[ 妄想し過ぎて堕天した。 ]
私こと、ヨハネは無意識に人を惹き付けてしまう気高い堕天使。
訳あって、今は津島善子、という人間の器に入ってスクールアイドルをやっているワケだけど…。
(…今日は、随分遅いなぁ…。)
今日は、全員揃っての練習が難しいので、分担作業の日になった。
曲作り・ダンス・衣装…思ったより、スクールアイドルってやる事沢山あるのよね。
んで、ヨハネは、部室で作詞作業中ってワケ。
「どうしたの?よっちゃん、さっきから溜息なんかついて。」
リリーこと、桜内梨子はそう言って、ピンクのシャープペンをクルクル回して、眉をハの字にして困ったように笑っていた。
「え、あ…溜息?ついてた?」
正直、無意識だった。
いけないいけない。作詞…何か、リトルデーモンを惹きつける言ノ葉を…。
「……あ、えっとー…黄昏の憂鬱…って奴かしら?ふふっ。」
「うん、正直、意味わかんない。でも、溜息はついてたよ。」
リリーは最近、ニッコリと天中殺(ツッコミ)を入れるクセがついたわね…。侮れないわぁ…!
「あ。」とリリーが何かを思い出したように声を出した。
「何?」
「ダイヤさんなら、鞠莉さんと生徒会よ。」
リリーはニッコリと笑ってそんな爆弾を私に投げてよこした。
「・・・はぁ!?なんで、そこでダイヤが出てくるのよ!!」
思わず立ち上がって抗議したけど、リリーはクスクスと笑いながら、シャープペンの先でドアを指しながら言った。
「あ、よっちゃん、ダイヤさんを待ってるんじゃないの?さっきからチラチラとドアの方見て。」
「ち、違います〜!他の人です〜!人って言うか、魔族です〜!」
「はいはい。早く来ると良いね?(笑)」
リリーは、完全に私がダイヤを待っている、と思ってる!
だって!生徒会の仕事が済んだら、作詞を手伝うって言ったのはダイヤだし!
それが、なかなか来ないんだから気にするのは当然じゃない!
「ちょっと、や、やめてくれる!?ヨハネは…別に…っ」
「そう?…なんか、見てると嬉しくなっちゃうけどなぁ。二人のやりとり見てると。」
二人のやりとり、ですって?
「そ、そ、そんな事無いわよ!全然喋ってないじゃない!
いっつも、ルビィがダイヤにべったりして、姉妹コントして!あとは3年生で固まっちゃってさ!
ヨハネとは全然ッ…昨日、アイス一口頂戴って言ったらさ”ぶっぶーですわ”って言われただけよ!?あの人、結構ケチ…」
私がそこまで言いかけると、リリーがクスっと笑った。
「よっちゃん、十分十分。それで、十分。」
「ど、どこがぁ!?」
「私、昨日の二人の事、見てたから解るの。十分オイシ…いや、”十分な部分”が抜けてるのよ。」
「な、何よぉ?」
リリーのからかうような口調に、私は少しイラつきながらも黙って座って聞くことにした。
「ホラ、よっちゃんが、じゃんけんにいつものように負けて、罰ゲームとしてアイスの買出しに、いつものように行ったじゃない?」
「”いつものように”のかかる部分が違わない!?」
「ダイヤさんって、よっちゃんが帰ってくるだろう時間にスッと立ち上がって、どこに行くのかも言わないでふっと行っちゃうの。」
「え・・・?」
(それは知らなかった…。いつも、アイスが溶けてしまいますわよって言って待ってるんだもの。)
何故かいつも買出しじゃんけんで、ヨハネは負けてしまう。
だから、一人で行くのだけれど。アイスを買いに行かせておいて、ダイヤだけがいつも仁王立ちで玄関で待っている。
「で、戻ってくる時は、ダイヤさんとよっちゃんが二人で戻ってきて、よく見たらダイヤさんが買い物袋の手提げ一方だけ持ってるじゃない?
”やだ、その距離感何?”みたいな!…”手を繋ぐより初々しさが際立ってて余計気恥ずかしい”みたいな!!…”やっぱりアイス溶けるなんて口実ですよね”みたいな!!!」
「リリー…薄い本見すぎよ!」
リリーは、何故か顔を赤らめて腕をブンブン振って楽しそうに話す。
思わず、堕天ツッコミしてしまったわ…。
「はっ!ご、ごめんっ!よっちゃん!」
「言っておくけどね。ヨハネも、ダイヤは私を待ってたのかなって最初は思ったわよ?
でも理由を聞いたら”アイスが溶けるから”とダイヤが言って、それっきり黙ってしまって…話はおしまい。…わかる?」
ダイヤにとっては、ヨハネ<アイスなのよ、とリリーに説明するのだけど、リリーったら肩をわなわなと震わせて、立ち上がり、ぐっと私に近付いた。
「よっちゃん…わかってない!全然わかってない!!」
「ち、近い近い近い近い!!リリー近い!!」
・・・・・。
妙な沈黙の後。
「……ダイヤさん……照れてるのよ!」
「…思わせぶりに接近して言う事がそれかッ!?」
どうも、リリーってテンションがわからなくなる時があるわね…。
「でも、よっちゃんもどうしてダイヤさんが自分を待ってたのかなって思ったの?」
「そ、そりゃあ…」
この間、黒澤家に勉強会で行った時。
なんだかんだで、ダイヤと私は二人きりになった。
その時。
『ヨハネって呼ばないと…ヨハネが好きって言わないとカウントしないッ!!』
『なるほど・・・しかし、そういう事であれば・・・。』
ぎゅっと腰が折れそうかと思うほどダイヤは私を抱きしめて、耳にそっと小さく…。
『ヨハネが好きですわ。…これでよろしくて?』
あの時、ハッキリと、ダイヤはそう言った。
だから…ダイヤは、ヨハネを待ってくれたりするのだと思っていた。
でも、蓋を開けてみれば…私を待っていたのは、単にアイスが溶けるからだって…。
どんなに私がガッカリしたか、ダイヤは知らないんだわ。
「…いや、別に。理由なんてないわ。」
「ああ、そう。(殆ど知ってるし)。ねえねえ、よっちゃん…ダイヤさんがいつも食べてるアイス…棒タイプのアイスでしょ?」
「そう。ヨハネは、いつもみかんのアイスよ。予算100円以内でしょ?」
「うん。私とダイヤさんマリーさんに果南さん、実は味が違うだけで一緒なんだよね。」
「知ってる。だから、一口貰いたかったのにー!ダイヤったら、”ぶっぶーですわ”って、くれなかったんだからッ!」
「で、4人の内…よっちゃんは、あえて”ダイヤさんの”を選んだ、と。」
「…その、ニタアァって笑いはやめてよ、リリー。そんなの、一番美味しそうだったからだってば。」
赤くて、なんかダイヤが美味しそうに食べてたからよ。それなのに、ダイヤはくれなかった。
と言った所で、リリーったら肩をわなわなと震わせて、立ち上がり、ぐっと私に近付いた。
「よっちゃん…わかってない!ホント、全然わかってない!!」
「ち、近い近い近い近い!!リリー近い!!」
「結論から言わせて。…ダイヤさん……照れてるのよ!」
「接近して言う事が使いまわしかッ!?」
「よっちゃん!あのアイスはね!”一口頂戴〜あ、やだ☆間接キスね!”では、すまないのよ!!」
「はい?」
「そう…あのアイスはね…食べていくと、どんどん溶けてしまうから、周りを舐めなくてはいけないの。指に溶けたアイスがついて、べとべとになってしまうから!!」
「なんで、そんな面倒臭いアイスを買ったのよ!あんたら!」
「つまり…ダイヤさんは、散々自分が舌で蹂躙し舐ったアイスを、よっちゃんにおいそれと食べてもらうのは、恥ずかしかったのよ!」
完全に目が明後日の方向を見ているわ…。ここまで意識を飛ばせるなんて、リリーやるわね…。
「うーん…。(私、第3者の目から見るとこんな感じなのかしら…。)」
私、別にそういうの気にしないんだけど…。
(ダイヤは、嫌がりそうだなぁ…。)
特に、間接キスとか、他人の口つけたものなんて…凄く嫌がりそう…。
(ダイヤ…本当に、ヨハネの事が好きなのかしら…。)
不安、だった。
ここのところ、ずっと。
ダイヤは素っ気無いというか、ダイヤからの視線は感じるのに、全く絡んでこようとしない。
ヨハネに近付こうとか、お互いの距離をもっと縮めようとか…そういうのが、無くて。
(だから、せっかく…ヨハネから行ったのに…。)
アイスを介したコミュニケーションは、拒否された。
ダンスの練習でもしないと、ダイヤは私を見ないし、触れない。
ずっと…ずっと、触れてない。
「頬に赤みが差したダイヤさんに、無邪気に絡み続けるよっちゃん
溶けかかったアイスに、よっちゃんが舌を伸ばしかけてダイヤさんが照れながら”ぶっぶーですわ!”と言って引き離した時・・・。
・・・正直、私、自分のアイス落としそうになったからッ!」
あ、リリーの妄想、まだ続いてたのね…。
「ねえ、リリー…その妄想、いつまで続くの…?」
「本、3冊分はあるかな♪」
「はァ…。言っておきますけどね、私は別に…。」
「でも…ぼやっとしてると、盗られちゃうよ?」
盗られる?
『お姉ちゃんの事、カンタンには渡さないから。』
い、いやいや…ルビィが?考えすぎ、考えすぎ!
「なッ!?誰によ!?ダ……あ、アレは、ヨハネが好きなのよ!?
だから!大丈夫なの!大丈夫っていうか!盗るとか盗られるとかの問題じゃないんだから!…多分。」
言ってしまってから、急に自信がしぼむ。
ダイヤはヨハネを好きって言ってくれたけれど、私が思うほどじゃないのかもしれない。
だとするならば…盗るも何も無いのだ。
「・・・へえ・・・。」
頬杖をついて、リリーがまだ笑っている。
「だから!そんな事ある筈が…い、いや、つまりね!全世界のリトルデーモンが、ヨハネを愛してやまないのよ!!だから!!」
「それで、よっちゃんは?愛してあげるの?」
「ん?」
「自分を愛してくれるリトルデーモンに、愛のお返しは?」
お返しなんてもらっても、そんなのきっと・・・ダイヤが困るじゃないの。
アイスですら、共有できなかったのよ?
「そ、それは…」
「”ヨハネの存在こそがご褒美”…とでもおっしゃりたいのでしょう?」
不意に降ってきた言葉が全てを物語った。
そう、そうよ!まさに、それだわ!私の理解者!!
「そうそう!それそれ!ヨハネの事、わかってるじゃ、ない、の………ダイ、ヤ…!!」
振り向いた私の視界には、ヨハネの理解者の台詞を口にした…黒澤ダイヤがいた。
いつも通りの冷静な顔で、ダイヤは部室に入ってきて、何事も無かったかのように椅子に座った。
「ちょっ…いつから…!?」
「遅くなりましたわ。作詞に必要な資料、揃えて参りましたわ。」
「ありがとうございます、ダイヤさん。」
焦る私にリリーはさらっと流すようにお礼をする。
「作詞の進行具合はどうなんですの?」
「あ、実はですね…このサビの部分のキーワードを引き立てる歌詞を、この前後に入れたくて…。」
「な、なんでそんな…!?」
「一番最後にキーワードを出すのは…」
「いえ、それだとインパクトが強くなる反面、前の部分の歌詞のメッセージが…」
「…何よぉスルーしてんじゃないわよ!二人して、ヨハネの事からかってんでしょ!?」
「時に、善子さん。」
「善子言うな!」
目の前にスッと赤いアイスが差し出された。
「溶けない内に、おあがりなさい。」
「これ…!」
昨日ねだって、食べさせてもらえなかったダイヤが食べていたアイスと同じ物だった。
でも…。
「食べたかったのでしょう?」
「…うん…。」
ダイヤ、ヨハネの事を気にしてくれたんだと思って少し嬉しかったのだけど、ちょっと…違うなって気もする。
「ありがと…。」
何がどう違うのかは、上手く言えなさそうだから、素直に受け取った私だけど、その途端、リリーがガタンと立ち上がった。
「ダイヤさん…わかってないですッ!ホント、全然!ちっとも、わかってないッ!!!」
「どうなさいま・・・近い近い近い近い!?梨子さん、近いですわ!!」
「コレは!ダイヤさんが、口をつけないと意味が!全くないんです!!他人が!貴女が食べているモノだから!よっちゃんは欲しがったんですよッ!?」
「は、はあ?」
「ちょ、やめて!リリー!!なんか、それだと私が変態みたいだから!!!」
必死に止めるのだけど、リリーは止まってくれない。
間接アイスの何がそんなに貴女に火をつけたの!?リリー!!
「さあ!舐って!ダイヤさんッ!!」
「あ…え?ええ…?」
そう言いながら、リリーは私の手からアイスを奪い取って、ダイヤの口に突っ込んだ。
「んごッ!?」
そして、内側外側にぐりぐりと回転を加え…
「これが無いと、意味が無いんです!!」
「×○%&’%#$E#…!?」
「り、りりーッ!や、やめて!ダイヤが死んじゃう!アイス死しちゃう!!」
”っぽん!”
ダイヤの口から引っこ抜かれたアイス。
「はい、舐り終わり!次ッ!!」
「ひッ!?」
リリーの手によって…
「やめて、リも゛―ッ!?」
氷結結界がヨハネの真紅の体内に突っ込まれたの…(アイスは、善子の口に押し込められた。)
「舐って!ほら!よっちゃん!!」
「&$□*◎▽@<…ッ!?」
ラズベリーの味が…どんどん冷たさで失われていく。
「よ、善子さああああん!?梨子さん、何をトチ狂ってますの!?」
ダイヤがリリーを後ろから羽交い絞めにして、リリーは正気を取り戻した。
「…はっ!!ご、ごめんなさいッ!ついッ!」
「ぷはッ!大体、これじゃ、味も何もわからないわよッ!リリー!!」
口の中からアイスを出して、私は息を整えた。
「大丈夫ですの?善子さん!?」
「へーき。あと、ヨハネよ。」
「ああ…目的は叶ったはずなのに、でも、なんか…違うのよね…。こう、恥じらいながら舐めて、顔を見て……うーん…。」
リリーは、また意識をどこかに飛ばしている。
「な、何をブツブツとワケの解らない事を…ッ!窒息するかと思いましたわ!!」とダイヤはいつもの調子で怒った。
「リリー…またおかしな薄い本でも読んだのね…あァ、ほら、リリーが無理矢理食べさせるから、一気に溶けて…」
口の中に押し込まれたせいで、アイスは溶けて棒から外れそうになっている。
(ちゃんと、最後まで食べたかったな…。)
最後までまともに食べられそうにないアイスを見ながら、私が指から手の甲に流れたアイスを舌で拭おうとした時。
「…善子さん、零れますわよ。」
”ペロ。”
「あ・・・!」
それは、ごく自然に、ダイヤに拭われた。
指から手の甲に流れる冷たいアイスの上から、ダイヤの唇と舌の温かさが伝わった。
(触れ…!)
瞬時にアイスで冷えた身体が熱くなる。
ダイヤが、ただ一瞬触れただけなのに。
棒に辛うじてくっついていたアイスは、床にぼたりと落ちてしまった。
「あ…ごめん…せっかく…。」
咄嗟にダイヤに謝ってしまったけれど、ダイヤがヨハネの手を舐めなかったら落ちなかったかもしれない。
「気になさらないで。(梨子さんのせいです)不本意な形ですけど、味わっていただけました?」
「あ…うん…ラズベリーだったのね。」
もっと、ちゃんと食べたかったけれど。
「良かった。」
ダイヤが微笑んだ・・・
その刹那。
リリーは叫んだ。
「ありがとうございまああああああああああああす!!!」
作詞は、ちっとも進む事はなかった。
[ 妄想し過ぎて堕天した。(梨子ちゃんが) ]
夕日が沈んでいく。
学校の門を抜けて、バス停まで歩く。
「はあ…。」
結局、アイスの袋だけが手元に残ってしまった。
あのダイヤが、ヨハネに貢いでくれた最初の物だったのに。
「ごめんね、よっちゃん。私、余計な事しちゃった…。」
隣で俯きながら、申し訳なさそうにリリーが謝った。
ふむ。ここは、いつものように振舞って、リリーを許してあげようかな?
「嗚呼、迷える小魚よ…この寛容な堕天使ヨハネの許しを請いたいのね?」
「え?小魚?あ…うん。本当に、ごめんね。よっちゃん。」
「いいわ。寛大な堕天使の魂の名の下に、リリー…貴女を許しましょう!闇の業火に誓って…。」
「ありがとう、よっちゃん。」
ヨハネが許した事で、リリーはやっと笑った。
「…ねえ、よっちゃん、解った?」
「何が?地獄の門の開き方?」
「そんな物騒な事、理解しないで。…そうじゃなくて、ダイヤさんのあの態度は”照れ隠し”って事。」
そう言われて、私は自分の手を見た。
さっき、ダイヤが手の甲から指まで舌でなぞってくれた所を。
(よく破廉恥だとかはしたないとか言ってるクセに、自分だって…。)
「…”敬愛”。」
「へ?」
「手の甲への口づけは”敬愛”の意味があるのよ。よっちゃん。」
「…けーあい?」
「相手を尊敬してて尚且つ親しく想っているって事。」
「…へえー…。」
あの時のダイヤに敬愛のつもりは、無いのかもしれないけれど…。
今日は、あれからいっぱいおしゃべり出来たし、触れられた。
リリーがトイレに行っている間、二人で話した。
『…あの、善子さん?』
『ヨハネよ。…あの、それより、アイス…折角くれたのに、ゴメンッ!』
『いいえ。それは、お気になさらないで。昨日、善子さんに分けられなかったのは、恥ずかしかったのですわ。
私、散々、アイスの周りを舐めてしまっていたもので…。』
『あ、いいの。気にしてくれて……う、嬉しかったし?今度は、ヨハネが何か…』
『いえ、私は”見返りは求めておりませんので”。』
『い、いらない?』
『いえ、善子さんの存在こそが私へのご褒美、でしょう?明日また会えたら、それで良いのですわ。』
サラッと恥ずかしい台詞で決めてきたダイヤに、私は息を一瞬止めた。
『・・・ヨハネ、よ。』
それだけのやり取りで、なんだか満たされている私がいた。
「…あ。リリー…こういう詩は、どう?」
「ん?何?」
「”なかなか縮まらない距離。僕は歩みを止めずに近付きたい。”
”君が好きだと言ってくれた言葉を信じてる。この世界は、明日も素敵だと信じてる”
”君の笑顔で世界が変わって見える。さっきまで、無かった色が足されて鮮やかになるよ”」
ちょっと、くどいかな?ってリリーに聞いたら、リリーはニッコリ笑ってくれた。
「…いいね。”君の笑顔で世界が変わって見える”って言うのが、特に。」
「でっしょ〜?」
バス停が近付くと、海に沈んでいく夕日が見えた。
「……赤くて…綺麗…。」
ぽつりと呟くと、リリーが意味有り気に聞いてきた。
「夕日が?」
「・・・夕日が。」
夕日を見つめて呟いた言葉に、他に何があるのよ。
『明日また会えたら、それで良いのですわ。』
真っ赤な情熱を胸に秘めてる、黒い髪の毛と目が綺麗な、あの人の言葉をふと思い出した。
「明日また会えたら、それで良い、か。」
「今のも良いわね。よっちゃん。」
私は、笑いながら首を横に軽く振って言った。
「いや、今のは…”明日また会いたい”っていう、素直な私の想い。」
- END -
あとがき
ダイルビ〜ルビ丸〜ちかりこ〜という呪文が、友人から送られてきますが、私はダイよしを書きます。
・・・マイナーで構うものかっ!!二期で、絡んでくれるって信じてるッ!!