31.金型の研究(後編)

各種
テストショット

 はいはいだいちゃんさんから、お借りしています、とても貴重な資料です。前編(SP-Report-28)で、その概要をお伝えしていますが、今回はもう少し見てみたいと思います。

 このテストショット資料は、ランナーから切り離されていない状態のものなので、金型そのものの形状を知ることが出来る重要な資料です。ランナーに刻印された記号・番号、ランナー上のエジェクタピンの位置、各パーツの注入部を知ることができます。さらに驚くべきことは、一つの金型で同じパーツが成形されていることが判ることです。


<コマ・ユニットの可能性>

 メインランナーから分れていくブランチの形状に注目してみましょう。全ての場合、パーツ手前でランナーの幅が変化したり上下に段差を生じていることが判るかと思われます。また、この箇所の金型に隙間が開いているのか、バリが発生している箇所も見受けられます。この理由を考えると、おそらくパーツが一定のまとまりをもってコマになっていて、そのコマの組み合わせにメインランナーから樹脂を供給するための接続が行われている構造なのだと思います。プラモデルの金型では一般的に行われている方法です。したがって、このコマの組み合わせで、例えばベストセレクション用のフォーメーションにすることも出来るのではないかと思われます。
ウルトラマンP4初版のテストショット(A) ウルトラマンP4初版のテストショット(B)
ウルトラマンP13のテストショット(A) スパロボP4のテストショット(B)
<ランナーに刻印された文字・数字>

 ユニットやパーツを特定する名称を与えているようです。これらは、組立・塗装工程などのマニュアルや作業指示に、当然、必要なものなのでしょう。

 原則的に、各パーツに固有番号が与えられていますが、ウルトラマンP4では2〜3パーツで固有番号が一つ、仮面ライダーP1再販では13パーツ中の2点のみに固有番号が与えられているというケースが確認できます。ウルトラマンP13は、同じパーツが2点ずつ配置されていますが、全て異なる番号が付与され、同型のパーツには同一のアルファベット大文字が別途与えられています。

 センターランナーに打刻されている文字・数字のうち、西暦を示すと考えれる2桁の数字があります。発売年とずれるものがあることから、金型の製作年だと思われます。
 
<センターランナーに打刻された文字・数字>
・ウルトラマンP4(A)K95-185 (1995年8月発売)
・ウルトラマンP4(B)K95-184
・ウルトラマンP13 K97-943 NO.21 P-13 (1998年1月発売)
・仮面ライダーP1再販 K97-699 96 (1997年9月発売)
・スパロボ4(A)K97-979 (1998年2月発売)
・スパロボ4(B)K97-978

<ランナー上のエジェクタピンレイアウト>

 樹脂の注入後、金型から取り外すためにセッティングされた、押し出しピンの位置がよく判ります。製品については最後まで痕跡が残りますが、ランナー上については、このような資料で初めて知ることが出来ます。しかし、こうして見ると多くのピンが必要なのですね。ピンの位置は概ね均等で、要所に配置されていることが理解できます。造形物に均等に力が加えられるよう、考えられているのですね。
<一つの金型における同じパーツの成型>

 今回、ウルトラマンP13のテストショットが注目されます。メインランナーを対称にして、同じパーツが二つづつ配されているのです。この両サイドから型抜きされたパーツが、混在して製品を組み上げていることになります。このようなツイン金型の存在は、このパートに限らないのかもしれません。

 さて、この並列に配された両パーツは、どちらも精工に作られており、出来の良し悪しはありません。しかし、二つあるのなら、どこかに違いが発生しているはずです。そこで、左下のウルトラマン背面の画像に注目してみてください。腰の部分の、赤/銀塗り分けラインの上にあるエジェクタピンの位置が異っているのがお判りいただけるでしょうか。“type-1”は、このラインよりやや離れた位置にあり、“type-2”では接近しています。特に、左側のピン位置は明らかであると思います(type-2の汚れは、カーボンです)。

 皆さんが所有されているものを確認していただければ、そのパーツが、どちらのサイドから生まれたものかを知ることが出来ます。このテストショットが量産へ続いたものであれば、両者が混在する状況が確認されるはずです。

2001.7.1作成/2001.7.25改訂