ロカール派;ロカール派聖教会

    -Rokari: The Holy Church of Rokarism-

copyright 1994, Nick Brooke & David Hall
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,1999[1999.10.30].

歴史

  聖教会は古セシュネラの破壊と神知者の時代の後、時代を覆った精神的混乱と混沌の中から生まれた。この時代多くの小国家が乱立し、組織的、もしくは神学的に統一された教会は存在しなかった。戦争と異端とが蔓延していた。

  1310年、聖ロカールはレプレインに生まれる。若き見習い司祭の時代にまずフレストルが、ついでマルキオンも彼のもとを訪れた。彼らは神知者の時代に失われてしまった古き法の教えを、ロカールに伝えに来たのである。彼らの言葉とは「一つの神、一つの教会、一つの王、一つの平和」であった。フレストルはまた、「鉄槌がリンドランドにて鍛えられるであろう。その槌はみずからをもってセシュネラの古の王国を鍛え直すであろう」と予言した。

  当初、ロカールの洞察と啓示は仲間の修道僧から軽蔑された。それでも自分の考えを棄てなかった彼は、聖職を剥奪され、修道院を追放された。しかし彼は公教会の外で彼の言葉を聞こうとする者たちに説教を続けた。やがてそれは戦争と生活の絶え間ざる変化に疲れた地の農民たちの間で大衆運動へと発展した。

  1349年ロカールは教会に捕らえられ、審議を経て異端のかどで有罪を宣告される。彼は火刑に処されたが、炎が彼の背丈に達したとき聖なる使者"慰め"と"喜び"が天より降臨した。そして信仰篤きロカールを創造主のもとへと導くのを、その場に居合わせた者すべてが目撃したのである。この後彼の教えは速やかにセシュネラ全土、そしてその他の地域へも広がった。この教えの説教師はしばしば迫害され殺されたが、その言葉を止めることはできなかった。

  1410年、リンドランド公"槌王"ベイリフェスはロカールの教えに改宗する。彼はその後聖ロカールの戦旗を携え、あらゆる者に信仰を広めるため、聖十字軍を率いてセシュネラへと赴いた。そして鉄槌の予言を成就したのである。彼は1412年、第一次、第二次のアスゴラン開戦で敵を打ち破り、敵将は逃避行を余儀なくされるか、さもなくば火刑場へと送られた。1413年レプレイン大司教、そして新たにロカール派聖教会総大司教に任命されたマルドロンの手によって、ベイリフェスはセシュネラ王として戴冠する。

  それ以来ベイリフェスの血を引く者たちは、信心深い民を神聖なる権利と見えざる神、そしてその預言者であるマルキオン、フレストル、ロカールの名のもとに治めているのである。

  この100年間、農夫階級の者たちの無知と恐怖に付け込んでロカールとマルキオンの法を誤らせようとする試みが、異端者たちによって行われてきた。それ故1547年、そうした異端や異端者たちを見つけ出し、論破するために黄金槍異端審問騎士団が創設された。騎士団は騎士、司祭の両階級の信仰心の篤い者たちで構成されている。

神学

  第六回マルキオン教教会会議において、セシュネラとロスカルムの教会連合は、ただ一柱の神が存在し、それは見えざる神であり、その預言者はマルキオン、フレストル、そしてロカールであるという事実を満場一致で確認した。良きマルキオン教徒はこの決定を受け入れている。

  我々は愛する者への《切開》行為に関する規定を含めた、マルキオンの法すべてに従っている。しかしながら、他のカーストの者が乳、毛、皮、骨、腱、肉という形で生命の糧を得ているように、魔術師階級のものが生命の糧を得るために動物に対して《切開》を行う事は許されている。動物が魂を持たない事はよく知られているので、それらはあらゆる意味で愛の対象とはならず、そのためそれらに対する《切開》行為も全面的に受け入れられる。

  我々は農夫と戦士の領主に対する忠誠心に価値を置いている。

  我々はカースト間の移動は存在しないと考えている。人はそれぞれ自身の階級に生まれ、自身の階級で生き、自身の階級の仕事を果たし、自身の階級で死ぬのである。ある人物が救済を得るためには、生涯をかけて自身のよりどころとなるものを習得する必要があるだけである。偉大な農夫は強い騎士、賢明なる王と同等の価値がある。

  過去において、神知者の異端的な説教が容易に行われたのは、我々のカースト制の堅固さが失われていたからであり、我々は再びそうした事が起こる事を一切許してはならない。我々はロカールの導きの下、我々の教会がその教条から神知者思想の痕跡をすべて消し去ったことを誇りにすべきである。

  罪の問題は我々にとって大いなる関心事である。罪とはマルキオンとロカールの法を犯す事である。これにはカーストの禁忌を犯す事、《切開》行為、不純な思考、盗み、姦淫、虚偽、酩酊、大食、《不死》の呪文、異端的思想、妬み、中傷、貪欲、中身のない説教、猥褻、司祭や自分の領主との議論、などが含まれる。罪とは過ちである! 今日の日に一つの小さな罪を犯す事は、地獄と破滅への階段を一段降りる事である!

  罪人に気をつけよ! 地界において悪魔は地獄に住んでいる。そこは冷たき暗黒の生物とおそるべきカージョルクの徒たる怪物の住む凍土であり、彼らは異教徒、殺人者、異端者、魔女、カーストを犯した者、《切開》を行った者、性的に逸脱した者、繰り返し罪を犯す者など、彼らすべてを永遠に拷問して喜んでいるのである。信仰に対する厳格な理解だけが汝を救う事ができるのだ!

我々は以下の見解をも有している:

  女性は精神的許容量において男性よりも劣っている。彼らにはその筋力同様、男性の持つ知的能力が欠けているのである。精神的な深みを欠くが故に、彼らは悪魔的な影響を受けやすく、それゆえ危険であるといえる。グバージ、すなわち"欺くもの"のカルトはグバージのカージョルクの徒、インキュブスに誘惑された女性が主に率いている。女性の言葉を信じてはならない。彼らは常にその心を変えている。その劣等性ゆえに女性は農夫階級か領主階級においてのみ救済を得る事ができる。彼らは司祭や戦士になる事はできない。

  錬金術は見えざる神への信仰に寄与しない悪魔的な行いである。最近では占星術も同様にある調査の対象となっている。その調査では占星術の実践者たちが、その結果を得るために魔族を崇拝するという事実が報告されている。

  また魔術師階級における婚姻に関する進歩的考察も存在する。多くの者が婚姻は司祭の信仰と能力を弱めると考えている。さらに司祭や司教の中には結婚しない者もいる。

位階

  教会の最高地位はロカール派総大司教が占めており、その地位は伝統的にレプレインの大司教のものである。過去150年に渡り"敬虔なる"セオブランクがその地位を占めている。

  教会の次の階層は、セシュネラの各地域を霊的に統治している司教層である。これらの地方では、彼らはその地の伯爵、総大司教、そして王に対してのみ責任を負っている。こうした聖司教区はアーンロール、デュー、ダンク、エストー、ギルボック、レプレイン、ノイエル、シーギュランス、そしてヴォイのの各司教区である。総大司教はノロス、パソス、ピスダロスに対する霊的権威も有している。

  黄金槍異端審問騎士団は総大司教の直接監督下にある。この騎士団は、、セシュネラ王ロメイン四世によって与えられた古代の権利に基づき、ロカール派教会内のあらゆる人間を調査する権限を持ち、その目的に合う、ないし総大司教が適切と認める活動を行う。この騎士団は騎士団の騎士司令官によって率いられ、現在その職にはアルベリウス・カナーダイン卿が就いている。

重要な聖人

"炎の王"聖ガーラント

  "炎の王"聖ガーラントはグバージの時代にセシュネラを統治した。彼は完全なる統治者であり、自らの民を救うためにもっとも親しい友、アーカットすら犠牲にした。彼は我らの賢明なる指導者たち、さらに我らの正当なる王の中の王たちに喜んで仕える者たちによって崇拝されている。

聖フレストル

  聖フレストルはマルキオンの啓示を受けたタラーであり、聖なる預言者である。彼は今日ほとんどのマルキオン教徒が従っている掟と法の多くを我々に説いた。彼は騎士と騎士道の誓いをもたらし、貴族階級にその責務を与えた。彼は農奴階級と魔術師階級が武器を持つことを禁じたが、騎士階級と貴族階級にはそれを奨励した。

聖マルドロン

  聖マルドロンは聖ロカールの弟子であり、"槌王"ベイリフェスを信仰に目覚めさせ、聖教会の初代の総大司教となった。彼は生涯の大半を総大司教として過ごし、国中に多くの修道院と大聖堂を建立した。もっとも壮麗なものはレプレインにある教皇庁である。彼はまたレプラインで開かれた第六回マルキオン教教会会議を主催し、そこで列聖された。彼は103才で慰めと喜びの抱擁を受けた。

聖ロカール

  聖ロカールはレプレインの街出身の司祭であり、彼はマルキオンとフレストルの訪問を受け、神知者の時代にはすでに失われていた古の法を伝えられた。彼は敵の手によって殉教させられたが、その言葉が沈黙の中に封じられることはなかった。彼はあらゆる者の守護聖人である。

他の教派に対する態度

フレストル派

  フレストル派はカースト間の移動が可能であるなどという危険な信条を掲げている。これは極めて危険な思想であり、この時の不確かさをもたらしている。これこそがおそらく戦争王国が出現した理由である―創造主がその罪で彼らを罰しているのだ―。

  フレストル派の者たちは女性に対して不健全な関心を抱いている。彼らは女性の一部が教会に参加し、司教となることすら認めている。女性によって認められた教会など、それ自体が不浄で罪深い存在である。

暗黒異端派

  アーカットがマルキオン主義を裏切り、破門されたときに、彼がより偉大な秘密を発見したと信じている小さな教派は無数に存在する。これらがまがいもので真実でないことは明らかであり、それゆえこれらの教派は価値なきものである。第三回マルキオン教教会会議では、見えざる神の崇拝以上の秘密など存在しないことが定められている。

ガルヴォスト派

  この教派は、《切開》の対象が非マルキオン教とである場合の《切開》行為は容認できるとしている。彼らの異端的信仰はノミア王国に起源を有しているが、王国は神知者と友好的な関係にあった。見えざる神の怒りが神知者の頭上に下されたとき、ノミア王国も同様に破壊された。この異端派は未だに光を見出せずにいる。

ボリスト派

  この教派は、《切開》行為の対象とするために混沌の生物を探し求める秘密主義的な異端の組織である。なぜならそうした行為は彼らのイメージの中では、彼ら自身が悪魔を追っているからである。彼らのエージェントはどこにでもいるが、あらゆる機会において根絶やしにされるに違いない。もしあなたが誰か、自分の妻、自分の領主、自分の子供に対してボリスト派の者ではないかと疑いを持ったなら、そのことを必ず異端審問所に報告しなくてはならない。

シダルフ派

  我々はこの教派に関して、それが南の大陸で生まれたものであるという事以外は何も知らない。


  本テキストはNick Brooke, David Hall両氏が作成した作品を、氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
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