聖ウロックスのカルト

    -Cult of St. Urox-

copyright 1998, Nick Effingham
翻訳協力  RIZE
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/‘たびのまどうし’しーちゃん ,1999

原文謝辞

この記述は『ゆりかご河』の記述をもとにしている。Sandy Petersen氏の聖人に関する記述を参照し、Steve MarshのShifting Ruinsに関する記述から呪文を一つ提供してもらった。両氏に感謝する。

原注:これはドラフト版であり、あらゆるコメントを歓迎する。nikk@MailAndNews.comまで。よろしく(訳注:英文で!!)。

T.神話と歴史

  ベムロック一族のウロックスはウーマシルの息子であり、暗黒の時代にはベムロック一族の一員であった。彼らは高位の聖堂騎士の一族であり、その戦士らは雄牛の騎士と呼ばれ、その武勇ゆえに恐れられていた。あるとき皇帝がみずからを神格化したことに対してウロックスの妹が率直な批判を行ったため、彼女は邪悪なる皇帝の手下によって暗殺されてしまった。この時ウロックスはウーマシルの王国に加わったのである。悪魔の侵略に際して、一族の者すべてが農夫、魔術師、領主の各階級を捨て、戦士階級に加わった。彼らは粘り強く戦った。その戦いの心得は彼らの祖霊ベムロック-ベムロック一族のすべての祖-によって少しづつ彼らに伝えられたものである。彼らは途方も無い北の門の戦いにおいて戦い、その半数は死んでいった。しかし彼らはその民のために死ぬことに、何ら後悔の兆しも見せずに死んでいったのである。

  王オーランスがみずからの民に生きていくための新たな大地を探すよう命じた時、ベムロック一族の長は雄牛の騎士と聖堂騎士の全員を率いて、ウーマシル一族の宿営地からは遠く離れた暗黒の地へと向かった。かの地で彼らは病、精霊、混沌、そしてディホーリと出会った。彼らはその地での長く厳しい戦いを経て、一人を残して皆死に絶えた。生き残った者こそウロックス、偉大なる雄牛の騎士である。しかし彼らの死は無意味ではなかった。ウーマシル一族は突風の吹きすさぶ高原の底に隠れ谷を新たな住処としたのである。その地に住んでいた混沌の生物はウロックスと彼の家族により清められた。

  一族の犠牲と彼自身の行動への敬意から、ウロックスはオーランスの個人的な護衛にして混沌の殺戮者となった。神代において、狩りの部隊が悪魔の軍勢を打ちのめすために出撃する際には、ウロックスがしばしば彼らを率い、そしてしばしばたった1人で戻ってきた。きわめて危険な戦いで彼の同盟者はことごとく殺され、偉大なる騎士だけが戻ってくる事ができたのである。彼は裏切り者の魔法使いラグナグシルを打ち倒し、殺した。彼はみずからの兄弟、狂える者をその苦難から出した。彼はラーリアを誘拐しようとするイェルマリオの3度の試みのうち2度彼女を守った。マリアとも戦い、王国を病から守った。

  ウロックスの最大の勲は、彼が家を離れ王国に滞在していた時、オーランスが光り持ち帰りし者たちの探索を行っている時に起こった。彼はこの間、戦士階級の長となっていたのである。粉砕された王国の残党が悪魔と相対した時、彼らは人1000人分はあろうかという谷の縁へと追いつめられ、震え、混沌に怯えていた。ウロックスは聖なる都市の中央で悪魔を迎え撃った。戦いは長くそして激しく、ウロックスは普通の人間ならばらばらになってしまうような打撃を数多く受けた。彼の足が砕かれ、大地に崩れ落ちた時、彼は古き助力を嘆願した。創造主の天使が彼の元に来たりて、見えざる神の力を彼にもたらした。ウロックスは再び立ち上がり、再び戦い、悪魔に反撃を加えた。アダマントの巨大な岩によって彼は悪魔を打ち倒し、石の下に押しつぶしたのである。悪魔は死んだものの、聖なる都市は破壊された。

  オーランスの民は守り、混沌と戦った勲と、悪魔を打ち破ったことから、彼は創造主によって列聖された。彼は慰めへと至り、我々を導くために底に留まっている。彼の信徒は彼の一族の養子となり、混沌に対する防衛ための騎士となる。

  混沌を殺すためにウロックスのカルトに加わる者は、自分がいかなる形態のカージョルクの徒と戦って死んだとしても、慰めにおいて導かれる事を確信している。みずからの罪を浄化するためにウロックスのカルトに参加する者は、自分がいかなる形態の混沌と戦って死んでも、転生できる事を確信している。

  全ての肉体は単神教会の通常の作法に則って荼毘にふされる。

  聖ウロックスのルーンは、「死」、「風」、「獣」である。

U.カルトの生態

  聖ウロックスのカルトは混沌の殺し手であり、究極の混沌殺しである。神代において、多くの混沌の存在やデイホーリが打ち負かされた事は彼の手によるものである。彼のカルトは異端審問も行う強襲部隊だけでなく、ティナロスやラーリアでの混沌狩りにも宗教的情熱を示している。彼らは政治的な権力を有さず、その数は死亡者がでるため日々変化している。カルト全体が戦士階級によって構成され、教会の軍事部門、マルキオンの剣の管轄下にあるものと考えられている。

  ウロックス信徒は全ての時間を混沌との戦いとその準備に費やしている。彼らは通常陰鬱で、血塗られた戦士であり、彼らは短い人生の間に多くの死と暴力を目の当たりにしている。私心なきゆえに、彼らはヴァランティア全土で尊敬されている。彼らは強力な騎士からなる聖堂騎士であり、プラックスやラリオス東部の無法なストーム・ブル信徒とは似ても似つかない。各季節の「静穏の週」に聖日がある。正確な日程は季節により異なる。「海の季」は「凍の日」であり、「火の季」は「水の日」、「地の季」は「土の日」、「闇の季」は「風の日」、「嵐の季」は「火の日」である。大聖日は「嵐の季」、「静穏の週」、「荒の日」である。これは悪魔の破壊と悪名高い“我が戦い我らが勝った”を祝う日である。

V.世界におけるカルト

  聖ウロックスはヴァランティアの熱狂的な混沌の殺し手たちによって崇拝されている。カルトは他の地にも寺院を有してはいるものの、ヴァランティアの雄牛の大寺院の規模からすれば、その数は少なく、互いに離れている。カルトは宗教的政治力すらほとんど有していない。ウロックスは邪悪な罪を清めてくれる能力のある神としても崇拝され、もっとも罪深き者を除いて、あらゆる者が混沌との戦いの中で死ぬことにより、自分自身を罪から解放する可能性を有している。多くの構成員は前科者であるが、カルトは禁固刑の判決を受けた者がカルトに加わりその刑を免れることは認めていない。そのため処刑の判決を受けた者だけが死への道を選択することができるのである。カルトの経費は構成員による略奪品と聖祝日の教会への献金でまかなわれている。

  カルトは、(たとえそれを突き止めたことが多くないにせよ)ティナロスの未知の、想像し難き恐怖からオトコリオンを守る事、ラーリア(混沌の温床がときおり発見される)への侵攻、さらに近年は活発ではないものの、サナター信徒に対する異端審問への援助に積極的である。

  ヴァランティアに大寺院があり、わずかな寺院がラリアとの国境近く、1つはフィーシブに、1つはテンペスト・ホールにある。小寺院がオトコリオンとティナロスの国境線上にあるウロックスの砦にある。カルトはシーマス・ベムロックによって支配されている。彼はあまり強力ではないものの英雄であり、彼は通常、《神託》によって混沌の温床を探ったりすることにその時間を費やしている。

  社では《混沌妨害》を教えている。

W.入信者

  入信者になることができるのは、戦士階級の者だけであり、候補者には混沌の穢れがあってはならない。また候補者は彼らが従うことを受け入れてくれる雄牛の騎士に対して、揺るぎなき忠誠を誓わねばならない。候補者は通常の入信試験に合格せねばならない。必要な技能は以下の通りである:<(任意の)武器攻撃>、<(任意の)武器攻撃>あるいは<(任意の)武器受け>、<浄化>、<視力>、<捜索>。

  全ての入信者は少なくとも年の半分の時間を、みずからが誓いを捧げた雄牛の騎士とともに費やさなければならず、召喚されれば戻って来なくてはならない(通常彼らは教会のために働くが、ときおり雄牛の騎士とその従者は傭兵として、もしくはファミリー・ガード(ウロックス信徒はアーカット派の反混沌主義者に好まれる)として働き口を見つけることがある)。彼らは一部、もしくはすべての混沌に敵対して熱狂的に働かねばならない。あらゆる混沌の活動を報告し、できるかぎりあらゆる混沌の勢力と戦わねばならない。そのためみずからを上回る混沌の軍勢に対する自殺的突撃が要求されているわけではないが、それが前代未聞、という程でもない。

  その見返りとして雄牛の騎士は入信者に食事と住まいを提供する。彼らの余った時間は、通常雄牛の騎士による無料の訓練が行われ、混沌を殺す事の見返りとしてウロックスの精霊魔術を教授される。通常ウロックス信徒は少なくとも数ポイントの精霊呪文を持っている(このため、精霊呪文のリストがここに記載されている)。

  全ての入信者はオトコリオンのベムロック一族の一員であり、すみやかに以前の家族との縁を断つ。彼らは<混沌感知>の技能を得る。

精霊魔術:《敵の検知》、《呪払》、《熱狂》、《治癒》、《防護》。

X.雄牛の騎士

  雄牛の騎士は現世における聖ウロックスの象徴的顕現であり、冷淡、憎悪、苦痛、悲しみ以外のいかなる良い感情をも欠いた剛胆なる殺戮者である。彼らは混沌を殺すため、そして彼に従う者と彼が死す日のためだけだに生きている。雄牛の騎士は戦士階級と神にのみ忠誠を誓っている。

  雄牛の騎士の候補者は<(任意の)武器攻撃>と以下の技能のうち4つの技能に90%以上の成功率を有していなくてはならない:<(第2の)武器攻撃>、<騎乗>、<視力>、<捜索>、<混沌感知>、<盾受け>、<追跡>。空席は問題とならない-常に空席があり、死亡率の高さからそれが十分に満たされること決してない。雄牛の騎士は結婚してはならない。彼らの子供たちはみな血族ではない。だが愛妾をもうけることや一夜限りの恋愛、私生児にはなんら制限がない。彼らは全ての時間をカルトに捧げねばならず、余った時間は配下の訓練に費やされる。

  彼らは神性呪文を再使用可で獲得するする事ができ、1D10での神性介入を行うことができる。また騎士の地位に昇進する(私のハウスルールでは、彼らはAdvantages Statusを30ポイント、Military Rankingを120ポイント受け取る)。かれらが単純な英雄の探索路(POW×3で抽象的に表される)を成し遂げた場合、彼らは同盟精霊を得ることができる。それらは通常、独特の雄牛のヘルメットに呪縛されている。

一般神性呪文:すべて。

特殊神性呪文:《無敵》、《シルフ支配》、《混沌対峙》、《混沌妨害》、《盾》。

Y.特殊カルト技能

  『ゆりかご河』P.141または『グローランサの神々』P.53参照。

Z.特殊カルト神性呪文

  『ゆりかご河』P.141または『グローランサの神々』P.53参照。

[.下位カルト

復讐の精霊

  カルトの復讐精霊は、混沌を助けた信徒の元にのみ現れ、他の規律を犯した者は教会が取り扱う。もし信徒がこのカルトを脱退することを望んだ場合、自由にそうすることができる。聖なる罰を与えるためにやってくる精霊は“頭憎みの”アオイフであり、この精霊はオトコリオンに聖ウロックスの光をもたらした女傑である。彼女はPOW25、INT16の精霊であり、精霊戦闘により対象を攻撃する-彼女が罰すべき信徒を倒せば、対象の存在は以後永遠に、100m以内のあらゆるウロックス信徒に気づかれやすくなる。ウロックス信徒は生来の感覚でその存在に気づき、その罪人を殺そうとするだろう。

  カルトの大司祭はアオイフを通じて《集団混沌対峙》を得ることができる。

《集団混沌対峙》  Mass Face Chaos
3ポイント、範囲:特殊、持続、一回限り
  この呪文は混沌からの不利益をもたらす能動的な能力(グールのほえ声など)や、混沌が心理的にもたらす受動的な効果を受けずに、混沌に立ち向かう能力を術者の声の届く範囲の全員に与える。いかなる受動的な諸相(外見による効果など)も効果を発揮しない。加えて、混沌に立ち向かっている全員は呪文の持続時間中《熱狂》の効果を得る。

“解放者”アーカット

  “剣王”アーカットはラリオスの解放者であった。彼はフマクトとその妻の息子であった。母親は邪悪な皇帝の一族であったが、そこから反逆したのである。彼女は最後には殺され、その存在は多くの定命の親族の知識から失われた。彼女の息子のアーカットはドラストールに住んでいた邪悪な神グバージ・ジョティマムソンを殺すために世界へとつかわされた。彼は勝利した一方で、彼の持つ熱狂的な性質が邪悪な皇帝の眷属を崇拝するよう彼を駆り立て、腐敗に屈したのである。だが彼の世界を救った功績ゆえに、彼は聖フマクトの信徒によって崇拝されている。彼にもたらされたのと同様の運命に、信徒を引き込む誘惑に落ちぬよう思い出すものとして。

  聖アーカットを崇拝するためには、8ポイントのPOWを捧げねばならない。それ以後、彼の祝福を嘆願できるようになる。嘆願を行うには1ポイントのPOWが必要であり、次の夜明けまで、100m以内の全ての啓発された存在を半透明な白色に変える。祝福を受けた者が啓発されている場合、その者自身も効果に含まれる。

“炎の剣持つ”ガーラント

  ガーラントはアーカットの傍で吸血王に対する戦争を戦い、彼の支配君主となった。アーカットはみずからの君主のために多くを捧げたが、ついにガーラントはみずからの民と王国か、それともアーカットかという選択を迫られた。彼は友ではなく民を守ることを選び、この裏切りは多くの叙事詩に記録されている。彼はヴィーヴァモートの吸血王を打ち破った働きからウロックスのカルトで崇拝されている。

  聖ガーランドの加護を得るには、3ポイントのPOWが必要である。これによって彼の祝福を嘆願するとができるようになる。祝福を嘆願するためには1ポイントのPOWが必要であり、これを行うと嘆願者の持つ刃のついた武器が魔法の物となり、触れている時はいつでも《火剣》が投射された状態となる。この効果は永遠であり、別の武器に加護を移す際には再びガーラントに嘆願する必要がある。同時に1つの武器だけに効果を受けることができる。

\.友好カルト

聖チャラーナ

  彼女は《混沌からの治癒》を提供する。

聖オーランス

  彼の主は《飛翔》を提供する。

ヴァリンド

  彼の手に負い難い係累は《雲海集中》を提供する。


訳者謝辞
  この記述の翻訳に際し、RIZE氏より下訳を御提供いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

  本テキストはNick Effingham氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
  テキストはは公式版ではありません。この文章を使用するにあたっては、各人の判断でご利用下さい。この文章の使用により何らかの損害があっても著者並びに翻訳者は一切関知致しません。


トップに戻る。 コンテンツに戻る。 翻訳ノートへ