ヴァルカロー派魔術師教会

    -Valkaros Wizard Church-

copyright 1998, Nick Brooke & David Hall
翻訳・編集(c) 木村 圭祐/'たびのまどうし'しーちゃん ,1999 [1999.10.31]

歴史

  教会は偉大なる魔術師にして預言者、ヴァルカローによって創始された。彼は天上の楽園への道を我らに示すために、創造主によって我々のもとに遣わされた。彼が我々の前に現れたのはクジラが歩いていた以前のことだが、空が変わった時よりは後のことである。

  ヴァルカローは偉大なる西の国からやってきたマルキオンの預言者にして聖人である。彼が霊的清純への到達を果たした時、彼は創造主によって慰めと喜びへと召された。彼は海馬の引く巨大な貝殻でできた船に乗って天上の楽園への旅路についた。しかしヴァルカローと、彼が楽園で享受すべき喜びに海の邪悪なる悪霊が嫉妬を募らせ、ヴァルカローに対して陰謀を巡らしたがあげく、彼の船を沈めるべく巨大な渦をおこしたのである。彼の船は沈んだが、ヴァルカローは死を免れた。彼はアンボボンブの海岸に打ち上げられた。その地で彼はワイトゥルという名の男に助けられた。この男は最初の弟子となり、しがない漁師にすぎなかったにも関わらず、聖人となったのである。

  ヴァルカローの打ち上げられたニュースはすぐに島中に広まり、白く透き通った肌を持ち、海からやってきたこの奇妙な男を一目見ようと、彼の言葉を聞こうと、人々は集まった。一連の天上の奇跡と彼の言葉の力は、島の土着の神を崇拝することが愚かな行為であることを島の人々に認めさせた。指を鳴らし、わずかな言葉を発することで、彼は彼らの神がそれまで与えていたものすべてを与えることができたのである。その後すぐに人々は彼に自分たちの統治者になってくれるように願った。これこそヴァルカロー魔術師教会の始まりである。

  一度教会がしっかりと確立され、人々を統治するために新たな司祭の訓練が始まると、ヴァルカローは彼の言葉を他の島へも運ぶという任務に着手した。アンバトランピィ島で彼は赤く熱した炭の上で、燃えることなくリンボー・ダンスを行い、島の人々を改宗させた。ラスモラソマンゴンは櫛だけで、アンバタロランバではわずか1日にしてあらゆる者が改宗した。ヴァルカローはまた多くの奇跡を行った。シロノマンディディ島では一夜にして宮殿を打ち建て、ジュボランタンガでは邪悪な支配者を大亀へと変えてしまった。こうしてヴァルカローの言葉は島々へと広まっていった。彼の言葉が伝えられていない島は未だ多く存在するので、我々はこの任務を続けねばならない。

  長年に渡る慈悲深き統治の後、ついにヴァルカローは彼が仕事を終えたこと、天井の楽園への旅路に戻らねばならないことを告げた。彼は助祭長に向かいこういった。「汝はアンフォラフォングである。そしてこのアンフォラオングに、私は私の教会を建てたのである」と。そして彼は魔術で島に呼び寄せた船に乗り、去っていった。

  それ以来、我々は彼の法を守り、彼の司祭に仕え、彼の言葉を広めたのである。


神学

  この世にはただ一柱の神が存在し、それは見えざる神である。その預言者はマルキオンとヴァルカローである。マルキオンとヴァルカローは、各人は自身のカーストに生まれ、その純粋さによって別のカーストにふさわしい価値があると証明しない限り、そのカーストで一生を送るということを教えた。

  魔道司祭階級は明らかにもっとも力ある社会階級であり、そしてそれ故、彼らはもっとも自然な社会の統治者なのである。

  我々は、聖人自身が神聖なのではなく、実際には信徒が従うべき理想の姿であると考えている。悪霊が世界へとやってこないためにも、彼ら聖人に信仰を捧げてはならない。唯一の真実の崇拝とは、見えざる神とその預言者を通じた崇拝である。

  海の住む生物、エクストガリア-そして僕として縛られた地の生物-以外の生物に対する《切開》行為の禁止を含め、我々はマルキオンの法に従う。我々は海に由来するものすべてを邪悪であり悪魔的であると考えている。エクストガリアは我らの敵であり、ヴァルカローの忠実な信者に対し常に策謀をめぐらしている。

  我々は敬虔な信者は、新たな赤ん坊として信仰へと帰ってくると考えている。しかしそれぞれの罪に対し、たとえ小さな罪であってもそれを購わねばならない。より重い罪に対してはより多くをその購いに充てる必要がある。この購いは信者がその罪の浄化のために忘却界で時間を過ごすことによって行われる。罪を犯した者たちは、その罪が許されるときまで忘却界にとどめられるであろう。

  魔術師教会の信者を殺すことはひどい犯罪であり、その罪を犯した者が再び生を受けることは無く、海がすべてを覆うその瞬間まで、忘却界に留め置かれる。

  女性は、教会の統括を除けば、あらゆる面で男性に等しい存在である。あらゆる女性は司祭の妻として以外に、宗教的地位に就くことはできない。女性は子供との養育者、そしてその夫への影響の抑制者として価値を有している。婚姻とは神聖なるパートナーとしての関係である。司祭階級の者だけが複数の妻を持つことができるが、彼らも4人までの妻しか持つことはできない。

  海とは死と危険の地である。海のそこには執拗にマルキオンとヴァルカローの教えに敵対するエクストガリアが存在する。海を渡る旅は司祭が同行し、その適切な儀式と祈りの後、始めて可能になる。


位階

  ヴァルカロー派魔術師教会の指導者は高魔道司祭であり、彼は地上における創造主の神性の体現者である。彼は聖ヴァルカローによって定められた手順に従って選ばれる。

  各島々の高司祭はそれぞれ、ヴァルカローの島アンボボンブに座す高魔道司祭に従っている。ヴァルカローを崇拝している島にはそれぞれ1人の高司祭が存在し、現在その数は9人である。


重要な聖人

聖ガルヴォスト

  聖ガルヴォストは西方において偉大な帝国を支配したヴァルカローの友である。彼はヴァルカローが生き、世界にその信仰の真実を示すことができるように、みずからを犠牲にした。彼の友への自己犠牲は我々すべての範となるべきものである。

聖ワイトゥル

  聖ワイトゥルはヴァルカローの最初の弟子である。彼はモトゥモバビの島々で人々の改宗を試みた際、殺され、食べられてしまった。しかしながら、彼は部族中の人々によって食べられたにもかかわらず、彼の弟子は翌朝砂浜に彼の完全な遺体が保たれているのを見つけた。信仰を広めるための彼の献身は我々すべての範となるべきものである。

聖ティーランブ

  聖ティーランブはヴァルカローの三番目の妻である。彼女は海魔の乗り移った島民による邪悪な暗殺の試みから、ヴァルカローを救った。彼女は毒を塗った暗殺者の刃の前にその身を投げ出し、殺された。彼女の献身は忠実な妻すべての範となるべきものである。


他の教派への態度

ブリソス派

  この邪悪なる帝国は我々の信仰に対して血塗られた戦争を扇動した。しかし聖ヴァルカローは我らが民を勝利へと導き、彼らの心臓を宴に供した。我々のいとこであるヴェイデル人も我々に話すように、不実なるブリソス人を信じることなどできはしない。

ロカール派

  船員たちはこの教派が愚かにもカースト間の移動を許していないと伝えている。その結果としてカースト内での狭い婚姻が進み、あらゆる意味で精神の柔軟性を欠いている。

暗黒異端派

  商人たちが我々に語ったところによれば、これらの者たちはヴァルカローの真実を拒絶した近隣の島々に似た神々を信仰しているが、それでありながら自分たちがマルキオン教徒であると言っている。このような欺瞞は明らかにせねばならない。

ガルヴォスト派

  ヴェイデル人は我々の兄弟が西の巨大な大陸になおも存在し、彼らが聖ガルボストの教えに従っていることを認めている。これらの者たちがまたヴァルカローの真実を知っていることは疑い無く、それは祝福すべき事柄である。


  本テキストはNick Brooke氏、David Hall氏が作成した作品を、両氏からの許可を得て木村 圭祐(しーちゃん)が翻訳したものです。
  原文作品の著作権は原著者に、翻訳作品の著作権は原著者と翻訳者に帰属します。営利目的、非合法な目的、反社会的な目的での利用でない場合にかぎり、自由に使用、複製を許可します。ただし複製に当たっては本テキスト冒頭の版権表示(原文および翻訳文)を必ず含めるようにしてください。他の媒体への流通には著作権者の許可が必要です。
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