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はじめに
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僕が学生の頃は、チューナーといえば理科の実験で使う電流計のような代物で、大きくて高価というイメージが強く、学校に一つあればいい方でした。
ところが今では種類も多様で、ほぼ名詞サイズのものからあり、価格も学生のお小遣いでも買えてしまうような物になってます。
そこで、ちょっとチューナーにこだわって、今個人で買うのに適当と思われる代表的な物を集めて検証してみることにしました。
写真1の赤丸番号の1番は、ヤマハのTD−10、ちょっと旧式で今買えるかどうかは分かりませんが、持ってる人も多いと思うし、たまたま使ってたので比較の為に用意しました。
2番はコルグのCA−30、この中では最新で液晶タイプです、ヤマハのTD−12は色違いの同型機。3番はセイコーのST757−L、CA−30と同じカテゴリですが、バックライトが付いています。
下段に行って4番はコルグのDT−3、LEDタイプです。5番はセイコーのST777、大判の液晶表示が特徴。
最後に6番はコルグOT−12、この中では一番高価ですが多機能タイプで、表示も針と液晶のデュアルです、ヤマハのTD−20は機能とデザインがちょっとだけいじってある、ほぼ同型機です。
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写真1
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表示
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表示のタイプはほぼ液晶、針、LEDの3種類。
中でも液晶は近年増えてきていて、チューナーのローコスト化にも一役買っています。
ただ液晶は、暗くなると見えなくなる弱点を持っているので、写真2のようにバックライトの付いているタイプがあります。
その中にあって、バックライトが付いていないにも関わらず、5番のST−777だけはなんとか視認性を確保しています、これは他よりも大きくて精度のいい液晶を採用したおかげ、おそらく暗転の舞台でも大体のケースにおいて、見えなくならないのではないかと思います。
LEDのタイプは、細かいチューニングには素子の数が少なくなる分不向きですが、暗くなっても問題なくチューニングが出来ます。
針のタイプは精度の高いチューニングが可能ですが、機械部分が大きくなる為、小型軽量化、低価格化には不利です。
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写真2
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機能
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チューナーの機能としては、発音、転調、基本周波数の調整などが一般的ですが、中にはOT−12のようにマルチテンペラメント機能や、CA−30の純正長3度、短3度の指針、DT−3の周波数表示の機能等、特徴をもったものがあります。
今回用意したもので発音機能があるものは、2番のCA−30、5番のST777、6番のOT−12です。
CA−30は1オクターブのみ、他の二つはほぼ5オクターブの発音が可能です。
周波数の調整は幅が機種によって違うものの、全部の機種でほぼ問題にならない程度で出来ます。
転調は、CA−30、DT−3以外は可能。
別売りのピックアップマイクも全機種で使用可能、コルグのものをヤマハやセイコーに付けても使えました、ということは逆も可能か?
機能で言えば、OT−12はすべてにおいて他を圧倒するデータを持っています、バンドマスター等バンドのまとめ役の人がチューニングに使うにはこの中ではベストバイと思います。
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写真3
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操作性
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操作性は、全部の機種でよく考えられていて、全部の機種が片手で操作可能です。
DT−3は、スイッチとボタンが一つづつしか無いという思い切った構造で、シンプルかつ十分な操作を実現しています。
CA−30は、小型、低価格、多機能の反面、発音の操作がちょっと複雑で、慣れるのに少し時間がかかりそうです。
機械物の苦手な人は、操作が単純で、大きさも適当、表示も見やすいDT−3は結構買いだと思う。
古い機種なのに生き残っているのは、そういうところかもしれない。
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写真4
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サイズ
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個人で使うのにサイズは重要なもの、やはり使いやすい大きさのものを選びたいですね。
設計の古いDT−3と、多機能、高性能のOT−12は、コンパクトさではちょっと不利。
他は価格帯的に個人使用を前提に考えてあるようで、ST−777がちょっと大きいもののいずれもコンパクトと呼べる物になっています。
全部ウィットナーの譜面台には乗ります、ただ譜面の数が多いときは、厚みのあるOT−12はやはり不利ですが・・・。
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写真5
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電池
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電池は最近のものは、手に入りやすく種類も多い単4や単3が主流になって来ています。
この中では唯一、DT−3だけが9V電池。
液晶に比べて消費電力も多くなり、省電力機能も無い為、こと電源に関して言えば不利な部分も否めません、他にはない、いいものを持っている機種だけに、改良を望みます。
TD−10、CA−30、OT−12は最大100時間、もちろん発音させたり、ライトを点けたりするとぐっと減ります。
セイコーの2機種は、説明書に書いてありませんでした。
ずっと点けっぱなしでも省電力機能が働くので、分かりません。
ST757−Lは電池ボックスが大きいのか、中の電池がカタカタ動くのと、CA−30、TD−10は電池交換のとき、本体をごっそり開けなければいけないので、配線がむき出しになるところが気になります、この辺も今後の改良に期待したいところです。
欲を言えば、ニッケル水素などの2次電池も使用可能の評価をして欲しいところです。
僕が試した限りでは動きましたが・・・。
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総評
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最新の機種だけあって、どれも捨てがたいものを持っています。
個人的には、コルグ製が良いかと思っていましたが、今回の検証で、セイコー製の良さを認識しました。
ちょっと大きいのを我慢すればST777は、平均律を合わす限りではベストだと思います。
セントの表示もするので、純正の長3度
−14セント、単3度 +16セント、長5度
+2セントを覚えておくかシールでも貼っとけば純正調にも対応できます。
でもちょっと値段が高いので、個人で使うにはCA−30、ST757−Lで十分です。
発音機能が欲しい人はCA−30が、どうしても暗いところでチューニングしなければいけない人、ステージに持って上がらなければいけない人で誤操作による突然の発音が怖い人はST757−Lがお勧めです。
機械音痴の人はDT−3、逆に多機能高性能を求める人はOT−12というところでしょうか。
どうしても針式のほうが良くて、OT−12では操作が解りづらいと言う人は、ヤマハのTD−20があります。
さらに、その厚さが我慢できない人は、今回検証出来ませんでしたが、セイコーのST−1100、ST−909が針式で良いかと思います。
いずれもケースがついていませんが、OT−12の発売当時のキャンペーンで付いていた、ソフトケースが大変重宝しているので、ぜひ各メーカーさんに、ケースも付けて欲しいと思います。
とにかく僕は、しばらくST777とOT−12を使うことにしました。
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個別評価
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TD−10(ヤマハ)
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今回の中では一番低価格でシンプルな方です。
特にこれといった特徴はないものの、基本性能をおさえたコンパクトな設計で、音が合わせられればいいやという人には問題ないでしょう。
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CA−30(KORG)
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TD−10と同型の、CA−20の後継機。
チューニングモードをAutoに限定し、発音機能を搭載、さらに純正長3度と単3度に指針を設けたモデル。
液晶の視野角もちょうど良く取ってあり、見やすい。
バッテリーセーブも20分と余裕があるので、突然切れることも少ない。
発音のスピーカも前向きに付いており、個人練習には威力を発揮か?
ただちょっと、発音の操作が複雑なので、なれが必要?
惜しむらくは、液晶メーターの精度が2.5セント刻みの為、純正の指針に合わないところと、TD−10と同じように、電池を替える際、本体の裏をばっくり開けなければいけない為、配線が剥き出しになる、もし裏ブタの引っ掛けが折れて留まらなくなってしまうと恐い。
いずれにしても、この値段でこれだけの機能、性能は立派、さすが老舗のKORGといったところ。
ステージに持って上がるには、不用意な発音を防ぐ為の、電池を取り外す操作がやりにくいので、不向き。
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写真6
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ST757−L(SEIKO)
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多少CA−30にカタログデータや発音機能で劣るものの、バックライト付きで、マニュアルチューニングも出来る上、セント表示もあるので、結構精度の高いチューニングにも対応。
必要かどうかは別にして、オクターブ表示もあり。
基準周波数が、常時表示ではないので、気になる人はいるかもしれませんが、一回合わせれば操作しない限り、電池交換まで覚えています。
気になるのは、液晶がCA−30に比べてちょっと深いので影が出来るのと、視野角がちょっと狭い為、上から見下ろす角度だとちょっと見づらい、バッテリーセーブも3分と短く、突然切れることが多い。
それと、電池ボックスのサイズが合わないのか、カタカタ音がする。
本番に持って上がらなければいけない時は、こちらがベター。
バックライト付きで、暗くても見える上、発音機能が無いので、不用意に発音しない。
尚、「ST757」は、バックライトの付いていないモデル。
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写真7
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DT−3(KORG)
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設計は古いが、個性あふれるモデル。
オート・リファレンス・キャリブレーション機能搭載で、その楽器が何Hzに合わされているかを測定できる、表示も、セントとHzの両方が表示可能で、LEDの素子も多く見やすい。
なんと言っても操作がスイッチとボタンが一つづつしか無いので、極めてシンプルな上、ある程度の大きさがあるので、無くしにくい。
僕が気に入らないのは9V電池の上、持続時間が短いのと、基準周波数を覚えてくれない為、スイッチを入れるたびにスイッチを2回押して442にしなければいけないところ位。
あとはカタログデータで見劣りするものの、吹奏楽のチューニングでは必要且つ十分なので、機械音痴の人にはお勧め。
結構いい機械なので、同コンセプトの改良版を望みます(値段も下げてね)。
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写真8
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ST777(SEIKO)
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今回の検証で、一番意外だったモデル。
液晶が大きいのは解っていたけど、表示の精度がCA−30の2.5セントから2セントになっただけでこうも違うかと驚きました。
何セントかの表示も出る辺りはST757−Lと同じですが、液晶が大きいのと、機械自体の精度もいいみたいで、コンパクトなボディに関わらず、チューニングのしやすさは、今回検証した中でNo.1だと思います。
発音時の音量もあるので、アンサンブルくらいの規模なら、十分これ一台でまかなえると思います。
ギター、ベースチューナーとしての機能もあるので、弦楽器を使うときも安心です。
液晶では暗いと思われるような場所でも、真っ暗でない限りは結構見えるので、ステージ裏でも大丈夫ではないかと思います。
姉妹機の「ST767」(¥6,500)は、「ST777」から発音機能を省いたモデル。 |
写真9
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OT−12(KORG)
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多機能だけでなく、基本性能も充実のリファレンスマシン。
今回の中では、機能も性能も他の機種を圧倒しています。
マルチテンペラメント機能をはじめとして、入力した音程に一番近い基準音を発信し、誤差を示すサウンドバックモード、針の反応速度も変えられれば、移調も12音に出来ます。
スピーカーが後ろ向きについているので、個人使用というよりは、複数の人のチューニングをするとき向き。
マルチテンペラメント機能とは、平均律以外の音律の事。
キルンベルガーやヴェルクマイスターなどの音律で、平均律登場以前に良く使われていた音律ですが、説明書のように古典音律と位置付けるのは、如何なものかと僕は思います。
この辺の詳しい説明は専門書に委ねますが、チューニングのデータは公開して欲しいと願います。
さらに、転調できる純正律を加えれば、簡易ハーモニートレーナーとしてもっと活躍できるのになぁと思う次第です。
その辺は、ハーモニートレーナーとの競合を避ける親会社との兼ね合いかも知れませんが・・・。
逆にいえば、人によっては無駄な機能もいっぱいあるので、操作が複雑になる分、必要の無い人には使い難さとなって帰ってくるかもしれません。
平均律だけ取れればいい人は、同じ精度のTD−20(ヤマハ)がお勧め、こちらは音量が5段階に調整出来るので、自分の部屋とかでも鳴らせます。
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写真10
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