夢日記・その3「嵐のヒーロー」
その日は友達の家に遊びに来ていた。一見してすぐに全体が見渡せるような狭い貸家だ。
僕がいるその部屋は細長く、目の前にはさっきまで友人と共に遊んでいたテレビゲームの画面が映し出されている。
今は友人はいない。のどが渇いたのか、
「ジュースが欲しいな」
と言って母親のいる台所に行ったからだ。
僕はテレビの前で彼の帰りを待っている。はっきり覚えていないが、一人では遊べないゲームなのだろう。
ところが思ったより帰りが遅かった。
「まだかな?」
と思って台所の方を見たその時、テレビ画面が光り……!
「す、吸い込まれる!?」
体が引きずられ、腕が半分飲み込まれた。
そこへ丁度、彼が両手にコップを持って戻ってきた。
何が何だかわからない様子だが、とっさにコップを置いて僕の体を引っ張る。
だが、彼も巻き込まれ、二人ともテレビに吸い込まれた。
*
ふと気がつくと、見知らぬ場所に立っていた。一緒に吸い込まれたはずの友人は見あたらない。
見えるものは、駐車場とそれを囲むフェンス。とりあえず、そこへ向かうことにした。
*
そこで僕が見たものは、二体の巨大なロボットだった。戦隊ものに出てくるようなやつだ。
何で駐車場にあるのか今にして考えてみればかなり疑問だけど、その時の僕は何も気にせずそのロボットに近寄った。
すると、どうやら乗り込めるようだ。当然、好奇心一杯で乗り込んでみる。機器はちゃんと作動しているみたいで、動かせそうだ。
「試しにちょっとだけ……」
そう思って、レバーやらスイッチやらをあちこちいじくってみる。すると、意外と簡単に反応があった。
「あー、ここがあれでこれをこうするとこうなるんだな……ふむふむ」
しばらくそんな感じでいろいろと試していたら、ある程度は動かせるようになった。
ただし、今のままでは外の景色が見えない。外を映すカメラのスイッチがオフになっているようだ。
僕はカメラのスイッチを探し――押した。
最初に映ったのは、画面一杯に迫った、もう一体のロボットだった。
*
さっきまではこんなに近くにはなかったはずだ。なぜだろうと思い、しばらくそのロボットを見ていると、ふいに動き出した。
「うわっ!?」
びっくりして後ずさる。
そこへ、向こうのロボットから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『おーい、俺だ俺』
どうやら向こうのロボットに友人が乗り込んでいるようだ。こっちも外部スピーカで呼びかける。
ここはどこだろうとか、このロボットは何だろうとか、いろいろと話したが、結局相手も何一つ知らなかった。
そして、向こうからある提案があった。
『ちょっと遊んでみないか?』
*
何をするか。そんなものは決まっている。
このロボットは何だ? 何ができる? 答えは一つしかない。
搭載されているのは、巨大な敵を倒すための武器や必殺技だ。
「巨大な敵……か」
数秒の沈黙。
鋭い目つきで、にやりと不敵な笑みをモニタで交わした、その一瞬後。
周囲の町を破壊する、壮絶なバトルが幕を開けた。
夢日記・その3「嵐のヒーロー」 −終わり−