43.再販徹底比較(10)

ウルトラマン
怪獣ベストセレクション
 HGウルトラマンシリーズも、遂に30弾を突破! そこで、記念イベントとして打ち出されたのが、ウルトラ11ファミリーのPART30でした。しかし、それだけでは終わりませんでした。

 「ANNIVERSARY 30th」第2弾として発売されたのが、怪獣ベストセレクションです。そのラインナップは、一部に例外もありますが、PART30の各ウルトラマンに対応する怪獣を選考した意図が受け止められます。今回、その具体的な選択については、消費者アンケートではなく、メーカー側によるものです。したがいまして、先行のベストセレクションやベストセレクション2とは、その意味が大きく異なっています。

 さて、怪獣ベストセレクションのラインナップについては、ファンの間で不満の声もありました。その理由の一つは、過去のベストセレクション2が、買い逃していた旧商品の復刻として非常に期待が高かったことがあります。それに比べると、今回の怪獣ベストセレクションは、比較的新しい時期の商品が選ばれているということで、いわゆるコレクター層にとっては、敢えて必要のないものと見なす声が高かったわけです。そして、“ベスト”と謳うにも関わらず、コレクター側が期待する怪獣が含まれていないことも理由の一つです。

 ところが、メーカーの方も、30弾記念ということで、それなりの秘策を講じてきたわけです。発売前、ホビー誌に掲載された写真により、全てがリペイントされていることが判明しました。このようなりペイントは、ベストセレクションのバルタン星人、ベストセレクション2のジャミラという、一部の怪獣に実施されたことは過去にもありました。しかし、今回のような全面的な塗装の改良は、まさにアニバーサリーとして特別に用意された仕様でした。

 各個体の比較は、下記に送ることとしまして、全体的な感想を、まず述べたいと思います。正直、驚きは隠せませんでした。バルタン星人だけは、分身ver.とでも言うべきクリアで出してきましたが、他は塗装不足だった点を補う形で、質感を高めてきているからです。開封して組み立て、やや遠目に見てみると、何ともいえない、コクのある質感を醸し出しています。そこには、初版に見られたような安っぽさは、確かに改善されていると思います。

 しかし、塗装の工程を増やし、手間をかけたといっても、それがリアリティーに繋がっているかといえば、必ずしも、その限りではないでしょう。私たちの求めるリアリティーとは、如何に放送時の着ぐるみに忠実であるかなのです。その点、塗装色の選択が、渋い感じになっているとしても、リアルになったとは言えないものもあるのではないかと思います。また、最近のフィギュア界全般に言えることでもありますが、塗装の質感を上げるのに、黒色やグレー系色によるウェザリングが主流になってきました。しかし、どんなものでも汚し塗装さえすればよいかは、疑問に思うこともしばしばです。

 この怪獣ベストセレクションは、初版の時、もう少し塗れていたのではないかという問題を浮き彫りにしたとも言えます。今回は、バルタン星人でコストを落としているにしても、これだけ塗れるのであれば、最初からやって欲しかったと思うのは、私だけではないでしょう。メーカーの方も、ライバル商品との競争で、塗装クオリティーを上げざるを得なくなってきている事が察せられます。本体の光沢単色塗りや、あからさまな背面塗装省略の時代には、もう戻れないことをメーカー側も認めたということだと思います。この流れにのった今後のHG展開に、大いに期待したいと思います。
 
■ペギラ■

 初版は、グレーベージュ色の上に、クリーム色をドライブラシ。ベスト版は、下地のベージュ色の上に、グリーングレイ色を部分的に吹いている。胸部から下半身のボカシ具合は、上手くいっているが、翼や首への塗調が不連続なのは惜しい。

 口中の赤色については、ベスト版では上顎省略、下顎の塗布面積も小さくなる。
First ver. Monster Best Sellection ver.
 
First(earlier) ver. First(later) ver. ※ Hong Kong Copy ver.
Best Sellection(earlier)  ver. Best Sellection(later) ver. EX ver.
1998WF ltd. Clear Black ver, EXPO 2000 ver. Repeat ver.
■バルタン星人■

 HGウルトラマンの歴史は、バルタン星人の歴史でもあるかもしれない。最大の版数を誇る。この金型は、いよいよ打ち止めか。ベスト版は、クリアブルー色に、シルバー色をドライブラシしたもので、これまでとは意匠が異なる。

 彩色版では、ベストセレクションに定評があるが、私としては、どれも納得が行かない。
Monster Best Sellection ver.
 
First ver. EX ver. EXPO ver.
■メフィラス星人■

 初版のみ、口元のクリアイエロー色がスモーク調。他は、特別な変更を受けなかったが、ベスト版に至リ、目の周辺にゴールド色を追加した。この部分は、実際の着ぐるみでは、クリーム色であるという解釈もある。

 本体のブラック色の光沢を、もう少し落とすと、ベターだったかもしれない。
Repeat ver. Monster Best Sellection ver.
 
First ver. Best Sellection(earlier) ver. Best Sellection(later) ver.
Repeat ver. EXPO ver. 2nd Repeat ver.
■ゼットン■

 ホワイト色の部分が、初版以来、成型色の露出であったが、ベスト版では塗装に変更された。内腿には、グレー色が軽く吹かれ、着ぐるみに忠実である。

 黒色部は、ベストの2版のみ、グレー系色。

 胸のオレンジ色は、ベスト版で2色階調の表現となった。

onster Best Sellection ver.
 
■ミクラス■

 本体のブラウン色が、ダーク調に変更。上半身背面の幾何学模様も、多めに塗られている。しかし、複雑な着ぐる身の塗装には、全く及ばずか?

 角の塗装に、2色が追加されているのは、歓迎。しかし、ピンク色は実際では、かなり薄い色調である。
First ver. Monster Best Sellection ver.
 
■ツインテール■

 中央部はベージュ色の上にブラウン色を吹いており、初版の光沢色から、艶消し色へ変更。さらにグリーン色で弱くウェザリングされ、質感は高い。

 袖の部分には、黄白色が加えられたが、もう少し全体を、風塵まみれにすると良いと思われる。
First ver. Monster Best Sellection ver.
 
■グドン■

 本体の基本色は、全体に黄色掛かったものに変更。全体に、グレー色のエアブラシワークに、同系色のウェザリングが処理されている。

 顔部のグレー色の線塗りは、繊細で丁寧になっている。下顎の口中の塗装が、三角形になった。
First ver. Monster Best Sellection ver.
 
■バキシム■

 初版の光沢色から、ベスト版は艶消し色へ変更。本体色のブルー色は、白濁したものになった。

 頭部から背面部分は、初版では2色のイエロー色が、ベスト版では2色のオレンジ色が使用されている。さらに、全体には、グレー色のウェザリングが施される。
First ver. Monster Best Sellection ver.
 
■テンペラー星人■

 本体色は、明るいブルー色から、白濁した紫色調に変更。全体には、グレー色でウェザリング処理される。目の下の列点に、ゴールド色を追加したが、膝の突起は逆に省略となっている。

 着ぐる身の本体色は、初版の色の方が近いと思われる。

 
First ver. Monster Best Sellection ver.
 
First ver. EXPO ver. Repeat ver.
■マグマ星人■

 口周りのガンメタリック色が、EXPO版以降、顎全体の範囲となった。

 今回のベスト版で、決定的な違いとなったのは、毛髪の色が明るい金色に変更されていること。
Monster Best Sellection ver.

2002.7.1作成