この先、ちょいエロ表現がもう、これでもか!と多数ございます。苦手な方はお戻り下さい。

あと・・・ご両親がいつの間にか後ろに立ってた・・・なんて事がありませんように・・・。



















- candy lips after -






控えめなノック音が、アタシことロベリア=カルリーニの部屋に響いた。

部屋と言っても、名ばかりだが、寝床には丁度良い。


「・・・遅い。」


アタシは背を向けたまま、ソイツにそう言った。

待っている間、ワインを2本も空けたんだから、当然だ。


「すみません、ちょっと手間取ってしまって…。」


アタシは背を向けたまま、3本目のワインをヤツに見せながら言った。


「・・・飲むか?」

「・・・そのまま、飲んでたんですか・・・。」


「悪いか?」


アタシはそう言って、ワインのビンに口をつけた。

そして「生憎グラスを忘れちまってね」と、とってつけたような台詞を吐いた。


そして、アタシの隣に立った月代葵に、ワインの瓶を向けた。


「まあ、飲めよ。」


「・・・・・・じゃあ・・・。」


すこし躊躇いながらも、割と素直に葵はワインの瓶を受け取り、口を付け、瓶を傾けた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、おい・・・葵?」


葵は、そのままゴクゴクと喉を鳴らしながらワインを一気に飲んだ。・・・人のワインを、飲み干す気か?


「・・・・・・ぷはーっ・・・」


葵は、ワインの空き瓶をゴトリとテーブルに置いた。


「・・・まあ、見事に飲み干してくれたな・・・・・・人のワインを。」


とアタシが言うと、葵は口元を拭きながら開き直りともとれるような口調で、こう言った。


「・・・ふう・・・・・・飲めと言うから、飲みました。いけませんか?」


その後、口元をおさえる白い手袋の内側から小さく”けぷっ”という音が聞こえた。

・・・別に今更・・・気になんかしないから、堂々とゲップでもなんでも出しゃあイイのに。


「・・・フッ・・・いいや。んなケチくさい事言うもんか。・・・いい飲みっぷりだったよ。」


そう言って、アタシは立ち上がって葵の背中を擦った。

すると赤ん坊のように、葵はまた小さく”けぷっ”という音を出した。



「・・・そんな無理でもして、覚悟決めない程・・・・・・アタシに会って・・・抱かれるのは嫌だったのかい?」


そう言いながらアタシは、後ろからヤツを抱き締めた。

まあ、嫌だろうとなんだろうと、この部屋に来たからには、タダで帰すつもりは無いが。


「別にそういう訳じゃありません・・・これ以上、貴女にお酒を飲まれては、困りますから。大体・・・私、お酒には酔いにくいですし。」


「・・・ほう?」


アタシは、ヤツのYシャツのボタンに手をかけた・・・所で、気が付いた。


「・・・・オマエ今日、いつもの絆創膏・・・してないの?」


左頬の傷を晒しながら、アタシの部屋に来るなんて、今の今までなかった。

自分の過去の傷を、こんな風に晒す事を拒んできたヤツが。


「・・・どうせ、剥がすでしょう?それに・・・この傷は、私の一部です。」


毅然とした態度に、潤んだ瞳は不釣合いだと思ったが、アタシは大いにそそられた。



・・・まさか、このアタシを試してるつもりだろうか?


”この傷ごと、私を奪えるか”と。


その挑発に似た、甘い誘いに、アタシは自ら飛び込むように葵のYシャツのボタンを外し、手を滑り込ませる。

さらりとした肌に、時々、傷の痕の感触が指の腹に触れる。




「・・・葵、アンタ・・・ここに来る前に、シャワー浴びただろう?」

「・・・ぃ・・・いけませんか・・・?」


アタシの膝の上に座った半裸の葵が、身をよじらせながら、答える。


「・・・別に?」


薄明かりが、ヤツの右肩と右肩から左腰へと走る切り傷を照らした。


「…単に…汗、かいちゃったから、で…ぅ…さっぱりしたくて…。」


アタシは、その傷に唇をつける。


「・・・いや、そんな事はどうだっていいさ・・・

ただ、身体を洗うにしても、髪の毛乾かすのにしても・・・随分と、時間がかかったもんだな、と思ってね・・・。」


傷痕を舌で舐め、Yシャツを下へと卸し、下着のホックを外した。


「・・・そ、そんなに・・・待たせるつもり、は・・・」


赤アタマ(葵の事)にしたら、気を遣ったつもりなんだろう。


「・・・・・・随分、念入りに隅々まで洗ってくれたんだと思うと、こっちはありがたいよ・・・。」


アタシがそう言うと、葵はこちらを振り返って、ムキになって否定した。


「だ、だから…っ…それは、そういう意味じゃ…」


アタシはアタシで、まだ乾ききっていない葵の赤い髪の毛の根元から、指先で髪の毛を軽くすいた。

2本ほど、赤い髪の毛が、はらりと床に落ちた。


「…そういう意味って…フフフッ…どういう意味だい?」

「・・・ぅ・・・。」


軍人出の頭が固い上に、初心な葵には、アタシがこのテの話をちょっとするだけで、面白いようにコロコロと表情が変わる。

・・・可愛いもんだ。

人に何かを教えるのは、タダ働きしてるみたいで、ただ面倒だったんだが。

こういう事を吹き込むのは、楽しくて仕方が無い。


一方、葵はそれどころじゃないらしい。

顔はすでに真っ赤になって、アタシから必死に目をそらそうとしている。


・・・本心を悟らせまい、と?

面白いじゃないか。その本心を引きずり出してやる・・・。


アタシは左腕で、ヤツの腰をしっかりとおさえ、右手の小指でワザと、ゆっくりと下着の肩紐を取り払う。

さすが、洗いたて。スベスベの肌だ。滑り落ちるように肩紐は簡単に落ちていく。

それに、いつも身体中についている隠し武器らしいモノも見当たらない。


「・・・でも、これって・・・こうなるって事、わかってて来たって意味にも取れるよな?」


そう言いながら、右・・・左と、肩紐を取っ払うと、葵はやや前かがみになって、右手で床に落ちそうな下着を抑えた。

更にその下からアタシは右手を滑り込ませ、押さえている邪魔な葵の右手を取り払い、胸に触れた。


「・・・・・・・どうとでも、好きに、判断したら・・・いいじゃないですか・・・。」


アタシがどう判断するのか、解り切ってるクセに。

・・・いや”そう判断して欲しい”んだろうな。ヤツは、アタシの勝手にして欲しいんだ。


・・・まったく・・・こんな時にまで”素直になれない”ってのは・・・人生、損するよ、と思わず言いたくなる。


アタシは、鼻で笑って左手で、葵のスカートのホックを外した。


「・・・じゃあ、遠慮なく、そうさせてもらうよ。・・・こっち向いて座りな。」


葵は立ち上がった途端、ストンとスカートが床に落ち、葵は振り向きもせず、アタシに聞いた。


「・・・・・どうして?」


「キスしたいから。」


正直にそう言うと、葵は振り向いて、アタシがヤツを引き寄せるよりも先に、アタシの上に座り、アタシの首に両腕を回した。


そのまま、顔を近付けてくれたらもっと嬉しかったんだが

アタシと目が合った瞬間、葵はピタリと動きを止めて、視線と顔を横にずらした。



「・・・・・。」

「・・・・・。」



・・・・・・どうも、調子というか・・・雰囲気崩れるな、と思う。


「・・・なあ、葵・・・」

「・・・なんですか?」


こっちを向け、とは言わずアタシは聞いた。


「・・・まさか、とは思うが”まだ恥ずかしい”とか・・・ヌかすんじゃないよな?」

「は、恥ずかしいですよ!決まってるじゃないですかッ!ダメですか!?」


・・・はあぁ〜あ。やっぱり、な。溜息も出るってもんだ。

よくもまあ、毎度毎度、同じリアクションが出来るもんだ・・・。


「はあ・・・そうムキになるなよ・・・あと、人の顔の傍で、色気の無い大声出すんじゃないよ。」

「い、色気があったら、良いんですかッ!?」


「ああ、大歓迎だね。」

「・・・・・・。」


アタシのその一言で葵は沈黙した。呆れたというか、反論する言葉を失った、という表現の方が相応しいだろう。


「・・・結構、イイ声してるよ?アンタ・・・アタシは、アンタの声・・・好きだけどねぇ。」

「や、やめて下さい…そういうの…」


そう言いながら、背けた顔を赤くする。

そういう反応をするから、ますます興味をそそられるんだ。


「・・・だから、どういうの?」


耳元でそう囁きながら、まず、上半身に中途半端についているYシャツと下着を剥ぎ取って、空のワインの瓶の横にばさりと放った。



「・・・・・・やっぱり、まだ・・・恥ずかしいんです・・・こういうの。」


そう言って、折角取り払った上半身を腕で隠す。

アタシは、その手首を掴んで言った。


「・・・一度、アンタには徹底的に、理解してもらう必要がありそうだな。

・・・その為の・・・努力っていうの?…まあ、してやるからさ。」


「う、上から目線の努力って・・・大体、徹底的に理解って何を・・・!」


「・・・”こういうの”が、たまらなくイイってコトを、さ。」


そう言って、アタシはポケットから手錠を出すとそのままヤツの腕にガチャリとはめた。


「ま、また手錠!?」


驚く葵の左腕も捕まえて、手錠をしっかりとはめる。


「・・・大好評につき、アンコールで。」

「だっ、誰も好評価してませんし、アンコールもしてませんッ!・・・あれ、痛かったんですからねっ!?」


「あぁ、そ。」


アタシは笑いながら、葵のネクタイを持って、ヤツを強引にベッドへと引きずり込んだ。

ドサリという音を立てて葵は、アタシのベッドに倒れこんだ。


そして、すぐにアタシは手錠の鎖を持ち上げ、ベッドの上にネクタイで結びつけた。

これで葵の腕は常に上に上がった状態で、固定される。勿論もがいても、無駄。


「・・・ちょ、ちょっと・・・な、何を・・・」

葵は、アタシの手にしている、アイマスクに顔を引きつらせた。


「・・・見ての通りの品物よ?ネズミに見えるぅ?」


おどけてそう言うと、腕の自由を奪われたままの葵は、起き上がる勢いで反抗した。


「ば、馬鹿言わないで下さい!一体、貴女は私に、何をする気なんですか!?」


「・・・まあ”ナニ”は、するけど。・・・詳細は聞くより、感じた方が理解は早いぜ?葵。」


あくまでも、正直に答えてやった(つもり)。


「・・・な・・・何言ってるんですか・・・と、取って下さい!手錠かアイマスクどっちかだけでも・・・」


アタシはコートを脱ぐと、葵の上に乗って低い声で囁くように言った。


「アンタには、いつも先に奪われてる。しかも、今日は唇も奪われたんだ。

 ・・・だから、腕の自由くらいアタシに奪われろ。」


「今日の、唇(ソレ)は・・・認めます。・・・でも・・・私、いつも・・・貴女の何を奪ってるんですか?」



・・・・・・まいったね・・・無自覚だ。



「・・・今に解る。」


アタシは、そう言うとアイマスクを葵につけた。

もっとぎゃーぎゃー騒ぐかと思ったが、アイマスクをつけた途端、葵は唇を噛んだまま、黙った。


「そんなに強く噛むなよ・・・キスが、血の味になる。」


アタシはそう言って、唇で触れた。

力んでいた唇周辺の筋肉が弛緩して、アタシを受け入れていく。

唇同士で挟み合いながら、互いの柔らかいソレを味わっていく。

もっとも、視界の塞がれた葵は、まるで唇の感触を”確かめる”ように、ぎこちなく唇を動かすばかりだった。

だが、それがアタシにはたまらなく良かった。

少し唇を離そうとすると、手錠の鎖が音を立て、葵がアタシの唇に触れようと身体を起こそうとする。

額をぶつけそうになりながらも、アタシは顎に手を添えて、歯の衝突だけは防いでいた。



やがて、どちらともなく舌が出て、どちらかの口の中に入り込んでは、絡み合った。

キス一つで、どうしてこんなに夢中になるのかは、不思議な感覚だった。

葵の自由と視界を奪っている、この悪趣味なシチュエーションに興奮でもしてるんだろうか。


・・・フッ・・・悪趣味でも、構うものか。


この感触を手に入れる為に。

この女が、どうしようもなく、欲しくて。


・・・・アタシは、ここにいる。




「・・・ぅん・・・は・・・ロベ、リア・・・?」


唇を離して上体を起こすと、葵はアタシを探した。

アタシは、それを見下ろしながら、人差し指で顎から喉へ、鎖骨の間を通り、胸骨まで滑らせる・・・


すると、葵は「ひぅッ!?」と、妙な声を出し、息を飲んだ。



「・・・ロベリア・・・いい加減・・・これ、取って・・・。」


”取って”、とはどっちの事だろう。


手錠を取って、両腕の自由を得たいのか。

それとも、暗闇に包まれた世界から、視界を取り戻したいのか。


息を弾ませて、そう言う葵をアタシは見下ろしながら、今度は両手で、両サイドの腰からあばらまで掌で撫で上げた。


「・・・は、ぁ…っ・・・!?」


手錠がまたガチャリと音を立て、腰が浮き上がり、身体中に刻まれた傷と浮かび上がる筋肉の線が、くっきりと見えた。


さすが軍人。鍛えた身体。

程よい筋肉と脂肪のバランスのイイ身体。それにあちこちに刻まれた過去の傷が、コイツの人生を少しだけ物語る。


両腕の自由と視界を奪われ、それでも不安げにアタシを探す葵の様子と、いつもは隠しているその傷が、露わになっている事・・・


それが更にアタシを誘惑した。


・・・もう、この身体に慣れちまった、というよりも・・・これが葵そのものなのだから、そのまま受け入れ、そのまま触れたいだけだった。

”そこはダメだ”の、”それは嫌だ”のという台詞は聞き慣れていたし、無視を決め込んでいた。


・・・だが、アイマスクと手錠の相乗効果のせいか、葵はいつもの台詞を全く言わなかった。


『見えない』からだろうか?

アタシは、それを不思議に思いながらも、洗いたての葵の身体に舌を這わせた。


「あ・・・ぅ・・・何・・・?ねえ・・・何?・・・どこ・・・?」


・・・葵はそんな台詞を吐き、手錠はガチャガチャと音を立て続けた。


もしかして、アタシを・・・まだ探してるのか?

こんなに近くで、アンタの体に触れているというのに。

どうして、探す必要があるんだか。と思いながらアタシはフッと耳元や二の腕に息を吹きかけて、胸に唇をつけたり、軽く噛んだりした。


・・・もし、アタシを探してるんだとしたら・・・もう少しこのまま探してもらおうじゃないか、という”イジワル心”が顔を出していた。


葵の首筋からは、葵の使っているシャンプーの匂いが強く嗅ぎとれた。

そのまま、肌に舌を這わせ、鎖骨をなぞり、掌でそっと胸に触れた。

いつもと違うシチュエーションに葵も何か感じているんだろうか、心臓の音がいつもより激しく伝わってくる。

胸の先に指先で軽く触れると、短く葵が啼いた。


手錠はまたガチャガチャと音を立てて、葵は外せ外せと言ったが、アタシは無視を決め込んだ。


今度は舌先で軽く触れ、そして一気に口に含むと、葵の口からは堪えきれずに搾り出すような声が。

それは、部屋中に響き、声の主はいつもなら手で防げた筈の声を、必死に歯と唇で堪えていた。


それを、アタシはずっと見ていた。意地が悪いな、と自分でも思いながらも、顔は笑っていた。


防ぐ必要なんか、そもそも無いじゃないか。

はしたないだの、なんだの関係ない。アタシは男じゃないんだ。女に幻想なんか抱いちゃいないさ。

激しく喘ごうが、”もっともっと”とせがもうが、アタシは、それがアンタなんだと受け入れてやるよ。


・・・変に繕ったり、隠されたり、抑え込まれるのが、アタシは嫌いでね。


初めてのシチュエーションに戸惑いながらも、葵の身体はいつも以上にアタシの手に、唇に、指に、舌に反応した。

傷痕を舐める度に、顎を天井に向けるのがたまらなく愛おしかった。


アタシはそろそろかな、と体を離した。


すると。


「・・・・・・ねぇ・・・ロベリア・・・ど、こなの・・・?」


今度は、泣きそうな声で、葵が尋ねた。少し体を離しただけじゃないか。

まだ、探してるのか?・・・そんなに不安を与えるのか?アイマスクって。


「・・・ココにいるに決まってるだろ。ほら・・・。」


そう言って、腹の上に右手を置いてやると、葵は、はあっと息を吐いた。

一応、アタシの位置を把握して安心したのも束の間、今度は身を縮ませて太腿同士をつけようとした。


・・・ソレ・・・下半身は触らないでって意思表示のようだが、それはアタシには”触ってくれ”と言ってるようなものだぞ。


「・・・葵、足もう少し開いてくれたら、どっちか取ってやるよ・・・。」


アタシがそう言いながら、徐々に腹から下へと右手を滑らせると 「・・・・・どうして・・・こんな事・・・」 と葵が呟くように聞いた。


・・・こういう時のコイツの涙声に、アタシは少しだけ弱い。


「・・・アンタは、すぐに声を抑えようとする、だから腕の自由を奪った。

それから、アンタは、すぐに恥ずかしがって、アタシから視線を逸らす、だから、視界を塞いだんだ。


 ・・・・・・・一応、こんな理由なら、納得してくれるか?」


とそれらしい台詞を言ってはみるが。


「・・・・・本当は・・・?」


流石。

葵という女は、伊達にアタシの隊長をやってない。

というか・・・よく、解ってるじゃないか。そこまで解ってるなら、後は・・・




・・・宣言通り、徹底的に教え込むだけだ。




「・・・本当は・・・アンタの全てを奪いたいからさ。それだけだ。」




そう言って、アタシは強引に足をこじ開け、足の付け根に唇をつけ、舌を這わせた。


すぐに葵は仰け反り、声を出した。


今日は手錠付きだ。いつもなら仰け反りながらもアタシの頭を掴もうとするんだが、生憎それができない。

葵は今、視界は遮られているから、とアタシはワザと音を出しながら、舌を動かし続けた。


聴覚でアタシを感じればいい。アイマスクで視界を奪ったのは、その為に必要だった。

そして、想像すればいい。アタシが、今自分の身体のどこに何をしているかを。


そうすれば。


「・・・は・・・あぁ・・・う…ッ…くぅ…あぁ…ッ・・・!」


声が、一段と艶を増した。

口元を抑える両腕の自由は、アタシが奪ったから。


・・・手錠をして良かった、と思った。


髪の毛は引っ張られないし、声が抑え込まれる事も無く、よくアタシの耳に届く。

アタシを感じる葵の声が、よく届く。



やがて、足を閉じようとする葵の力が、抜けていった。

指先で、撫でながらアタシは言った。


「・・・いつも言ってるだろ・・・葵。力は、抜きな・・・」


そう言うと、間髪入れずにアタシは、強引に葵の中に侵入した。


「…う…あ…あぁ……!」


叫びに似たような声を出しながら、葵はまた腰を浮かせた。

アタシの指は葵に、締め付けられるように包まれる。・・・今まで、ここまでの反応は無かったのに。


「・・・・・・やっぱり、こういうアブノーマルの方がイイのか?」と聞いてみるが。

「・・・ち、ちが・・・ぁ・・・あぁ・・・ぁ・・・!」


一応、否定はするのだが、声が尋常じゃないくらい漏れている。

まあ、確かに・・・いつもより、刺激は強すぎたのかもしれない。


試しに「・・・葵、他にして欲しい事あったりする?」と聞くと、すぐに返事が返って来た。


「・・・はっ・・・ぁ・・・は・・・・・外して――ッ!!」



息を弾ませ、叫ぶように葵がそう言った。よく見ると、アイマスクから雫が漏れている。



・・・泣かせてしまったようだ。



達するまでこのまま、と思っていたアタシだったが、泣くほど嫌がってるみたいだし。

外してやる事にした。


アタシは、観念して「・・・どっちを、だ?」と聞いた。


「…手錠…っ!」


そういえば、さっきからガチャガチャ煩かったな…と思っていた所だった。

良くみると、葵の手首は赤くなっていて、所々痣も出来ていた。・・・これはあんまり良くないな、と思った。


「・・・わかった・・・今、外す。」


アタシは、惜しみながらも手錠を外した。

すると。


「・・・悪い。痛むかい?」と聞いたアタシに対し、葵は無言でアイマスクを自分で剥ぎ取ると、ベッドに叩き付けた。


「・・・お?」


葵は、すぐにアタシを押し倒した。

あまりにも突然の、意外すぎる葵の行動にアタシは驚き、少しだけ焦った。




「・・・ゆ・・・ませ・・・よ・・・」



全裸の赤い髪の女は、涙目でボソリと言った。

聞き取れなかったアタシは「・・・は?」と聞きなおした。



「・・・絶対、許しませんよ・・・こんな・・・こんな事して・・・っ!」



そう言って、アタシの顔にどんどん近付いてくる。



「・・・そんなに怒る事ないじゃないか。手錠なら一回経験済みだ・・・しっ!?」



言い訳なんて聞きたくない、と言わんばかりに、唇が塞がれた。


「人の、気も・・・知らないで・・・!」

「・・・んぅ・・・!」


葵にしては乱暴すぎる位、押し付けられた唇と舌のキスは、激しいモノだった。


「…貴女は・・・いつもッ・・・・・・そうやって・・・!」


怒られてるんだか、求められてるんだか、よくわからない。

息だけが、どんどん上がっていく。


「・・・許さないって・・・こんな・・・激しいキスしてくれるんなら・・・許してくれなくったって結構さ。」


その後は、2人無言で唇を重ね続けた。体をよじって、ベッドのシーツが皺くちゃになっても、アタシも葵も気にもしなかった。

痛いくらいにアタシの体をきつく抱き締めてくる腕とひたすら求めてくるキスが、心地良かった。



・・・こういう強引なのも・・・嫌いじゃないからね・・・。



長いキスときつい抱擁から解放されたアタシは、聞いてみた。


「・・・ぷはっ・・・はぁ・・・はぁ・・・オマエ、そ、そんなに手錠されるの嫌だったのか・・・?」


「嫌とかそういう問題じゃなくて!外してって言った時に、外して下さいよ!何度も言ったじゃないですか!」


「・・・・・・あ?」


それは・・・どういう意味?手錠はOKなのか?


「繋がれてる間の、私の気持ちも考えて下さいッ!・・・触れられないし、抱きつけないしッ!」


「・・・何?オマエ、それで手錠外してもらいたかったワケ?」


アタシは笑いを堪えて、一応真顔で尋ねた。


「・・・・・・私には・・・だ・・・大事な事、なんです・・・。」

「アタシに抱きつくのが?」


「・・・そう、です・・・。……普段、出来ないし……好き、だから…。」


確かに、普段や、真っ昼間からこんな激しい事は、出来ないなぁ。


「・・・へえぇ・・・好きなんだ?抱きつくの。」

「………好き、ですよ…だって…」


「ん?」

「だって…私の傍にいてくれるって、言ってくれた人に、触れていたいって思うのは…いけない事、ですか?」


葵の答えにアタシは笑って答えた。



「・・・いいや。」


やっと素直になったな、とアタシは笑った。


”なかなか、可愛いところもあるじゃないか”と言い掛けたアタシだが、まだ肝心な事が済んでない。



「なら・・・いくらでも抱きつきな。こっちも・・・もう離す気は、ないよ。」


そう言って、アタシは起き上がると今度は、アタシが上に、葵が下になった。


「・・・・あ・・・続き、ですか・・・?」


「勿論。・・・葵。力、抜きな・・・・・・って、この台詞、あんまり言わせないでくれよ。」


「・・・・・・はい・・・。」


アタシが笑ってそう言うと、葵は深呼吸してアタシの首と背中に腕を回した。


目が合って、キスをしようかと顔を近付けたが、アタシは寸での所で止め、こう言った。



「ああ・・・最初に言ったけど・・・今日は、徹底的に。・・・もう全部、奪うから。」


「・・・え・・・全、部・・・?」



葵の目が、見開かれる。

アタシは、こういう時のヤツの馬鹿面も、嫌いじゃない。



「・・・ああ、全部さ。上から下まで・・・まあ、前から後ろまで、とも言うけど。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え!?」


長い沈黙の後、確かに葵の目の奥には『もしかして』という文字が見えた。


「・・・あー良かった。意味、通じたみたいだな・・・通じなかったら、前だけで止めようかと思ってたんだ。」


「ちょ、ちょっと・・・ま、まって・・・!」


「・・・好きなだけ抱きついていいからさ。・・・アタシの事、絶対、許してくれないんだろ?それに見合うだけの償いをしないと・・・ねえ?」


アタシはそう言って、薬指で二度目の初めてを奪いにかかった。・・・よく、ほぐしておかないと、後々大変そうだからな・・・。


「・・・そ、そういう問題じゃ・・・あ・・・ッ!?ちょ、ちょっと・・・そ、そっち・・・違・・・!」

「何も違わないさ。”そっち”も・・・”こっち”も。」


”こっち”に人差し指と中指を挿れながら、薬指で少しずつ”そっち”への侵入を試みる。

力を抜けと何度言っても”そっち”は初めてなんだから、まあ苦労はするだろうとは思ってた。


「・・・い・・・痛・・・・・ぁ・・・・何、コレ・・・何、ですか・・・コレ・・・ッ!ねえ・・・ッ!ロベリアァー!」


”何だ”と・・・尋ねられても困る。

アタシだって、女にこんな事するの初めてなんだし。


「・・・・・・さあ?・・・なんだろうね・・・この指が完全にアンタの中に入った時、わかるんじゃない?」



「わ、解るわけ・・・なっ・・・あッ・・・あぁ・・・ッ!!」



どうしてこんな事をするのかって?

理由が無いとしちゃいけない事をアタシらは、しているのか?



それでも納得出来ないと言うのなら、それらしい理由をつけてやろうか。

アンタは、アタシが好きで。・・・アタシも同じ。


それから・・・・・・・・・やっぱり、面倒だね・・・いちいち理由を付ける、なんて。バカらしい。



 『お互いが、したいから、するだけ。』


・・・それで、いいじゃないか。違うかい?



「・・・だから最初に言っただろ?・・・アタシ・・・徹底的に、理解するまでやるって・・・!」


「あ・・・ぅ・・・ああぁ・・・!!」



葵は好きなだけ、アタシに触れて、抱きついた。

アタシは宣言通り、徹底的に奪い続けた。

葵の涙を舌で拭いながら、キスをかわし、アタシは指が持っていかれるんじゃないかと思う程、葵を感じた。




・・・葵は確かに、ここにいる。そして、アタシを見ている。

例え、葵が、また空や地・・・どこか遠くを見つめても、このアタシが何度でも連れ戻す。





『 ・・・こんな私でよければ・・・ずっと私の世界に・・・傍にいて下さい。 』





言われなくとも、アンタの傍にいてやるさ。

・・・というか、オマエが・・・アタシの許可なく、勝手に傍から離れるんじゃないよ。



「いいか?…アンタは…アタシの傍にいろ…!…アタシもアンタの傍に…腐る程いてやるから!

そして、何度でも、何度でも・・・アンタを抱くからな・・・!


だから・・・アタシを、アタシだけ見てろ・・・!」



「……くぅっ…ぁ・・・ロ…ベ、リア…あぁ…!!」




・・・返事の代わりに、葵はしっかりとアタシを捕まえ、引き寄せ・・・キスをした。



そのまま、アタシと葵は動き、求め続けた。・・・そういう本能のままに。













「・・・葵、痛むかい?」

「・・・・・あんまり、ソレ聞かないで下さい・・・。」


(・・・という事は、痛むんだな・・・多少は。)


2人で同時刻シャワーを浴びるのは、珍しい事だった。


大抵どっちか眠っている間に、どっちかがシャワーを浴び終わっている事が多かったからだ。

・・・今日はなんだか、目が冴えていた。それは葵もだった。


互いに体を洗いながらも、チラチラとアタシは葵の身体を見ていた。

なるべくキスマークは残さないようには・・・してたんだが、途中からあんまり記憶が無いせいか、葵の首筋にくっきり残っている。


多分、後で葵のヤツ、怒るだろうなぁ・・・と思っているアタシの横で、突然葵がぽつりと言った。




「・・・あの、ロベリアさん・・・よく・・・指・・・洗っておいて下さいね・・・それから、あんまり勧奨しませんよ・・・あんな事・・・。」


隣でボヤく葵の顔は、まだ真っ赤なままで、アタシをジトッとした目で見ている。

・・・さっきはあんなに、可愛い表情だったのに。よくもまあ、表情がコロコロと変わるもんだ。


それに・・・。


「・・・よく言うよ。あんなコトで、あんなイイ声出されちゃ、こっちがたまんないよ。今までで・・・一番だったんじゃないか?」


そう言ってアタシは、笑いながら、掌から泡をフッと葵へ吹き飛ばしてやった。


「!ちょ、ちょっと・・・ソレ、ど、どういう意味ですかッ!?ロベリアさん!」


「オマエは馬鹿か?そのまんまの意味に決まってるだろ?

ああ・・・アンタこそ、よーく洗っておきなよ。・・・・・・また、いつするか、わかんないから。」


「・・・だ、ダメッ!もう、絶対ダメッ!あ、あんなコト・・・絶対・・・ッ!」


「ククク・・・言ってろ言ってろ・・・”あんなコト”は、アンタとしか、出来ないんだからね・・・。」


「・・・う、う――…ッ・・・・・・もうっ知らないッ!」



泡に包まれながらアタシは、笑った。






ー candy lips after ・・・ END ー


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あとがき



・・・なんか、この手のSSを久々に書くと・・・もう内容が・・・色々ギリギリアウトな気がしまーす。(苦笑)

大きなオトモダチには、解りますもんね!詳しい説明しなくとも!直接表現なんかなくても、ね!?(必死?)

ほんのちょっと濃ーいソフトSMを交えながらの・・・ちょいエロSSです。どうにか直接表現を避けながらの・・・ちょいエロSSです。

直接表現が無いからこそ、余計エロいよ!と一部の方には、大変ご好評なんですが・・・(笑)

『CRAZY GIRL』シリーズ(?)はずっとこんな感じで、ロベリアさんが、葵を戦闘で死なせるくらいなら、アタシが殺す!的な感じで攻めてます。

・・・だからでしょうね・・・時々、ソフトSMっぽくなるのは。

修正しましたが・・・書いてる本人なんですけど、読み返すたびに、やっぱり木っ端微塵になりたくなりますね・・・(笑)