23.もう一つの孔 エジェクタピン(ejector pin) |
HGの表面には、対象には存在しているはずのない印や痕が幾つかあります。印としては、メーカー名、版権情報、製造国、そしておなじみのロット記号です。痕跡としては、金型の合わせ目に生じる筋や、丸い斑点があります。HGの表面は、色々と賑わしいのです。 ここで取り上げるものは、丸い斑点状の痕跡です。私は、どうしてこのような痕が出来るのか詳しく知りませんでしたが、今回、ご職業としてインジェクション成型に精通している方から、いろいろとご教示いただきましたので、ここにレポートさせていただきます(岐阜県の元八さん、ありがとうございました!)。 インジェクション成型とは、型に樹脂を注入して造形物を生産する方法です。ガシャ本体の背面数カ所に、この時に必要な丸い痕が幾つかあります。但し、付いていないものもあります(理由は後述)。そういえば、プラモデルなんかの裏側にもありましたね。樹脂成型物の多くに見られるので、馴染みがあるものではないでしょうか。 この穴の原因は、金型そのものに穴が開けられているからなのです。成型時には、その穴にエジェクタピンが差し込まれるそうです。金型に注入された樹脂が固まった後、このピンによって成型物が押し出され、金型から離形されるという訳です。そして、この穴とエジェクタピンの間には隙間があり、それが素材注入時の空気抜きの役割も兼ねるそうです。 |
どのような造形物でも、このエジェクタピンの個所では、スクラッチの連続が不自然になっています。それは、金型に起こしてから穴を開けるからです。ところが、全く無紋になっているかというと、そうでもありません。多くのHGには、この穴の個所にも、原型を少しでも損なわないよう、凸凹が復元されています。これは、つまりエジェクタピンの先端に処理されていることになります。ウルトラマンP2のキングジョー(版を問わず)などは、沢山のピン痕がありますが、スクラッチは復元されています。ところが、ウルトラマンP8の偽セブン、ギャンゴ、ウインダム(版を問わず)などは、この処理が省略され穴の範囲が全く無紋になってしまっています。 HGを概観してみると、このエジェクタピンの痕が全く無いものがあります。古いところでは、ウルトラマンP3のパワードケムラー、それからタイラントは、鼻のツノには認められますが、他のパーツにはありません。P22のセブンなど、下半身にはあるが上半身にはないというものも存在します。 ピン痕がないものは、背面がとてもすっきりとしています。しかし、どうやって金型から取り外すのでしょうか。答えの一つは、ハイパーガンダムにヒントがあります。ランナーの部分を良く見てください。キャップのようなものが付いています。この位置に、エジェクタピンが割り当てられているようです。造形物は、ランナーを押すことによって取り外され、本体に余分な痕を残すことなく処理することが出来るというわけです。 |