フレストル派教会はマルキオン主義の中でもっとも古く、もっとも大きな教派である。 世界の曙の時代、第二の予言者フレストル王子によって設立されたこの教会は、すでに瀕死の状態にあったブリソス人の宗教に再び活力を与えた。教派は1世紀の終りを目前にしてアケム(後のロスカルム)の公教として成立したため、もっとも早く創設されたマルキオン派の教会である。フレストル派の基盤となる教義を否定する教派を含めて、その教義はあらゆる形態の近代マルキオン主義に深く影響を及ぼしているのである。例えばセシュネラのロカール派の王は王冠の他に王笏と剣をその身に帯びているが、これは3つの高位カーストを表しており、これはそれまでのブリソス派では全く考えられなかったフレストル派の新たな制度なのである。
第一期と第二期の間、敬謙なマルキオン教徒は皆、フレストル派教会の所作に則って礼拝を行った。この教えから離れてしまった異端的な神智者たちは、彼らの帝国の没落と共に一掃され、敬虔なマルキオン教徒がフレストルの教えに従っているという事実は現実のものとなったのである。非フレストル教会はその断片だけが生き残っている。こうして、神の意志は世界にもたらされたのである。
ロスカルムのフレストル新理想派教会はシンデイック大封鎖の穏やかな平和の時代に、王子フレストルの息子、"賢王"シグラットによって再建された。ロスカルム領内の愚鈍な敵たちを打ち負かして平和をもたらした後に、シグラットは剣を置き、完全についての瞑想を通じて当時絶滅寸前であった古代フレストル派の信仰の形態を取り戻した。聖フレストル自身によってもたらされ、社会のすべての階級の者へと広く広まった理想と顕示は、これらの改革があらゆる点で預言者が望んだものの理想の姿を体現していることを証明した。
今日シンディック大封鎖が終わりを迎え、ロスカルム王国には、模範を示すことで高徳を伝え、フロネラの劣った国や人々の精神を高め、理想の国の完全性へと参加させるまたとない機会がもたらされたのである。
ロスカルムおよびセシュネラの連合フレストル派教会は、第5回マルキオン教教会会議において、ただ一柱の神が存在すること、それが見えざる神であり、その予言者はマルキオンとフレストルであるということを満場一致で宣言した。すべての良きマルキオン教徒はこの決定を受け入れている。
《切開》行為の禁止を含めて、我々はマルキオンの法に従う。自己、種族、国家への忠誠こそ至高である。すべての者はロスカルムの公益のために共に努力せねばならない。
我々は、神がすべての人間を平等に作ったと信じている。--生まれ、財産、地位に関わらず、上位の階級へと移動することのできる階級システムは、すべての者に開かれた光である。我々はマルキオンの息子たちによって、4つの階級からなる階級システムが定めたことを認めている。それはすなわち農夫、騎士、魔術師、および領主の各階級である。あらゆる者は農夫階級に生まれ、まず大地の技能を修得する事によってのみ、その低い地位を超えることができる。ある者が上昇のために必要なすべての条件を満たしたとき、その者は適切な宗教的祝祭-定期市や馬上試合、またより厳正な試験や授与式など-の最中、上位のカーストに列せられる。
罪は二つの側面がある。自分自身の良心に反する行動と、欠落のある良心を持つことである。フレストルは、良心の命じるところ従った行動が魂が、彼が魂の喜びと名づけた、霊的調和の完全な状態をもたらすことを知っていた。すべてのロスカルムの民は、フレストル理想派の教育を通じて、よくはたらく良心を有している。その他、劣った種の人類はそれほど運が良くない。厳しいながら情け深い監督を通じ、我々の優位性をもってこれらの者たちが育つよう尽力することは、我々の聖なる義務である。非人間には慰めに達するいかなる望みも無い。彼らのこの世における栄光の時間はすでに過去のものだ。人間こそ現在の支配種族である。
我々は、救済を達成するために、階級制度を上昇することが必ずしも必要でないことも知っている(もっとも、そうすることが救済を確実なものとするのだが)。聖人や聖なる者の仲介を通じて、栄光の慰めを達成することは最も低い地位の農夫階級の者にも可能である。慰めをなし遂げられない場合には、不実な罪人は滅びへと追いやられる。彼は死に、彼に関するものすべてが、まるで最初から何もなかったかのように雲散霧消する。
女性は男性と霊的には同格ではあるものの異なった存在であり、二番目に作られたが故に人間の原形よりも幾分手直しが施されている。男性がちょうど自分自身の長所や完成された聖人の仲裁を通じて救済を達成するように、女性は彼女自身の長所や結婚を通じてより高位の階級へと達することができる。結婚した女性は彼女の夫と同じ階級を保持するが、彼女本人が望むのであれば、個別に階級を上昇させることができる。
錬金術、占星術、および自然科学は、見えざる神の創造について学ぶことで我々の知識を高め、神を理解する助けとなる。万物はその創造者に写し身である。ソグの大学の学者は、無神論者であるにもかかわらず正しい研究を行っている。そしてその発見は常に番犬評議会の賛意を得ている。
フレストル新理想派は、ロスカルムの公教であり、教派の教義はロスカルムの社会全体に広まっている。国で最高位の座へと登るためには、魔道の知識を学び、神秘の技の熟達を示すことで番犬評議会の試験官を満足させる必要がある。この明快な要求はすなわち、世俗の王国の領主--その中の頂点が王に使える8人の王子である--が霊的君主のごとく、あらゆる事象を魔術的に、確実に成し遂げられることを意味している。
ロスカルムのフレストル派教会は、サウスポイントの総大司教によって導かれる。この地位はマルキオン教教会の中で最も古くに成立した地位である。この聖なる座を現在占めているのは、"賢王"シグラットとともにフレストル派を現代の形に整えた魔術師、"神秘者"ガイセロンである。彼の下は枢機卿院、すなわち王国の8つの公国でそれぞれ教会を導くロスカルムの霊的領主たちである。教会のさまざまな公式の組織と同様に、番犬評議会のように愛国心が強く、人を鼓舞する形態で強いフレストル主義の高徳の魂を讃える、自然発生的な市井のクラブが多数存在する。
フレストル、聖人にして預言者、最初の騎士、セシュネグの王子。
セシュネグの列聖されたる王子フレストルは最初の騎士であった。曙の後の第1年、フレストル王子は夜の勤行の最中、天使の預言者マルキオンの啓示を受けた。このときフレストル王子は、野蛮な敵からセシュネグ王国を救うために社会の伝統的拘束を打破せよとの霊感を受けた。彼は騎士の階級を定め、最初の探索を行い、十字軍の精神を見出した。しかしバスモリ族に対する最終的な勝利を目前に、彼は彼の新しい継母、悪しき蛇の女王セシュナに背き、国から追放された。西の大洋の島々を旅をした数年の後、彼はブリソス人から異端者として迫害を受け、ソゴロサ・マンブローラにて栄光ある殉教を遂げた。フレストルは肉体ごと栄光の慰めへ導かれ、いかなる遺物も知られていない。彼が生涯を過ごした場所のほとんどは、古セシュネラとともに海中へと没した。ソグ・シティ内の彼が殉教を遂げた正確な場所は良く知られており、あらゆる教会の敬虔なマルキオン教徒にとって人気のある巡礼地となっている。
"哄笑の戦士"ティロール
"哄笑の戦士"ティロールは、曙の時代に終わりをもたらした混沌戦争において、悪しき偽りからアケムの王国を取り戻した。彼はタルジニアンの雄牛を打ち据え、またテルモリ族が荒々しい獣である事を明らかにする事で、悪しき異教徒である彼らに正義ある呪いをもたらしたのである。彼はみずからの国土ではラリオスを覆った異端の闇を禁じ、彼の民の純粋な光と希望の道しるべとなるべく輝いたのである。彼の戦いの歌は、我々が喜びを通して強さに達する事を可能にする。
ゼメラ、黒き淑女、フレストルの母。
暗黒の時代、最も長い夜とともにもたらされた絶望から彼女の民を救うために、彼女はみずから死を受け入れた。我々は自己犠牲という気高き振る舞い故に彼女を讃えるのである。
近代フレストル主義において、最も広まっている異端は、完全派、あるいは純粋なる者たちと呼ばれる一派である。これらの愚か者たちは、ロスカルムの国の制度自体が聖性に対して有害なものであり、ロスカルムの領主、および魔術師階級は多くの者たちに救済を与えるためには、(彼らが誤って呼ぶところの)世界の力の装飾物に興味を持ちすぎており、確立された教会の構造では、その階級を通じた上昇を達成する事はできないと主張している。不潔な、また基準から外れた行為を通じて、発展と浄化の霊的プロセスが押し進められ、その中で完成を望む者は段階的にその魂が浄化され、4つの相を超越するのだとも彼らは主張している。だがこれをなし遂げたと主張するほど、正気を失っている者はほとんどいない。
ロカール派
頑迷なブリソス人のように、セシュネラのロカール派異端者たちは、社会の4つの階級における上方へのカーストの移動と個人的な自己達成を妨げることで、人間の霊的発展を阻害している。彼らの王国は人々の魂に対する巨大で専制的な抑圧に他ならない。彼らのうめき声はいつになれば耳にとめてもらえるのだろうか? それともセシュネラの大地は不正な支配君主の過ちに再び苦しまねばならないのだろうか?
サイアノール派
サイアノールの教会は、我々理想派教会と同じ宗教的起源を有してそこから成長を遂げた。しかしシンディック大封鎖によって父祖の地より切り離されてしまったのである。ロスカルムにおいては良き王シグラットの存在によって真実の教義がまっすぐに、大きく成長を遂げる事が可能であった一方で、ジュノーラ、ジョナーテラ、およびジャニュビアといった闇に閉ざされた地域では、恥ずべき世襲の原則を受け入れ、異教と異端の道へとはまり込むことで、教会は悲しき衰退へと陥った。我々は彼らを導き、高徳の道へと引き戻さねばならない!
アロリア派
東方からやってきたこの異教徒の教派は赤の月を崇拝し、敬虔なるマルキオン教徒のいかなる聖典においても目にすることのできない7人の聖人を知っていると主張している。彼らは国家の負担によって個人に満足を提供することで社会の古い序列を覆したが、それに代わるものは何一つ有していない。
戦争王国
戦争王国は残酷で抑圧に満ちた国であり、百柱もの戦争の神を崇拝していると掲げている残忍な異教徒の軍勢の祖国である。その軍勢はジュノーラの美しき町々を襲いつづけており、今はエインポールを包囲している。ロスカルムの軍勢もそう遠くない将来戦場で相見える事になるだろうが、燕騎士団はフレストル派の軍が優れている事を証明してくれるだろう。
暗黒異端のカルト
"破壊者"アーカットは"哄笑の戦士"ティロールと同時代の者であり、彼はラリオスに暗黒異端派の暗黒帝国を建国した。アーカットの王国は不明瞭な影の中で建国されたため、その複雑で不可能な教義故に、彼のカルトも同じ罠に嫌がおうにも陥ってしまっている。彼らは現代の世界では主要な勢力ではない。そして彼らを無視する事がもっとも良い方法なのである。
ヴェイデル人
我々は自分たちのことをヴェイデル人と呼ぶ種族が2つある事を知っている。最初は南ヴェイデル諸島からやって来る、貿易を生業とした褐色の肌を持つ種族である。彼らが無神論者ではあるものの、流浪の時期に彼らの裁判官として生活していたフレストルに対して、彼らの示してくれたもてなしの記憶から我々は彼らを港へと暖かく受け入れている。第二は、赤い肌の怪物じみた人食い海賊の種族であり、以前は西の大洋の厄災であった。我々のロングシップは彼らを制圧することに成功し、彼らの海岸への襲撃は激減した。
シダルフ派
我々はこの教派に関して、それが南の大陸で生まれたものであるという事以外は何も知らない。