premium studio live vol.3(may.29 st-robo)

sound & recording magazine主催の、普段あまり観れない組み合わせのミュージシャンのライヴを高音質で録るというイヴェント。今回は大野由美子+zak+飴屋法水という布陣で、場所がzak氏のスタジオst-robo。実は一旦抽選に落ちたのですが、色々有ってキャンセル分をget出来たという幸運が有りました。で、スタジオ中央にスティールパン+minimoogゾーンとミキサー+エフェクターゾーンと小物色々ゾーンがごちゃっと固まっていて、観覧者はどこでどうやって観ていてもok。携帯電話もオフにしなくて良いという話。演奏は即興で進んでいたと思いますが面白い面白い。大野さんがmoogとスティールパンを演奏して、飴屋さんが物音を出し、zakさんがそれを加工ってのが基本の流れだったと思いますが、卓の脇にも超高感度のマイクが有って、zakさんが鉛筆を走らせる音まで使われてましたがその音が猛烈に心地良い。飴屋さんはカットされたギターに刺した画鋲を擦って音を出したりギターのヘッドの弦を弾いたりコインを弾いたりと色々されてました。こういう偶然性に委ねられた出音まで巻き込んで成立していて、それが音楽として気持良いってのは凄い事だと思います。最後に飴屋さんの提案で大野さんの鼻歌的なヴォイスパフォーマンスになったのですが、zakさんの加工の仕方と歌い手に対する反応の速さには驚いた。色々流石と思いました。

ヴァルティナ(may.27 武蔵野市民文化会館)

フィンランドが誇る伝統音楽グループ、と言いつつかなりモダンでプログレッシブな要素も入った音楽集団。現在のメンバーは女性ヴォーカル3人に、楽器がベース・ドラムス・ブズーキ・アコーディオン+鍵盤の7名。で、好きな割には曲名が把握出来てないので個々の曲については何も語れないのですが、凄く良かった。まずとにかく歌。3人の声質がかなり似ており、それ前提のアレンジがされている様子で、声の絡み合い方とハーモニーの作り方が抜群に面白い。所謂ロック的な文脈とは全く異なる感じ。で、曲のアレンジも凄くて、歌を自然に乗せる為なのかそもそもフィンランドにそういうリズムが有るのか分かりませんが、奇数拍子やポリリズムが非常に自然に出て来る。演奏陣もリラックスしつつえらい事やってる。アコーディオンがvアコーディオンだったのも面白かったな。何だこの音ってのは大抵そこから出てた。ホーミー的なヴォイスまで出してたのにはちょっと笑いました。大変なアレンジの曲に完璧な歌を乗せつつも、どこか牧歌的な所が凄く好印象でした。

Chim↑Pom展「REAL TIMES」(may.21 無人島プロダクション)

3/11以降の「今→リアルタイム」、そしてそれを内包する今という「リアル(な/の)時代」をテーマにした新作展。場内に入ると右手側に例の岡本太郎絡みの作品とそのドキュメント映像。そして部屋の中央に大振りの生け花的な立体。と言うか生け花ではあるんだけど、人工物が中に含まれている。これが"被曝花ハーモニー"という作品で、福島第一原発付近で採取した植物やゴミを除染して生け花に仕立て上げた物。あの場所から来た物に触れるという事、除染されているとは言え恐らく生き物としてはダメージを負っている筈の植物が目の前に有るインパクト。その周囲には写真作品が幾つか。不撓不屈と書かれた書の写真や現地で撮影された犬の写真、死んだ家畜の写真が力強く迫ってくる。脇には発電装置"エロキテル"実用機"キボウ"。性欲を発電に用いるという画期的なメカだけど、恐ろしいことにマジである。エロ目的で掛かってきた電話の着信電波から発電するという。その部屋の奥に映像作品"気合い100連発"。chim↑pomメンバーと現地で知り合った若者が円陣を組み、「xxするぞ!」「おー!」を100回繰り返す。「xxするぞ」の内容は「復興がんばるぞ!」から「彼女作るぞ!」とか「お母さんありがとー!」だったりするんだけど、多分全員その場で考えてて、考える時間が与えられてない分素直な言葉が出てくる。馬鹿みたいな反復と勢いとポジティヴィティに凄く感動した。そして脇の仕切られた小部屋に入ると、メイン展示と言える"REAL TIMES"の映像。防護服を着て福島第一原発の敷地内に侵入し、敷地内の展望台に登る2人の人物。そこから見えるのは煙を吐く原子力発電所。展望台で白い方形の布を広げる。その中央に赤いスプレーで円を描く。国旗。更に、その周囲3箇所に湾曲した台形を。放射能のマーク。手の付けられない状態になっている原発をバックに、その旗を高々と掲げ、振る。白旗を掲げたとも取れるし、日本負けねえぞって宣言した様にも取れるし、原発ふざけんなっていう風にも取れる。多分全てを含んでいる気がする。そして2人(と撮影者)は展望台から下り、着ていた防護服で発電所最寄りの畑に別の作品として案山子を1体。ここまでが映像の一部始終。その部屋を仕切っている硬い膜にはac/dcの"dirty deeds done dirt cheap"の歌詞らしき物が書かれてたけど人が多くてよく見えなかった。部屋を出た所で、自分の体に黄色い塗料が点々と付着している事に気付く。何のメタファーかは言うまでも無い。多分岡本太郎絡みの作品が一番注目されるんだと思うけど、全体を俯瞰して観ないといかんと思います。確かにこれは今の日本が直面しているリアルなライフを切り取って目の前に突き出している。東京住まいの人間としては、報道やwebの情報では色々見て来ているんだけど、、それから目を背ける事も逃げる事も、しようと思えば出来る。ただ、こういう形で目の前に提示されると、改めて事態の深刻さとそれに負けない為の何かが自分に必要だと思わされる。実は最近アートという言葉に色々と嫌気が差してあまり使わないようにしてたんですけど、この展示で垣間見たchim↑pomの行動の受け皿はやはりアートという言葉であり、彼らは凄いアーティストなんだなあと思います。

リヒターとトゥオンブリー 新作エディション展(may.20 wako works of art)

ゲルハルト・リヒターとサイ・トゥオンブリーの新作展。入口付近にまずトゥオンブリーの"チューリップ"シリーズ。白いチューリップをかなりの近距離から撮影した作品群で、ほぼ焦点が外れている。一見すると何の写真だか判らないレベルの作品も。はっきり見えないことによる迫力とかこちらの想像力を喚起させる力を感じました。「ぼかしの表現は写真芸術が生んだ偉大な発明だ」という言葉を思い出しつつ。そして奥に行くとリヒターの新作"アブダラ"が数点。ガラスの裏側に様々な色のラッカーが塗られている。と言うか、様々な色のラッカーが塗られたガラスを裏から観る。画面は決して大きくないのですが、それぞれの作品の色彩の豊かさや画面の構成、密度の高さに唸らされる。抽象性や偶然性による質感はデカルコマニーと似てるかな。画面は徹底的にフラットな筈なのに、何故か立体感を感じる作品が多かったのも印象的でした。あと、奥の壁にリヒターのモノクロの油彩が1点。キャンバスの左右が黒とグレーに塗り分けられていて、その境目は白い光輝のような直線。これが左右のバランスといい白い線の描かれ方といい物凄い完成度で感動しました。

ドラびでお+さがゆき(may.8 bar isshee)

一楽さんのソロでスタート。ほぼ新兵器doranomeだけ。基本的にはledボタンとつまみが沢山付いたmidiコントローラーみたいなのですが、音と映像がどう操られているのかさっぱり分からない。ただただ出音の格好良さと映像の面白さとヤバさに圧倒される。そして笑える。著作権的にアウトでしょってネタやこれを海外のでかいフェスでやって大丈夫なんすかってネタだらけで面白かった。一楽ソロ後にあまり間を置かずにさがさんのソロ。ディレイ的なエフェクターを操作しながらのヴォイスパフォーマンスで始まり、要所要所でパーカッションや玩具等を鳴らす感じ。もう声とか息遣いの表現の幅の広さに驚かされた。速い音は猛烈に速く、伸びる音は果てしなく伸びる。決して威圧的ではないのですが、なんか嵐の様なソロでした。短い時間だったと思うけど密度が凄かった。で、最後にデュオ。今度は一楽さんはドラムに座り、お馴染みのドラびでおスタイル。スクリーンはさがさんの後ろなので御本人からは見えないのですが、一楽さんがとんでもないネタをばんばん突っ込んできて凄く面白い。その上音と声の絡みが絶妙。二人とも相手の音を聴き過ぎずに伸び伸び好き放題やってて、それが上手い具合に噛み合っている感じ。がっちりし過ぎてない心地良さが有りました。