「ネットによるコレクション革命」 心理学者の中には、コレクションを「孤独の快楽化」と言う人がいる。昨今は、インターネットの急速な普及により、益々、一人部屋に居ながらもコレクションを満喫することができるようになった。しかし、情報収集・トレードや売買に、他人の強力を求める機会が増えたことも事実である。そして、対象物の価値観や評価について語り合うフォーラムが出来たのである。そう言う意味では、完全な孤独から脱出したが、自分自身のコレクション道に他人が介在することが無いという点では「孤独」である。そもそも、コレクションの充実感は、他人と共有できるものではないということだろう。 インターネットの普及は、コレクション界に革命をもらたした。それは、トレード掲示板やネットオークションの出現によるところが大きい。それまで、ショップやイベント通い、あるいは身近な仲間うちで同様な体験があったかもしれないが、ネットは全国の不特定多数者との交換と売買の手軽なシステム環境を提供した。このことが、トイ=財という価値観が自分だけのものではないことを、広く知らしめたと言えよう。希少ソフビが、“お宝”として高く値が付くことは知っていたとしても、たった今購入したばかりのフィギュアが、全国の誰かと取引できる価値を持っている・・・。このことは、ダブリというコレクターの難題を救った。また、人気キャラクターやシークレットと呼ばれるような単体を引き当てた時には、自分を有利にしたコレクション展開が約束されるのである。 こうした中で確立されていく、対象物のトレードポイントやオークションプライスは、その客観的価値の尺度になっていった。このことは、良い意味では、見通しの悪かった取引相場を明るくし、リアルタイムな需要と供給の中で具現化する値を、誰もが知ることができるようになった。悪い意味では、「他人ではなく自分にとって価値のあるもの」が分からなくなり、つい換金的な価値観で対象物を見てしまうことによって、個性のないコレクションが、各々に築かれてしまっている可能性がある。 いずれにしても、このような電子取引が繰り返される中で、投資とか利益、あるいは確率とかタイミングという、半ばギャンブル性も高まってきた。この様なことは、旧来のコレクターからは敬遠されがちであろうが、そういう新しい楽しみ方を、もはや否定はできまい。売り方も多様になった。イベント限定品の転売、特殊なルートでの販売、業務的販売・・・。買い方についても様々である。店頭での「大人買い」も、その後のネット利用があってのことかもしれない。そして、必要なものだけの購入、時間と手間を買う購入・・・、いずれも、買う側の価値観で選択すれば、何も問題はない。人それぞれの環境に応じた多様な選択肢の出現は、TOYの生産・流通界に大きな影響を与えていることだろう。 2002.4.13 |