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マイルームに戻るなり、セイバーはいつものソファに座ると満足そうに言った。


「奏者よ、今日は実に良い采配であったな。余の剣は、いつもながら絶好調であったが、特に今日は良かった。非常に楽しめたぞ。」


いつもながら自信に満ち溢れた台詞。

いつも通り、自分の剣を最上級に褒め称えつつ、しかし、今回はセイバーなりにさり気なく自分を褒めてくれているようだ。

その証拠に、今日のセイバーはいつにも増して、すごく機嫌が良い。

今日は、無事にアリーナの探索を終え、トリガーを取得出来た事もホッと一安心といった所なのだが・・・

嬉しそうなセイバーのマスターである自分にとっては、自分を守ってくれるサーヴァントの笑顔が何より嬉しい。

今は記憶も経験も・・・何も無い自分だけど・・・彼女と戦闘を重ねていく内に、少しは魔術師として成長出来ているのかもしれない。・・・そんな気さえする。


「そう、かな・・・」

セイバーなりに自分を褒めてくれているのが、とても嬉しくもあり、少し・・・こそばゆい。


「むぅ・・・奏者よ。少しは自信というものを持て。この余が褒めているのだぞ?」

頬杖をつきながら、明らかに不満そうに”自信を持て”と言うサーヴァント。


・・・うん。こういう場合、私は素直に笑って、こう言うしかないだろう。


「・・・うん、ありがとう。セイバー。」


「・・・・・・むぅ・・・。」


私のお礼の言葉を聞き、セイバーの表情が少し曇る。


「ん?どうしたの?セイバー」


私の問いに、セイバーは少し考え込んでから何かを閃いたようで、ぽつりと言った。


「・・・決めた。」

「・・・何を?」


私の言葉を”待ってました”、とばかりに不敵に笑いながらセイバーはこう言った。


「今日は特別に、そなたに褒美をとらそう。」

「はぁ・・・。」


セイバーからのご褒美・・・。

なんだろう、あんまり良い予感がしない。


「奏者よ、ここに座れ。」


ぽふぽふと自分の隣を叩いて催促をするセイバー。

なんだろう、あんまり良い予感がしない。


「・・・なんで?」

とりあえず、疑問を口にするが・・・


「いいから、座れ!」


見事なまでに私の疑問は却下された。


「・・・はいはい・・・。」

よっこらしょ、と重い腰を上げるようにセイバーの隣に座・・・

「よし、では・・・」

「ちょっ・・・!?」

私が座るや否や、セイバーがいきなり私の上に乗りかかってくるので、私は反射的に両手でセイバーの両肩を押さえそれ以上の動きを制止させる。


これはマスターである私のれっきとした”指示”だ。


 『とりあえず、待て!』


「・・・なんだ?この手は。」


不満そうな顔で私の両手を睨むセイバー。


「いや、待って・・・一体、な、何をするの・・・!?」


当然の疑問だ。そして、とりあえず、私の上から降りて欲しい。


「だから、褒美をとらすと・・・」

「その”褒美”が、わからないから聞いてるの!」


その言葉に胸を張って、セイバーは、自信に満ち溢れた大きな声で答えた。





「わからぬのか?この余の口付けが褒美である!」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」







その瞬間。

私の中の時が止まった。








 [ 自重を知らない暴君。 ]







「うむ、異論はあるまい。」


時が止まったままの私に対し、フフン♪と笑ったままのセイバー。


「・・・いや、あります。」


即、異議あり。を唱える。


「なんと!?一体、何が気に入らぬというのだッ!?」


信じられない!といったリアクションのセイバー。

信じられない!のは、そもそも、こっちの取るべきリアクションだ。


「いや・・・あの・・・そういうのって、どうなのかなって・・・。」


「どうなのかな、とはどういう事だ?余は、そなたが好きだ。そして、今日は褒美をとらすと言った。それで理由は十分であろう?さ、奏者よ、目を閉じろ。」


自論を展開し、自己完結の後、一気に縮まるお互いの顔の距離。


「・・・っ!?いや、いやいや!!」


体をそらし、両腕に力を込め、距離をキープする私。

そんな私の様子を見て、セイバーは瞬きをすると、さっきまで自信に満ち溢れていた表情は一転し、みるみる不安そうな表情になった。


「・・・奏者よ・・・い、嫌なのか?もしかして・・・余は・・・そ、そなたに・・・き、嫌われているのか・・・?」


「・・・あ、いや、そういう意味じゃなくて・・・あのですね・・・なんていうのかな・・・そういう事って”ご褒美”とかそんな事でするんじゃなくて・・・

例えば・・・こ、恋人同士でするモノなんじゃないかなって・・・思うんだけど。」


この例え話でどうか、察していただきたい。


・・・という願いは、やはり届かなかった。


「・・・では問おう。奏者よ、余が好きか?嫌いか?」


その2択問題を出されてしまっては・・・答えは1択しかない。


「・・・・・す・・・好き・・・。」


私が、そう答えるとセイバーは再び、ぱあっと明るい表情になって、さらりとこう言った。


「そうであろう!余もそなたが好きだ!うむ、想いは一緒だな!うむ、これで問題なかろう!さ、目を閉じろ。」


再び自己完結達成!おめでとうございま・・・いや、違う!!


「い、いや!いやいやいやいやいや!!」


更に体をそらし、両腕に力を込め、距離をなんとかキープする私。

私のその態度がお気に召さなかったのか、セイバーは明らかに不機嫌になった。


「む・・・何が嫌なのだッ!?やはり、そなた・・・余が嫌いなのだな!・・・ウソツキめ!」


挙句、ウソツキ呼ばわりとは・・・。


「う、嘘はついてないよッ!ただ、セイバーが唐突過ぎるのっ!」


そう、心の準備も・・・いや、そもそも心の準備をさせるようなご褒美なんて、私は望んだ覚えはない。


「・・・そなたは、余が悪い、と申すのか・・・?」

「・・・悪いっていうか・・・ただ、突然の事でビックリしたっていうか・・・うん。」


言葉を濁しつつ、私はとりあえず私の上から降りて欲しい、とセイバーに目で訴えるが・・・


「いや、その・・・余はだな・・・ただ、奏者に今日の働きへの褒美をだな・・・」


・・・私の視線なんか見てもいない。

セイバーは伏し目がちになり、ボソボソと呟いている。

・・・いいから、私の上から降りて欲しい。


「・・・うん、わかった。その気持ちだけでいいから。」


とにかく私の上から降りて欲し・・・


「それは嫌だ。」


それは、ハッキリとした拒否の言葉。


「・・・は?」


思わず、私は首をかしげた。


「”気持ちだけで良い”などとは、余の方が嫌なのだ!!」


シーンと静まるマイルーム。

ライトの光だけが、室内を明るく照らし、私とセイバーはお互いの目を見たまま黙り込む。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


・・・それって・・・つまり・・・


「・・・それって、単にセイバーが・・・キスしたいだけじゃあ・・・」と私がボソリと言うと、ぴくりとセイバーの癖っ毛が動いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


黙ってはいるが、明らかにセイバーは動揺している。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」


動揺の表情は段々、不機嫌に変わり・・・


「せ、セイバー・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・。」


遂に、セイバーは私の呼びかけにも反応もせず、挙句”フンっ”とそっぽを向いてしまった。

でも、私の上から降りようとはしない。


「・・・ねえ、セイバー。」

「・・・・・・・・・・・・・・・なんだ?」


しばらくの間の後、ぶっきらぼうな返事をするセイバー。

しかし、私の上からは降りてくれない。


「・・・あの・・・拗ねないで。セイバー・・・。」


ソファに半ば押し倒されたままの姿勢で、私は拗ねないで、と自分のサーヴァントにお願いをしている。

・・・自分でもシュールだと思う。


「奏者が悪い。絶対的に奏者が悪い。明らかに奏者が悪い。余はちっとも悪くない。悪いのは奏者だ。」


棒読み台詞で、次々と私を責め立てるセイバー。

先に白旗を上げたのは・・・勿論、私だ。


「・・・わ、わかった・・・わかったから・・・ご、ごめんなさい・・・。」


その言葉を聞いたセイバーは横目で私をチラリと見た。


「・・・・・・反省してるか?」

「・・・はい・・・してます・・・。」


よくわかりませんけど、とにかく私が悪いんです。すいませんでした。

・・・そして、早く私の上から降りて下さい。一人の女として、そろそろ開きっぱなしの足を閉じたいんです・・・。


「ならば良い。・・・まあ、特別に許す。さ、目を閉じろ。」


私は許された・・・のは良いとして、再び縮まろうとしている距離に私は再びブレーキをかける。


「だーッ!?あ、あのッ・・・せ、セイバー!?ちょ、ちょっと、もう一つだけッ!」


「ん゛―?」


明らかに面倒そうに、しかも少々苛立ちながら返事をするセイバー。


「・・・せ・・・セイバーは、こういうの抵抗、無いの?」

「余には無い。前にも言ったであろう?余は、男女区別無く愛す。わかったら・・・さっさと目を閉じろ、奏者。」


セイバーの答えは、実にシンプルかつストレートだ。


「・・・う・・・」


私は、遂に言葉を失くし、思わずセイバーから顔を背けてしまった。

頭に浮かんだのは”どうしよう”という迷いだ。


「その顔・・・やはり、そなたは余が嫌いなのだな・・・。」

「ち、違うよ!嫌じゃなくて・・・あ、あの・・・えと・・・は・・・恥ずかしいの・・・!」


咄嗟にそうは言ってはみたが・・・


「なるほど。恥じらいだけならば良い。気にするな。余は気にしない。・・・それに、さっきから言っておるだろう?そなたは、目を閉じれば良いのだ。」


流石、セイバー・・・私の”恥じらい”など、口付けのシーンに添える程度のモノに変えてしまい、距離を更に縮めてくる。

そして、悲しきかな・・・力では敵う訳も無い。


「いや、目を閉じたくらいじゃ・・・!」


もう、お互いの息がかかる位まで距離が・・・!

混乱したままの私の頭にセイバーの雷が落ちる。


「あ゛――!!じゃあ、もうよい!そなたは目を開いたままで、勝手に恥らっているがいいッ!」


そんな乱暴な・・・っ!


「いや・・・ちょっと、それは待っ・・・」


(せめて・・・せめて・・・もう少し・・・時間を・・・)


私は本当に目を開いたまま、自分の唇とセイバーの唇が重なっていくのをただ・・・見ていた。

しかし、いざ、そうなってしまうと・・・案外あっさりなもので。

ドキドキは確かにしている。今も多分・・・重なっている胸からセイバーに伝わっているんじゃないかと思うほど、バクバクと音を立てている。

だが、その一方・・・『あぁ、唇って本当に柔らかいんだなぁ』、と感じる余裕なんてものがあるから不思議だ。

・・・思えば・・・私は・・・何を必死になっていたんだろうか・・・。

時間があれば、私は素直にこの行為に応じたのだろうか。


・・・確かに、セイバーの事は好きだ。

自信に満ち溢れていて、こんな頼りない自分に手を差し伸べ、一緒に何度も戦ってくれる。

いつも傍にいてくれて、今まで自分を支え、守ってくれた・・・かけがえの無い私のサーヴァント。


だけど・・・そんな大切なサーヴァントに・・・


(・・・好き・・・って気持ちだけで、こんな事して・・・いいのかな・・・)


・・・そんな事を考えていた。


私は魔術師。セイバーのマスター。

本当に・・・これで、いいの?


「奏者・・・。」


呼ばれた気がして、私は、その声に黙って目を閉じた。


顎を上向きにされ、唇は更に押し当てられる。

目を閉じた分、唇の柔らかさが、目を開けている時よりも伝わってくる。

いつ呼吸していいのやら、まったくわからないまま、私は少しだけ横に顔を背け、わずかな酸素を得る。


「はぁ・・・ッ・・・」


だが、すかさずセイバーに元の位置に戻され、安定させようとしていた呼吸がまた奪われる。

今度は唇を軽く吸われる。その音がすぐ近くで聞こえる。

その音だけで堪えていた筈の・・・忘れていた筈の、恥ずかしさが何倍にも膨らんで返って来る。



「・・・っ・・・セ、イバー・・・ちょっと、ゴメ・・・長い・・・。」


流石にギブアップ宣言。恥ずかしいし、呼吸は整わないし、熱いし・・・初心者には、もう色々と辛い・・・。


「長い!?・・・せ、せっかくの余からの褒美だぞ?少しは、嬉しそうにせぬかっ!」

(・・・そんな余裕無いよ・・・。)


不満そうにセイバーは、私の耳の傍で大声を出した。

こんな事をした後でも・・・セイバーは、やっぱりセイバーのままだった。


「ゴメン・・・ちょっと、呼吸させて・・・。」


ふと、自分の両腕がセイバーを制止する方から、いつの間にか・・・セイバーを受け入れるように腰に手を回している事に気が付いた。

足だってあんなに閉じたかったのに、まだ開きっぱなしで、スカートが捲れ上がって・・・いや、これはセイバーが太腿を撫で上げた時に・・・。


・・・うう・・・気が付かなきゃ良かった・・・。


「・・・・・・・・・・。」

たちまち込み上げてくる、とてつもない恥ずかしさ。私は、ぎゅっと瞼を閉じた。


「な!?・・・だ、黙るな!奏者!・・・余まで恥ずかしくなってくるではないかっ!」

「う・・・うん・・・。」


それでも恥ずかしさが、身体の熱が・・・収まってくれない。

そんな私を見て、セイバーが声を上げる。


「むぅ・・・こ、これでは、まるで余がそなたを手篭にしたみたいではないかッ!・・・いや!そんなつもりは余には無くてだな・・・!」

「うん・・・わかってる。大丈夫。・・・それに・・・。」


セイバーには悪気はない。

だからこそ、ちょっと性質が悪いんだけど・・・。


だけど・・・。


「む?」

「うん・・・その・・・嫌じゃ、なかった・・・。」


とりあえず。それが、自分の正直な気持ちだ。

マスターとサーヴァントがこんな事していいのか?なんて迷いはあったが、正直な気持ちをセイバーのように真っ直ぐに言葉として出せば、そうなるのだ。

胸に手をあてても、心臓の鼓動は収まらない事は解ってはいるが、それでもしてしまう。


・・・今は呼吸を整える事に専念するしかなく、セイバーの顔だってマトモに見られない。


すると。


「・・・あ・・・あ゛――ッ!もうッ!!大好きだ―ッ!!」

「え?あ・・・・・・んぅっ!?」


力一杯の抱擁の後、次の瞬間に、まるで当然のように重なる唇。


(だ・・・だから・・・どうして、そこで唐突に行動するのよ―ッ!?)


そんな私の疑問なんて嘲笑うように、セイバーは真っ直ぐに気持ちを伝えてくる。

恥ずかしいなんて言葉を、私の頭から吹っ飛ばす勢いで。

それは、言葉として口に出さなくとも・・・ちゃんと心に伝わってくる。


暴君と呼ばれた英霊。剣を振るう姿は凛々しく、美しく・・・そして、強い。

でも・・・本当はすごく優しくて。

これが、いつも通りの彼女・・・セイバーだ。






・・・でもね・・・セイバー・・・。











・・・・・・・・やっぱり、キスが、長い・・・。











セイバーの唇から解放され、再び呼吸をする事を許された私は、ぐったりしていた。

それを見てセイバーは言った。



「い・・・今のは・・・その・・・あれだ。奏者が悪い。」



二言目には『奏者が悪い』と言われ続け、私は流石にセイバーをジーッと見た。


何故なら、今のは、絶対私は悪くないからだ。・・・セイバーの”謎の勢い”が悪い。

けれど、そんな事言ったら、セイバーの機嫌が一気に悪くなるのは目に見えている。

『余は悪くない!』とか『余を悪者にするとは・・・そなたは余が嫌いか!?』とか言い出しそうだし。

ここは黙って、勢い余って外された制服のボタンをとっととはめよう。



「・・・その・・・表情に、艶は出てくるわ・・・反応の可愛らしさにも程があろうに・・・。」


なにやらセイバーが、もごもご呟いているが、よく聞こえない。


「・・・もう、悪くていい・・・全面的に私が悪いって事で良いから・・・もう離れて。制服に皺が出来ちゃうし・・・。」


とはいえ、半ばもう制服の皺は諦めている。


――― だが。


「・・・断る。」

「はあ!?こ、断るッ!?」


常に私の予想、斜め上を行くセイバーの発言に私の声は、思わず裏返った。


「何故なら・・・奏者が悪いからだ。・・・自分でも、今そう申したではないか!」

「・・・・・・・。」


この一点張りで、私の上から一向に降りてくれない。

この場合、もう素直に”いいや、私は悪くない”って主張した方がいいのだろうか・・・。


でも・・・『いいや!絶対ッ!奏者が悪いっ!』・・・とか言いそうだし。

いや、もう、このサーヴァント相手に”抵抗”なんてしても無駄なのかもしれない。


・・・大体、『ご褒美』を貰っているはずなのに、どうしてこうなった。

・・・というか、どうして私が悪いなんて事になっているのか。


疑問を出せばキリが無い。


「じゃあ、セイバー・・・私のどこが悪かったの?」


「・・・む?」


「・・・だから、具体的に・・・私のどこが悪かった?」


半ば自棄になって、そう聞くと、セイバーの動きがピタリと止まった。

視線を私から外し・・・考えている。明らかに、どこが悪かったのかを”今”考えている・・・!


「・・・え・・・えーと、じゃあ全部・・・。」


「”えーと”って何!?”じゃあ”って何!?大雑把にも程があるでしょッ!?今、考えたでしょ!?」


「え、ええいッ!細かい事を申すな!・・・そなたは、余が好きなのだろうッ!?」


「ぅ・・・・・・す・・・好き・・・。」


そう質問されると、こう返すしかない自分がちょっと情けないが・・・正直な気持ちは、これしかない。・・・なんか悔しいけど。

私の回答に満足そうにセイバーは頷いた。




「うむ、そうであろう。余もそなたが好きだ。故に、そなたの悪い所も今回は全て、余は”許す”。・・・故に、これまでの行為も、一ッ切!問題無いッ!!」




「・・・・・・・・・・・・・。」


・・・いや、あの・・・そういう問題じゃないっていうか・・・許すも何も、私の立場は・・・?


・・・そんな問いが、この”暴君”に届くわけが無い。

問題無い、と言い切られた以上、『愚問である』、と一蹴されるに決まっている。


なんとなく、そんな事は解っていた。

そして、何故かこんな暴君が、私は好きなのだ・・・。悔しいけれど、それは事実だ。


キスの最中に考えていた「好きって気持ちだけで、こんな事していいのか?」なんて問いだって、この暴君に言わせれば、きっと愚問なのだろう。


なにせ私は、寛大なる暴君の彼女に許されている。(具体的に一体何を許されているのかは全く伝わらず、解らないままなのだが。)


好きという想いは一緒らしい・・・のは、よく解った。

それを自分は、嬉しいと感じているのも、よく理解できた。


(・・・でも・・・なんっか、納得いかないなぁ・・・。)


彼女から褒美を(無理矢理)貰った心境は、やはり複雑なままだ。

やっぱり、もうちょっとタイミングと言うか・・・心の準備をする時間くらい欲しかったが・・・。


(・・・いや、心の準備をする時間があったとしても・・・きっと・・・私・・・)


・・・これ以上、考えるのはよそう・・・また恥ずかしくなる。


「うむ、問題無いな。・・・奏者よ、余は湯浴みをするぞ♪」


そう言って、気分的にお気に入りのバスタイムが訪れたらしきセイバーはニッコリ笑って、やっと私の上から降りてくれた。


「はあ・・・(やれやれ。)」


「・・・何を呆けておる?一緒に入るぞ。」


「・・・・・・・・・・え゛!?」




誰か・・・お願い・・・この暴君の暴走を・・・少しでいい、やっぱり止めて・・・!!



「奏者よ。遠慮は要らぬぞ。脱げ♪」

「え、遠慮なんかしてませんっ!!(泣)」





  [ 自重を知らない暴君・・・END ]








― あとがき ―


まずは、申し訳ない。特に意味も無ければ、オチもそんなに無いSSです。私も自重を知りません。知りたくも無いわ、そんなもの。


それから、赤セイバーは・・・本来、もっと可愛いんです!照れ屋なんです。

だけど、私が書くとこうなってしまいます・・・ごめんなさいッ!!


設定としては、赤セイバーが女主人公が好きで好きでたまらない感じです。

実際、ゲーム中もそんなシーンがありました。『大好きだーッ!!』と叫ぶセイバーが可愛かったです。

もうセイバー、主人公好き過ぎるだろ、とツッコミたくなる程・・・。


遅れはとりましたが、PSP最高!!皆様も、是非『Fate/EXTRA』女主人公でプレイしてみて下さいッ♪