ノミア教会は607年、ガルヴォスト王朝によって創立された。ガルヴォスト家の開祖はエネリン・ガルヴォストである。彼は選挙によって選ばれるノミアの王となるために名乗りを挙げた。当時のノミアはセシュネラのネプル王が送った宣教師の影響を受け、異教の崇拝からマルキオン教へと改宗したばかりのラリオスの小さな属領地にすぎなかった。
エネリンは同盟、結婚、戦争によって、神智者以前の時代に、ラリオスを統治した強大にして慈悲深きノミア王国を作り上げた王朝の開祖であった。王国の最初の富の多くは、セシュネラの炎の王たちの時代に彼らと結んだ、金銭的な傭兵契約によって生み出された。
660年、セシュネラのブレトノス王は、第4回マルキオン教教会会議を召集した。ノミア王国からの代表団は会議に参加し、完全な構成員として宣誓を行った。しかし会議はブレトノス暗殺の混乱で散会してしまった。
以後数年に渡り、セシュネラの市民たちが闘争を行い、ノミアの外人傭兵部隊に多くの収益をもたらした。しかし同時に神学論争によって引き裂かれ、その時代の様々な王の命令によって様々な筋肉を同時に曲げようとするようなセシュネラの教会の傲慢な権威から脱却するために、ガルヴォスト教会が成長を遂げたのもこの時代であった。
セシュネグの大半を統一したトリミール王の統治の頃までには、教会の分離は達成された。しかしながら、ノミアが東洋の異教に対する有益な緩衝材の役割を果たしていたことと、教義が未だ近いものであったことから、セシュネラ教会をノミアに強要しようというような試みは行われなかった。
500年、神智者運動は、セシュネラ教会のあまり重要でない福音主義教派として活動を始めた。670年以後、セシュネラの内戦に伴いその地で不安が高まり、その不安は神智者の哲学によって解決が見いだせそうだったことから、この運動はますます多くの改宗者を得た。ウルマル王、メイパル王の激しい迫害の間でさえ、神智者は多くの改宗者を、特に魔術師階級からの改宗者を得た。
ついには789年、スヴァンジ王の神智者派受け入れをもって中部海洋帝国が建国され、その教えを受け入れない者たちに対して神聖十字軍の発動が宣言された(もっともこの十字軍は後に取り消され、経済的な探求に置き換えられたが)。
マルキオン教の他の教派が神智者に抵抗していた時代、ノミア王国は神智者と同盟していた。これは、ノミアが神学習者教派に好意を示したという理由からではない。公然と降伏することによって、我々は我々の内なる秘密を完全な形で保つことができ、ヴァランティアとコルの聖職者の内陣の内に、純粋な形で保持することができたのである。
したがって、抵抗した教派は侵略され、強制的な改宗と魔術的儀式によって信仰を打ち砕かれ、また変えられてしまった間も、ノミア教会は純粋なままであった。
神智者は以前にもまして暴虐に、邪悪になっていった。そしてついには異教徒と非人間種族の同盟による不可避の破滅に直面したのである。しかし悲劇的なことに、この同盟はその無知による野蛮な熱狂をもってノミアまでも同様に破壊してしまったのである。多くの崇拝者は生き残り、教会はヴァランティアとコルの街、および内ラリオスの都市国家の飛び地で存在を続けることができた。
第三期、単神教徒が東方の異教によるヴァランティアの略奪を計画したことで、教会には多くの艱難辛苦がもたらされた。200人程がこのすさまじい虐殺から逃れられたにすぎなかった。現在教会はコルにその中心を置き、勇敢で恐れられている我らが貴族の宮廷の騎兵によって守られている。
ガルヴォスト教会は、今その最も低き引き潮の時をくぐり抜けた。我々は今力を得た!我々は純粋な信仰の堅い基盤の上に、以前存在したものよりも強固で、神智者に汚されておらず、マルキオンとフレストルへと捧げられた聖なる地、新たなノミア王国を建設するだろう!
この世にはただ一柱の神が存在し、それは見えざる神である。その預言者はマルキオンとフレストルである。
我々は、カースト制度が存在してると考えており、各人は自身のカーストに生まれ、別のカーストにふさわしい価値があると証明するか、その純粋さをみずから証明しない限り、そのカーストで一生を送ると信じている。
我々は、聖人自身が神聖なのではなく、実際には信徒が従うべき理想の姿であると考えている。悪霊が世界へとやってこないためにも、彼ら聖人に崇拝を捧げてはならない。唯一の真実の崇拝とは、見えざる神を通じた崇拝である。
我々はマルキオンの法に従う。我々は我々の愛するものを破滅させてはならない。それ故非マルキオン教徒に対する《切開》行為を、領主の許可があった場合にのみ行うことができる。
非マルキオン教徒は神を愛さない。愛とは相互関係であり、それゆえに我々は彼らを愛することができない。
我々は敬虔な信者は、新たな赤ん坊として信仰へ帰ってくると考えている。罪を犯した者たちは、その罪が許されるときまで、忘却界にとどめられるであろう。
マルキオンを崇拝しない者たちは呪わており、魂無き死を迎え、忘れられ、永遠に忘却界の彼方に失われるであろう。
ノミアの教会の信徒を殺すことはひどい犯罪であり、その罪を犯した者が再び生を受けることは無く、存在の残りの間、苦痛に満ちた忘却界に留め置かれる。
女性はあらゆる面で男性に等しい存在である。
コルの主教がノミア教会の指導者である。彼女はこれを証明するために、アーカットの左手を杖に付けている。ホールト伯を含めて、すべての信徒は彼女の霊的権威を受け入れている。彼女の司祭は彼女の従者であり、常に尊敬を受け、従われるべき存在である。
聖マルキオン
聖マルキオンはあらゆる者に創造主を崇拝する方法を教えた最初の予言者であった。彼は、創造主がこの世で我々に与えた恩恵を用いることに由来する、内なる平和と神秘的環境である肉体の慰めを我々に教授した。
聖フレストル
聖フレストルは、第二の予言者であり、マルキオンの転生である。彼は我々に新たな儀式を伝えた。これはそれぞれの個人が見えざる神との合一を探求し、達成する方法であった。これこそ我々が永久に生まれ変わり続けることを可能にする、栄光の慰めである。
聖ゼメラ
聖ゼメラは、フレストルの母、フローラーの妻であった。彼女は、彼女にセシュネラを襲ったすさまじき疫病、黒膨病から彼女の国を救うために、その生涯を捧げた。
彼女は人々に対する自己犠牲の良き例である。
聖アーカット
アーカットが現れるまでは"欺くもの"が魔力のとばりで世界を覆い、生きとし生けるもの全ての生命、精神、魂を惑わせていた。アーカットは西方の人々の前に現れ、その肉体を癒し、その魂を解き放ち、その精神に光を与え、邪悪な"欺くもの"の偽りを剥ぎ取ったのである。
アーカットがマルキオンの教えから離れたことを知らぬ者はいない。彼の信奉者ですらこれを認めている。"欺くもの"を打ち破ろうと熱狂するあまり、彼は創造主の教えを忘れ、偽りの神々と手を結ぶに至った。アーカットの物語は西方の大いなる人倫の伝説である。かつては世界で最も完璧な騎士であったアーカットですら堕落するのであれば、卑しき我々はおのが美徳を守るための努力を怠ってはならない。
時が満ちたあかつきには、我々はアーカットの転生のため、彼に接触する。その秘密の手段を、我々は魔術修道院に保持している。
聖カルパッティア
聖カルパッティアは、ヴァランティアのすさまじい略奪が行われたときの主教である。彼は異教徒によって捕らえられたが、改宗することを拒否した。異教徒たちはまず、腹を空かした狼で一杯の穴へ彼を投げ入れた。しかし狼はお互いを食い合った。次に彼らは蛇を投げ入れた、しかし蛇は彼を攻撃しようとしなかった。次に彼らは、彼を殺すために奴隷たちを行かせた。しかし奴隷たちは彼の敬虔なる言葉によって改宗してしまった。最後に、彼らは戦士たちを送り、彼らはカルパッティアを殺した。とはいうものの、たった一人の人間のために戦士たちは皆、次の朝までには死んでしまった。彼のゆるぎなき信仰こそ、我々すべてにとっての良き例である。
フレストル派
フレストル派は、彼らがフレストル主義の最も古い形態復活させたと主張している。しかしながら、我々は彼らが誤っていることを知っている。なぜなら我々のフレストル派の信仰こそエネリン・ガルヴォストの時代以来変わらず伝えられてきた信仰だからである。我々は、彼らが正しい教えに従うことを助けねばならない。
ロカール派
ロカール派は、その信徒を奴隷におとしめようとしている。彼らは各人を生涯そのカーストに縛り付け、女性を貶めて、低い地位に縛り付ける。彼らの信仰は信徒にとって何の希望も無いものであり、来る日も来る日も同じ事が待っている、変化無き信仰である。
単神教徒
この教派は、"欺くもの"グバージの落とし子である。彼らは多くの神の教えに従い、唯一の神しか存在しないという事実を否定している。しかしながら、それでも彼らはマルキオン教徒であると主張している。我々は彼らがマルキオン教徒でないこと、今までマルキオン教徒であったはずがないことを知っている。