MEMO-142 HGマン・セブン怪獣コンプリートの行方
 今、私の書斎には、HG及びHGCOREシリーズのウルトラマン・ウルトラセブン怪獣(宇宙人を含む)がディスプレイしてある。これらは各PARTのセットから抽出したものではなく、別に収集したものである。怪獣達は話数順に並べてあるが、少し前までは未発売怪獣の位置に空席が用意してあった。しかし、今は間隔を詰めて配置している。マン・セブン怪獣は未だにコンプリートされていなく、あと一歩のところへ来て発売が凍結されてしまったのである。
 1994年に発売されたガシャポンHGは、各代のウルトラマン及び登場怪獣を併行してラインナップしていくところに特徴があった。一見、子供を対象としたベンダーカプセル商品であっても、初代怪獣であるバルタン星人やレッドキングが混じり、なおかつリアルな造形・塗装、そしてハイコストパフォーマンスの三拍子に驚いた大人達も、恥ずかしさを忘れて夢中になった。1998年頃には大ヒット商品となったのである。
 シリーズが10周年を迎える2004年、メーカーからマン・セブン怪獣コンプリート計画が発表され、人気怪獣がアンケート調査された。そして、コンプリート計画がpart38・41という2弾にまたがって実行された。このように、初代怪獣ばかりを集めたラインナップの登場は、予想もしなかったことであり異例のパターンである。しかし、シリーズの発売が順調に進んでいくと、一つの達成すべきテーマが見えてきたわけだ。また、シリーズを支える購買層の大きな期待のなかに初代怪獣の完結があることも、メーカー側に十分に伝わっていたのである。逆に、その達成に加速をかけることにもなったわけで、このシリーズが常識を超えたロングランにはならないことも暗示されたと言えよう。我々は、喜びとともに、いつか打たれる終止符の存在を実感したタイミングでもあった。
 2006年頃から樹脂原料が高騰、中国における人件費もベースアップした。そして北京オリンピックへ向けての建設ラッシュにより鉄鉱不足、そして2008年には原油の高騰が起きる。この間にピンチに追いやられた商品は少なくない。そのような状況下でも、塗装の省略により生産コストを調整して強い粘りを見せたのが本シリーズである。無塗装の代わりに質感の高い成形樹脂を開発するなど、新しい努力もみられた。2007年には、より造形力を増したHGCOREシリーズへバトンが渡され、さらなる発展を遂げたのである。しかし、経済情勢がより厳しくなっていくと同時に、ウルトラマンのTVシリーズの途絶、食玩バブルの崩壊などに見舞われる。HGCOREの存続に期待するヘビーユーザーの声はメーカーに届いていたと思われるが、従前通りの販売継続が経営的に成り立つかどうかは別の問題だった。また、本シリーズについては200円という小売価格を上げることが、どうしてもできなかったらしい。これは、HGシリーズで培われてきたフォーマットの一部として、この価格に意地とプライドがあったのではないかと思われる。終いには、カードゲームと連携した格好で、過去の金型を使った再販中心のラインナップに変貌していき、4月上旬発売の「ウルトラ大怪獣バトルスペシャル5」より先は、発売スケジュールが全く未定の状況に陥っている。
 私は、ファイナル宣言が出されていない以上、このシリーズの続きに期待したい。新しく始まる「特撮百景 八式造形ウルトラマン」は、HGシリーズに代わるベンダー商品展開の一つの答えであることは間違いない。あらゆる状況を検討した結果、やはり価格を据え置き商品をサイズダウンしてのリスタートなのだろう。では、HGシリーズはどうするのか。歴代のシリーズにも存在したように、HGはベンダー販売だけではなく時には袋や箱に入った陳列商品として提供されることもある。今、フィギュア玩具の方向性として、完全大人向けにするという選択肢もある。そこまでならなくとも、200円の殻を割ってクオリティを取り戻し“帰ってきたHG”をやって欲しいと思う。問題は売れるかどうか、そして残されたキャラクターも少ない。ここは、もう一度仕切りなおし、初代の人気怪獣をリメイクしながらでも念願のコンプリートを果たして欲しいと切に願うのである。
          ガシャポンHG・HGCOREシリーズ(1997〜2008年発売)
向かって左側のケースはウルトラマン怪獣、右側はウルトラセブン怪獣。各200円 ベンダー機販売。※ 一部例外あり。

2009.3.23作成