[ 突然すぎて堕天した  ]







「えーと…津島さん?」

「・・・・・・・。」


「津島善子さん、でしたわよね?」

「・・・・・・・。」


「記憶違いかしら?津島善…」

「善子って呼ばないで!ヨハネよ!堕天使ヨハネッ!」


「……そうでしたの。わかりました。…で、善子さん?」

「わかってないじゃないのよッ!」


私は堕天使ヨハネ・・・こと、津島善子。

…ええ、ええ、ええ!解っているわよ!理解していますとも!!

堕天使なんていないって!でも、好きなのよ!堕天使が!!

いいじゃない!!こういう設定のアイドルがいたっていいじゃない!!

仕方ないじゃない!堕天使が好きなんだから!!


…今、私はスクールアイドルAqoursに所属しているの。

今日は、メンバーの黒澤ルビィから借りたμ'sのDVDを返しに来たんだけど…



(…ダイヤさん、ハッキリ言って苦手なのよね…。)


ルビィのお姉さんこと、黒澤ダイヤ。学校の生徒会長。

ルビィと違って、いっつもツンツンしてて、お嬢様を絵に描いたようなお嬢様キャラ。


私を見る目もいささか厳しい気がするわ…。

ああ、どうせ、妹に悪影響を与える女!とか思ってるんでしょうよ…。



「家に何の御用ですの?」

「ルビィに借りてたDVD返しに来たの。」


私は、バッグの中からDVDを取り出し、表紙を見せる。

本当は、学校でも良かったんだけど、ルビィはμ'sの大ファンだし、早く返してあげたかったから。

それを見ると、ダイヤは淡々と私に家に上がるように言った。


「DVD……ああ、そうでしたの。では、中へどうぞ。」

「…あ、どうも。お邪魔します。」


(やった!あっさり、難所を通過したわ!)

ダイヤって、どうも苦手だから、ルビィにDVDをとっとと返して帰ろうかと思ったけれど、これはこれで面白いわね。

ああ、玄関広〜い!玄関で魔方陣3つは書けるわ!あのツボとか高そう…やっぱり、お金持ちって感じ。


「…ルビィも一言言ってくれればいいのに。」

ブツブツ何か呟いているダイヤの後ろをついていく。

…ああ…やっぱり、いいなぁ…名前がダイヤとかルビィとか…。

名前、凄くインパクトあるし、一瞬『アレ?キラキラネーム?』って思わせておいても、本人目の前にすると、あの名前が似合っちゃうから良いわよね。


私なんか…善子…。いいえ!私はヨハネ!ヨハネよ!!(と言い聞かせてみる。)


「こちらに、どうぞ。」

「あ、どうもどうも…。」


(…あれ?)


襖を開けたダイヤの後ろについて、中に入ると…あれ?意外と落ち着いたインテリアばっかりじゃないの。

畳の部屋に、シックな机。本棚には難しそうな本がぎっしり。生け花が置いてあって、掛け軸(文字は読めない)が壁にかかってるし…。

純和風…!ルビィも渋い趣味してるのね。

もっと、スクールアイドルグッズがズラズラ〜と並んでて、ピンク一色!とか、無駄に大きいクッション〜とか…色々あるかと思ってたのに。



「お座りになって。」

ダイヤが出した座布団に座る。

「あ、はい…。」

ダイヤは、何故か部屋を出る事なく、私の真正面に座った。

まあ、妹の部屋に客を放置って、ダイヤはしないわよね…。


「で、どうでしたの?」

「は?」


「DVDですわ。ご感想をお聞かせくださらない?」


(何故、ダイヤに聞かせなきゃいけないのよ…?ま、いっか…。)

ダイヤもスクールアイドルが好きらしいし。



「もう、最高!朝までDVD見るって千歌に誘われた時、眠くて最後までよく見ていられなかった所も今回はちゃんと観られたし!

曲のイメージに振り付けがちゃんと合ってて、尚且つ一つ一つ手の仕草が可愛いのが良かったわね。指の角度一つでも印象って違うのよね。

アレも、自分達で考えているのよね!あの位、私もやってみたいわ!」


という私の感想に、ダイヤはうんうんと嬉しそうに頷く。


「よく観ていたようですわね。」

「まあね〜。なんだかんだ、ヨハネもこういうの好きだから。」


私がそう言うと、ダイヤはそれは良かった、と言ってニッコリと笑ってくれた。


(な〜んだ。やっぱりダイヤってスクールアイドルが大好きなんじゃない。)


「…そうやって、もっと素直になれば可愛いのに。」


…そう、自然に口をついて出ていたのだ。勝手に!ヨハネの口がスライディングしただけなんだからぁ!!


「・・・は?」


ダイヤの表情が一瞬にして固まる。

(あ、ヤバイ!!)と思い、咄嗟に私はフォローのつもりで…。


「そ、そうやってμ'sの話している時の会長って、嬉しそうだし、なんていうか、可愛いんですよッ!あはははは!!」


「…か、かわいい…?」

ダイヤの顔はピクピクと引きつっている。


(…マズイ、地雷踏んだ?)


「いや、あの…その〜ヨハネが堕天使ならぁ、ダイヤは天使?みたいな〜?」

「てん・・・ッ!?」

ダイヤは言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にして、プルプルと肩を震わせている。

・・・ああ、天使は言い過ぎた・・・ッ!!


「…あ…あッれェ〜〜?ルビィ、遅いなぁ〜?地表に埋まってるのかなぁ〜?」

「・・・・・・・・・。」


ヤバイ…ヤバイわ…。

ダイヤの奴、俯いて、黙り込んでる…!

今にも怒り出しそうなダイヤは、悪魔に覚醒寸前に違いないわ…!


嗚呼、一体、ルビィは何やってるよ!姉を止めて、私を助けなさいッ!!


「あの。」

「ひゃい!?」

びくびくしつつも、私は顔を上げて答えた。


「…前々から聞こうと思ってたのですけれど、善子さんはどうして堕天使キャラを…?」

「ヨ・ハ・ネ!よッ!堕天使の話をするなら!ヨハネ、と呼んで頂戴ッ!!」


・・・嗚呼、やってしまった〜…!どうして、私はいつもいつも、このキャラに乗っ取られてしまうの・・・!?

今、ヨハネ呼びに拘っている場合じゃないのに…!!


「…もしや…善子という名前、お嫌いなの?」

ダイヤの顔が少し険しい。

私は少し、考えを巡らせる。


(嫌い…ん〜嫌いっていうよりは…。)


「ん…嫌いっていうか…なんか…善子って、日本人らしいっていうより、地味っぽくて。大体、堕天使っぽくないでしょ?」

「でも…」


「ああ、勿論!親がつけてくれた名前だから、ダッサィ〜あり得な〜いとか。全否定って訳じゃないわ!

…でも…やっぱり、ちょっと…ね…。アイドルっぽくないっていうか…『堕天使・善子』って、なんか格好つかないじゃない。」


私が理由を言うと、ダイヤはほっとしたように言った。


「…安心しましたわ。私、てっきり親御さんから頂いた名前が嫌でヨハネと名乗っているのか、と。」

「いやいや、そこまでは…。私から言わせたら、そっちの方が羨ましいわよ。ダイヤとかルビィとか…。」


そう言うと、ダイヤは目をパチパチさせてから、目を伏せて小さく言った。


「…私は、好きですわよ…善子。」

「…あ、ありがと…」


・・・ヤバイ・・・。

何がヤバイって・・・!


普段、好意的な台詞を言わないダイヤから『好き』だとか言われたら、すごいギャップを感じてしまうからだ。


これが、ツンデレの破壊力、なのね・・・!勉強になるわ・・・!



「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・。」



そして、訪れる…気まずい沈黙。


(もうッ…ルビィったら…何やってるのよ…!!)



「…あーぁ…それにしても、ルビィ遅いなぁ〜。DVDせっかく返しに来たのにな〜。」


すると、ダイヤが口を開いた。


「…そのDVDは、ルビィのでは、ありませんわ。」

「へ?」


「私のですわ。」

「………マジ?」


「マジですわ。ついでに言うと、ルビィは午後イチ、国木田さんと出かけました。」

「…なッ!!!なんでそれを早く言わないのぉ!?」


私は大声で全力ツッコミをした。

しかし、ダイヤはあっさりとこう言った。


「一度、貴女とじっくりお話をしてみたかった、と言えば良いのでしょうか…。」


そんな理由を言われたら、私は反射的に、こう問い返してしまう。


「な、なんで!?お堅い生徒会長が、堕天使キャラのスクールアイドルと何を話すっていうの…!?」



「・・・なんですって?」

「あ・・・!」


ダイヤの纏っていた比較的穏やかな空気が途端に変わる。


ああ、怒る…!今度こそ怒る…!

黒澤ダイヤが、怒る…!!


きっと『こんな人が、妹とユニット組んでるなんて、片腹痛いですわッ!!!』って怒る…!!


「いや、だだだって!私…!」


「どうして、私が貴女とお話をする事が、そんなに疑問ですの?」


「だって!私に、きょ、興味ないでしょ!?共通点もないし…第一…。」



「第一、なんですの?」

「…ルビィに…大事な妹に…悪影響を…与える人間とは、仲良くしたくないでしょ…?」


以前、堕天使キャラを6人でやった時、ダイヤはルビィの衣装を見て、もの凄く怒ってたのを、私はよく覚えてる。

…ああ、ホント堕天使(こういうの)嫌いなんだなって思ってた。



「・・・はあ・・・。」


深い溜息をつくダイヤ。


「ほら、やっぱり・・・。」

「ああ、いえ、そうではありませんわ。誤解なさらないで、善子さん。」


否定はするものの、やっぱり堕天使呼びはしない所をみると、やっぱり嫌いなんじゃないの。


「…”ヨハネ”だってばぁ…。」

真っ向から否定されると、流石のヨハネだって落ち込むわよ…!


「確かに、ルビィの堕天使キャラは、今でも脳裏に焼きついてますわ…正直、ショックでしたわ。…けれど。」

「…けれど?何よぉ!」


「それで、貴女を嫌う理由にはなりませんわ。第一、私は貴女に興味があ………コホン。」


・・・・・お?


「ん?今、興味があるって言いかけた?ねえ?」

黒髪。

口元の黒子。

高慢。


・・・確かに、堕天使の要素、持ってる・・・!!



「な、なんでもございませんわ!そんな嬉しそうな顔で見ないで下さる!?」


ダイヤは、急に顔を真っ赤にして、大声を出した!

ああ、もしや・・・!


「もしかしてもしかして!!会長も…ダイヤも、堕天したかった、とか?」



「したい訳ないでしょう!?」






・・・・・・・。




「・・・そんな強く言われたら、マジ傷つく・・・。」

「あ…ええっと…つまり、ですわね…。私は…津島善子個人を知りたかった、という事で。」



「どうして?」

「…………。」



「やっぱり、堕天使に興味が……なぁんだ…くっくっく…そういう事なのね!」

「な、なんですの…?急に声色を変えて…!」




「ああ、良いのよ、もう良いのよ、黒澤ダイヤ!貴女の本心はもう、この堕天使ヨハネが感じ取りました!

さあ、安心して、このヨハネの胸に……堕ちてもいいのよ?」






「馬鹿なんですの?(真顔)」




真顔。ダイヤは、顔色一つ変えずにそう言った。



「ちょっと!ドストレート過ぎるわよッ!!」

「ごめんなさい、つい。(真顔)でも、私の本心、本当にお分かりですの?」



「ええ!ええ!わかったわよ!(泣)」

(堕天使キャラの私を馬鹿だって思ってるって事がね!!)


帰ろう。

ルビィには、お姉さんに渡しからって言って、とっとと帰ろう。



「そう…。でしたら…”もう良いですわね。”」


スッと、またダイヤの雰囲気が変わる。

今度は、怖く…ない…?


「な・・・に・・・?」


ダイヤは、正座を崩し、四つんばいになって、私の方へ迫ってくる。

一気に距離を詰められると、改めてダイヤが美人だという事を思い知らされる。

一般人(堕天使)とお嬢様(悪魔)…ああ、この構図…儀式的…!いや、そうじゃなくてッ!!



「善子さん。」

「――ッ!」


ち、近い!予想以上に近い!

この至近距離で怒られる?もし怒られたら、たまらないので、私はどんどん後退する。

「あ、ホント…ご…ッ!」

後退。

「ご、ごご…!」


後退。


「ゴメ…!!」


後退…出来ない。

壁に背中がついているから。


「ちょ、ちょっと…タイム!ご、ごめん!ごめんなさいッ!!」


横に逃げようとした所・・・”バンっ”とダイヤの腕がその先を塞いだ。


「ひ、ひいッ!?な、なによぉ!こんな事しなくても、そんなに気に入らないなら、私、帰…」



その先の言葉を私は紡ぐ事が出来なかった。

ダイヤが、私の唇まで塞いでいたからだ。



「ふ…っ」


(あれ?)

柔らかい?

ゴチンっていう鉄拳制裁、ではなくて?


「…ん…んん…!!」


(キス、してる…?もしかしなくても…これ…キスって言うのよね?)


突然の出来事に私は思わず、目の前のダイヤの服を掴む。

壁についていたダイヤの手が、私の頭を掴み、もう片方は服を掴んでいる私の手を握る。


掌が、熱い。


「ん…んん…ッ!!」


私の心の準備もまだなのに、唇はどんどんダイヤに蹂躙されていく。

唇を軽く吸ったり、強く押し当てられたり、刺激という刺激が一点に集中する。


ずるずると壁から背中が床に滑り落ちるように、仰向けの体勢になっていく。

ダイヤの手が、私の顎に添えられ、唇が一旦名残惜しそうに離れた。



「……善子さん…いえ、ヨハネ…さん?…と呼べば良いのかしら?」


私の視界いっぱいに、あの生徒会長の顔があって。

少し困ったような…それでいて、満たされているような…表情で、私を見下ろす。


「な…どっちでも…好きに…。」


好きに呼べばいいじゃない、と啖呵を切りたかった。でも、途切れ途切れでしか、言葉が出てこないのだ。


「そう。では…好きにさせていただきますわ。」

そう言って、短いキスを一回。

「…あ、の…ッちょっと、待って…」

私は離れたダイヤの唇に手をあてて、一応壁を作ってみた。

これ以上侵食されたら、ヨハネはもたない。急に、私の心いっぱいに黒澤ダイヤが入り込んできたせいで…私は、もう破裂寸前だ。



「ごめんなさい。突然こんな事をして。今、ルビィがここにいたら、自分をちゃんと抑えられたのに…。

…いいえ、言い訳はよしましょう。私は…本当にまだ未熟ですわ…。」


そう言ったダイヤが、私には辛そうに見えた。



「…あの…。」


私には、突き飛ばす力も無かった。

目の前の人物が、怖かったからとか、キスで腑抜けにされたからとか、そんなんじゃなくて。

このまま待っていたら、ダイヤに何を言われるか、何をされるのかも、知っていた上で。



私は、ダイヤに馬鹿な事を聞いた。


「…もしかして、ヨハネの事、好き、なの…?」



すると、思った事を口にハッキリと出す女は、ハッキリと答えてくれた。


「ええ。」


たった一言。

ただ、真っ直ぐな瞳に偽りは無かった。



「…それってマジ…んッ…!」



よくよく考えてみたら、この部屋はダイヤの匂いしかしないし、インテリアだって、ダイヤ寄りだ。

始めから、私はルビィの部屋ではなくダイヤの部屋にいたのだ。

黒澤家に来た時から、ダイヤは…私を…。


いや……いつから、ダイヤは…私を…?


しかし、当のダイヤは考える余裕も私には与えなかった。

ダイヤの部屋で、私は、そのままキスをされ続けた。

頭も固定されて、私はされるがまま。…妹・ルビィの頭を撫でていた、あの時とは違う。


(ダイヤが、この私の事を好き…?)


てっきり嫌われているかと思っていた。

ダイヤは、冗談でこんな事をする人間じゃないし。

事実、キスをこんなにされているのだ、ダイヤの好意を否定しようが無い。



(…あれ?でも、どうして、私…ダイヤの事、拒否できてないんだろう…?)



女同士なのに。

初めてなのに。

堕天使の儀式でもないのに。


ああ、そもそもこんなに近くにダイヤがいたら、考えも何も整理できないじゃない。

ダイヤが離れたら、考えようかな。




「ただいまー」




…ルビィの声がした。


これで、ダイヤは離れ……ない…?


(ちょっと…妹、帰ってきたわよ!?ダイヤ!)


私を抱きしめるダイヤの腕にぎゅうっと力が入る。

廊下を歩く音が…近付いてくる…!


(マズイ…ルビィに見られたら、マズイでしょ!?ダイヤ!!)


私はたまらず、ダイヤの肩をぱしぱし叩いて、やっとダイヤが離れた。


「…っはぁッ…!!」


まともな呼吸をする私の目の前には…私を真っ直ぐ見つめながら、涙を零すダイヤがいた。

息を飲むくらい綺麗な顔の持ち主は、私を見つめ、やがて襖の方へ視線をやるとゆっくりと立ち上がり、涙を拭いた。


(…泣いて…る?)

私は不思議に思いながらも、起き上がり、服の乱れを直して、座布団の上に座りなおす。


「…お姉ちゃん、ただいまー…あれ?善子ちゃん?」


ルビィが襖をあけて、ひょこっと顔を出した。



「あ、ど、どうも!お邪魔してるわよッ!」

指でいつも通りの堕天ポーズをとり、ルビィに”いつも通り”をアピールしてみせる。

・・・ダイヤは、ルビィに背を向けたまま『おかえりなさい』と一言。

・・・不自然すぎるでしょ!もうちょっと誤魔化すの頑張りなさいよ!どこまで素直なの!?


「善子ちゃん、いらっしゃい!・・・でも、どうして、お姉ちゃんの部屋にいるの?」

「え!?そ、それは…DVDを返しに来たのよ!!うん、用は済んだから帰るわね!今夜は堕天オールナイトの日なの!準備しなくちゃッ!」


私は立ち上がり、急いで部屋を出て玄関へと向かった。


「え?あ…善子ちゃん!?堕天オールナイトって何!?善子ちゃ――ん!?」



後ろから呼ばれたものの 「バスの時間があるからッ!」 と私は走って、黒澤邸から出た。


「はあ…はあ…ッ!」


ダイヤから離れたら、考えがまとまると思っていた。


「なんなの…ッ!なんなのよ…ッ!黒澤ダイヤ…!!」



大きな間違いだった。

離れれば離れる程、頭の中は混乱する。


告白して。

付き合う事になって。

デートして。

お互いの事を知って。

それから、キスをするんじゃないの?普通!!



『…もしかして、ヨハネの事、好き、なの…?』

『ええ。』


「”ええ”ってなんなの!?好きって事なのッ!?好きって言いなさいよッ!どういう事なのッ!?」


頭の中を巡るのは、ダイヤの口元の黒子、唇…離れた後のダイヤの涙。


「こういう時だけハッキリ具体的に答えないって、どういう事なのッ!?」


いつからダイヤは、私の事を考えていたのだろう?

私に、あんな事をしたいと考えていたのだろう?


私、返事も何もしなかった。

ダイヤ…気にしているかしら?今、私の事を考えているのかしら?



(ダイヤ…。)



「ああッもうッ!ダイヤの馬鹿ッ!ていうか、私の馬鹿ぁッ!!」


私は大声を張り上げながら、走った。

乗るつもりだったバスは、私の前方10メートル先で、発車してしまった。

それでも、私は走った。

頭の中を真っ白にしたくて。




このヨハネの胸に……堕ちてもいいのよ?




なんて、言ったけれど。




「・・・私が・・・私が、堕ちてどうするのよ・・・ッ!!」




 堕天使ヨハネの戦いは、ある意味ここから始まった・・・のかもしれない。




 ― END ―



あとがき

ダイヤ様の性格、ヨハネ様との絡みが、まだよくわからない中、書いたのでふんわりとしか書けませんでしたが・・・

久々のやおい感!ああ、こういうSSも、たまにやらないと!・・・スッキリ!!

加筆修正しました。