限り、彼らは“アローインの従者”として聖チャラーナのカルトに加わることができるが、司祭になることはできない。異端審問のメンバーは、聖ランカー・マイのカルトの構成員でもある。

ルーン・ロード司祭

  戦士階級のルーン・ロードになることを望む候補者はみずからを完全に教会のために捧げねばならない。彼らは彼らの時間を危険なカルトの任務(トロウルへの襲撃、混沌の浄化など)や戦士の訓練に捧げる。彼らは“風の王”と呼ばれる。彼らはまた騎士として認められ、それに見合う軍隊の地位と特権とを手にする。

  彼らはあらゆるオーランス人の典型たる存在であり、定命の者の領域における彼らの神の体現である。風の王になるためには、候補者は〈剣攻撃〉に加えて、以下の技能のうち4つの技能に90%の成功率を有しておらねばならない:〈登はん〉〈隠れる〉〈雄弁〉〈騎乗〉〈捜索〉〈忍び歩き〉〈嵐語会話〉〈武器攻撃〉〈武器受け〉。さらに寺院で新たな風の王を必要としていなければならない。風の王は皆、毎年聖祝期にテンペスト・ホールで執り行われる“非異端派”スランティールのミサにおいて正式に任命される。それ以前に地位の特権を受けることはできるが、みずからを風の王と名乗ってはならず、また人々に影響を与えるためにその地位を用いてはならない。

  風の王は軍事的行動に際して入信者を率いる事を期待されており、新たな風の王の多くはトロウルに対する敵意に身をゆだねる自分を見出すのである。彼に従う者は皆、緊急時に風の王に従い、それ相応の反応を期待されている。全ての風の王は栄光と冒険、危険を追い求めることを期待されている。   風の王は以下の神性呪文を再使用可で獲得することができ、神性介入を1D10で行うことができる。鉄の武器と一そろいの鉄の鎧がオトコリオンの全土のあるゆる風の王に与えられる。混沌とのきわめて厳しい戦いの場で失ったのでない限り、武具を失った場合には風の王は再装備のための資金を自分で支払うことが期待される。風の王は冒険に費やす以外の時間は、すべて礼拝儀式やみずからが率いる入信者を訓練することに費やされる。彼らは収入と時間の90%をカルトに捧げる。

  カージョルクの徒と遭遇したならば必ず戦わねばならない。戦いで撃退されたのであれば、後日その混沌の獣を殺す事は風の王の義務となる。もし風の王の怠惰によってさらなる被害が生じた場合には、傷付けられた者に対して弁済せねばならない。凶暴な混沌の獣が農場を破壊した場合、その獣を殺す義務があった風の王は農場を修復し、死者に対して見舞金を支払わなければならない。風の王が混沌を殺すために最大限の努力を払っている場合には、一般的に巻き込まれた者たちも風の王による弁済を拒否する。風の王はくだらない韻文を歌う必要はない。

  あらゆる風の王は1時間の風速や風向の変化をあらかじめ感じることができる。

一般神性呪文:《耐剣呪付》《聖別(オーランス)》《シルフ召喚》《聖オーランス礼拝》
特殊神性呪文:《無敵》《大青祝福》《雲海集中》《雲海拡散》《シルフ支配》《鉄呪鍛》《飛翔》《盾》
魔道呪文:《発射物誘引》《祝福(武器)》《向上(鎧、ダメージ、距離、STR、CON、SIZ、DEX、攻撃分野、運動分野、操作分野、受け分野、隠密分野、知覚分野》《稲妻放射》《馳せ足》《麻痺》《耐(傷、死、魔、毒)》《生命感応》《命の皮》《窒息》《手当》《毒素》
友好カルト:聖チャラーナ(《混沌からの治癒》)、エルマル(《神槍》)、聖フマクト(《神剣》)、聖ウロックス(《混沌対峙》)。


魔術師階級

  魔術師階級はオトコリオンの人々にとっての魔道士であり、司祭でもある。彼らは人々に聖オーランスと“魔道の保持者”聖マルキオンの秘密の両方を教えるのである。実際には魔術師階級の者は魔道士か、教会の聖職者かのどちらか身を捧げ、その両方を行いうる程の才能を持つ者は極めて希である。およそ人口の20%が魔術師であり、彼らは極めて大きな魔術的潜在力を生み出し、とりわけ司祭の天候に関する力はオトコリオンの人々をずっと支えてきた。

  魔術師階級の者は“雷鳴の神”オーランスとしての聖オーランスの側面をその範としており、また下位カルト“光り持ち帰りし者”オーランスに対してもふさわしい存在である。

  魔術師階級のすべての者は徒弟魔道士となることが期待されているものの、そのすべてに対して聖賢となるために身を捧げることが期待されているわけではない。魔術師階級には家系の記録官、書記官、治療者、学者、作家なども含まれているのである。魔術師階級の者は土地を所有したり、呪鍛されたルーン鋼の武器を帯びる事を禁じられている。

入信者

  両親がともに魔術師階級に属している候補者は、成人に達すれば1ポイントのPOWを消費することで即座に魔術師階級に加わることができる。教会の外部からこの階級に加わることを望んだり、階級を移ることを望む者は、以下の基準を満たさねばならない。まず20オーブを教会に寄進し、〈ジャンプ〉、〈ラリオス語会話〉もしくは〈嵐語会話〉、〈(任意の武器)攻撃〉、〈(任意の武器)受け〉の試験に合格せねばならない。成功すればその後に聖オーランスに1ポイントのPOWを捧げねばならない。

  魔術師階級のすべての者は時間と収入の10%をカルトに捧げねばならない。彼らは都市に税を払う必要はない。フィーシブだけは例外で、そこではほとんどすべての魔術師階級のメンバーは魔術師の結社“赤き輪”に所属しており、この結社からその他の利益の見返りとして10%の時間と収入が要求される。入信者はカーストの戒律を破らないこと、邪悪な魔術を使用しないこと、祈祷師にならないことを誓わねばならない。

  入信者は通常魔道の道に従い、魔術師階級で司祭として昇進する者は稀である。彼らは教会に加えて、聖ランカー・マイと聖チャラーナのカルトにのみ、通常通りの条件で加わることができる。みずからの能力を証明することができれば、フマクトのカルトに加わり極めて希な“剣の聖賢”の一員となることができる。入信者は社会において許されているあらゆる魔道呪文を学ぶことができる。彼らは教会が認めた場合、精霊呪文を使用することができる。彼らは一回限りの神性呪文を得ることができ、「神性魔術放棄」、「危害忌避」、「嵐拒否」の誓願をたてることはできない。また「切開拒否」の誓願を第3の誓願とせねばならない。

侍祭

  彼らは教会の力あるメンバーである。彼らは、例えば穀物の実りを高めるためや、戦時には敵を打ち破るためなど、オトコリオンの人々の助けとなることにその時間を費やす。侍祭は決して希な存在ではなく、さらに魔道士の中にはこのカルトの立場をより良いものとするために、数年の間みずからの研究を中断する者もいる。

  侍祭となるためには教会に1,000オーブを寄進し、10ポイントの神性魔術を持ち、〈剣攻撃〉と以下の技能の中から4つの技能に関して、少なくとも50%の成功率を有しておらねばならない:〈嵐語会話〉〈隠れる〉〈ジャンプ〉〈聞き耳〉〈雄弁〉〈嵐語読み書き〉〈捜索〉〈(任意の武器)攻撃〉〈(任意の武器)受け〉。その上で彼らはまた聖試験にも合格せねばならない。

  侍祭は教会を支えるために時間と収入の50%を要求される。彼らは神性呪文を再使用可で獲得することができる。

司祭

  司祭位の候補者は〈剣攻撃〉技能に90%の成功率と、上記の技能(訳注:侍祭の技能と思われる)のうち2つに90%の成功率を有しておらねばならない。また10ポイントの神性呪文を有しておらねばならない。候補者はオーランス人の法に照らしてみずからが有徳であることを証明せねばならず、新たなる司祭が必要とされておらねばならない。“雷鳴の神”オーランスの司祭は“嵐の声”として知られている。彼らは同盟精霊が得られる可能性のある儀式を行うことが許される。見返りとして彼らはさらなる魔道呪文を得ること、以下に記されている神性呪文を再使用可で獲得すること、神性介入を試みることが許され、カルトからの援助を受け、戦闘で捕虜となった場合にはカルトから身代金が支払われる。彼らにはカルト技能か魔道呪文の訓練のために100時間の訓練時間が無償で与えられる一方、教会、周辺地域を支え、新たなメンバーを入信させ、かつての信者を除名せねばならない。多くの司祭は都市の境界外を統治するための小さな教区を与えられる。

  好まれる同盟精霊はシャドウキャットもしくはワタリガラスである。一般に嵐の声は皆、高い尊敬を受ける。彼らは教会に時間と収入の90%を捧げねばならない。すべての嵐の声は続く1時間の風の変化をあらかじめ感じることができる。

一般神性呪文:すべて。
特殊神性呪文:《雷石祝福》《シルフ招集》《雲海集中》《雲海拡散》《シルフ支配》《風力減退》《銀呪鍛》《飛翔》《風力増大》《落雷》《風向屈折》
友好カルト:聖チャラーナ(《CON回復》)、聖ユールマル(《魅力》)、聖ゴールデンタン(《見張り》)、聖ランカー・マイ(《心の障壁》)。


領主階

  領主階級はオトコリオン社会の支配者であり、“神々の王”オーランスを体現する者たちである。彼らは王、貴族、女王、政治家、そしてオトコリオン社会の統治者である。彼らの数は人口の5%程度であり、主に“貴族の都市”と揶揄されるフィシーブに集中している。領主階級は一族の系譜の中で唯一責任ある地位につくことのできるカーストである。社会の中では土地を所有し、そこから税を取れる唯一の構成員である。もっとも彼らはしばしば好意の証として騎士階級の者に土地を貸したり与えたりする。彼らはみずからの統治する者−通常は彼らよりも低い地位にある家族と彼らの土地に住む者−に命令することができる。このカースト内での昇進は、すなわち直接的な地位の向上に結びつく。“神々の王”オーランスの大司祭は、王、みずからに従うオトコリオン社会の者たちに命令する事のできる者たち、一族全体の首長のいずれかである。大司祭を擁することができるほど大きな家門は17しかない。領主階級の者は呪鍛されたルーン鋼の武器を保有することはできない。

  領主階級の者たちは通常社会の他のカーストの者よりも裕福であるが、必ずそうであるわけではない。何の価値もないほんの僅かな土地しか所有しておらず、臆病者と呼ばれるような領主階級の者が、その能力に見合ったカーストへと強制的に移されることはしばしば起こる。領主階級の者は、王と女王を例外として皆“卿”、“夫人”といった敬称を与えられている。

入信者

  領主階級の者は、その子供が成人した場合、1ポイントのPOWを消費することで即座に入信させることができる。このカーストの構成員でない者は、以下の条件を満たせばこのカーストに移ることができる。まず最初に土地を有していなくてはならないが、他のカーストでは土地を所有することができないので、領主階級に移るためには入信以前に土地の一部を候補者に与えるよう、他の領主階級の者の約束を取りつけておく。第2に候補者は以下の技能のうち、4つに成功せねばならない:〈雄弁〉〈(任意の武器)攻撃〉〈ラリオス語会話〉〈人間知識〉〈世界知識〉〈嵐語会話〉。入信者は6つの美徳を守ること、自分の土地と人々とを誤りなく、名誉に恥じぬように維持することを期待される。もし領主がそれらの徳を失った場合、他の階級−通常は農夫階級−へと退けられる。入信者はすべての基本アート、すなわち〈強度〉と〈距離〉と〈合成〉の魔道技能を得ることができる。彼らは専門家の魔道士として扱われ、その専門分野呪文は以下に記述されている。領主階級の者は少なくとも1,000オーブの資産を保有しておらねばならず、それを保有していない場合には農夫階級への移動に直面することになる。彼は収入の10%をカルトに捧げねばならず、さらに10%の時間を直属の支配者か一族ないし都市の首長のいずれかに捧げなくてはならない。入信者は以下に与えられている神性魔術を再使用可で獲得することができる。

  領主階級の者は聖フマクトのカルトに加わることだけが許され、もし望むのであれば、オトコリオン軍の司令官となることができる。

司祭

  司祭は傑出した地位にある領主階級の者であり、しばしば街の指導者や地方の司教区の支配者がその地位につく。この地位にある者は、その名誉と祝福の一部として即座に司祭の地位を与えられる。どのような場合でも、その地域の嵐の声たちが候補者たる領主を認めねばならない。

  司祭は公平かつ公正に支配し、彼らに従う者たちを守り、教会の美徳を支持することをオーランスから要求されている。これには地方の司祭に日々の糧を与えること、友好カルトのメンバーと一族を守ること、そして王とその家族に対し十分に責任を果たすことが含まれている。またすべての時間と収入の90%を捧げることも含まれる。

  彼らは通常の手順に従って神性介入を行うことができ、また通常通りPOW×3のロールに成功すれば同盟精霊を得ることができる。同盟精霊は王冠か領主階級の王位を表す他の宝器に宿る。領主階級の司祭は聖マルキオンに嘆願を行って他の4つの副次アートを獲得することができる。

一般神性呪文:《神託》《破門》《精神結合》《聖域》《隔離》《聖オーランス礼拝》
特殊神性呪文:《評議会招集》《雲海集中》《雲海拡散》《信徒への命令》《飛翔》《名誉認識》
魔道呪文:《誘引(危害)》《増幅(APP、交渉分野、知識分野)》《稲妻放射》《感応(敵意)》《神性魔術感知》《魔道抑制》《テレパシー》
友好カルト:聖チャラーナ(《CON回復》)、エルマル(《「猫目」》)、聖ユールマル(《魅了》)、聖ゴールデンタン(《見張り》)、聖フマクト(《誓約》)、聖ランカー・マイ(《心の障壁》)。


カルト特殊神性魔術

  以下の呪文は「ゆりかご河」、「グローランサの神々」と同じである:《雷石祝福》《大青祝福》《風力減退》《飛翔》《風力増大》《風向屈折》《風の便り》。

《家の祝福》 Bless Home
1ポイント、
儀式(浄化)、再使用可
  この呪文は聖オーランスの清浄さをもって一家族を祝福する。呪文によって家を守るために炉辺の精霊が慰めから召喚される。精霊は3D6のPOWを有し、家の領域に不可視の状態で留まるが、家の境界線を越えて離れることはできない。家族の長により命令されると、精霊は特定の人物を攻撃して占有し、家から離れ、戻ってこないように強制する。その後精霊は対象の占有を解き、家へと戻ってくる。この儀式は毎年、または精霊が精霊界へと退去した場合には投射し直さねばならない。この呪文は大聖祝日にのみ投射し直すことができる。

《評議会招集》 Call Council
1ポイント
範囲1km、瞬間、複合可、再使用可
  この呪文は呪文の範囲内にいる聖オーランスの信者すべてに合図を送る。その合図はオーランス信徒に会議が招集されたことを伝え、彼らは会議の場所として指定された寺院へと可能な限り早く移動せねばならない。オーランス信徒は、どの寺院が指定されたか、実際には会議がいつ行われるのか、さらに術者の名前を即座に知ることとなる。彼らはそれに応じる必要はない。評議会に呼ばれたオーランス信徒が誰も出席しないような場合、招集者は名誉と尊敬を著しく損なうこととなる。この呪文の乱用は不名誉なこととされる。この呪文は複合する1ポイントごとに1kmの効果範囲を有する。

《シルフ召集》 Call Sylph
1ポイント
遠隔、複合可、再使用可
  この呪文は即座にシルフを呼び出し、抵抗ロールなしで即座に術者からの1つの命令に従わせる。シルフはHPが0になるか、呪文の持続時間が終了するまで留まる。たとえその時点でシルフが《呪縛呪付》の内部にいたとしても同様である。このシルフは複合した呪文ポイントに等しいSIZと、それをもとにしたランダムな能力値を有する。

《信徒への命令》 Command Worshippers
3ポイント
範囲:特殊、持続:1日、複合不可、再使用可
  この呪文は2通りの方法で投射することができる。通常は、教会に存在するオーランス人のあらゆるカルトのすべての信者に影響を与える。もう1つの方法では、術者はこの呪文の対象となる単一の神かカルトの信者を教会の中から指定することができる。一度投射すれば対象となるカルトは変更できず、呪文の範囲を拡大したり制限したりすることはできない。
  呪文の効果時間の間、呪文の影響を受けた信徒は術者たる指導者の特別な同意がなければ神性呪文を唱えることができない。もし呪文を投射しようとしても失敗し、この場合呪文を使用として見なされる。司祭や侍祭は呪文を投射する際にこの状況に気付くことになる(だが彼らも術者がこの呪文を投射された瞬間に知ることができるわけではない)が、呪文を一回限りでしか獲得できない信徒は即座にはこの妨害に気づかない。この呪文は一時的であれ恒久的であれ、領主階級(もしくは“神々の王”オーランス)の他のメンバーには影響を与えない。
  この呪文は領主の土地のどこでも投射することができ、その土地に居る、もしくは入ってきたあらゆる信者に影響を与える。
  この呪文が司祭によって投射された場合は、聖ユールマルの信徒にも影響を与える。

《名誉認識》 Know Honour
2ポイント
遠隔、瞬間、複合不可、再使用可
  この呪文はオーランスの徳に従って生きているかを判別するために対象に対して投射する。対象が望むなら呪文に抵抗することができ、その場合術者は抵抗を打ち破らねばならない。術者はそのオーランス信徒がどの程度その特徴に従って生きているかを知ることができるが、それ以上は知ることができない。例えば、殺人者がこの呪文をかけられたとする。術者は対象が不名誉で徳に欠けている事は知ることができるが、それが誰かを殺したからであることを知ることはできない。


下位カルト

教会の構造

  教会は人々の崇拝する聖オーランスや聖ラリアといった主流のカルトや聖人を取り込んでる。また教会の一部は人々が信徒となっている下位カルトでもある。これと並んで、より強力ではあるものの一般的でない、聖フマクトや聖チャラーナといった他の聖人のカルトも存在する。それらは教会に完全に統合されているわけではなく、独自の体制を有している。オトコリオンの全ての聖人とカルトは大司教に対して責任を負っている。

他のカルトとの関係

  教会は教会の構成員が教会のコントロール下にある特定のカルトに参加することを認めている。例えば魔術師は聖ランカー・マイの信仰に加わることはできるが、例外的な状況下でないかぎり、聖フマクトへの参加は認められない。彼らは通常教会の構成員がカーストで禁じられているカルトに参加する事を認めていない。教会はアーカット崇拝のほとんどの派閥に対して、その構成員が教会に加わることを許しているが、特定の過激な派閥、特に“欺くもの”アーカットは冷淡な評価を受ける。教会がロカール派や正統フレストル派のようなマルキオン教の他の教派への参加を教会の構成員に許可することは絶対にない。

  異教の崇拝は制限されており、オーランス人の異教の神々への崇拝は難色こそ示されないものの、異教徒は農夫階級以外の教会のメンバーになることはできない。そのため、戦士階級の者が聖フマクトとを信仰することはできるが、戦士階級の者がエルマルを信仰することはできないのである。これに対する例外は、皮肉なことに、ヴァランティアとオトコリオン南部の住人に影響を及ぼすセイフェルスター人である。“包含主義者”として知られる彼らはガーリンに端を発し広まっているゴリアントの英雄カルトのメンバーである。カルトは聖人と他の異教の神の両方を崇拝することを彼らに許す神秘的な儀式を有している。これは北部オトコリオンでは−たとえそこが頻繁に異教のカルトを目にする地域(ランクスト、ラリア、サーコリオン)であっても−稀である。

復讐の精霊

  聖オーランスは慰めへと至る道を踏み外した信徒を裁くため、自由に使用できる多くの精霊を有している。精霊は様々な過ちに対して送られる。最も一般的なものは“虫”であり、湿疹を引き起こす弱い精霊である。“嵐の激怒”、“風の拳”、“遂石投げ”もまた一般的であるが、“死の天使”は特に邪悪で憎悪すべき背教者に対して送られることがある。

  しかしながら、もっとも最悪な呪いは教会からの破門であり、そのことは慰めに至ることはもはや無く、ほぼ確実に地獄行きが決定されたことを表している。

“ドラゴン殺し”アラコリング

  アラコリングは金剛石の嵐のドラゴン、ドラングを打ち倒し、邪悪なワームの友邦帝国と戦った“ドラゴン殺し”であった。彼は“神々の王”オーランスの下位カルトの創造者として、また竜殺しとして崇拝される。彼のカルトには2つの武器に熟達を示すことができた者だけが加わることができる(すなわち2つの異なる武器の攻撃ロールを行う)。彼は《竜虐殺》を教える。また下位カルトに参加しているオーランスのルーン・レベルの信者は特殊な加護と制約を獲得することが許される。加護は「特定の武器に祝福を受け、竜族に対して2倍のダメージを与えるようになる」で、制約はすべての竜族と死ぬまで戦わなくてはならない」である。

《竜虐殺》 Slay Dragon
2ポイント
遠隔、瞬間、複合不可、再使用可
  この呪文はワイバーン、ワーム、ドラゴン(夢ドラゴンのみ)とすべてのドラゴニュートに対して効果を発揮する。マギサウルス、恐竜、ストアワームには効果を発揮しない。術者が対象の抵抗を打ち破った場合、対象は死に至る。

ドロガージ

  ドロガージは戦いの踊りと太鼓の打ち手である。彼は〈浄化〉技能の教育を監督するのと同様に、〈舞踊〉と〈ドラム演奏〉の技能を無料で教える。彼はまた《舞の王》の呪文を教える。

《舞の王》 Lord of the Dance
3ポイント
自身のみ、持続:1演技、複合不可、再使用可
  呪文を投射すると、術者は1度の舞の演舞の間、ドロカージその人が乗り移ったかのように舞を舞うことができる。呪文の持続時間中、あらゆる〈舞踏〉ロールは1段階成功レベルが上昇する。そのため通常の成功が効果的成功、効果的成功が決定的成功という様になる。

四つの武器

  オーランスはその探索の間に、オーランスは英雄の領域に属する大いなる4つ魔法の品を救った。それらは“光り持ち帰りし者たちの探索”で格別の役に立った。それぞれの道具は個別の神性呪文を提供しており、“光り持ち帰りし者”オーランスと“四つ武器の神”オーランスの信者はそれを獲得することができる(呪文の詳細は『ゆりかご河』P.137-138参照)。稲妻の槍は《稲妻》を、闇のサンダルは《闇歩き》を、霧の肩衣は《霧》を、そしてアランの盾は《大地の盾》を提供する。

ヘラー

  ヘラーは雨の神であり、父親であるウマーシルの死後、オーランスにその身を捧げた。彼は“雷鳴の神”オーランスと“光り持ち帰りし者”オーランスの下位カルトに《降雨》を提供する。

マスターコス

  マスターコスはオーランスの戦車であり、聖オーランスが乗る魔力と生命とを持つ戦車である。マスターコスは知恵の井戸からもたらされた。彼は“神々の王”オーランスに《誘導瞬間移動》を提供する。さらに“光り持ち帰りし者”オーランスと“雷鳴の神”オーランスには《誘導瞬間移動》と《瞬間移動》をそれぞれ一回限りで提供する。“四つの武器”オーランスには《瞬間移動》を再使用可で、《誘導瞬間移動》を一回限りで提供する。

オデイラ

  この狩りの英雄はランクストで崇拝されていが、彼の崇拝は終焉した。彼は狩りの前にしばしば祈りを捧げられる。彼は“四つの武器”オーランスの下位カルトの一部として崇拝されており《命中》を提供する。

“光り持ち帰りし者”オーランス

  この下位カルトは聖オーランスの神秘的な部分に捧げられている。ヒーロークエスターや神秘なる者たちがオーランスのこの側面を崇拝する。他の側面から独立してこの下位カルトの司祭になることは可能ではあるものの、特殊なことである。彼らはヒーロークエストの魔術やヒーロークエストそれ自体以外にも、《ウィルド検知》と主要な下位カルトの神性呪文を再使用可で獲得することができる。この神秘的なカルトの信者がその秘密を軽々しく外部に漏らすことはなく、この下位カルトへの入信は勧誘だけが唯一の手段となっている。試験は行われず、地方の“光り持ち帰りし者”オーランスの司祭からの推薦だけが必要となるのである。どのカーストの者でもこの下位カルトのメンバーになることができる。

  “光り持ち帰りし者”オーランスの司祭になるためには、以下の4つの技能について90%の成功率が必要となる:〈浄化(オーランス)〉〈他の任意の魔術技能〉〈嵐語会話〉〈世界知識〉〈(他の任意の)知識〉〈(任意の武器)攻撃〉。彼らは特殊なヒーロークエストの道程を踏破せねばならない。そこから帰還を果たした者は皆一様に変化を受け入れており、そうでない者は皆死を迎える。彼らはこのヒーロークエストの道程で同盟精霊を得る可能性があり、同盟精霊はシャドウキャットに宿るか、特定の肉体を持たない精霊として獲得する。彼らは階級に関する制限を無視して魔道技能を学ぶことができる。彼らは時間と収入の90%をカルトに捧げねばならない。彼らは収入の90%を捧げねばならない。“光り持ち帰りし者”オーランスの司祭は皆、5年ごとにスランティールと個人的な会見を行わねばならない。彼らは計り知れない社会的な配慮を得ることができる。彼らは他のヒーロークエスターのために神性呪文を使用することや、儀礼的な儀式に従事することに捧げた時間を充てる。式典と儀式を行うために聖祝期のすべての時間を捧げる必要がある。彼らは以下の神性呪文を再使用可で獲得し、神性介入を1D10で行うことができる。彼らは罰を受けることなく精霊呪文を使用できるわずかな存在であり、罰を受けることなく《呪文伝授》を使用することのできる唯一の下位カルトである。

一般神性呪文:すべて。
特殊神性呪文:《ウィルド検知》、さまざまなヒーロークエスト関連呪文。

《ウィルド検知》 Detect Wyrd
1ポイント
接触、瞬間、複合可、再使用可
  この呪文は自分以外の対象に接触して投射せねばならない。対象は抵抗することができない。呪文の対象となった者がウィルドや運命の接触を受けた場合、司祭はそれを即座に知ることができる。宿命的な見込みのある英雄や人々を皆記憶されることとなる。ヒーロークエストの途上にある者についてもこの呪文を投射して記憶することで、司祭は彼らの行っているヒーロークエストの特性を知ることができる。もし対象の者が実際にウィルドの影響を受けているのであれば、術者は呪文1ポイントにつき10%の確率で、対象の運命の細部に関係する啓示を得ることができる。もしロールが失敗であった場合、他の司祭も今後それを試みることはできないものの、対象はいまだウィルドの痕跡ある者として記憶されている。この後、未来像の細部を見極め、詳細について確かめるために《神託》呪文を使用することができる。

ミンリスター

(Peter Michaelsに感謝を)
  ミンリスターはオーランスがラリアに生ませた息子である。彼はエールと醸造の守護聖人である。すべての信者は毎年小さな樽で一樽分のエールを捧げねばならない。捧げられたエールが地元の醸造主から見て満足のいくものでなかった場合、捧げた者は拒絶される。信者は蜜蜂を傷付けてはならない。信者は醸造の秘密を知ることができる。この下位カルトの司祭になるためには〈製作/醸造〉技能に90%の成功率を有し、1ポイントのPOWを捧げねばならない。カルトは彼らに精霊魔術の《麦汁祝福》を提供する。

《麦汁祝福》 Bless Wort (精霊呪文)
1ポイント
遠隔、持続、受動
  この精霊魔術呪文は発酵中の液体の発酵効率を上昇させ、ビール、エール、ミードをきわめて短時間で醸造する。

“雲砕王”シグロフ

  数世紀前混沌によって捕らえられ、近年ガランティアーによって解放されたこの精霊カルトはここ数年聖オーランスのカルトにもたらされた。この精霊は極めて高名であり、第2期に邪悪なジルステラ人がカージョルクの魔法を用いて呪縛するまでは英雄カルトとして用いられていた。彼の信者は、敵に彼の石の一つを投げつける精霊を容易に召還できる力を得る。シグロフの信者からなる部隊は皆、貯め込んだ石を敵に向かって雨のように降らせることで知られている。彼は《石射撃》を教える。

《石射撃》 Store Fire
3ポイント
遠隔、瞬間、複合可、再使用可
  呪文を投射した時に術者は石がどこに落下するか、狙いを定めねばならない。この呪文は雲量が51%以上の場合にのみ使用することができる。呪文1ポイントにつき1つの石が出現する。術者は呪文の範囲内に存在する単一の対象を標的とせねばならない。この石は術者のPOWに等しい命中率を持ち、またこの呪文の命中率は経験によって向上させることができる。この石は5D6の破砕ダメージを引き起こし、直径4mのエリア攻撃として扱う。GMの裁量により、その下敷きになった者は石を動かすまで傷を癒すことができない事にしてもよい。もし石が命中しなかった場合、ランダムに選んだ方角へ1D6×100m外れることになる。この結果術者に命中することもある。

ヴォーリオフ

  この英雄は主に農民階級に崇拝される。彼は“雷鳴の神”の司祭によって崇拝されるが、同様に入信者が崇拝してもかまわない。彼は《羊召喚》を提供する。

インキン

  このシャドウキャットは祖先の魔術的な交配の産物である。それは聖オーランスによって救われ、インキンは永遠に彼のペットとして、守護者として、仲間として自身を与えた。インキンは“雷鳴の神”に《匂判じ》を提供する。


その他

聖オーランスと精霊呪文

  聖オーランスは一般的な精霊呪文の使用を嫌っている。彼らは呪文精霊をオーランスからの天使、見えざる神からの神聖なる賜物と見なしている。精霊呪文を頻繁に用いる文化はその賜物を乱用しており、精霊の神性を浪費している。オトコリオン人は世俗的な使用、例えば世界の邪悪と戦う、作物を祝福する・・・といった行為には、魔道-人々が自由に扱えるようにした見えざる神自身の魔術-が良く機能することを知っている。しかしながらカルトへの奉仕のためや、ヒーロークエストの報酬として、時には聖なる呪文封印呪付物という形で、オーランス信徒は精霊呪文を受け取ることがある。そうした呪文は、通常のオーランスの呪文リストから選択されるべきである。

  全ての聖オーランス信徒は魔道を使用する。もし彼らが司祭の許可を得て(祈祷師や非合法なカルトに参加するなどして)精霊呪文を学んだ場合、たいていは何の疑いもなく許される。教会は信徒が精霊呪文を使うことよりも、教会固有の呪文精霊を使われることにより強い懸念を抱いている。エルマルのような異教の神の信徒も社会的には許容されているものの、彼らが農夫階級以外のカーストの一員として受け入れられることはない。


  本テキストはNicholas Effingham氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
  テキストは公式版ではありません。この文章を使用するにあたっては、各人の判断でご利用下さい。この文章の使用により何らかの損害があっても著者並びに翻訳者は一切関知致しません。


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