ルナーの教え
献身的であらゆるものを受け入れ、そして様々な解釈が可能な宗教、ルナーの教えによる神政政治に支配された強力な国家がルナー帝国である。この新たな信仰は現在400年の歴史を持ち、成長を続けて完成の域に達し、将来において最終的には組織的、個人的を問わずあらゆる形態の宗教に置き換わるであろう。帝国は敵意や争いを通してではなく、世界を癒すという赤の女神の使命の一環としてこれを成し遂げるのである。
時以降に再生し、それ故発展を体現しているが故にルナーの教えは独特のものである。グローランサのすべての他の宗教がその現在の形態に凍結されている一方、ルナーの教えはそれらを取り込み、彼らを赤の月の真実の調和の中に改宗させるように成長するために、変化し、発展することができるのである。
ルナーの重要な神性
赤の女神
赤の月の女神は、ルナー信仰の霊的な長である。ルナー帝国は彼女の定命の者としての、そしてその後の神聖化された存在としての再生の中から鍛造された。彼女の領域を支配するのは彼女の息子、不死なる赤の皇帝である。
赤の女神は、自由と寛容の女神である。彼女はいかに感じるか、いかに判断を下すか、いかに均衡を維持するかを教授する。彼女は世界の中の意味を見いだすための個人的な実験を推奨しており、他者が知識を共有することができるように、英雄カルトとしてそれら新しい発見の公共の形式化を支援している。
女神は、彼女の信心深い信者たちがたえず生まれ変わりを続け、大地が彼女の魔術によって覆われるとき、グローランサに力の都を打ち建て、そこでは彼女の信者は永遠に輪廻転生を続けるということを教える。女神自身の死、引き裂かれたこと、再生、消失、そしてそれに続く帰還こそ彼女の死後の生に関する知識の証である。
自由と寛容を抱く赤の女神はルナー帝国に女性や他の種族に対するいかなる公的な差別もない、ということを意味している。ルナーの軍勢はその4分の1が女性で構成されており、また市民権はあらゆる種族の構成員に与えられている。
赤の皇帝
赤の皇帝は赤の女神の一部の化身であり、ルナー帝国の世俗的側面の首長である。全土に女神の教え尾を広めることこそ彼の義務である。あらゆる政体とルナー神殿の宗教団体の指導者は彼への報告を義務づけられている。彼は今までに何度も生まれ変わっており、事実上の不死である。彼が死んだ場合には、次代の赤の皇帝として認められる者を求めて、帝国全土で大調査が行われる。
赤の皇帝のカルトは主として、軍隊、官僚、その他の地位において皇帝に仕えることを望む者が参加する政治的カルトである。実際には、理論的にはすべてのルナー帝国臣民は、帝国のカルトの平信者である。赤の皇帝のカルトには多くの異なった相が存在し、それにはルナー幼年運動、ルナー軍指揮官団、月の王(サトラップが含まれる)、ダラ・ハッパ元老員が含まれている。他の多くのルナーカルトもまた彼(それ)らの特定の宗教と同じ時間で、他の多くの月のカルトも、通常のカルトと同時に帝国に直接奉仕する帝国下位カルトを持っている。
七母神
七母神は女神の再誕以前は定命の者として生きていた半神である。邪悪なるカルマニア帝国によって弱体化していた時代、彼らは出会い、赤の女神が物質界への帰還を可能に最終儀式を準備したのである。彼らは赤の女神の助産婦であり、宣教師である。
七母神のカルトはルナーの辺境を守護し、帝国の敵を帝国の外に押しとどめ、帝国の友を受け入れている。前者にとっては熱心な改宗者の軍事騎士団として、後者に対してはさまざまな慈善的、教育的機関として機能し、赤の月の正しい導入を学ぶである者たちのために、説教と教育を施すのである。
七母神は以下の通りである。
外交上の必要性からこの西方教会会議に席を有していることを忘れてはならない。古い様式で時代遅れの限定的なマルキオン教の教義に比べ、ルナーの教えの真実は間違いなく高次な存在であるが、その主を軽蔑することは外交的に正しい好意ではない。彼らがただ一柱の神を信じている以上、ルナーの半神が本来的に定命の者であるという事実を強調することは、差し控えた方が良いかもしれない。“魔女”ジャーカリール、糸を紡ぐ魔女
トロウルの徘徊するヨルド山脈からやってきた盲目の女祭。その信者は神秘なる暗黒と狂気の領域に様々な恐怖と慰めを求める者たちである。
ティーロ・ノーリ、若き生命
祝福されしトーランのストリート出身の孤児。彼女は現在、赤の女神の酌人である。彼女のカルトは貧者救済運動のための資金を準備し、多くの慈善活動を行っている。
“女王”ディゾーラ、繋ぎとめるもの
定命の者の時代にはペローリアの傑出した大地の女祭であった。彼女は現在癒しと調和の呪文の源泉であり、貴族や詩人に好まれる守護神である。
ヤナーファル・ターニルズ、雄羊にして戦士
ヤナーファル公爵は、追放されたカルマニアの背教者であり、赤の軍勢の指揮部隊を設立し、戦いの中でかつての主であるフマクトを打ち破った。彼はルナー軍のすべての指揮官、そして同様に多くの一般兵から崇拝されている。
イリピー・オントール、茶色の男
ヤナーファルの聖賢、友、助言者は現在智恵と学習の主たる神としてルナー帝国全土で崇拝されている。彼の書庫にはルナーの教えを掲げ、広めるための詳しい大著が数え切れないほど多く含まれている。
ダンファイブ・ザーロン、探索者のための架け橋
ルナーの教えのために自発的にみずからを捧げた血に飢えた無法者であり、彼の粗野なカルトは犯罪者に更正する最後のチャンスを与える。その粗野な法に従うことで、あらゆる者が女神の内で救済と再生を達成することができるのである。
待つ女、名も無き介添人
神秘なる存在であり、人間、精霊、あるいは神であるかは定かではない。その計りしれない秘密と力は彼女の神秘なる月のカルトのために選ばれた極わずかな者たちだけが知っている。
西方語では七母神のような半神は“聖人”として知られている。赤の女神自身は西方で言う預言者に対応するだろう。
女神については次のようによく言われる。“彼女は鏡であり、彼女は仮面である”。それ故信じていない者にとって彼女の真実は、彼らが理解できるであろう手法で示される。ルナーの言葉は底にある真実は同じままで、表層的な浅い部分は様々に変えることができるのである。これこそ我々の宗教が今まで世界の隅々に至るまであらゆる人々を改宗させることに成功してきた理由である。
他の教派に対する態度
赤の女神は彼女の自由を他の存在や神に認め、それを尊重してくれることを要求しているだけである。彼女はがそうした存在の力や権利を否定しているわけではなく、また彼らへの信仰を覆すよう、主張している訳でもない。
アロリア・ルナー派
西方のアロリア派の居住地は2世紀前、遊牧民の侵略とハートランドが大きく揺らいだ時代に建設された。彼らはルナーの教えには従っているものの、現在はルナー帝国の境界の外側にある。彼らは赤の女神に崇拝を捧げているものの、赤の皇帝に敬意を払うことは拒絶している。
他のマルキオン教徒
西方のマルキオン教徒は彼らが見えざる神、創造主と呼ぶ神を崇拝している。赤の女神はこの原初の存在を知っており、彼を癒すこと(そしてそれによって世界を癒すこと)をみずからの任務の一部とした。しかし、現在の、そして過去においてそうであった有り様で創造主を崇拝することで、マルキオン教徒は創造主が最終的に果たさねばならない変化を達成することを妨げているのである。彼らの信仰は凍結されており硬直的で、過去によって制限されており、将来の変化の必要性に気付くことができないのである。
本テキストはNick Brooke氏、David Hall氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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