歴史
ST.1249年赤い月は昇天し、ペローリア東部の上空にとどまった。その信徒はそこから、月の光の届く場所すべてにあまねく広まったのである。15世紀、東方からの移住者たちが遊牧民の圧力と帝国の力から逃れ、美しく青きジャニューブ川にそってやって来た。彼らはドナの地に誇り高き3つの都市、リバーヨイン、イーストポイント、サウスバンクを故郷としたのである。それらの土地はアロリアとして知られており、そこから宣教師が周囲の地域に平和裏に広がり、多くの改宗者を生んでいったのである。
ロスカルムの妬み深い魔術師王は、彼らの成功についての警告を受け、ルナーの教義が広まるのを阻止するために“封鎖”として知られている魔術儀式を実行に移した。しかしイーストポイント出身の哲学者は彼らの魔道の硬直的なパターンを容易に見通すことができ、それまでと同じく、呪文の障壁の外側へとその教えを広めたのである。1589年アロリアの諸都市が“封鎖”から解放されたときには、ルナーの教えはそれまでに広まっていたため、ドナやジュノーラの人々の間でより一般的なものとなっていた。
ルナーの歴史はそれぞれが54年の7つのウェインに分けることができ、そのそれぞれのウェインは赤の月の満ち欠けに対応している。最初の3ウェインはルナー帝国の誕生と下降と考えられる。第3ウェイン、下弦三日月のウェインの終わりには古い帝国は死を迎えた。あらゆる者が月の光が変わったことを確認することができたのである。第4ウェインは黒き月のウェイン、最後に大いなる勝利、リバージョインの改宗、アロリア同盟の誕生を迎える苦痛の時間であった。最後の3ウェインはアロリアの諸都市にとって力と拡張の時である。そして現在、大封鎖からの解放が絶頂を迎える満月ウェインである。我々は今この最後にして第7のウェインの54年を迎えている。今こそ大いなる変化の現れ始める時である。
ルナーの歴史
本来の赤の皇帝は第4ウェインのある時シェン・セレリスによって殺され、それ以後の皇帝は元の皇帝ではなかった。アロリアの者たちは皇帝の後継者を新月帝と呼び、彼が元の皇帝といかなる関係も持っていないと主張した。また彼らは本来の赤の皇帝を女神の“情人”と呼び、“月の息子”という名を使わなかった。これは第5ウェイン、マグニフィクス荘厳帝のもとで排除された異教に影響を受けた、不敬なセレリスに関する詩の主題の1つである。
古き月は第3ウェイン(下弦三日月のウェイン)の終わりに死を迎えた。皆が月の光が変わったことに気づいた。近代ルナー帝国は何かが変化したということは認めている。帝国はこの出来事をグローラインの創造と呼んでいる。しかしその境界線の外側からの解釈は少し異なっている・・・。
アロリア同盟は第4ウェイン(黒き月のウェインあるいは新月ウェイン)の終わりに結成された。アロリア派の者たちはこれを真なる月の教えの“再生”と考えている。その始祖たちの多くは、かつて弱体化していたルナー帝国の政治的弾圧や宗教的迫害から逃れた者たち-穏健な無政府主義者や自由主義者、平和主義者、そして白の月の信奉者といった者たちの集団-であった。彼らの説く教義からの“解放”および自由は、第3ウェイン、第4ウェインのルナー帝国における傾向に対する直接的な反応である。最後のウェインとなるやもしれぬ第7ウェインが終わりを迎えようとしている今、彼らは急速に、そして様々な形で白い月の熱狂へと浸透している。
アロリア同盟
2世紀以上前、ペローリアの地の遊牧民による侵略、軍事的圧力、宗教的迫害から逃れるため多くのペローリア人が東方へと逃れた。ルナー帝国は断末魔の苦しみの中にあり、彼らを守ることができなかったのである。彼らは自分たちの平和と安全の手段を自力で見つけ出すことに決めた。避難民たちは最初はその一後には大きなうねりとなって、ジャニューブ渓谷へと流れ込んだ。彼らはそのペローリア的な流儀と教条とを持ち込み、彼らの苦しみから多少の影響を受けたものの、ルナーの教えをその中から形成した。アロリアの地で彼らは捜し求めた平安の見出したのである。
美しく青きジャニューブの3都市が彼らの新たな家となった。すなわち1392年(3/27)に攻略されたイーストポイント、1427(4/18)に新たなに建設されたサウスバンク、1462(4/53)に街全体が改宗したリバージョインである。
彼らの死せるルナー帝国に対する不満は以下の3点あった。
帝国は遊牧民の侵略からその市民を守ることができずにいた。軍とその指導者は戦いに不向きな者たちであり、ペローリア全土では都市部、農村部を問わず住民がことごとく殺されるか奴隷にされた。アロリアに逃れた避難民のほとんどは、家を焼かれ、暮らしを引き裂かれ居場所を失った者たちであった。首都防衛の絶望的な試みの中で、帝国は圧制的、軍国主義的状態にあった。子供は徴兵という名のもとに親元から奪われ、劣悪な訓練と優秀な指揮官のいない軍団構成の下で死んでいった。
グラマーが無傷で生き残るために、ペローリアは人々から搾れるだけ搾っており、税金は極めて高かった。アロリアの移住者のうち少数ながら中核的な部分を占める者たちは中心部から遠隔地を、苛烈な帝国の圧政その個人的自由を支持した平和主義者、そして政治的反逆者たちであった。
最後にアロリア派の移住者たちの中核的な者たちは、衰退したある帝国で残酷な迫害を受けたさまざまな大衆的宗教運動に身を投じた者たちであった。その構造の中で弱体化し、一度は解放されたルナーの教えは、そこから逃れて、すべての市民に従順さを植え付けようとしていた。いわゆる異教徒、特に白い月の信者は、帝国の財産の腐敗のために公的生活から追われ、生け贄とされた。自然と彼らは宗教的圧政のない生活を求めたのである。
アロリアでは、本来のルナーの教えの教義は多くの改宗者を生んだ。ペローリアにおいて自由が死んだその時でさえ、古きルナー帝国の下弦三日月がアロリア同盟の新月に道を譲ったために、教えはフロネラで生まれ変わったのである。同盟はその創始者の教えを今も掲げている。それは主権を有する都市国家の緩やかな連合体として今日にも受け継がれており、それぞれの軍隊は防衛目的にのみ用いられるのである。信仰の自由は、アロリア派ルナー教会の基礎的な教義である。
神学
グローランサの世界は創造主によって混沌から作られた。そこにあるすべてのものは豊穣、常に変化する混沌、そして創造主の厳しく厳密な法から形成された。混沌と法が混じり合う場所こそ“本質(自然)”としてしられている。「自然」には昼と夜、夏と冬、誕生と死といったサイクルが存在する。あらゆるもの相対する存在を映す鏡像であり、創造された世界の1つの側から、反対側へと超越せねばならない。
時代を経て人類は創造主との合一、そしてその理解を見失いった。創造主は肉体、心、魂を通じていかに神を見いだすかを我々に教えるために3人の預言者を遣わした。最初の預言者はマルキオンであり、彼は肉体の慰めを教授した。第2の預言者はフレストルであり、彼は心の喜びを教授した。そして第3の預言者こそ魂の自由を教授する赤の女神であった。
この最後の解放の言葉でさえ、人類に近年許されたが故に、転落には違いない。騎馬遊牧民の侵略によって弱体化したルナー帝国は、みずからの虚勢を守ろうとする空しい試みのために、その病んだ体や手足を圧迫する抑圧的な国家となった。アロリアにおいてのみ、新月帝の魔の手をのがれ真の自由を謳歌することができるのである。 我々はマルキオンの古の法、フレストルの古き法には従っておらず、赤の月のルナーの教えにより注意を払っている。なぜならルナーの教えこそ、その完全性において彼らの法に代わるものだからである。
我々は、女神の例を通して、死が終わりでないことを知っている。我らが貴婦人のそれと同じように、我々の生は月が満ちるように大きくなり、そして月が欠けるように衰え、死を迎え、そこから時には様々な形態で復活を遂げるかもしれない。だがしかし、我々は死の後に何があるのかを語ることはできない。これは神秘である。間違いなくそうである。古きマルキオンの法がそうであったように、ルナーの教えは栄光の慰めへの確かな道をもたらすものであると考えられている。
我々は今、大いなる変化の瀬戸際で立っている。7つのウェインはほぼ完成を迎え、新時代が明けようとしている。多くの者は待望の白い月がとうとう出現し、宇宙的平和、平穏、美の時代を導くと信じている。我々と共にある物たちは皆彼女の出現を喜んで迎え、報いを得て彼女の銀の輝きの栄光に浴するだろう。
位階
ルナーの教えにはいかなる位階も存在しない。ルナーの教えとは支配からの自由の教えである。古の教会はその信仰が自立していなかったがために、位階を持つ必要があった。新月の帝国はその教義の虚無を覆い隠すために、細心の注意を払って骨子を構築した。だが我らの生と揺れ動くルナーの教義はそれぞれ独自の助けを必要とする。もしそのことを疑うのであれば、赤の女神御自身を見るがいい。アロリア派の諸都市はそれぞれ独自の政治的、軍事的、宗教的目標に向かって、それに適した形でそれぞれ都市構造を組織している。同盟は中心的な存在でもまた高圧的な存在でもなく、ゆるやかな集合体なのである。
ペローリアには赤の月の下に帝国が存在する。その帝国はかつて赤の皇帝と呼ばれた強力な魔術師王、“女神の情人”が治めた帝国である。彼は新月ウェインに、邪悪なる遊牧民の指導者シェン・セレリスによって殺された。
それ以来、帝国は新月帝、本来の皇帝の単なる影によって支配さてきたのである。帝国の者たちは正しくない者たちを望んだことで、彼らが本当は何者か気付かなかったのである。
大封鎖からの解放以来、アロリアの自由都市は毎年自発的に、そして信仰心から赤の女神の最も神聖なるペローリアの社に賛辞を送りつづけている。しかし、彼らは、いわゆる赤の皇帝から命令される彼らは、そうしたことを考えない。ルナーの教えは自由と開放の1つにすぎない。新月の帝国を規定している構造はこうした傾向が束縛を緩めることを許容していない。
霊感
古の教会には聖人が存在する。彼らは彼らの後に続く者たちに時折介入することのできる、古代の神聖なる者たちである。ルナーの教えには霊感が存在する。霊感は彼女が赤き月の誉れ高き娘として、彼女自身が得ている恩恵と同じ状態を達成できるよう彼女の後に続く者たちを勇気づける存在である点において、聖人とは異なっている。
最も一般的な霊感は七母神であり、彼らはある儀式を行い赤の女神を生み出した。彼らの名は“賢女”ジャーカリール、“永遠の乙女”ティーロ・ノーリ、“大地の女王”ディソーラ、“雄羊の騎士”ヤーナファル・ターニルズ、“魔術師”イリピー・オントール、“罪人の買い手”にして“悔悛者”ダンファイブ・ザーロン、そして神秘なる介添人“待つ女”である。我々は彼らに習い、敬い、彼らは我々にその恵みを許すのである。
新月の帝国のシンボルは死と戦争の怪物、クリムゾン・バットである。我々アロリア同盟は平和と生命の鳥である白い鳩をシンボルとしている。
異端
ルナーの教えからはいかなる異端者も生まれない。なぜなら教義から自由の道こそルナーの教えだからである。赤の月教会の領域の内側にいる者たち、フレストル派、ロカール派、サイアノール派、暗黒異端派、異教徒は歓迎される。赤の月は似たものたちすべてに彼女の光を投げかける。彼女の真実を受け入れ、わずかな議論を行うだけで、今従っている教義の空虚な矛盾に気付くであろう。
他の教派に対する態度
フレストル派
フレストル派の教えは定命の者の完全なる発展を提供する。それはすばらしい賜物である。しかし赤の月の教えはそれ以上のものを提供することができる。それは霊魂の不死と超越である。
ロカール派
セシュネラのロカール派領主は、彼ら支配者に都合の良いようにその社会を規定した。支配されている者は同意しているのだろうか?ルナー教会では、あらゆる者はみずからが従う生涯の道を選ぶことができ、みずからの能力のゆるす限りその道を追求するのである。
サイアノール派
サイアノール派教会の信心深い多くのマルキオン教徒は、赤の女神の真実を受け入れ、それら2つの同時代の信仰の間にいかなる違いもないことに気付いた。ルナーの教えははるか昔に予言者によって説かれた言葉の神髄である。
暗黒異端派
“解放者”アーカットは赤の女神の再生以前に、秘密に到達した過ぎ去りし日の英雄であった。我々は彼の断片的な知識故に彼に敬意を払い、もしその崇拝者たちが彼の秘密のすべてを学ぶ意志があるのであれば、彼らにその秘密を提供すべきである。
異教
赤の女神は世界のすべての存在に平和と癒しをもたらす。ルナーの教えの光をもって古き異教徒を教育することで、これらの神々は再び創造主の調和へと再び立ち返ることができるのである。
本テキストはNick Brooke氏、David Hall氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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