サイアノール派教会

    - Syanoran Church -

copyright 1998, Nick Brooke & David Hall
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,2000 [2000.04.08].

歴史

  サイアノール教会は古の時代、聖ティロールが邪悪なる"欺くもの"からフロネラ全土を救った時から存在している。彼は、真実と信仰心とをフロネラに広めた。ロスカルム、ドナ、ジュノーラ、そしてサイアノールのすべての都市は、彼の教えに従ってマルキオンに崇拝を捧げたのである。

  しかしサイアノールは第2期の大半を、ロスカルムの神智者であった支配者層によって支配された。だが第2期の終わりにサイアノールは解放され、フロネラの偉大なる英雄"大熊"ジョナットが古セシュネラへと巡礼に訪れたとき、教会は新たな活力を得た。彼は汚れた神智者の手から、数多の貴重な真実の信仰の聖宝を救いだし、これら偉大なる遺宝や霊宝をサイアノールにある彼の故郷へと持ち帰ったのである。

  再生サイアノール教会は第3期初頭に広まり、統一された。しかし15世紀にペローリアから東方の避難民の大規模な一団がジャニューブへと流入し、ジャニューブ川中流地域平原のドナに入植した。彼らはその目的を達成するために邪悪なる魔術を用いてイーストポイントを攻略し、その月信仰の異端に加えることサウスバンク、リバージョインの人々を汚したのである。

  それではまだ不足であるかのように、125年前、ロスカルムの邪悪なる魔術師が、フロネラ全土にむけて"大閉鎖"と呼ばれる巨大な呪付を放った。この魔術は通り抜けることのできない呪われた境界線を生み出し、サイアノールの各地域がほぼ1世紀に渡りお互いに分断されてしまった。各司教区はお互いとの連携がとれなくなり、東部ジョナーテラは完全に失われた一方で、西部ジョナーテラでは不信心な王の支配の下で神の恩寵を失った。ジュノーラ、カーストール、ティムズにおいてのみ、真の教義を守る意志を持ち、それが可能な統治者が存在していた。

  ああ!悪しき戦争王国はジュノーラを一掃し、その途上の都市をことごとく征服しつつある。不正に満ちた欲深き男であるジョナーテラ王は、カーストールの敬虔なるベラスガート伯をその正当なる座から追い落とし、自由で独立したティムズの地を求めて行動を起こしつつある。コングレーン王はすべてにおいて教会の友たりえない。彼は貪欲な男であり、罪人である。彼に使える聖職者や司教も何度も諫言を行ったが、なんの意味も持たなかった。

  今こそまさにサイアノール教会にとっての試練の時である。


神学

  この世にはただ一柱の創造主たる神が存在し、それは見えざる神である。その預言者マルキオンとティロールである。

  この世には国ごとに多くの精霊が存在し、人間がなだめ使役することができる。すべては創造主の領域の自然の恩恵の一部である。だが後進の異教徒たちがそうするように、これらの精霊に崇拝を捧げること、その神々を呼び出すことは過ちである。

  我々は、離婚の絶対的禁止を含めて、マルキオンの法に従っている。「汝の愛するものを傷つけることなかれ」と予言者は言った。祝福を受けた者同士の結婚の聖なる状態は、霊的な愛の完全なる発露である。神が結びつけた者たちを、他人が引き裂くことは許されない。さらに愛とは間違いなく真実にして完全であり、未亡人や妻を失った者が再び結婚することは不可能である。

  司教だけが《切開》の呪文を学ぶことができる。この呪文は聖なる婚姻を汚した2人、姦夫、私生児に対する正しき罰を与えるためにのみ用いられる。

  我々は、農夫階級、兵士階級の者たちが選ばれた君主に捧げる忠誠心に重きを置いている。

  社会的なカーストの流動性というものは必要ない。霊的婚姻の聖性はその子供が両親と同じ地位にふさわしい者であることを確実にしている。それ故、それぞれのものは、農夫、戦士、司祭、領主階級のいずれかに関わらず、自身のカーストに生まれ、自身のカーストに生き、自身のカーストの勤めを果たし、自身のカーストの内で死んでいくのである。貴賤はあるにせよ、神の智慧によって定められそれぞれの人間のカーストについて、疑問を挟むことは我々にはすぎた所行である。

我々は以下の見解をも有している:

  霊的意味合いにおいては、女性はあらゆる面において男性と完全に同等の存在である。彼女たちは男性と同じように女祭や司教となることができる。しかしながらその肉体的本質において男性に劣っていることは明らかであり、戦士階級や領主階級の一員として神に仕えることには適していない。   司教は結婚せねばならない。なぜなら神聖なる儀式を通じて、その引き裂かれた本質が再び結びつけられうるかれである。司祭と女祭も結婚し、後継ぎとなる多くの子供をもうけるべきであると考えられている。

  私生児は農夫階級に組み入れられる。真ならざる結婚から生まれた不義の子が生まれた場合、その者はマルキオンの法の外に置かれる。

家族に忠実であることは、マルキオンが教授した主たる美徳の1つである。結婚していない者は禁欲が、結婚している者は貞節が求められる。姦夫が聖教会の内で苦しむことはない。彼らは神の法を汚した者であり、神の愛は失われもはや教会の一員ではないからである。

  自然的精霊の多くは動物の形態をとり、これこそ大いなる信仰と勇気の現れとして知られている。ジョナットの友なる熊がもっともよく知られている例である。それ故動物は霊的意識を持ち、農夫階級の者と同等の聖なる責任を有している。これは動物を人間と同じように扱うという意味ではなく、良かれ悪しかれ、道徳的規範にそって行動する能力がある、ということを意味している。聖教会には数は少ないものの、動物の聖人も存在している。


位階

  サイアノール派には確たる指導者は存在しない。教派の司教は、神学校で教義を決定するが、彼らは皆平等の立場でそこに参加するのである。

  教会の最も高い地位にある者は、それぞれがサイアノールの一部の地域の霊的統治権を保有する司教層である。第3期初期の時点で、聖司教区はエインポール、モリーン、オカーニア、リバージョイン、カーストール、サウスバンク、ティムズ、イーストポイント、ガラスターの各聖司教区であった。しかし悲しみの時代ともいえる現在では、エインポール、カーストール、ティムズ、オカーニアだけが聖教会への信義を保持している。

  司教の下には多くの司祭が存在する。


重要な聖人

聖フレストル

  フレストルは"聖なる預言者"マルキオンの啓示を携えた王子であり、我々が今日まで従ってきた多くの法と掟を教授した。彼は農奴階級と司祭階級の者が武器を携えてはならないこと、そして戦士階級と貴族階級の者は積極的に武器を手にするべきことを定めた。彼は父フローラー王が最初の妻、聖なるゼメラの死後第2の妻を娶ったことを叱責した後、セシュネグを追放された。彼の邪悪な継母こそ“蛇女王”セシュナであり、彼女はその邪悪な所行と彼女の怪物めいた異形の子供たちによってあらゆる者に知られている。

聖ティロール

  "哄笑の戦士"とも呼ばれるティロールは、第1年の終わりにフロネラの地を解放した。彼は"欺くもの"の手先と東からもたらされた邪悪なカルトを追い出し、フロネラの教会を統一した。もし今日第2のティロールが現れてさえくれれば、我らが彼を必要しているこの時代、彼は以前と同じように我々を助けてくれることだろうに!


他の教派に対する態度

フレストル派

  フレストル派の者たちは階級を上昇することができるなどという愚かな教条を有している。これは極めて危険な異端であり、時の不確定性をもたらしている。これこそがおそらく戦争王国が現れた理由である。創造主はその罪故に彼らを罰しているのである。

  またフレストル派教会はロスカルムの王国と緊密に結びつきすぎている。かつてはこのことが良い方向に働いたが、もし彼らの王が信仰の道を踏み外したならば、いったいどうなるのだろうか。世俗の統治者の恒常的な権力は霊的指導者の永遠なる統治からは切り離されるべきである。

アロリアン派

  このペローリアに起源を持つ異端派は、400年前に彼らの故郷である東の国で第3の預言者が生まれたと主張している。彼らは赤の月への異教の信仰をもたらしており、その教義は誤りに満ちている。彼らはかつてサイアノールの街であった3つの都市、リバージョイン、サウスバンク、イーストポイントの現在の支配者である。我々は我々の国から彼らが一掃されることを日々祈り続けている。

ゾーリア派

  この罪深き女性たちは自由恋愛の教義を説いており、聖なる婚姻の聖性を覆そうとする汚れの勢力である。彼らは娼婦、誘惑者であり、彼らの神をも恐れぬ存在によって教会会議を冒涜することは決して許されてはならない。

カルマニア派

  我々がこの教派について知っていることはほとんどない。ただ彼らが第2期の終わり、フロネラの解放のために活躍したこと、聖ティロールに忠実であったと言われていることを知っているだけである。




  本テキストはNick Brooke氏、David Hall氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
  テキストは公式版ではありません。この文章を使用するにあたっては、各人の判断でご利用下さい。この文章の使用により何らかの損害があっても著者並びに翻訳者は一切関知致しません。


トップページに戻る。 コンテンツに戻る。 翻訳ノートへ