変形チムニー

2004.6.6
メンバー:惠川・他1名

6月5日(金)
東京を出発して水上ICで降り、いつものセブンイレブンで買い物をして、出合に向かう。
途中、湯檜曽駅には車が沢山駐車していた。
指導センターの登山届けのボックスを見ると、こんな天気予報なのに結構枚数がある。
ほとんどが、南稜と中央稜。
中央カンテが1パーティー。変形チムニーはいなかった。

6月6日(土)晴れ後曇り、昼過ぎから雨
一のノ倉出合〜テールリッジ〜変形チムニー〜6ルンゼ下降〜テールリッジ〜一ノ倉出合

パートナーは連日睡眠不足との事で朝は、5時に起床。
ちょっと遅いかなぁ〜と、思ったけど私もほとんど毎日睡眠不足だったので反論せず。
5時30分過ぎに一の倉出合を出発するが、まわりはほとんど出払った後みたい。

今年は残雪が少ない。
まだ、6月始めだというのにテールリッジまで雪渓がつながっていない。
雪渓は出合からあるものの、すぐに夏道へと追いやられる。
夏道は、うっそうとしていて、いつも水が流れていて、ビチョビチョしているところだ。
そこが過ぎると再び雪渓へ降りて、テールリッジへと向かう。

テールリッジへ取り付いた所で、ハーネスを付ける。
シーズン初めなので、テールリッジには浮石や小さな石がザラザラしている。いつもよりいやらしく感じた。
あと一ヶ月もすると、クリーニングされるかな?
中央稜取り付きには、沢山の人、人・・・
これでは最後のパーティーが取り付くには1時間ではきかないだろう・・・・・

中央稜取り付きから更にスラブを登って、ルンゼを越えたところに変形チムニーの取り付きがある。
ピンが2本あるので、支点を作ってビレイしてもらう。
ロープを出して、唖然とした。
パートナーはロープの色をオレンジというから私は黄色をもってきたのに!
なんと、パートナーも黄色だった!!
「あんた!これは黄色って言うんだよ〜〜!」
仕方がないので、其々所持者の名前+ロープで呼び合うことにする。

7時30分登攀開始。
最初はピンが少ないように思えるが、目の届く所に次々とあるので迷うことはない。
左上気味に登って行くと、ビレイ点が見えたが、もっとロープを延ばすことにし、先のビレイ点へ向かう。
まだ、ロープが余っているのでもっと延ばそうかと思ったが、ギアが足りなくなったので切る。もっと持っていけばよかった。

2ピッチ目は、フェイスを直上後、フェイスかクラックを選んで登る。
セカンドで登ると、突然、壁が立ってきて、残置シュリンゲがぶら下がっている垂直のフェイス。
え・・・、もうA0?
どうも左のルートを登ってしまったようだ・・・

いよいよ変形チムニー。
前方にパックリと口を開けた岩が見える。あの間を登るのか・・・
取り付き付近は、浮石が多くて、かなり大きな岩でもいちいちチェックしないとキケン。
直下から左右のスタンスを拾って、登って行く。
ピンは比較的中の方にあるが、チムニーの中に方へ入ってしまうと登り難いというパートナーのアドバイスで
どんどん足を広げていった。よく見ると、スタンスは結構ある。
最後は、右のカンテへガバを見出し、乗り移った。

次のトラバースでリードをバトンタッチしたものの、出だしで最初のピンをとった後ピンは見当たらない。
やがて、壁は、草付の垂直となり、ホールド&スタンスはなくなった。
前方には朽ちたピンとシュリンゲがひとつ・・・
コレをつかって、下に降りるのか・・・?
どうも行き詰ってしまって、敗退。
代わってビレイをするが、ロープはどんどん延びる、延びる、、、トラバースを越えてチムニーも登ってる。
もう、残りがないよ〜〜〜!
と、言ってもコールは届かない。チムニーを抜けたのを見届けて、ビレイを解除してトラバースを始める。
私が、トレースした所より少し下のルートを取ったようだが・・・・垂壁の草付、ホールドスタンスほとんどなし。
微妙なバランスで行かねばならない・・・
なのに!ロープをぐいぐい引っ張る!やめてくれ〜〜〜!
丁度その時!中央カンテから登ってきたパーティーがいた!
トップで登ってきた男性が途中で止まってくれて、私のコールを伝言コールしてくださった。
「引っ張らないでぇ〜」→「引っ張らないでぇ〜」→パートナー
あ〜〜、いい人だ!本当に助かりました。ありがとうございました。
トラバース中、1本のピンもなかった。途中のキャメロットを回収して、ルンゼへ回りこんでホッとした。
後から調べたら、ここは、昔登られたルートで、今は、フェースを直上後、トラバースするそうである。

次のピッチは快適なフェース。
A1ピッチの直下までロープを延ばして切る。

後半の核心部。
一段上の、シュリンゲの垂れ下がった壁を登る。
A0で登れるそうだが、アブミを1台出してワンポイント押さえた。
ここを過ぎるとすぐにまた核心部。
ここもワンポイントアブミで乗り切る。
四畳半テラスに到着するも、どこがそんなに広いテラス?てな感じでさほど広いテラスとも思わなかった。

ここまでのルートは浮石が多く、脆いフェースも多かったが、ここからのピッチは岩も硬くなり快適。
凹角の中をグイグイ登って行く。
半分以上来たところで、上で人の声がした。
懸垂下降してくる人がいた。
話すと、南稜を登って下降しようとしたけど、あまりにも人が多くてこちらへ逃げてきたそうだ。
ロープが交差する中を注意して登って支点に到着。

最後のピッチも岩が硬く、快適だった。
終了点に到着したのが11時15分。

ここからは、草付のガラガラとしたルンゼを登って、草の中をトラバースし、藪の中をバケツを拾いながら登って、6ルンゼへの下降へ向かうところへ到達。
フィックスのあるルンゼを慎重に下降する。
フィックスは芯が見えているで使用しないほうがよい。

6ルンゼの下降、1ピッチ目は何回来てもイヤなところだ。
水がダラダラ流れていて、残置シュリンゲは黒くなって全てが腐っているように見える。
空中に体を放り出すようにして、懸垂下降を開始する。
目の前の深く切り込まれた溝の中に吸い込まれそうな気がする。

懸垂2ピッチ目をセットしていると、ポツポツ雨が落ちてきた。
急いで下降を始めると、岩の間に血のりがベットリ・・・落石にでも当たってしまったのだろうか・・・
かなり出血したのだろう。大事になっていなければいいけど・・・

南稜テラスに到着する頃には雨は本降りになってきた。
慎重に慎重にテラスから降りて、烏帽子スラブをトラバースして、テールリッジへと向かう。
スリップしたら終わりなのでとても緊張した。

テールリッジは、二箇所、50M懸垂して雪渓に降り立った。
雪渓でロープをしまい、歩き出すと、衝立スラブ上部に堆積していたブロックが音もなくスピードを上げて落ちてきた。
凝視していると、私めがけて迫ってきている。
直前まで見続けていて、右足を上げ、かわした。頭より大きなブロックだったので、危なかった。

出合に到着すると、雨はほとんど止んでいた。
下降している途中、中央稜、南稜ともまだまだ登っている人が沢山いたが、どうしただろうか・・・




さわのすけ★「北鎌尾根」