夢日記・その2「遺跡と落下の2乗」
その姿からして、俺は探検家らしかった。
その晩にあの映画でも見たんだろう。まさにインディージョーンズといった格好をしている。流石に鞭まではないようだけど。
俺はどこかの遺跡にいた。目的はこの遺跡に隠された財宝を探すことのようだ。
いきなり目的がはっきりしてるのも夢のお約束。そんなことは全然気にならない。
本来ならここで、その財宝の在処を探す冒険があっても良さそうなものだけど、なぜか今回に限って全くなかった。
じゃあなぜこの夢を書き起こしたかって?
それはまぁ、後のお楽しみ。
*
目の前に財宝の在処である、古代遺跡風に装飾された直径3メートルほどの穴がある。
事前の調べによると……って、一体どういう調べによるのかわかったもんじゃないが、俺が持っている手帳にはこう記してあった。
あー、あまり覚えてないから、要約。
『飛び降りる途中に見えるいくつもの図形に込められた謎を解き明かして、底にあるからくりに何かすると財宝が手に入る』
そして条件はまだ続く。
『ただし、ある時間内に解き明かせなかった場合、罠が発動して、死ぬ』
うーむ、なんて遺跡だ。ただ飛び降りるだけでも死にそうなものだけど、それはそれ。そんなことでは死なないらしい。
大体、せっかく隠してる財宝を誰でも発見できるようにすることに、どういう意味があるんだろうか?
なんだかよく考えれば考えるほど、俺の見る夢って中途半端にリアルな夢なんだよなぁ。
何にせよ、この仕掛けを作った人はよっぽど謎解きが好きだったらしい。なんだか俺のような気もするが。
そんな疑問にはお構いなしに、当時の俺は意を決してその穴に飛び込んだ。
*
強烈な落下感に五感を奪われ、ただただ加速を続ける俺。
そして、しばらく落下しているうちにその落下感にも慣れ、視覚や聴覚が復活し始めた。
すると、壁から台のように突き出ている部分に、図形が見えてきた。俺は早速その図形を暗記し、謎の解明に取りかかる。
すぐまた次の図形が見えてくる。
そしてまた図形。また図形。図形、図形、図形……。
俺は、暗記しきれなくなった。
そして、底に着地。
目に前にはまさに遺跡といった感じの彫刻を施した聖台がある。
だが、俺には何をどうすればいいのか全くわからない。
そうこうしているうちに、罠が発動。
上から轟音が聞こえてくる。
何だろうと上を見上げると、穴の大きさギリギリの、大きく丸い岩が降ってきた。
もちろん結果はご想像の通りだ。
俺は自分の体が岩によってすりつぶされ、バラバラになるのを感じた。まだ意識はある。
『ぐちゃっ』という音が聞こえて、視界が真っ暗になる。まだ意識がある。
俺は思った。
「あ、死んだ」
と。
そして、落ち着いた気分のまま目が覚めた。
*
そして、またもや数年が経過したある日。
*
俺はまたここに来た。そう、今の俺には理由がはっきりとわかる。あの雪辱の思い出にリベンジするためだ。
目の前にはあのときと同じ大きな穴。
躊躇はしない。俺は十分な気合いと共に、落下感に身をゆだねた。
あのときとほとんど同じだ。ただ違うのは、俺が五感を奪われなかったこと。
「いける!」
俺はそう確信していた。
しばらくして図形が見えてくる。そしてまた図形。また図形、図形、図形……。
俺は、暗記しきれなくなった。
そして、底に着地。
以下、同文。
夢日記・その2「遺跡と落下の2乗」 −終わり−