“平和をもたらす者”アーカット

    - The Cult of Arkat Peacemaker -

copyright 1997, Nicholas Effingham
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,2000[2000.03.15].



神話と歴史

  アーカットは度重なる戦いの終わりに、恐怖と、アーカットだけが見通すことのできる神秘のベールにつつまれた、昼に夜に徘徊する“欺くもの”グバージの暴虐とに終止符を打つために現れた。アーカットだけがグバージとは誰か、いったい何ものであるかを示すことができた。彼は協調性を欠く混沌と邪悪とを破壊するために、法を尊ぶラリオスの正当な後継者たちを統一した。後に彼の威厳を維持することで帝国が形成され、統治が行われ平和が保たれたのである。

  暗黒帝国の人々は長い、長い間平和に満ちた調和の中で暮らしていた。“法官”アーカットの350の法は、至福の存在を讃えるために与えられたものであり、そのためすべての王と指導者がその存在を讃えるようになったとき、アーカットは退いたのである。彼は天へと昇り、夜にはその王国を照らしながら、我々に注意深い目を向けているのである。

  しかしながらグバージは復活を果たした。無秩序に冒されて法は敬意を払われず、調和は打ち砕かれた。グバージはアーカットへと至る道を破壊し、暗黒帝国が秘める秘密が故に、アーカットが生み出したものすべてを破壊し帝国を引き裂き蹂躙した。あるいは彼らはそう考えたかもしれない。だが我々のカルトは神智者の邪悪を生き延びた。なぜなら一なる真の調和を消し去ることは決してできないからである。我々は再び統一を果たすことで、アーカットの公正なる統治を取り戻し、新たなる帝国を打ち立てるためにアーカットを再びこの世に取り戻さねばならない。彼は偽りの神々を打ち破り、偽りの預言者を破壊し、偽りの法を焼き尽くし、ふたたびその王位をラリオスにもたらし、調和を人々にもたらすであろう。

  “平和をもたらす者”アーカットのカルトは真に最も勤勉な信徒がアーカットの薔薇の殿堂へと赴き、そこで彼らの英雄を待つということを知っている。しかしほとんどの信徒は彼らのカルトが所属する(そしてアーカット信徒が受け入れ可能な)他のカルトによって提供された死後の生に甘んじている。

  “平和をもたらす者”アーカットのルーンは「調和」と「支配」である。


カルトの生態

  “平和をもたらす者”アーカットのカルトは、アーカットをラリオスの主という彼の正当なる地位に返り咲かせる方法を模索している。それは彼の子孫とカルトの秘める能力によって、北の大陸に平和と調和を再び根付かせるためである。カルトは究極の平和と慰めとを信じる一方で、暴力がそれを成し遂げるための必要な手段であると見なしている。全体としてカルトは平和主義者ばかりであり、暴力に手を染めることは希で、代わりに戦士を雇ったり私兵を養い自分たちのために戦わせる。アーカット派のカルトがしばしば激しい武力衝突起こすことと、彼らの教条を広めるために暴力を使う必要があることから、これらの軍隊は必要悪と考えられている。最後に行われた戦役は、“破壊者”アーカットのカルトと“平和をもたらす者”アーカットのカルトが、領有権を巡って戦った、1579年のある平原での武力衝突である。

  “平和をもたらす者”アーカットの教派は、アーカットの他の相の存在を喜んではいないものの、かろうじて許容している。彼らは他のすべての相が、真なる一つのアーカット像の曲解であると考えており、そのため司祭のほとんどはアーカットの他の相を崇拝している候補者の入信を認めない。“解放者”聖アーカットの教派だけは例外である。


世界におけるカルト

  “平和をもたらす者”アーカットのカルトは、至福を追求するもっとも平和的なカルトとしてラリオス全土で人気がある。カルトはヘルビィとアジロスで大きな支持をを得ており、ラリオス盆地の外ですら支持されている。トロウルは“平和をもたらす者”アーカットを信仰しておらず、人間だけがこのカルトを信仰している。

  カルトは他の神殿と同様の構造をしている。司祭という選ばれた者が入信者の集団の上に立ち、通常は少なくとも少数の戦士たちが、雇われて入信者の輪に加わっている。カルトの教条は頻繁に変化し、時には極端な変化をもたらすこともある。そのために、寄進を行うことで平信者の階級となることが許されている。長期間平信者の地位にとどまる者も極めて一般的である(構成員の資格としては年、あるいは10年単位で計られる)。


入信者

  入信者は1季の間、平信者としてカルトに奉仕せねばならず、司祭に良く知られているか、有力な3人の入信者に推挙してもらわねばならない。カルトは宗教的な朗読会から狩り手の一団にいたるまで様々な社会活動を組織しているので、入信の時までには、平信者は教会に良く知られた存在となっている。

  カルトの戒律を受け入れることができる者であれば誰でも、1ポイントのPOWを捧げることでカルトに加わることができる。あらゆる候補者は少なくとも12歳に達しておらねばならない。

  すべての入信者は、自分たちがこのカルトの一員であることを示すために、黒い鳩のメダリオン(カルトから60ペニー前後で購入する)を服の上から身につけておかねばならない。司祭からそうする様に命令されない限り、入信者はナイフ、ダガー以外の武器を身に帯びてはならず、鎧も身につけてはならない。入信者は少なくとも時と収入の10%をカルトに捧げねばならない。


司祭

  司祭は4つのヒーローパス(下記参照)を踏破し、魔道呪文である《“平和をもたらす者”アーカット礼拝》の魔道呪文を学んだすべての信徒である。彼らは寺院を運営する必要はないが、多くの者がしばしば寺院を運営するか誰か別の者が運営する寺院に参加している。すべての司祭は時間と収入の90%をカルトに捧げねばならず、ほとんどの時間はアーカットの法を説くことに費やされる。すべての司祭は杖、あるいはダガー以外の武器を一切手にしない。彼らは神性介入を行うことができる。入信者は神性介入を行うことはできない。


“平和をもたらす者”アーカット特殊神性魔術

アーカット自身はいかなる神性魔術も提供しない。そのかわりにアーカットその人の従者の「昇天した」魂であるカルト精霊と4人の副官から神性魔術を得ることができる。適切な儀式魔道呪文を用いることで、ヒーローパスを開くことができる。それぞれのカルト精霊はそれぞれ独自のヒーローパスを有している。一度クエストが達成されたならば、神性呪文を獲得するためにPOWを消費することができるようになる。カルトからのすべての神性魔術は、この方法で獲得することができる。

ポルレレート、アーカットの第6隊長
  ポルレレートはアーカットの仲間の一人であり、ラリオスが平定されていた時代、いくつもの部隊を指揮していた。彼はザブールの青の書を盗み出すというヒーロークエストに同行した仲間の1人であり、その勲故に誇り高きトロウルとなった。

  ポルレレートはST.500年に英雄界へと昇り、赤の塔に住んでいる。岩だらけの山を登り、足場の悪い桟道を通って彼の家へとたどり着けた者は、彼と彼の妻に会うことができる。   彼は、アーカットがいかに沈黙を守っているかを大変嘆いていると言われており、時折“アーカットの星”へと至る古代の道の再興を探索者たちに懇願する。

  彼は平和の戦士である(この様な矛盾に満ちた表現が許されるなら、ではあるが)。彼はその主たるアーカット卿の無限なる知慧をもって統治される、彼に関わる者すべての安寧を模索している。

《安寧》 Pacify
2ポイント

遠隔、残照、複合不可、再使用可

  この呪文はあらゆる非混沌の存在に対して投射することができる。MPの抵抗ロールに破れれば、呪文の対象となった標的は武器、呪文、その他の攻撃的行動によって攻撃を行うことができなくなる。標的は防御は何ら問題なく行うことができる。この効果は呪文の持続時間が経過するか、呪文が魔術的に破壊されるまで続く。

アガリン、アーカットの魔術の仲間
  ハリキーブの人々は、アーカットがゾラーク・ゾラーンの入信の儀式に際して、人間の奴隷の子を送った。子供の名はアガリン、あるいは暗黒語で“蜘蛛の愛撫を受けし者”と呼ばれていた。彼はフマクトの剣にしてランコリングの法官となり、アーカットにとっての“契りの作り手”にして“誓いの担い手”であった。彼は完全なる平和主義者であり、怒りにまかせて剣を取り、他人を傷つけることなど絶対になかった。彼は自分に敵対する敵と和解するためだけにその力を用いた。

  彼はST.479年、ディホーリの精霊と和解するためのヒーロークエストの途上、行方不明となった。後に行われたヒーロークエストで、アガリンは和解するために訪れた悪霊によって捕らえられていることが明らかになった。彼の魔術を獲得するためには、その者は地獄を旅し、ディホーリを突破してアガリンの牢獄へと至らなくてはならない。アガリンは彼がディホーリを宥め、平和的な関係を築くまで、決して他者の救助を受け入れることはないであろう。しかしながら、彼はヒーロークエストを成し遂げて来た者に自由にその魔術を与えるだろう。

  彼は《運命結合(Fate Link)》の神性呪文を提供する。この呪文は一回限り、2ポイントの神性呪文であり、アラネアの神性介入と同様の効果を発揮する("Troll Gods"P.16参照)。

イリイン・マルシャクス
  彼はダラ・ハッパ出身のナイサロール信徒であったが、グバージのすさまじい恐怖と、成長を続ける輝ける帝国内部の癌を目の当たりにしたとき、彼の以前の紙に敵対するようになった。彼はより明瞭に世間を知ることができるよう、その日からみずからの目を潰し、啓発の秘密を発見するために長い巡礼の旅へと旅立った。彼はみずから発見した光と大いなる秘密を開示し、そしてついに、アーカットがドラストールへと侵攻する時、これらの力と情報をアーカットにもたらしたのである。イリインは彼がナイサロールの橋で守護者と遭遇し、浄化の炎が彼と守護者の両方を包んだ時、死んだ。

  現在彼の元へ達するためには、その者は啓発されイェルムの宮廷へと旅せねばならない。その者はそこで光輝の天使からイリインに対する謁見を許される必要がある。イリインは彼の魔術をアーカットのよき崇拝者すべてに与える。彼は《調和》を提供する。

“過去”
  “過去”はカルトの復讐の精霊にして死後の生のカルト精霊である。“過去”はかつて大暗黒で破壊された神に仕えていた精霊であった。アーカットが精霊界でこのものと出会ったとき、彼らは共に赤ワインを酌み交わし互いに友となった。過去”はしばしばアーカットに付き従ったが、グバージとの最終決戦には同行していなかった。

  第3期において、“過去”は“平和をもたらす者”アーカットの司祭の友好の対象であった。第2期の初頭、暗黒帝国の最盛期にアーカットのカルトがそうしていたようにこの精霊と接触するため、司祭は秘密の儀式を発掘した。適切な魔道呪文を知っている者であれば、誰でもこの精霊を召喚することができる。召喚者と精霊が赤ワインを交換している間は、彼らは良い関係にある。“過去”は接触することがもっとも容易な精霊であり、《魂の奉仕》の神性呪文を提供する。彼を復讐の精霊として扱う場合には、召喚した司祭は破門の対象となった犠牲者のカルトに対する罪(破戒や不必要な暴力など)を証明せねばならない。この精霊は背教者を狩り出すアーカット信徒たちに付き従い、精霊戦闘を行う。“過去”はPOW36、INT14を持つ。

《魂の奉仕》 Deidicate Soul
1ポイント
儀式(浄化)、1回限り
  この儀式は死に際し、アーカット信徒が定められた死後の世界ではなく、薔薇の殿堂へと進むことを確実なものにする。精霊界のこの領域は献身的なアーカット信徒が彼らの神の帰還を待つために赴く場所である。この呪文の標的はこの呪文を進んで受け入れねばならず、また“平和をもたらす者”アーカットの教派の一員でなくてはならない。この呪文はその魂を、混沌に貪り食われたり英雄的魔術によって捕らえられたりというような外的影響から守るものではない。また“過去”はみずからが復讐の精霊として召喚され、攻撃の対象とした、破門された経験のある者を拒絶するだろう。このような場合、拷問にかけるために地獄へと送られる。


カルト特殊魔道呪文

  信徒たちの間で一般的なカルト呪文は神性魔術を獲得したり、“過去”を召喚するためのヒーロークエストを行うための儀式呪文である。《“平和をもたらす者”アーカット礼拝》の呪文も存在している。これらの呪文は極めて一般的であり、ある司祭から有望な入信者へと教授される。司祭位への候補者はこれら5つの呪文をすべて知っておらねばならない。


その他

神性介入    司祭だけが、能力の点で限界はあるものの、“平和をもたらす者”アーカットの神性介入を試みることができる。アーカットは防御、あるいは平和的手段として神的な介入を行うことができ、そのために嘆願者の助けとなるよう“過去”を送る。神性介入を行うことができるということは、その者がその時点でアーカットの司祭であるあることを示す、1つ指標である。


  本テキストはNicholas Effingham氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
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