セシュネラ騎士道

    -Seshnelan Chivalry-

copyright 1998, Nick Brooke & David Hall
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,1999 [1999.10.31]

城塞海岸の歴史をたどりながら

  騎士の掟は曙の後、第2年に最初の騎士、王子フレストルによってもたらされた。彼は気高き騎士団を組織し、はじめて騎士の探索を行った。そしてフロウワルにある自分の故郷を救い、セシュネグ王国を建国したのである。そして(流浪の時期に)、騎士修行の慣習の創始者となった。

  全世界で最も気高い騎士は、常にセシュネラ王国の出身だった。セシュネラの歴史は、騎士道と魔道の衝突の歴史である。フレストル自身邪悪なる女呪付師によって追放され、魔道士の手によって殺されている。騎士道とは忠誠心にあふれた雄々しき行いであり、それがどのような場所であれ闇ある所へと進んで足を踏み入れ、その光をもって闇を照らすのである。騎士はみずからの敵と直接相対する。ところが魔道は魂の陰でただれており、陰険で後ろ暗い欺瞞の道を教える。

  遙か昔、セシュネラの軍からなる対混沌十字軍は、"炎の剣持つ"ガーラント王によって導かれた。彼の騎士の中でもっとも優れた者は、戦いの巧み、王の縁者でもある勇者アーカット卿であった。彼らは肩を並べ、タニソールの汚らわしき吸血王やラリオスのカージョルクの徒である怪物と戦った。しかしアーカット卿が高徳の道を捨て、みずからの敵を打ち倒すために暗き秘密と異教の魔術に手を染めようとしたとき、王ガーラントはみずからの王国から彼を永久に追放した。報復としてアーカット卿は恐るべき異教の暗黒帝国を打ち建て、第二期の初頭にはセシュネラに多くの害を与える事となった。

  ガーラントに始まる炎の王たちの系譜は、第二期には精強な中部海洋帝国を支配した。セシュネギの騎士は、セイフェルスターにおけるトロウルの支配者層を倒した高潔への帰還十字軍の刃となったのである。当初セシュネラの王たちは聡明で信心深い君主であった。しかし彼らが後年魔術師の言葉に過度に注意を払ったがために徐々にうぬぼれ、高慢になっていった。第二期の終わり、最悪の魔道によってセシュネラ全土は破壊された。大地は覆り、美しい町並みと城塞は粉砕された。高波が南部を襲い、立ちはだかるものすべてを根こそぎなぎ払った。ついには海面が盛り上がり、古の王国のもっとも高い一部を残してそのすべてを飲み込んだ。タニソールへと逃れることで、我々の祖国を襲った"没落"から生き延びた我々の祖先は、その地を数世紀に渡って統治し、古の王国のもっとも輝ける時代の風俗、習慣を保ち続けていた。しかし"魔道士"ロカールによって広められた悪しき異端は、国をまとめる封建的義務の結をばらばらにしてしまった。"誓いの破り手"ベイリフェスは第二次アスゴラン会戦で彼自身の正当なる支配君主と戦い、裏切りによって勝利をおさめ、前君主に忠節を誓っていた者すべてをその地より追い払った。追いやられた者たちは鉄の山脈とカントール森林を越え、古の王国の首都フロウワルの廃墟の近く、今日では城塞海岸として知られている古セシュネラの名残リある地に植民した。タニソールの簒奪王たちの厳しい圧政の下ではなく、ここで我らは生をいとなみ、騎士道にかなった、気高く勇ましい冒険の生活を送るのである。


神学

  我々フレストル派の者は、神があらゆる男性に対して社会における場を示した事、そしてその者が、農夫、兵士、魔術師、領主のいずれかの階級のうちの、みずからの階級に留まるべき事を知っている。みずからのカーストを勤勉に勤める事で、男性は慰めへと達する。通常の社会の外側ではあるものの、気高き騎士団が存在する。この選ばれた集団は他の4つのカーストすべての機能を結び合わせたものである。大胆な冒険へと導かれたと感じ、さらに必要な技と技能のすべてにおいて熟練を示すことのできた者はこの集団へと受け入れられる。

  気高き騎士団へと受け入れられるためには、満たすべき多くの要求が存在する。そのすべてを満たした者は、長い夜の勤行の後に行われる宗教的儀式において騎士に列せられる。将来騎士になろうと考える者は、4つのカーストそれぞれから、そのカーストに関連する技に関してみずからの熟練を証明してくれる人物を見つけなくてはいけない。

  女性は、男性よりも甘美で、芳しく、魅力的な存在である。彼女たちには敬意と畏敬の念とが払われ、遠くから崇拝されなくてはならない。いかなる女性もカーストには縛られておらず、自分が望む男性を自由に夫とする事ができる。

  結婚は祝福されるべき行為である。いかなるカーストの者であれ、男性は結婚し元気な息子を育てる事が奨励される。離婚は恥ずべき行為であり、唯一男性の妻の欠点を理由とする場合にのみ認められる。姦通は罪深き行為であるが、唯一騎士の思いが完成に至った場合だけは例外であり、淑女への貞潔で騎士道にかなった献身は高徳の行いである。

  マルキオンが語ったように"汝の愛するものを傷つけてはならない"。状況によって必要とされる場合に、領主の命によって《切開》を受け自身の生命力を捧げることは農民にとって大変な名誉となる。騎士がその血を、魔術師がその魔術的な力を捧げるように、農民は自分自身の精髄を捧げる事で祖国を強くし、守る事ができるのである。

  カージョルクの徒は人ならざる怪物であり、ドワーフ、エルフ、トロウルと同じような存在である。それらの絶え間無き猛攻から祖国を守り、見つけ次第殺す事は騎士の務めである。


位階

  教会の最高指導者はフロウワルの総大司教、エシリアン・アイ・デミブラスである。彼はあらゆる地域のすべてのマルキオン教徒の正当なる指導者である。彼にすぐ下に仕えるのは古セシュネラの司教層である。今は海中に没した古セシュネラの管区の直接継承権は、神が不正を打ち、信心深く、献身的に仕える者たちに赦しを与えた"没落"の間も保存されていた。


高名なる騎士

フレストル卿

  セシュネグの列聖されたる王子フレストルは最初の騎士であった。曙の後の第1年、フレストル王子は夜の勤行の最中、天使の預言者マルキオンの啓示を受けた。このときフレストル王子は、野蛮な敵からセシュネグ王国を救うために社会の伝統的拘束を打破せよとの霊感を受けた。彼は騎士の階級を定め、最初の探索を行い、十字軍の精神を見出した。後に彼は邪悪なる女呪付師によって追放された。そしてアケムで裏切り者の魔道士たちの手によって殺されるまで、騎士修行者として各地を放浪した。

"炎の剣持つ"ガーラント卿

  列聖されたるセシュネラ王、"黒き"アーカット卿の息子にして彼の君主であった"炎の剣持つ"ガーラントは、対混沌十字軍を指揮し、当時の邪悪なるタニソール王を倒した。彼の子孫こそ"炎の王たち"であり、彼らが魔道に重きを置いて倒されるまで、第二期に栄光に満ちた中部海洋帝国を統治した。聖人としてガーラントは汚れた簒奪者であるタニソールの君主たち対する戦いに祝福を与える。彼はその完全なる騎士道故に記憶されている。

"黒き騎士"アーカット卿

  "黒き騎士"アーカット卿は、彼の勇気が挫けたとき魔道に救いを求めた不名誉な裏切り者の騎士であった。彼が心変わりする以前、彼がセシュネラを守るために勇気を持って奮闘したにもかかわらず、良き王ガーランドは、アーカットの恥ずべき罪ゆえ彼を永久に追放したのである。アーカットの騎士道と美徳の教えからの凋落は、すべての騎士に対する悲しき警告として用いられている。


他の教派に対する態度

ロカール派

  これら欺瞞的で異教的な成り上がり者どもは、フレストルの定めた騎士道をまったく受け入れようとしない。彼らは彼らの擁する単なる歩兵と騎兵が"騎士"であると主張し、少しも騎士道の教えを知らない魔術師、領主領階級の統制下に置いている。彼らは誤って"セシュネラ王国"と名付けたタニソールを支配し、魔道士ロカールを"第三の預言者"と呼ぶ。我々は炎と剣とをもって彼らを打ち払い、実りなき国に正しき騎士道の統治を取り戻さねばならない。セシュネラの真の騎士は、不毛な教義と空虚な偽りで民から真の生き血をすする、タニソールの偽りの、汚れた王を打ち倒すだろう!

フレストル派理想主義者たち

  幾分現代的な教派であるこれらのロスカルム植民地民は、フレストル派の輪を再び編み出すために全力を尽くしている。とはいえ彼らは、当然といえば当然であるが、あらゆる者がフレストルの高徳の道に従うべきであるという原理的な過ちを犯し、さらにその道とは一体何であったかという理解を完全に誤ったのである。(王子フレストルは農夫階級に生まれたのか? その考えはまさに不合理である)。だがその努力が故に(そして、最近まで彼らが完全に切り離されていた故に)彼らをとがめることはできない。我々は騎士道の教えで彼らを教育し、真実のフレストルの教えへと引き戻さねばならない。

暗黒異端派

  彼らは黒き異教徒の魔道士、神秘なる技をもて遊ぶ者たちであり、こずるく、欺瞞に満ちている。我々は彼らとその女々しい教えを軽蔑している。タニソールが回復されれば、我々の東方に対する戦いが確実に、そして迅速に行われる。ラリオスの多くの都市は破壊され、商人支配者たちは打ち倒され、異教徒は根こそぎにされ、炎の中の投げ込まれるのだ!


  本テキストはNick Brooke氏、David Hall氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
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