28.金型の研究(前編)

各種
テストショット
 はいはいだいちゃんさんより、貴重な資料をお借りしました。私も、これを拝みたくて、中国まで行かねばなるまいかと思ったこともありましたが、こんなに早くお目にかかれるとは幸せです。では、できる限りの観察をしてみたいと思います。


 テストショット、それは、初版・再版を問わず、量産する前段階に一度型抜きが行われ、仕上がり具合のチェックを行うために使用されるものです。金型から起こされたばかりの、ランナー付の状態で取り扱われているようです。テストショットの成型色は、製品版より濃い肌色や白色、あるいはグリーンを吹き付けてあるものなどがありますので、同時に幾つかのサンプルが作られ、検討されているのだと思われます。

 今回、ご紹介できるものは、ウルトラマンP4初版(永遠なる勇者編)2種、ウルトラマンP13(新たなる光編)1種、仮面ライダーP1再版3穴1種、スーパーロボ大全集P4(大空の勇者グレートマジンガー編)2種です。このうち、ウルトラマンP4の成型材は、ややピンク調の肌色を呈し、材質も柔らかいものが使用されています。仮面ライダーP1は、肌色成型の上にグリーンが吹かれています。

 これらのテストショットには、製品と比較して収縮は全く発生しておらず、オリジナルの金型から一発で抜かれたものに間違いありません。ランナーを見ますと、主軸から枝分かれするタイプで、フレーム状になったものとは違います。ランナーの裏には、作業マニュアル用の記号やパーツ番号が刻印されています。インジェクションピンホールは、各パーツの他、ランナーの裏側にも沢山配置されています。また、樹脂の入口部分なのか、垂直方向へ長く突出した個所がセンターにあるものがあります。そして、製品を見ておおよその位置はわかっていましたが、ランナーの接続個所を明確に知ることができます。切り離されたランナーは、順次リサイクルされて工程が進むのだと思います。

 P13(新たなる光編)のテストショットを最初に見たとき、驚きました。それぞれが、センターランナーを対称にして、同一の型が配置されているのです。すなわち、一度に二個ずつの型抜が行われているというわけです。複数個体の金型を作る技術は、ここでは知り得ませんが、両者の間に、何らかの相違(誤差)が発生する可能性が考えられます。そこで、ウルトラマンを良く観察してみると、パーティングラインは全くといってよいほど同じですが、
インジェクションピンホールの位置が、微妙に異なっていることに気がつきました。これは、皆さんのところの製品版を見ていただき、実際にこの二種が流通しているものか確認するとおもしろいと思います。詳細については、後編にて紹介させていただきます。

 ところで、ウルトラマンP5にアソートされたウルトラマンエースは、鶏冠の先端が尖るものと丸いものが存在していることが早くから指摘され、それは、金型を研ぎ直した結果であるという定説が与えられていました。昨今、EXPO版や再販の登場によって、複数の個体を一度に見る機会を得て、同一の生産期に各種の鶏冠形状違いが混在していることが判明し、そのバリエーションは4種(以上)にも及ぶことが確かめられました。また、シーボーズのモールドについても2種が確認されるという報告もあります。さらに、P6のウルトラセブン21の鶏冠についても同様な例があります。

 今回、P13のテストショットで分かったように、
ラインの効率上、二つ以上の同時型抜きが通常的に行われている可能性が出てきました。その金型は、ワンピースになっているとは限らないと思われます。              (後編に続く)

2001.3.31作成