MEMO-143 幻のスーパーカー ランボルギー ニイオタ SVR
 
 ランボルギーニイオタとは、1969年にランボルギーニ社が製造した1台の実験車両(通称“J”)のほか、ミウラをベースに製造した“J”系の車両全般を指す名称として使われている。“J”の文字はイタリア語では使用しないため、ギリシャ文字のIに当たる発音としてイオタと呼ばれるようになったと言う。ちなみに、最初に生産された実験車両“J”は、横転事故により廃車となり現存していない。この出来事の詳細は、近年、カー専門誌『Rosso』でも詳しく特集されたところである。
 ランボルギーニ社は“J”の試験運転中にミウラベースで数台(7台)のイオタを製造している。これらはレプリカ車両として扱われることが多いが、それぞれに“SVJ”としての生産証明が発行されている。1台ずつ異なる仕様は、特別注文により生産された真のイオタの面々だと、自分は少年の頃から理解している。ミウラオーナーが改造した“勝手イオタ”とは、訳が違うからである。“J”が焼失したことや、生産台数が極めて少なく複数の顔を持つ車両であったことが、イオタが“幻のスーパーカー”と呼ばれた理由だと思っている。
 そのなかでもイオタSVRは、1974年にミウラSVをベースにして製造された1台のことである(シャーシ3781)。このSVRは、日本におけるブームの真っ只中に出現し、スーパーカー少年にとっては、最も印象深い車両個体である。当時、突然現れたイオタの情報は、落ち葉の降り積もった広葉樹の並木の下で真横から撮影された1枚の写真だった。この出来事は余りにも衝撃的で、写真からは車体の前後の形状が分からず、非常な好奇心を駆り立てたのである。「ミウラに似ているけど違う!」そう誰もが叫んだ。
 ミウラとは異なるパーツのうち、シートやシートベルト、メッシュホイール、リアウイングは、購入したオーナーの手で後付されたものだと知ったのは後々のことである。それにしても、大きく張り出したリヤフェンダーなど抜群にカッコ良く、“J”よりもSVRの方がイオタの代表的な存在であると言っていいと思う。ランボルギーニイオタは、当時、兵庫県神戸市にも1台(シャーシ4990)があって、そちらの写真も度々紹介された。現在は、両イオタとも日本に存在しているらしい。
 今回、2008年のクリスマスプレゼントとして自分自身へ贈ったのがこのダイキャストカー、京商1/12スケール、ランボルギーニイオタSVR。発売が告知されてから2年位待たされたような気がする。京商の発売スケジュールも、結構いい加減だと思う。しかし、実際に手にしてみると、期待以上の精巧なスケールダウン、超精密で高いクオリティに、その不満は拭いさられる。品質も管理が行き届き丁寧な製作・塗装である。ただ、先に1/18が発売されており、それを手にしている者には感激度はやや低くなっているかもしれない。
 
 イオタのスケールモデル(プラモデル)の思い出と言えば、東京マルイの1/24イオタSVRが真っ先に思い浮かぶ。スーパーカーブームの頃、最も定評のあった1/24プラモデルメーカーは、タミヤではなく東京マルイだった。ランボルギーニイオタは、池沢さとし原作のコミック『サーキットの狼』にも登場し、いち早く日東の1/28シリーズで商品化されたが、スケールが半端で小さく精度もイマイチだった。首を長くしてマルイのイオタを待っていたら、何とオオタキが割り込むようにして1/24スケールを発売。即買いし、その日のうちに作って友人に自慢したことが記憶に残っている。小学校5年生頃のことである。そして、遂に待ちに待ったマルイのイオタを手にした時、ヘッドライトがやや小さく感じられたものの、さすがの品質だと唸った。マルイらしく可動部が多く、リアのエンジンカウルも開くし申し分なくカッコよかった。装着されていないリアアンダーのメッシュグリルの部分は、とてもレーシーだ。ちなみにライトが小さく表現されたのは、スケールダウンの資料として実車を真上から撮影した写真を使用していたことに原因がある。カメラは、なるべく高い位置で吊り下げられたのだが、端部の歪の補正が行き届かずライトカバー周りが小さくなってしまったと、自分は理解している。逆に、地上で人の目線から見たイオタのライトを、そのままのイメージで造形してしまうと大きすぎる結果になる。この辺が、実測と感覚的なイメージとの間で難しいところである。

 少年を夢中にさせたイタリアンスーパーカー。なかでもイオタSVRは、最も鮮烈であった。今回のダイキャストカーを発売したメーカーのスタッフにも、きっと同じような思い出をもつ者がいるに違いない。京商の1/12スケールダイキャストカーは、現在カウンタックLP500Sのホワイトが発売されているが、同社の予告では、このあとミウラSVとカウンタックLP500S(ウォルターウルフ仕様)が公表されている。何年先のことになるか分からないが楽しみでならない。
 
 
 今回の撮影でモデルを依頼したのは、ガンダムSEEDからミーア・キャンベルさん。ご協力ありがとうございました。(笑)
 ところで、1/12というビッグスケールモデルをディスプレイしていると、脇に人物フィギュアを添えたくなる。まさか、戦車の隣に兵士を置きたくなる心理とは違って、艶やかなモーターショウのイメージに影響された感覚に近いだろう。しかし、手頃な1/12フィギュアとなると、なかなか存在しないのである。結局は、ちょっと萌えてアニメキャラクターを探してみるのだが、それでもなかなか見つからない。例えば、1/12ということは身長165cmの女性であれば13.75cmのフィギュアということになり意外と大きい。巷に出回っている食玩系のフィギュアは、13cmサイズであれば比較的多いのだが、それではどうしても一回り小さい。さらにアニメ体系で細身であるために、ダイキャストカーの横に置くと余計に貧弱に見えてしまう。
 ようやく見つけたのが、バンダイのCOSMIXフィギュアコレクション(ガンダムSEED編)。全高は14cm強なので、ハイヒールを履いて170cmくらいの身長ということになる。このフィギュアは、専用の台座とスタンドが付属するのだが、もちろん撮影には邪魔なので本体のみで自立させた。これがまた微妙なバランスで、カメラをセット中に何度も倒れてしまい苦労した。
 車体と比較してフィギュアの方が大きく感じられるかもしれないが、その理由は、まずアニメ体系なので脚が凄く長いということ、逆にイオタの車高が極めて低いためである。このキャンベルがコックピットに入り込むシーンを想像すれば、それは十分に可能なのでスケールの対比に納得しやすいかもしれない。
 
Kyosho Original Die-cast Car Series 1/12 ランボルギー ニイオタ SVR
(2008年12月発売 \50,400)

2009.4.2作成