夜闇の村

    - The Hut of Darkness -

copyright 1992, Michael O'Brien
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,2000[2000.03.23].



イントロダクション

お詫び

このシナリオはベトナム戦争に関する特定のフィルムに似ているだけでなく、『ガリア戦記』の様に3部構成になっています。
  第1部:“エスロリアの女王”では、冒険者たちはゼンマイ仕掛けの“エスロリアの女王”に乗り込み、“サンダーシャワーの滝”を目指して上流へと旅することになります。
  第2部:“ルーン・メタル・ジャケット”では、パーティは水の降り注ぐ断崖を登り、その後徒歩でジャングル深くの原住民の村へと向かいます。
  第3部:“トロウルの谷”では、キャラクターは村へとたどり着き、謎に満ちた新たな指導者に戦いを挑みます。

セッティング

  この冒険は東部ウェネリアの未開の高地に設定されており、沿岸の小さな交易都市ピーロスで始まります。荒れた沿岸沿いの河口に位置する多くの他の居留地と同じ様に、この町はマルキオン教徒の交易王によって統治されています。ピーロスはヴォリオール川(ソランス川としても知らています)の河口に位置し、この川は大首長グレイメインの支配するソランスの地から流れて来ています。ピーロスとソランシの間では重要な河川交易が行われていますが、ピーロスの交易王はいかなるものの支配も認めていません。新海岸にそって、ピーロスから聖王国の巨大な港ノチェットまで定期的に船が出ています。これは東はリゴスまで、西はカクストープロスとハンドラまで延びています。さらなる情報はジェナーテラ・ブックのマニリアの章、“Runequest Companion”の聖王国の項を参照してください。

  冒険者たちはヴォリオール川とその支流を定期的に往復している交易商人に雇われます。その支流の1つがクリーン川で、ペルシ火山の麓をジャングルの奥深くに流れています。火山の周囲はその火山性の土壌に養われた深い熱帯雨林が取り巻いています。カラドラランドから東の部族と同じように、この地の原住民は焼き畑農耕を営む素朴な「農耕民族」です。彼らは祖先を崇拝し、時折火山をなだめ、未開の存在によって導かれています。原住民の外界との接触は危険な河川の旅を経てこの地に現れる交易商人に限られています。彼らは金属や身の回りの物と、ジャングルの鳥の美しい羽やある種の珍しい薬草、物珍しい有用品などを交換するために現れます。

  原住民はジャングルの中で数は少ないものの活力にあふれたグリーン・エルフの共同体と、時に競いながら共存しています。このエルフたちはアーストラ森林から避難民の末裔です。これらのエルフたちはまたピーロスの人間たちと限定的ながら交易を行っており、交易王配下の商人たちの間では一般的に友好的であると考えられています。

募集

  過去におけるある人物の好意から、そしてその人物の未来の好意を得るために、交易商人であるターラ・サンズワインはピーロスの交易王の支持の下で計画を進めることに同意しました。彼女は剣士の一団を探し雇おうとしています。経験豊かである必要があり、それぞれの求人に対して高額の報酬を約束し、特に金額に関しては平均的な戦士が心変わりする以上の金額を提示します。ターラはそれぞれの候補者の体躯の大きさを調べ、ある金額を申し出ます(この金額を抽象的に決定するには、もっとも高い〈武器攻撃〉技能成功率×10Lの金額の申し出があるものとします)。もし非戦闘系のキャラクターが、自分の技能は肉体的なものよりも魔術的なものが優れていると不平をもらした場合には、ターラはぴしゃりと言い放ちます。「私は剣を探しているのであって、幸運のウサギの脚を探してるわけじゃないわ。依頼を受けるか、ここを立ち去るか、2つに1つよ。」

  ターラは任務が商用の旅であり、「私がいつも行っている場所よりもほんの少し上流へ行くの。それが私がついてきてくれる人たちを必要とする理由よ」と言う以外は、任務の本質的な部分については語ろうとしません。彼女が商用で定期的にグリーン川遡っていることは、キャラクターは地域的な知識として知っています。



第1部:エスロリアの女王

  上流への旅程での主要な2人のNPCの描写:

ターラ。彼女は大きな影響力を持つ交易商人で、良く日に焼けた喰えない女である。モヘア。彼はドワーフでありターラの従者である。彼は風変わりで小柄なエンジニアであり、“エスロリアの女王”号が推進するための動力源である機器が間違いなく動くようにしている。

  ターラとモヘアがみずから進んで戦闘に参加する事はなく、状況が許せばデッキ内に引きこもっている事を好みます。ターラは彼女のためにキャラクターが戦う様金を払っているのであり、それこそ彼女が彼らに期待している事なのである。

エスロリアの女王

  “エスロリアの女王”号はターラの交易艦隊の誇りである。スクリュー推進の平底の荷船であり、全長12m、状態は良好である。デッキの下は荷物室とゼンマイ仕掛けの機器にしめられている。ターラはこの空間に入らぬよう厳しく命令する。デッキの上には小さな船室の上に舵輪室がある。デッキのすべての階層は小さな木製の梯子で行き来するようになっている。アルバレストが1門船首の回転砲座に取り付けられており、耐水布の覆いがかけられている。そのすぐ横にある頑丈な耐水性のケースにはアルバレスト用の矢が納められている。   プレイヤーに“女王”のデッキ図を見せ(ハンドアウト#1)、それを用いてそれぞれの居場所、待機の状態、使用するであろう知覚技能を示させること。

出発

  ターラのパーティが集まったならば、“エスロリアの女王”号はピーロスを出発し、ヴォリオール川とグリーン川の合流点を目指して上流へと向かう。この小さな船はすぐに街の周囲の開けた土地を抜けジャングルに入る。1マイル進むごとに緑は青々と茂っていく。遠くには火山が見えその噴煙が天に向かって登っていく。

  川の合流点までの旅は何事も起こらず、丸一日の時間を要する。“エスロリアの女王”号は似たような多くの公易商船と原住民が漕ぐ無数のカヌーにすれ違う。ちょうど日が沈む頃ターラは小さな居留地に到着する。パーティはその囲い地の中で一晩休むことができる。マルドロスとして知られるこの砦(地域の部族が支配している)は不作法な辺境の町であり、原住民たちを目にする最初の機会である。もっとも彼らは町の周囲で縛り首にされており、文明化の波と暴力の犠牲者としての姿をさらしているのだが。細身の体をし、黄褐色の肌を持つウェアラン人である彼らは、異なる言葉を話してはいるもののカラドラランドの人々と大きな違いはない。

  次の日の明け方、“エスロリアの女王”号はマルドロスを後にし、それからすぐに広いヴォリオール川に別れを告げ、グリーン川へと船を進める。イェルムが地平線にわずかに見えているだけにも関わらず、その住人の吠え声や葉鳴りの音にジャングルはすでに目覚めている。“女王”はグリーン川(現実には泥っぽい茶色をしているが)の流れに逆らい、気怠そうにゆっくりとその歩みを進める。ターラは舵をとっており、モヘアはこの小さなボートが最高スピードを出せるよう、神に願ったり神を呪ったりしている。

  “女王”の推進の方法(ゼンマイ仕掛け)はプレイヤー・キャラクターにとって未知のものであり、異質な物として描写すべきであることに注意すること。地方の原住民は、ターラが悪霊を彼女のボートの船底に鎖で繋いでいると信じており、プレイヤー・キャラクターも同じように考えるかもしれない。唯一モヘアだけが、自分作ったボートに動力を与えている、巻き上げられた巨大なバネの動かし方を知っている。

手紙

  居留地は川の数え切れないうねりとカーブのため、見通しのきかないジャングルに隠されてすぐに見えなくなる。昼になろうかという頃、ターラはキャラクターたちに任務の真の本質を明かす。モヘアはターラの言うとおり、冒険者たちを送り込むために舵輪をとる。

  彼らの仕事については、ターラがピーロスの交易王から受け取った手紙がもっとも良くその内容を伝えており、彼女はそれを冒険者たちに見せる(ハンドアウト#2)。

  冒険者たちがすべてを理解したならば、ターラは地図(ハンドアウト#3)を広げブリーフィングを続ける:

  「これがグリーン川でここがサンダーシャワー。私があなたたちといけるのはこの滝まで。多分3日位かかると思うわ。そこについたなら私の知っている魔道呪文を幾つかかけてあげることはできる。呪文はあなたたちがクンダに着いて、仕事を終えるのに十分な時間持続するようにしておくわ。村を見つけるのはあなたたちの仕事。このあたりのどこかだろうと思うわ。崖をよじ登るこのできる道は私の知る限りここだけ。ここは巨大な蔓草が谷底まで延びているの。私の聞いたところではそこから村への道があるそうよ。何があっても道から外れてしまわないこと。私はあなたたちを捜す捜索隊など出すつもりはないわ。」

「クンダについたなら、首領を殺す方策はあなたたち自身で立てなくてはならないわ。村人はなるべく殺さないこと。彼らは今のところ間違った導きによって導かれているだけで、首領を廃して古老がその地位につけば、彼らはジャングルの隠れ家を捨て祖霊崇拝の道に戻るはずよ。どのような手段をとるにせよ、彼を公の場で攻撃しないこと。そうじゃないと女子供も含めて村人全員と戦わなくちゃならなくなるわよ。」

「サンダーシャワーに着くまでは私と私の財産を守ること。」

クロコダイル

  朝から午後になるにつれ、川は幾分広くなり、両岸が砂浜となってくる。川岸にはたくさんの朽ちた丸太が転がっている。〈視力〉ロールに成功すればそれらに目があることが分かる。後部で欄干を修理していたモヘアが、突然川に落ちる。彼は即座に沈んでいく。プレイヤーがこれに見とれていたのと同じように、冒険者たちは水に落ちる音と、西の川岸の“丸太”が水の中に滑り込み、モヘアの落ちた場所めがけて泳ぎ始めるわずかな水音に気をとられることになる。

  「彼を引き上げて!!」ターラが叫ぶ。彼女はエンジニアのことを言っているのだろうか?それともクロコダイル?クロコダイルがモヘアにたどり着くまでに3戦闘かかり、4戦闘ラウンド目に彼を攻撃する。もしキャラクターが武器を手にしているのであれば、この間クロコダイルに向かって射撃することができる。アルバレストは耐水布の覆いをとるのにDEX×5のロールに成功する必要があり、矢を装填するのにさらに4ラウンドかかる。

  モヘアを救出するには彼の所に行くのに1ラウンド、彼を掴まえるのに1ラウンド、彼を連れ帰るのに1ラウンドかかる。〈泳ぎ〉ロールが毎ラウンド必要になる。これに失敗すると、たとえ先に食べられなかったとしても、彼は沈んでしまう。モヘアは全く泳ぐことができず、ロープや浮きを掴もうとすることさえできない。誰も彼を助けに飛び込まないの場合、ターラが手近な者を突き落とすだけである。モヘアの〈エンジニア〉の技術は彼女の仕事の生命線であり、彼女は彼を失う訳にはいかないのである。

アルドリアミの待ち伏せ

  午後のまどろみは夜の帳に覆われ、イェルムは炎の降下を始める。ターラは前方に倒木を見つけ、呪いの言葉を吐きながら左の川岸ぎりぎりに舵を切る。

  〈視力〉ロールに成功すれば、左の川岸の茂みの中に4人の人影が見える。キャラクターが反応すると、未知の戦の雄叫びが川を越えて響き渡る。突如死を運ぶ風切り音が耳に飛び込む。ジャングルから吐き出された緑の矢羽の矢が風を切る音である。

  4本のやすべてに《加速》が投射されており、もっとも目立つ標的に狙いを定めている。

  ターラは以前にジャングルのエルフたちと取引したことがあり、パーティに撃ち返さぬよう命令する。さらに4本の矢が船に対して射かけられたとき、ターラは異国の言葉(アルドリア語)で呼びかけ始める。プレイヤー・キャラクターが反撃していなければ、エルフたちは即座に射撃を中止する。プレイヤー・キャラクターが反撃を続けるのであれば、ターラは毎ラウンド彼女の〈言いくるめ〉で彼女が友人であることをエルフたちに納得させようとする。その呼びかけの合間に、彼女はパーティに武器を降ろすよう金切り声をあげる。

  休戦に達すれば、4人のエルフはツタを使ってボートに乗り移り、たどたどしいマルドロス語でターラと短いやりとりをする。彼らが立ち去ると、ターラは、エルフたちが上流に“暗黒の者たち”がいると言っていたことをキャラクターに話す。彼女は彼らがそれ以上詳しくは話さなかった、という。

  “女王”はパンパンと音を立てながら、日が暮れるまでにもう1km川を上流へと進む。ターラはグループに見張りに立つように命令し、その後モヘアとともに下に降りる。夜のモノトーンの気怠さが日中の心地よい音に取って代わり、いらいらさせる虫がランタンの周囲に群がっているが、大きな出来事は何も起こらない。

昆虫の群

  その午後の遅く、川は再び広くなる。イェルムは立ち去りつつあるが、気の和らぐ兆候は見られない。今までになく湿気が多く不快感がこみ上げる。前方を見ると暑さで川にもやがかかって見える。

  〈視力〉ロールに成功すると、そのもやが何千という虫であることに気付く!ボートが近づくとキャラクターには川岸にいくつもの大型獣のきれい食べ尽くされた骨が見える。「誰か舵を!!」ターラはそう叫びながら操舵室にある梯子扉から下へと飛び降りる。

  昆虫の群は大規模な昆虫の群れ(『クリーチャー・ブック』P.39)と同じである。もしだれかが舵をとるためにデッキに残るのであれば、ボートが群を通り抜けるのに3戦闘ラウンドかかる。もしキャラクターが下に降りたのであれば、ボートは川岸に乗り上げる。ターラは誰かに舵を切りに行かせねばならなくなるだろう。この間彼らは3D4ラウンド虫たちにさらされることになる。

夜更け

  ターラは再び川岸へと船を進める。今度は虫たちに注意しながらである。夜はもう何事もなく更けていく。

川での2日目

  “エスロリアの女王”号がさらに上流に進むと、川は再び狭くなる。どちら側もジャングル徐々に深くなり、シダ類の緑が頭上を覆うようになる。ぶら下がったツタがキャラクターの顔にベタリと当たり、機械が茂みに対して奮闘するように、新たな注意を払わねばならなくなる。

さらなる遭遇

  午後遅く、“女王”は目的地に到着する。巨大なサンダーシャワーの前でボートはクンダ村から来た狂信的な原住民たちの待ち伏せを受ける。もしGMが望むのであれば、待ち伏せに先立ち川でのさらなる遭遇を起こしても良い。適したイベントとしては川ガエルの攻撃(クリフ・トードに類似。『クリーチャー・ブック』P.57)、梯子を食いちぎろうとするゴープ(『クリーチャー・ブック』P.37)、ツタから巨大なヘビが落ちてきてキャラクターに巻き付こうとする(『クリーチャー・ブック』P.66)、さらに殺人類人猿が略奪を行ったり、釘付けされていないものを盗んだりする(『クリーチャー・ブック』P.74)かもしれない。

樹上の戦士たち

  ボートはすぐにツタでできた不気味な緑色の繭に入り込む。前方から鈍い吠え声が聞こえてくる。

  木々の梢に対して-50%の〈視力〉に成功すれば、緑色の泥を体に塗り、背景のジャングルにほぼ完璧にとけ込んだ裸の人間たちの一団を光が照らす。数秒の後、戦士たちは怒りにかん高い声を上げながらデッキにツタを使って降りて来る。それぞれのキャラクターに最低1人の戦士が襲いかかる。狂信者は男女ともそれぞれ額に「死」のルーンの入れ墨をいれている。この戦士たちは死ぬまで戦い、相手を水の中に落とそうとする。彼らは殺される時、殺したものに呪いの言葉をはく。

サンダーシャワー

  襲撃からそう経たぬうちに、“女王”は次のカーブを曲がり、ついに冒険者の眼前にサンダーシャワーの瀑布の景観が広がる。滝は60mの崖から広く流れ落ちており、滝壷は泡立ち、水飛沫が空気を満たしている。その音で何も聞こえず、見る間に肌が濡れていく。“エスロリアの女王”号は逆巻く波を超えるたびに前後左右に揺れる。荒れ狂う流れに対するターラの船長としての技量にキャラクターは驚くことだろう。

暗殺者

  この畏怖すべき光景を間のあたりにしたため、キャラクターはペイントを施した戦士が泳いで近づき、ボートによじ登り、船尾に乗って来たことには気づかないだろう。彼はもっとも手ごろな犠牲者を背後から攻撃する。他の者たちと同じように彼の額にも「死」のルーンの刺青が施されている。

さらば“エスロリアの女王”号

  暗殺者たちを振り払ったならば、ターラは舵輪を鋭く切り、小さなボートを西の川岸に上陸させる。モヘアは商船を補修するのに忙しく動き回り、ターラは藪の中の小道にキャラクターを案内する。

  彼女は手を口に当てて声を殺しながら、キャラクターに最後の説明を始める。

「モヘアと私は“女王”を少し下流へと移動する。私たちはそこで4日間あなたたちを待つわ。もしそれまでにあなたたちが帰ってこなくても、私たちはあなたたち抜きで出発することにする。幸運を祈ってるわ。」

   「恐ろしい武器になるわ。」そういってターラはキャラクターの武器の1つに《深傷8》を持続時間3日半で投射しようと申し出る。この呪文を投射するのにターラは17MPを消費する。

  ターラは親指を立ててみせると、急いでその場を離れる。ここからはすべてキャラクターに任せられている。


第2部:ルーン・メタル・ジャケット

これを登るのか?

  出発して西に向かうと、ターラが最初のブリーフィングで話していたツタがある。信じられないほど深い茂みの向こう側、少し離れた場所にある。

  ジャングルを抜ける長く険しい道を進まずにすむので、気の短いキャラクターは滝のそばの崖を登ろうとするかもしれない。崖の凹凸は少なく、十分な〈登はん〉技能を持つキャラクターはその試みが極めて危険な行為であることがわかる。実際には6回の〈登はん〉ロールが必要であり、1回のロールでそれぞれ10m進む。もしロールに失敗したならば、キャラクターはDEX×3のロールを行い、そのロールにも失敗したならば落下してしまう。例えばキャラクターが4度目のロールに失敗したならば、そのキャラクターは40m落下する。ああ!!

ツタ

  キャラクターが正しい選択をしたと仮定した場合、彼らの眼前の道を進むことになる。ツタの場所にたどり着くには、午後の残りの時間一杯かかる。キャラクターがその場所にたどり着くのはもう夕暮れであり、登はんにはあまり安全な時間帯ではない。もし挑戦するのであれば、すべての〈登はん〉ロールには-50%の修正がかかる。

  まとわりつく虫を除けば、夜は何事もなく明ける。〈聞き耳〉ロールに成功すれば、遠くに響くドラムの音と、絶える事なき滝の水音が聞こえる。

  日の光の下では、ツタは登り易そうに思える。驚くべき強度を持つ太く、節の多い生きたこの綱は谷底まで垂れ下がっている。

  この場合でも6回の〈登はん〉ロールは必要だが、すべてのロールに+20の修正を加える。ロールに失敗した場合、キャラクターはその場から動くことができず、新たな手掛かりを探すためにもう1度ロールを行う。ロールがファンブルであった場合、キャラクターは落下する。

  キャラクターの1人が20m登った時点で、スリングの弾が通り過ぎる大きな風切り音がする。裸でペイントを施した女性の人影が崖の上に見え、彼女はスリングに次の弾を装填している。スリングの女戦士は何らかの方法で発射を阻止されるか、弾がなくなるまでスリングを撃ち続ける。その後彼女はキャラクターに白兵戦を挑むためツタを降り始める。

  キャラクターは1戦闘ラウンドにつき移動力と同じ距離(人間の場合3m)登ることができる。登っている最中に呪文の投射や発射武器の発射は極めて難しい。両手発射武器を用いるキャラクターは、ツタに掴まっているためにDEX×2のロールが必要である。片手発射武器を使用、あるいは呪文の投射を行う場合には、ツタに掴まっているためにDEX×3のロールが必要にある。DEXロールに失敗した場合、その行動に失敗し、武器を落とした上で、DEX×5のロールを行わねばならない。ロールに失敗した場合、キャラクター自身も落下する。それらに比べれば片手接近戦武器の使用は容易だが、それでもDEX×5のロールに成功する必要がある。ロールに失敗した場合攻撃は自動的に失敗する。《にかわ》の呪文や補助ロープはキャラクターがツタにぶら下がったまま戦闘を行う際の助けとなる。

崖の上

  キャラクターが崖の頂上にたどり着けば、襲撃者を調べることができる。彼女もまた額に死のルーンの入れ墨を入れている。

  崖の上からは眼下に広がるジャングルのすばらしい眺めを目にすることができる。東に目をやれば、キャラクターはジャングルの間をゆったりと流れるグリーン川が見える。遙か遠くにはカラドラランドの雄々しい火山が煙と灰を吐き出している。南に目を向ければ荒廃した新海岸が、遠くにはヴォリオール川に寄り添うようにピーロスの町が見える。エスロリアの女王号の姿は見えず(ターラとモヘアが巧妙に隠している)、疑り深いプレイヤーはターラたちが自分たちを見捨てて帰ったと思うかもしれない。

  プレイヤーたちの背後にはペルシ火山がその威容を誇っており、その周囲を恐るべきジャングルが取り巻いている。火山のさらにその向こうには、それよりも高い山々の領域であり、山々はむき出しで岩肌をさらしており、頭頂部には雪をたたえている。火山と山々の間は深いジャングルが埋め尽くしており、その周囲もまたジャングルに覆われている。

抜け道

  深いジャングルに分け入る道は細い道で、頻繁に利用された形跡がある。〈追跡〉ロールに成功すれば、道を利用した者たちが今までに遭遇した原住民たちのような裸足の者たちであることがわかる。 グループがこの道から外れることを望んだ場合には、彼らはそれが非常に時間を浪費する行動で、深い茂みの中で道を切り開くことが大変な作業であることがわかるだろう。キャラクターが横道にそれて離れすぎた場合、彼らは道に迷うことになる。移動力は少なくとも1/4になる。

落とし穴

  道に沿って進むことは、張り出した茂みを押しのけることを除けば難しいことではない。キャラクターの周囲を取り囲ジャングルは色彩豊かで喧噪と生命力に満ちあふれている。ある程度の距離進んだ場所で〈追跡〉ロールを行い、成功すれば裸足とブーツを履いた足跡両方を発見することができる。もう少し進んだところで、先頭のキャラクターが〈視力〉ロールを行い、成功すれば道の表面のわずかな違いに気づく。

  〈追跡〉ロールに成功すれば、この場所には1つの足跡もないことがわかる。〈捜索〉ロールに成功すれば、隠された落とし穴の罠を発見することができる。先頭のキャラクターが〈捜索〉ロールを行わないか、ロールに失敗した場合、先頭のキャラクターが落とし穴に落ちることになる。落とし穴は3mの深さがあって底にはとがった杭が埋められており、1D3箇所の身体部位に1D10+1のダメージを与える。

死体

  視界をふさぐ木の葉を押しのけると、キャラクターは首のない死体と対面することになる。死体はその腸で木に縛り付けられている。死体は何も身につけていないが、キャラクターが出会った者たちの様なペイントを施している訳ではない。

ゾンビの分かれ道

  ジャングルの道は絶えずくねり、向きを変える。最後にキャラクターは自分たちが北を向いて進んでいることに気づく。キャラクターが前方に目を向けると、分かれ道になっていることに気付く。道は北東と北西に分かれている。ここには不気味な杭が立てられており、それには死体が梁り付けられている。死体は粗末な木の十字架にツタで縛り付けられている。キャラクターたちが5m以内に近づくと、死体は前方に動きはじめ、戒めから逃れるためにその腐った片方の腕が引きちぎられる。ゾンビは左右に大きく傾ぎながら前に歩み出る。その半分切り落とされた頭が前後に行き来する。

  ゾンビは破壊されるまで攻撃を続ける。もしパーティが逃げたのであれば、ゾンビは彼らの後をゆっくりと歩いてくる。

北西の道

  〈追跡〉ロールに成功すれば、北西の道があまり使われていないことがわかる。それ以外に気になるような形跡はないが、それはこの道が間違った道だからである。道はジャングルの中を20kmほど進んだ後、霧に包まれた谷へと通じている。ここには一時村の精霊崇拝の中心として用いられていた低いケルンがある。さらに数km進んだところで、パーティに希望を抱かせるものとして、レモンを発見することになる。

北東の道

  先に進むためには、こちらが正しい道である。〈追跡〉ロールに成功すれば、この道を利用した様々な形跡を見つけることができる。一部は裸足、一部はブーツを履いている。

トーテム

  道はジャングルの中徐々に丘を下り、足下は砂っぽくなる。数km進んだ場所で、キャラクターは道の真ん中に杭が立てられているのに気付く。その先には腐りかけた人間の頭が突き刺してあり、その口元は永遠に続く恐怖をたたえている。頭に呪縛されているのは部族の古老の1人、ボアンガ翁のゴーストである。このゴーストはトーテムの20m以内に近づいた者が死のルーンの印を持たない場合、攻撃せねばならないように強制されている。トーテムを破壊すれば翁を永久に解放することができる。これを行うためには棒を引き抜いて折り、頭をバラバラに破壊せねばならない。

  翁は攻撃せねばならないが、同時にパーティに対して離れるように警告しようと試みる。彼が何を同時に叫んでいるのかは、その者が翁と精霊戦闘に入るか、《霊話》《精神結合》《視覚化》を用いなければ聞こえない。しかしその場合でも、キャラクターの中には村で用いられている明らかな方言を理解している者がいないので、何を言っているのか理解できないかもしれないが。最後には翁は業を煮やし、誰かが理解してくれることを期待して彼の知っているエスロリア語のわずかな単語を用いる。

  “いけ!いけ!わるものたち!いけ!いけ!いやなものたち!いけ!くびとり!わしのくび、とれ!おまえらのくび、とれ!いけ!いけ!”

(もしキャラクターの中にエスロリア語を話せる者が1人もいないのであれば、GMはキャラクターの理解できる言語、たとえばセイフェルスター語やソランス語、ディターリ語などを翁が話すことにしてもよい。もしキャンペーンの中で交易語を意図的に用いているのであれば、翁はそれを話すことになるだろう。)

  翁が犠牲者を憑依した場合、彼は別の者を攻撃しながら叫び続ける。キャラクターたちが逃亡した場合、翁は憑依しているキャラクターを自殺させ、トーテムへと戻る。

  キャラクターたちが翁の言う“くびとり”の意味を取り違える可能性は十分にある。これは翁が不十分で聞き取りにくいエスロリア語で、新たな首領とその手下たちが殺し屋たちであることを伝えようと最大限努力した結果なのである。不幸なことにキャラクターたちが、自分たちは悪名高く不快なサナターのカルトに敵対しようとしているのかもしれないと考える可能性は十分にある。サナターの信徒たちは犠牲者の首を儀式的に狩り、魂をその中に呪縛するのである。もっともそれが真実とさほどかけ離れているわけではないが。

さらなる分かれ道

  トーテムを越えると道は再び2つに分かれている。両方とも最後は川を渡って村に至る。〈追跡〉ロールに成功すれば足跡が特に目立った違いなく両方の道に進んでいることが分かる。ある足跡は北に向かい、別の足跡が北に向かう、という具合である。どちらの道も川へと続いており、分かれた場所からおよそ100mf0の所に、上記の“穴”の項に記載されているのと同様、狡猾に隠された落とし穴がある。これらの穴はごく最近掘られた物で、そのため容易に見つけることができる(〈視力〉ロールに+30%)。

北:石

  北の道はグリーン川へとうねるように流れている。滝の上流はより細く、流れが速い。直径50cm程の、上部の平らな丸い石が川にいくつも散らばっている。対岸の道はジャングルの中に消えている。どこかでオウムが絶望的な声で鳴いている。

南:吊り橋

  南の道はツタの絡みついたぐらぐらと揺れる吊り橋に続いている。橋は川に架けられており、対岸の道はジャングルの中に続いている。キャラクターが吊り橋に近づくと、どこかでオウムが悲しげな鳴き声をあげている。

川を渡る

  橋と踏み石の処理は同じである。キャラクターが時間をかけるつもりであれば(4ラウンドかかる)、DEX×6のロールで川を渡ることができる。もしキャラクターが急いでわたるつもりであれば(2ラウンドかかる)、DEX×3のロールが必要になる。キャラクターがロールに失敗した場合、キャラクターは〈水泳〉ロールを行い、そのロールにも失敗したのであれば、RQのルールに従いそのキャラクターは溺れ始める。

  最初のキャラクターが川を渡りきった時点で〈聞き耳〉ロールを行い、成功したのであれば、もう1度オウムの鳴き声が、そしてその前に反対側から茂みの中を移動する音が聞こえる。その直後ペイントを施した6人の戦士が雄叫びをあげ、襲いかかってくる。彼らは手にしたダートを放ってから、川岸へと降り攻撃をしかけてくる。彼らはこの渡り場を利用することに熟練しており、川に落ちることはない。他の者たちと同じ様に戦士たちは死ぬまで戦う。

合流

  2つの道は丘を登り、そう遠くない台地の頂上で合流する。合流点からは木々の上に立ち上る煙を目にすることができる。

村への到着

  下り坂を下るに従って、ジャングルはまばらになって来る。地形はついには芝生に覆われた盆地状の土地になる。キャラクターが村に近づくに従って、村の音が次第にはっきりと聞こえるようになる。開けた場所の真ん中にすぐに村が見えてくる。切り取られた首で飾られた真新しく不快なトーテム・ポールがキャラクターが彼らの求める目的地、クンダに到着した事を確信させる。



  本テキストはMichael O'Brien氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
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