『ベッドルームで朝食を。』








帝国華撃団に、巴里華撃団が合流する事となり、わざわざ帝都に出向く事となった。

戦闘があるんなら、ボーナスも出るんだが、今回は単なる”慰安旅行”なんだそうだ…。


…コレ考えたヤツは、かなりの大馬鹿だと思う。


長距離の移動はかなり面倒な上、疲れる。

だが、アタシ、ロベリア=カルリーニは、不規則な生活ってヤツには慣れていた。

他は皆、帝都に着いたその日に、時差ボケと疲労でダウン。特に疲れていたのはコクリコ。

エリカに至っては、ずっと神に祈りながら、寝てしまった。


ま、出動も無かった事だし、黙って昼まで寝ているに限る。


 ―――― が。



「起きろ!ロベリア!せっかく、皆が用意したのだ!揃って朝食をとるぞ!さあ、起きろ!!!」



グリシーヌが朝から、アタシの部屋にやってきて、怒鳴る。


「…うー…いらない…」


朝は、食欲が無いし、だるい。


「いるとか、いらないの問題ではない!!さあ、起きろ!!」


…全く、どうしたら、朝から、こんな声が出せるんだ…

チラ見すると、仁王立ちで、アタシを見下ろしている貴族様が視界に入る。


「………。」

「ロベリア!」


…あー無視無視。


「………。」

「…あくまで、起きぬ、というのだな…?」


殺気を感じたので、アタシは忠告してやる。


「…斧はやめておけよ…コレ(ベッド)は借り物だ…。」


「わかっているなら、身を起こせ!!さもなくば…」


 ”がばあああああああッ!!”


 「―寒っ!?」


突然、掛け布団の感触と温かさがなくなる。布団を剥がして来るとは、いい度胸だ。


「さあ、起きろ!朝食だ!!」


勝ち誇ったように、アタシを見下ろすグリシーヌ。


「…たかが、朝食くらいで、何をそんな…」


「貴様は、規則正しい生活というのを、知らなさ過ぎる!それを直すいい機会だ!さあ、着替えろ!」


「……。」


アタシは、テンションの違いすぎるグリシーヌに呆れながら、もそもそとベッドのシーツを剥がして、それを被って潜り込んだ。


”断固起きない”という意味だ。


「き・・・貴様というヤツは・・・!!」


ここまで怒らせたら、グリシーヌは、怒って”もう知らん!”と出て行く・・・という計算だったんだが。


”バサッ!!ギシ!!!”


「なっ!?」


グリシーヌが、シーツを剥ぎ、アタシの上に覆いかぶさる。

アタシは、もがくが、今日はグリシーヌの力がいやに強い。


「こうなった以上・・・首根っこ、捕まえてでも…貴様に朝食を食わせてくれる…!!」


眼は、なんか・・・イってるようにも見える。


「ッだからッ!!なんで!!そんなに、ヤル気満々なんだよっ!?」


大声で抵抗するが、マウントポジションを取ったアイツの方が有利だった。


「さあ、服を脱げ!今すぐだ!」


アタシのYシャツのボタンを引き千切る勢いで、グリシーヌは着替えを”手伝おう”(?)としている…


「なっ!?オイ!やめ…っ!!」


抵抗しても、無駄だと解ってはいるが、しゃくだ。


「やめろで済めば、警察と光武は要らん!!」



 ・・・ムカッ。



「テメエ…!」

炎を出そうかと思っていた矢先―


 ”ガチャ。”



「ロベリア、一応聞くけど、朝食は食べ…」


声の主は、マリア=タチバナ。



 「「「あ。」」」




静まる空間。


乱れたシーツ。


暴れて、興奮したせいで、アタシとグリシーヌは、息は弾み、顔は真っ赤。

グリシーヌは、アタシの上で、アタシの服を剥いている状態。

アタシは、グリシーヌの下で、半裸の状態。


一方、マリアの動きは、止まったままだ。



「ま、まて!…マリア!これは…!」



驚き、たじろぐグリシーヌをみて、アタシは、真顔でマリアに言う。



「マリア…アタシ…今、コイツに”喰われてる”から…悪いけど、朝食は…」


器用に、頬も染めて見せた。


「・・・・・失礼。」


 ”パタン・・・”


マリアは、一言だけ呟くと、素早くそっと出て行った。


いつも冷静なヤツのことだ。これが”アタシの芝居”だととっくに気付いているはずだ。

まあ、マリアは、誤解はしても、皆に広げるようなヤツじゃない。



…それにしても、ツッコミもいれず、ほっとくとはな。随分と、ノリの良いヤツになったじゃないか。



「き、貴様…一体どういうつもりだっ!完全に誤解されたではないか!!」

「あっれー?そうだっけぇ〜?」


誤解されたと勘違いして、怒りに沸くグリシーヌ。

アタシは、そんなヤツのリアクションが、ひたすら可笑しくてたまらない。


「貴様…どうやら、骨は異国に埋めたいようだな…!」

「…じゃあ、いらないのか?」


「何がだ!?」

「ア・タ・シ♪」


「・・・・・・い、いるか!」


…今、間があったな。絶対あった。


「で、いつまでアタシを半裸のままにしておく気だ?」


・・・いい加減、寒くなってきた。


「あ…す、すまぬ…!」

そう言うと慌てて、グリシーヌはアタシの上から離れようとした


 ――― が。


アタシは、首筋に腕をかけ

「お前が…優しく起こしてくれたら、アタシも、ちゃ〜んと起きたんだがな…」

と言ってやった。


・・・ま、ちゃんと起きるかどうかの保証は無いけどな。


「…む…そうか……では以後、気をつける…だから…」


「・・・ん?」


「…腕を、離せ…」と言って、頬を赤らめるグリシーヌ。

…誤解だとか、なんとか言って、コイツ…結局こうなんだよな。


「じゃあ…アタシの身体、抱き起こしてくれよ。少し、だるくてさ…」


我ながら、歯の浮くような台詞だ。


「…時差ボケの状態で…寝酒など飲むからだ。」


(…チッ…バレていたか…)

少し、しかめ面をしたかと思えば、グリシーヌのアタシを見る目には、もういつもの険がない。



物が欲しくても言えずに我慢しすぎて、泣きそうなガキみたいな顔してる。

…まあ、お前のそういう顔はたまらなく、そそるんだけどね、グリシーヌ。


アタシは上半身を上げ、距離を近づけて、小声で、グリシーヌに囁く。



 『     』



聞いた瞬間、ピクリとグリシーヌの肩が、反応したが、すぐに静かになった。

朝から愉しませてくれたご褒美のつもりで、アタシがほんの少しだけ、唇をつけてやったからだ。


唇を離して、グリシーヌを見つめると、グリシーヌも見つめ返してくる。


顔の火照りが、こっちに伝わるほど、真っ赤になった、グリシーヌをみて、アタシは目で笑ってやる。


「……お、起こすぞ…」


咳払いをしたグリシーヌがアタシに抱きついて、起こそうとした瞬間。


 ”ガチャ。”



 「「「あ。」」」



三人同時に一斉に声が出た。


そのうちの一人は、マリアのヤツだった。今度の表情には、冷静さがない。


「じ、時間を置けば、と思ったんだけど…ご、ごめんなさ…!」


さっきのが、冗談だというフリが効いている上、2度目も、アタシは半裸のまま。

しかも今度は、グリシーヌがしっかり抱きついているのだから

『これは真実だ!』と思い込むのも、まあ…無理は無いんだが…


 ”ガタ!・・・ガタタタタ!!!”


マリアは、ドアノブ、ドアの段差に突っかかってる。・・・すごい、動揺ぶりだ。



(・・・ああ、今度は本当に真に受けているな・・・。)




「ま、待て!先程もこれもだな!私は別に…!!」



 ”バタン!!”




 シ――――――ン・・・・・・(BGM:御旗のもとに 〜サビ〜推奨)・・・・。





「…ロベリア…」


寝起きで、頭使ったせいか、腹が減ってきたな…


「じゃあ、朝食でも喰いに行くか。」


アタシは、グリシーヌを押しのけ、ムクリと起き上がって、ズボンを履いた。


「…殺す…」とヤツが呟いた。


シャツを着ながら、アタシはトドメの一言をさした。

「じゃあ、明日の朝は、アタシがアンタを喰いに行ってやろうか?」



「…き、キサマ…と、突然、何を言いだす!?」


ホントは、この場でアンタを”喰って”やっても、良かったんだがな。

・・・まあ、邪魔が入る状況では、こちらとしても食欲が減退するってもんだ。



「……さぁてと…」



・・・もうそろそろ、いいだろう。



まったく…このアタシが”気づいていない”とでも、思ってんだろうかねぇ…



「ロベリア…お前、どういうつもりだ…?」


「いや、なんか期待されているみたいだし、それに応えないと、なぁ?」



「…期待だと?お前、さっきから、何を言って…!?」



アタシは笑いながら、ドアノブにそっと手を掛け、一気に引いた。


ショーは終わりだよ。ドアの向こうの、お客様…


 ”ガチャ。”


 「「「うわああああああ!!」」」 「「キャー!!!」」


 ” ドタタタタタタ!! ”


ドアから、雪崩れ込んできたのは、”立ち聞き”していた 帝都・巴里 両華撃団だ。



「…ま…こういう事だ。グリシーヌ。」


まあ、グリシーヌとアタシの口論が気になって、立ち聞きしてたってところだろうな。


だから、肝心な部分は『小声』で済ませてやったんだ。


「な…な…何…!?」

言葉を失うのはグリシーヌ。


「いや、これはやな…うん、挨拶や。帝都の」と眼鏡を上げて、嘘で誤魔化そうとするのは紅蘭。


「おはようございまーす…朝食、出来てますよ…なん、ちゃって…」と愛想笑いを浮かべるのはさくら。


「ホラ、ごらんなさい!誰ですの!?二人がデキてるとかなんとか…!!」そう言って、怒り出したのは常識人を気取ったすみれ。


「オメエだよ。”影から、応援してあげましょう”なんて涙まで浮かべやがって」と立ち聞きに関して、反省の色がまるでないカンナ。


「ちょっと〜!苦しいで〜す!カラミが見えませ〜ん!」


・・・織姫にいたっては、まだ見学気分ときたもんだ。


「…か、絡みなんて…ぽっ」 って…お…オイオイ、お前までかよ、花火…。


「わ…私は止せと言ったんだけど…」

…じゃあ、なぜ二度も様子を見に来たんだ?マリア。


「ロベリアさん、グリシーヌさん…皆さんを怒らないでくださいね!!これは、神様が、二人の声を聞くように、と…」


・・・バカエリカ・・・

お前に関しては、アタシじゃなく、コイツにツッコミを入れてもらおうじゃないか…。


「そんな・・・」


・・・さあ・・・後はヨロシクな、グリシーヌ。




「そんな訳が、なかろうがああああああ!!」



「きゃ――――――っ!!!」


…あ〜あ…ご愁傷サマ(笑)。




(あー…無駄に早起きすると、だるいな…。)


廊下に出ると、ガキ共がサクラ達を呆れ顔で見ている。


「はあ、大人ってバカだよね。」

「アイリス、よくわかんなーい…」

「…わからなくて、いいと思う。」


…こいつ等の方が、よっぽど精神的に大人だよ。


「じゃあ、4人で朝食食いに行こうじゃないか。」と無傷のアタシが、コクリコ達に言うと

「…ロベリア、帝都でも悪魔だね。」とコクリコが笑いながら言った。


アタシは笑って答える。

”それは、褒め言葉だな”と。



 ― END ―




 『 裏話 』 




「起きろ!!ロベリア!!」

(…うるさいなあ…)


ボクはコクリコ。

時差ボケで、昨日はアイリスともレニとも遊べなかったから、今日は早起きして遊ぼうと、支度していた時だ。


「せっかく、皆が用意したのだ!揃って朝食をとるぞ!さあ、起きろ!!!」


隣はロベリアの部屋だ。 大声の主はグリシーヌ。

あれはロベリアを…朝食に…誘って、いるのかな…?

まったく、よくやるよ…無駄だと思うけど。


朝のロベリアは、すごく不機嫌だから触らないほうがいい。

触らぬロベリアに畳みなしって日本じゃ言う程さ。(間違い)


「いるとか、いらないの問題ではない!!さあ、起きろ!!」


隣から丸聞こえのグリシーヌの声。…やっぱ…ロベリア、断ったんだな…

…朝から斧と炎のケンカは勘弁してよね…


「よし、髪の毛セット完了〜♪」


ボクは、ふと隣のベッドを見た。エリカは、まだ寝ている。時差ボケってヤツのせいだ。


「神様…うーん…えへへ…」


…能天気だよ、ホント。


「さあて、アイリス達に会いに行こうっと♪」


ドアを開けて、廊下に出ると…マリアがいた。


「おはようマリア、どうしたの?」

「ああ、おはようコクリコ…なんだか、言い争いが聞こえるから、気になって。」


マリアが、心配そうな顔で、ロベリアの部屋の前にいた。

あーもう・・・遠征先まで、心配掛けるなんて…巴里の恥だよ、恥!!


「あぁ…大丈夫大丈夫。あの二人はいつもそうなんだ。変に止めると、こっちまで巻き込まれちゃうよ?」

・・・ボクは、いつものように被害者を出さないように勤めないと。


「…しっかりしているのね、コクリコ」とマリアは優しく、ボクを褒めてくれた。


「まあねっ!じゃないと、あんな濃いメンバーでやっていけないよ。」


部屋の中からはまだ二人の争う声が聞こえる。


『…くらいで、何をそんな…』

『貴様は、規則正しい生活というのを、知らなさ過ぎる!それを直すいい機会だ!さあ、着替えろ!』


「……。」

「…な、仲…良いのね…」


・・・同じ仲間として、ボクは、本当に恥ずかしいよ。二人とも。



「オイ、マリア、なんだよこの声。グリシーヌか?」

カンナだ。欠伸しながら、ダルそうにこっちに来る。


「ああ、カンナ…おはよう。これは…ちょっと、ね。」

とマリアは言ってくれた。…ゴメンナサイ…フォローしてくれて…


「お、ロベリアの部屋か…。まぁた、グリシーヌとケンカかぁ?朝から、よくやるぜ…ふあああ。」


…ゴメンナサイ、カンナ…ボク何も言い返せません。


「ちょっと、カンナさん欠伸なんて、はしたない。それよりなんですの?朝から不粋な…」

すみれさんだ。朝からぴしっとしているのは、グリシーヌと同じだ。


「ブスなのは、オマエだって。サボテン女。」

「ぶ・す・い!ですわよ!!失礼なッ!それに!貴女みたいな、お猿さんなんかに言われる筋合いはないですわよ!」


「あん?誰がサルだってぇ?聞き捨てならねえな!?」

「あ〜ら、最近のお猿さんたら、耳まで遠いのかしらァ?」


…あれ?この二人……微〜妙〜にロベリアとグリシーヌと同じにおいがするぞ…


「二人とも!やめなさい!」


マリアが止めてくれる。その途端、二人は”フンっ”とそっぽを向いた。


なるほど。…いやあ、勉強になるね〜!

そうか!ボクもこうゆう風に二人を止めていこう。



「あの〜どうかしたんですか〜?朝のお祈りですか〜?」

・・・と言いながら、半目状態で廊下に出た来たのは、エリカだ。やっと起きてきたんだ。


「ああ、エリカ、オマエの仲間がケンカしてるってよ。”どっかの誰かさん”みたいなお嬢様のヒステリー声が聞こえるぜ。」とカンナ。


その台詞に、すぐすみれが食いついてきた。

「あーら、それは。あ・の!ロベリアさんだから、しょうがないんじゃありませんの?

 ”どっかの誰かさん”みたいに、ガサツそうですものねぇ?」


「おんやァ?それは誰の事だぁ?ヒステリー持ちは責任転嫁まですんのかー?」

「あ〜らカンナさん、ガサツといえば!

最初が”か”で真ん中が”ん”で最後が”な”の人しか、いないんじゃありませんの〜?嫌だわ、ボケちゃって!」

「んだと〜!?…”ボケ”はおめえだろ!!サボテン女!」

「なんですって!この大女!!」



……あーあ…これじゃ、帝都版ロベリアとグリシーヌだ。


「う〜ん…おっしゃっている事は、よくはわかりませんけど、ロベリアさんとグリシーヌさんは、仲良いですよ?」

とエリカはニッコリ笑う。


その途端…!


『き・・・貴様というヤツは・・・!!』

 ”バサッ!!ギシ!!!”



・・・・この音が仲良しなもんか・・・。


「…なにやってんだ?」 「そもそも原因はなんですの?」

カンナとすみれは、そろってドアに耳をつける。


「ちょっと!二人とも!


 ……静かになさい…聞こえないでしょ。」


マリアが止め……ないで、ドアに耳つけてる・・・。


「なんか、バサバサ聞こえるな…」 「シーっ!よく聞こえませんわ!」


・・・この人たちって・・・。


「あ、エリカもお供します♪」


・・・・エリカまで・・・・・。


『なっ!?』

『首根っこ、捕まえてでも…』


「おはようございます…み、みなさん?」 「おはようさん…げ、なにしてるん?」

 やって来たのは、紅蘭とさくらだ。


 「「「「しぃーッ!!!」」」」


…4人共、すごい顔で、紅蘭とさくらの声を遮る。


その様子をみて、二人は……

「…言い争いやな…んん…?」 「…いや、もみ合ってますね…喧嘩でしょうか…」

止める事無く、しっかりと、ドアに耳をつけた・・・。



「…音から距離を考えて……二人の位置は、恐らくベッドの上ね…」

「ベッドの上…そら、大変や…!」

「んー…肝心の会話が聞き取れねえな…グリシーヌの、首根っこ捕まえるとか〜の先が…」

「でも…どうやら…グリシーヌさんが…勝っているようですわね…」


「す、すごいです!…皆さん…エリカ、皆さんのその耳の良さと洞察力に感動です♪」


・・・エリカは感心しているけど・・・ボクは、みんなの、そんな姿みたくなかったよ・・・。


「…ん?」


『だから!なんで!そんなにヤル気満々なんだよっ!?』


あ〜ぁ…ロベリアの声だ。不機嫌そうだな…


「ヤ、ヤル気…?」と、さくらがハッとした表情をする。

「なにを、やる気なんでしょうか?わかります?エリカわかりません。」と、エリカ。


・・・正直、ボクもわからない。


「エリカはん、二人はベッドの上にいるんやで?…これ以上は…不粋でっせ…うっふっふ…」と、紅蘭。


「・・・ま、まあ・・・べ、ベッドの上でヤル気ったら、ナニ…しかねえ、だろうなァ」と、カンナ。


「…ああ…グリシーヌさん…ああ、そうでしたのね…」とすみれ。


「ま、まだ、そうと決まったわけじゃないでしょ?」とマリア。




・・・ボクには、みんなの考えている事がわかりません・・・。




『さあ、服を脱げ!今すぐだ!』

ああ…グリシーヌの声だ。


「…もう、間違いないですよね…コレ…」と呟いたさくらは、顔が真っ赤だった。

「あらら〜♪…激しいなぁ…ねえエリカはん♪」と紅蘭はさっきから嬉しそうだし。


「え?何がですか?紅蘭さん?」

エリカの頭の上には、ボクと同じで”?マーク”がいっぱい見える。


ただ、エリカとボクが違う点は、面倒な事に頭を突っ込んでいるって事。


『なっ!?オイ!やめ…っ!!』

ロベリアの声だ。かなり、暴れているみたい。


「おんやぁ〜?ロベの野郎、抵抗してるぞ?」とニヤニヤ笑うカンナ。

「…まあ、意外ですわね…ただの悪党かと思ったら…恥らう女の部分も持ってらっしゃるのね…」とすみれが含み笑いを浮かべる。



「…だとしたら、誰かが二人を止めるべきね。」と、マリアは溜息をつきながら言った。

「ええ〜マリアはん、それ殺生やわぁ♪」

立ち上がったマリアを紅蘭が止める。

その直後。


『やめろで済めば、警察と光武は要らん!!』

『テメエ…!』


…グリシーヌ…光武はいるよ、ボク達にはさ。


「…騒動を大きくする訳にはいかないわ…私が二人を止めてくる、それで、いいわね?」とマリアは立ち上がり、ドアを開ける。



うんうん、さすが、ボクが見習うべき人だ。

皆は、素直にすばやく、ドアから離れる。



 ”ガチャ。”



「ロベリア、一応聞くけど、朝食は食べ…」…と言いかけて、マリアの動きが止まった。



遠くからボクたちは、それを見ていた。

部屋から声だけが、聞こえた。



『ま、まて!…マリア!これは…!』


『マリア…アタシ今、コイツに”喰われてる”から…悪いけど、朝食は…』



「…失礼。」


 ”パタン。”




マリアさんは静かに、ドアを閉めるとみんなは、息をのんだ。



「…これで…」

「決定的ですわね…」

「二人は…」


「コイビト同士、デスネ〜」

「…ぽっ。」


・・・いつの間にか、織姫と花火まで、さくら達に混じっている。


・・・ボクには、どうしたら今の会話で、そうなるのか…がわからないんだけど・・・




だって、グリシーヌは…単にロベリアを起こしているだけでしょ?




「みんな、聞いて頂戴!まだ、そうと決まったわけではないわ。」

「どういうことだよ?マリア」

「あれで、決定的じゃありませんか〜?」


何が”決定的”なのかが、イマイチわからないけど…


「確かに…グリシーヌはロベリアの上に乗っていたけど…」

「じゃあ、やっぱり・・・・・・・ですよね…?」


「でも、さくら…よく考えてみて。ロベリアが、そう見えるように”演じている”としたら?」

「…じゃあ、フリやったって事かいな?」




『き、貴様…一体どういうつもりだっ!!完全に誤解されたではないか!!』


絶妙のタイミングでグリシーヌの声が響いた。


『あっれー?そうだっけぇ〜?』と笑うロベリアの声。




…ボクは、つくづく思う。・・・この二人の声、バカでかいんだよね、無駄に。



「・・・・ほ、ほ、ホラごらんなさい!グリシーヌさんは、やはり貴族として…」

「…すみれ、説得力ねえよ。」

すみれに対して、ボクと同じ事を思ったカンナが、先にツッこんだ。


「おっ、動きありましたよ皆さん!ホラ!はやくぅ!」


エリカ…率先して聞いちゃいけないんじゃないかな…?


「ワタシ、聞きまーす!」

「…真実はひとつや。行くで!」




(・・・・・この人たちって・・・・・。)



・・・ボクはアイリスのトコ行こうっと♪




  ※ 以下、会話だけで進みます。



グリシーヌ:『貴様…どうやら、骨は異国に埋めたいようだな…!』

ロベリア:『…じゃあ、いらないのか?』

グリシーヌ:『何がだ!?』

ロベリア:『ア・タ・シ♪』


グリシーヌ:『・・・・・・い、いるか!』


カンナ:「今、間があったな…」

さくら:「これでも、フリなんですか?マリアさん…」

マリア:「……そ、それは…。」


ロベリア:『で、いつまでアタシを半裸のままにしておく気だ?』

グリシーヌ:『あ…す、すまぬ…!』


さくら:「半裸!?これでもフリなんですか?マリアさん!」

マリア:「そ、それは…!」

カンナ:「グリシーヌも、意外と大胆だなぁ…」


『お前が…優しく……たら、アタシも……ちゃんと……んだがな…』


すみれ:「あら、声のトーンが…」

織姫:「聞こえにくいでーす」


グリシーヌ:『…む…そうか…気をつける…だから…』

ロベリア:『ん?』

グリシーヌ:『腕を離せ…』




ロベリア:『アタシの身体、抱……してくれよ』



花火「…ろ、ロベリアさんったら…ぽっ」

カンナ:「い、今、言ったよな?」


紅蘭:「…ああ、確かに『アタシの体を抱いてくれ』と言うた!」


すみれ:「ま、まさかッ…!?」

エリカ:「え〜…エリカ聞いてませんでした〜!」

織姫「いいえ、ワタシも、聞こえました!」

エリカ:「…待ってください、みなさん!…急に静かに…」

さくら:「は、始まっちゃった…とか…?」

エリカ:「何が始まるんですか!?さくらさん!」

さくら:「…えーと…!ひ、ヒロインの立場上言えませんっ!」

エリカ:「??????」

マリア:「…ふう…私が…行くわ。」

さくら:「…あ、あの…マリアさん?行くって?」

マリア:「…どんな場合にせよ、ハッキリさせましょう…華撃団の仲間をこれ以上、そんな邪な目線で見るわけにはいかないわ!」

カンナ:「た、確かにそうだけどよ…」


紅蘭:「マリアはん!危険やでッ!このSS、18禁置き場に置き換えないとアカンやろ!?作者の作業効率を考えたら、任せられへん!」


さくら:「…何を言ってるんですか…紅蘭さん…」


コンコン ガチャ!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




マリア:「じ、時間を置けば、と思ったんだけど…ご、ごめんなさ…!」



ガタ!

ガタタタタ!!!



グリシーヌ:『待て!先程もこれもだな!私は別に…!!』



バタン!!


シーン・・・


「(マリア、そっとOUTサインを出す)」


全員:「ああ、やっぱり…。」



カンナ:「…おい、すみれどうした?泣いてるのか?」

すみれ:「もう、何も言いませんわ…ワタクシ…惹かれあう二人の邪魔はいたしません!二人の愛を影から応援いたしますわ。

 …(グスッ)…皆さんも、温かく見守りましょう!?ねえ!?」


紅蘭:「…ま、まあ、世界には色々な人がいる訳やしなあ…お似合いと言うたら、お似合いやろし。」


エリカ:「そうですね!!仲良しは良い事です!」(全く解ってないエリカ。)


花火:「待ってください!何かまた…」

紅蘭:「…花火はん、ケッコウ好きなんやな…」



グリシーヌ『…ロベリア…』

ロベリア:『じゃあ、朝食でも喰いに行くか。』


紅蘭:「ええ〜ここまで来て!何言うてはんのっ!ロベリアはん!そこは…ちゃうやろ!!

マリア:「…紅蘭、アナタ、何を期待してるの?」



グリシーヌ:『…殺す…』



カンナ:「グリシーヌ…断ると…”殺す”っていうのか…」


ロベリア:『じゃあ、明日の朝は、アタシがアンタを喰いに行ってやろうか?』


織姫:「これは…必殺!『誘い返し』でーす!さすが、イタリアの血が入っていまーす!」


さくら:「…お、織姫さん、楽しそうですね…」

織姫:「ヒトゴトだからでーす♪」



グリシーヌ:『…き、キサマ…!』



マリア:「とにかく、みんな…二人の事はわかったんだから、もう…」

カンナ:「何言ってんだよ!ここまで来たら、ちゃんと…」

すみれ:「そうですわよ!二人の愛を見守る義務がありますのよ!」

エリカ:「気になりますしね♪」

カンナ:「つーか、エリカ、花火…お前ら(この事)知らなかったのかよ」


エリカ:「ハイ?」

花火:「・・・・ぽっ」


織姫:「シイィッ!いいトコですよ!!」



ロベリア:『さてと…』

グリシーヌ:『ロベリア…お前どういうつもりだ…?』

ロベリア:『いや、なんか、期待されているみたいだし、それに応えないと、なぁ?』


グリシーヌ:『期待?お前、さっきから、何を言って…!?』


 ”ガチャ。”


 「「「うわああああああ!!」」」 「「キャー!!!」」


 ”ドタタタタタタ!!”


突然開かれたドアから、雪崩れ込むのは、”立ち聞き”していた帝都・巴里 両華激団。



ロベリア:「…ま…こういう事だ。グリシーヌ。」

グリシーヌ:「な…な…何…!?」


紅蘭:「いや、これはやな…うん、挨拶や。帝都の」

さくら:「おはようございまーす…朝食、出来てますよ…なん、ちゃって…」

すみれ:「ホラ、ごらんなさい!誰ですの!?二人がデキてるとかなんとか…!!」

カンナ:「オメエだよ。”影から、応援してあげましょう”なんて涙まで浮かべやがって」

織姫:「ちょっと〜!苦しいで〜す!カラミが見えませ〜ん!」

花火:「…か、絡みなんて…ぽっ」

マリア:「わ…私は止せと言ったんだけど…」


エリカ:「ロベリアさん、グリシーヌさん…皆さんを怒らないでくださいね!!これは、神様が、二人の声を聞くように、と…」



グリシーヌ:「そんな訳が、なかろうがああああああ!!」



あ。グリシーヌの声だ。


…ボクがアイリス達と部屋を出ると、グリシーヌの斧が見えた。

それに続く、逃げ惑う華撃団のみんなの姿…



あ〜あ…だからボク言ったんだよ…。



あの二人のケンカに巻き込まれるよってね。


ボクはつぶやく。

「はあ、大人ってバカだよね。」



それを聞いたアイリスは、ボクとグリシーヌ達をチラチラッと見て、

「アイリス、よくわかんなーい…」と一言。


それを聞いて、後から来たレニはボクを見た。ボクは首を横に振ってみせた。


「…アイリス…わからなくて、いいと思う。」


レニ、その通り。解ったとしても、いい事なんか多分無いよ。



「・・・じゃ、4人で朝食食いに行こうじゃないか。」


ロベリアは、スッキリした顔で、ボクらの方にやってきた。

・・・・少しだけ、悪そうな・・・悪魔っぽい笑いを浮かべてる。


そのロベリアの笑いで、なんとなく、さくら達が、グリシーヌに追い回されている”理由”がわかっちゃうのは

ボクとロベリアの付き合いの長さのせいでもある。


だから



「…ロベリア、帝都でも悪魔だね。」とボクは笑いながら言ってやった。


「それは、”褒め言葉”だな」

そう言って、ロベリアは、ニヤリとまた笑った。


※ちなみに、ボクらが朝食を食べ終わる頃、ボロボロになったみんなが、目を血走らせてやって来たが、ロベリアはとっくに逃げた後だった。



END




あとがき

神楽は、勘違いネタが好きです。

多分、この手のネタは、どこでもやってると思うのですが…あえて。(笑)

ロベリアがグリシーヌに小声で囁いた『   』は、ドラッグしても見れません。…妄想して下さい。

書かない方が、いいかな〜と思ったので、空欄にしてあります。