アーカットは歴史上、もっとも偉大な英雄である。彼の生涯の目的は、彼がグバージと呼んだ悪魔の破壊であった。「暗黒異端派教会」はグバージの破壊ののち、ドラストールの地にアーカットの手によって打ち立てられた。
アーカットはその人外の目的を達成するために、生涯をかけて多くの知識を集め、経験を積まねばならなかった。彼は多くの自己変化を経験した。彼はブリソスに生まれ、そこでエルフによって育てられた。彼はブリソス人の兵士として戦い、タニソールの吸血王に勝利して多くの名声を得たが、同時にブリソス人がいかに神なき民であるかを知った。そして彼は"炎の剣持つ"ガーランドのもとへと移り、最初の変化を受け入れたのである。彼はフレストル派の騎士となった。彼は速やかにすべてのカーストを経験し、対混沌セシュネグ十字軍の元帥となった。しかしフレストル派の者たちはグローランサの他の強力な神々に対しては盲目であった。アーカットはこの時初めて、生涯の敵と対峙した。"欺くもの"グバージである。彼はヒーロー・クエストを行ったが、悪霊どもの手によって地獄に捕らえられた。彼は光持ち帰りしものたちの探索の途上であった"裸足の"ハルマストの手によってそこから救い出された。この理由から彼はオーランスの英雄となり、以後"フーマスの息子"アーカットと呼ばれるようになったのである。彼は長きに渡り、オーランスやフーマスの戦士と肩を並べて敵、"悪魔"グバージと戦った。だがこの変化も、彼のグバージを破壊するという宿命の中では、最後の変化とならなかった。彼は完全ではなかったのである。
それゆえ彼は暗黒の力に向かって歩を進めた。"すべてのトロウルの母"カイガー・リートールは彼を吸収し、"トロウル"アーカットを生んだ。ついに彼は完全な存在となった。"報復者"ゾラーク・ゾラーンの助けを得て、すべてにおいて完全な存在となった。彼はこの時、エルフの自然に対する感覚と、ブリソス人の技と、西方の教会の知識と、オーランス文化の個人主義と共同体に対する理解と、トロウルの力を手にしたのである。ついに彼は悪魔と対峙し、それを破壊することができるようになった。彼は友と共にドラストールへと向かい、人ならざる力と力のぶつかり合いの中で、"悪魔"グバージを倒したのである。それから彼はラリオスへと帰還し、彼の暗黒帝国と暗黒異端派を創始し、最終的には神格化を経て、神となったのである。
彼の帝国はラリオスに住むあらゆる種族のための王国であった。そこには人間とトロウルの間の平和があった。力をあわせれば、彼らは強かった。しかし悪魔のような神智者たちがこの平和に満ちた帝国を破壊した。彼らはまた、種族間の友好関係をも破壊したのである。最後の皇帝"聖なる"パズラックだけが悪名高い悪しき者たちに抵抗したのである。彼は最後の地をナスコリオンに定め、その地のドスキオール河岸で殺されたのである。しかし彼の血を引く者たちはこの地に生き残った。彼らはアーカットの暗黒異端派教会の知慧をその心に携えていたのである。彼らはいつの日か彼が再びこの世に生を受け、成長して再びラリオスの皇帝となるという予言を知っている。その時には、真の暗黒異端派教会だけがその姿を示すのである。
この啓示は、アーカットの帝国の唯一にして真の後継者、ナスコリオンのレイナルド・デ・ラ・フォシル男爵と、ハリキーブの黒きアーカットの司祭、トロウルのクルザム・アラガットに、アーガン・アーガーを通じてもたらされたものである。彼らは共に、ゾラーク・アーカット砦、友たちの砦を建設した。
暗黒異端派は偉大な神は唯一にしてただ一柱、世界の創造主、見えざる神だけが存在することを信じている。しかしその傍らには、その援助や助力から、崇拝や信仰を受けるに値する他の神も存在するとも考えている。暗黒異端派教会は預言者マルキオンの法にしたがっている。それゆえ《切開》の魔道呪文は禁忌とされている。
教会では人間とトロウルが生れ落ちる四つのカーストがあると考えられている。四つのカーストとは農夫(トロウルキン)階級、戦士階級、司祭階級、領主階級である。自身の能力と名誉ある振る舞いによって自分自身の価値を証明した者は誰でも、アーカットの"真の教会"へと移ることができる。都市部における市民階級の拡大は、彼らに本来騎士階級が持つ権利の一部(たとえば商人が武器を身に帯びる、というような)をもたらしているが、彼らは農夫階級として扱われている。暗黒異端派教会では、男性と女性はあらゆる面で等しい存在である。
見えざる神とアーカットの敵は、悪魔にして"欺くもの"、グバージである。グバージは妖魔と混沌の神々の軍勢を率いている。教会の教義によれば、混沌は常に正しき信仰を破壊しようとしている、最悪の敵である。
新暗黒異端派教会の指導者はナスコリオン男爵、レイナルド・デ・ラ・フォシルであり、彼は聖アーカット司教、聖パズラック司教、"トロウル"アーカット司教、聖オーランス司教の助けを得ている。現在クルザム・アラガットが聖アーカット、"トロウル"アーカットの両司教座を占めており、この教会の聖なる預言者である。聖オーランス司教の地位はフラスバーが占めている。教会の重要事項はこの三人が協力して決定を下す。
暗黒異端派の信奉者たちは、マルキオンとフレストルを見えざる神の預言者として信奉している。最も重要な英雄はアーカットであり、彼は人間、トロウル双方の英雄である。聖アーカットは暗黒異端派の創始者である。もっと重要な殉教者は聖パズラック、暗黒帝国最後の皇帝である。彼は完全なる統治者であり、ナスコリオンのあらゆる男爵は彼の血を引いている。
こうした西方の聖人と共に、暗黒異端派では"混沌の破壊者"ゾラーク・ゾラーン、"トロウル・アーカットの母"カイガー・リートール、"人間とトロウルの友好の神"アーガン・アーガーなどトロウルの神も崇拝されている。より低次の神は"氏族の父"オーランス、"故郷の母"ラーリア、"名誉の戦士"フーマス、光持ち帰りし者たち、である。