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 [ Fate/EXTRA SS 赤セイバー×女主人公 ]





「ふう・・・まったく、今度の対戦相手は気に喰わんな。何が気に入らんかというと、マスターの言動、思想、容姿だ。我が奏者の足元にも及ばぬな。

あと、サーヴァントも、実に美しさに欠けるな。さっさとこの余の剣で倒してしまいたいな。」


いつも通り、マイルームに帰るなり、セイバーがむっとした表情でそう言った。


(・・・それ、全部気に入らないって言うんじゃ・・・)


そうは思うが、自分で言うのも気が引けるので、笑ってごまかす事にする。

アリーナの探索もまだ慣れない。

・・・というのも、対戦相手にいつ、どんな方法で罠を仕掛けられるか、わからないからだ。


不安だらけの筈なのに、私は笑えている。


それも、多分頼もしい、目の前のサーヴァントのお陰だと思う。


「今はまだ、奏者の輝きも鈍いが・・・それは、宝石の原石に似ている・・・いや、石ではない・・・。

奏者のあの柔らかい肌と身体の曲線は、宝石ごときで、どう表現できようかッ!?」



・・・相変わらず、何言ってるのか、まだよく理解は出来ない事が多いが。


「何でも良いよ、私は・・・痛っ・・・!」


「む?どうした?マスター。」


制服の上着を脱ごうとして、鋭い痛みが左腕に走った。


「あ、何か、何処かで・・・傷つけちゃったみたい。」


そう言って、私は左腕を見せた。



「うーん、何処でやっちゃったんだろうね?」


独り言を呟きながら、私は持っている道具の中に、治療道具が無いか調べる。

その手を、伸びてきた手に止められる。


「セイバー?」

「見せよ。」


いつになく、真剣な表情の赤き暴君に私は素直にYシャツをめくって、腕を見せる。


「あ、はい。」

「・・・・・・」


じっと見つめていたセイバーは、更に顔を近づける。


「・・・余の不覚だ。」


そう呟いたかと思うと、セイバーは顔を伏せた。


「え?」


「これは、切り傷だ。あの、殺風景なアリーナ内で、この手の傷を負う原因は限られておる。

余が、そなたを・・・守りきれていなかったのだ。」



そう言って、セイバーはきつく瞼を閉じて、私の傷口に唇をつけた。


痛みはそれ程強くも無いし、この程度の事、聖杯戦争ならあり得るだろうと思い始めていた私。

・・・いや、実際は、聖杯を巡っての争いなんて、あり得る筈も無いのに。


座り込んだ私の前に、暴君が跪き、腕にキス・・・なんて。

怪我さえしていなかったら・・・これは、まるで・・・。


そこまで考えて、私は止めた。


何を考えているんだか。


今は、セイバーのフォローが先だ。


「あ・・・!せ、セイバーのせいじゃないよ・・・私の不注意!」

「そのような言葉で余を庇っておるつもりならやめよ。余の気が楽になる事は無い。」


セイバーはかなり責任を感じているようだ。


「・・・ごめん。でも、いつ、何で怪我したのか、覚えてないの。」

「その傷から、もしも毒が入っていたら、そなたは死んでいたのかもしれぬな。」


「あ・・・」


セイバーは、常に私を守る事を考えている。

だから、どんなに私にとっては小さくて些細な事でも、彼女にとっては大事であり、彼女は自分を許せないのだ。


私よりも、数倍、数十倍、傷つき、守ってくれるのに。



「痛むか?」

「平気。・・・ねえ、セイバー。」



「む?」


私は、セイバーの頬に触れて言った。


「”許す”。」


「うむ、そうか・・・む!?」


私の一言を聞いて、セイバーはすぐに反応し、変な顔をしてじっと私を見た。


「だって、私が貴女を許さなかったら、誰が貴女を許すの?」


私は、赤き暴君の唇に軽く触れた。


「だから、これで・・・許してあげる。」


この位の事や台詞、いつも目の前の暴君はサラッと口にするし、必要だと言い張ってやりきってしまう。



「な!?・・・その・・・あの・・・そ、奏者のクセに、な、生意気な・・・!」


顔を真っ赤にして、セイバーは手の甲で唇を隠した。

私から、そんな事をされるとは思ってなかったようだ。



「いいの。私は、貴女のマスターなんだから。」

「・・・なんか、釈然とせんが・・・。」


・・・そうでしょう?いつも、貴女が私にしてる事ですけどね。


「納得できないなら、もう一回する?」


私が両肩をすぼめて、笑って見せると、セイバーはひどく驚いた。


「な、何ぃ!?」

「じゃ、ちゃんと許してあげるから、もう一回しよ?」


余程、私がそんな事を言うとは思ってなかったらしいセイバーは、呆気に取られた顔をして、彼女の両目・両手は空中をフラフラと泳いだ。


「・・・な・・・あ・・・いや・・・その・・・!」

「こんな事に令呪使いたくないなぁ・・・?」


ニコニコ笑顔で私が手を振ると、セイバーは頭を抱えて叫んだ。


「む、むうぅ・・・だあああ!!こ、これでは、ただの罰ゲームだあああッ!」



「じゃ、今度から守って。」

「・・・む、無論だ!!・・・・・・・・・・・。」


私の言葉に威勢よく答えてくれたセイバーは、私の顔をジッと見た。


「・・・・・・ん?」

「・・・もう一度、せぬのか?」


ぼそっとセイバーが言うので、私は何の事だと首をかしげる。


「・・・・・・ん?」

「だから!もう一回・・・さっきのを・・・せぬのか!と聞いている!!」


「あ、キスしたかったの?」

「・・・あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!もう、よいッ!」



その数秒後。



「・・・え・・・?せ、セイバー・・・?」



クスクス笑っていた私の上に、赤き暴君が、不敵な笑みを浮かべながらものすごい力で覆いかぶさってきて、一言言った。



「先程の戯れ、奏者にしては、なかなかであった。


・・・この余を、手玉に取った事、まことに見事だ・・・ 


 今度は、余が、そなたを・・・”許す”・・・。」



・・・許す、とは・・・なんとも難しい、と痛感。



「・・・奏者よ、他にも怪我は無いのか?」

唇を離した後、セイバーはそう聞いた。

「特に痛みは・・・あれ?・・・ボタン、取れてる・・・。」


制服の下のシャツのボタン、上から二番目が取れていた。


「やはりそうか・・・己の怪我にも気付かないとは、鈍いぞ。マスターたるもの、そんな事では・・・」

「そうだね。」


私は、ボタンを外して鎖骨の下辺りを擦った。

痛みは無い。


「・・・マスター。まさか、そこも怪我をしておるのか!?」

「え?」

「み、見せよッ!」


慌てたセイバーが私のシャツを広げようとして手を伸ばした。


「あ、いや・・・い、いいよッ!」

制止しようとした私をセイバーは、押し倒し、ボタンを素早く外しばっと広げた。


「・・・・・・・。」



真剣に、隅々セイバーは私の身体を見た。

あまりにも真剣に見るから、私はごくりと息を飲んで、大人しくしていた。



「切り傷は無い・・・痣はないだろうか・・・。」


そう言って、真剣な目のセイバーは指先を私の肌に触れ、上から下へなぞった。

するりと滑る指先の感触に、ぞくっと身体が反応する。


「マスター、痛みがあるのか?」

「・・・大、丈夫・・・」


変な反応をしてしまった、とセイバーに知れたら・・・と思うと、今の反応の説明など出来なかった。

思わず、視線を逸らし、早くセイバーが離れてくれないかと考えていた。


セイバーの指先は、鎖骨、下着、下着のワイヤー、肋骨、お腹、へそ・・・とゆっくりとなぞった。


「も、もう・・・」


もう、いいでしょ?と聞こうとした瞬間、セイバーは身を屈めて、私の鎖骨に唇をつけた。

そして、じゅぷっという音を立てて、鎖骨の少し突き出ている部分を軽くしゃぶった。


「あっ・・・!」

「・・・余に隠し事は、無駄というものだ。奏者。」


私の声に、にんまりと笑みを浮かべながら、セイバーがそう言った。


「・・・え・・・!?」

「余は、そなたのサーヴァントであり、至高の名器・・・わからぬ筈なかろう?」


指摘され、途端にかあっと熱くなる。


「他にも怪我をしている所があるやもしれぬな。こうなったら・・・調べよう。」

「ちょ、ちょっと!それは・・・いい!!」

「アリーナを探索する時も、奏者は隅々まで調べるではないか。探索率を100%にしたいとか訳のわからぬ事を言いながら。」

「そ、それは・・・!」


確かにそうだが、それは、そういうシステム!

そして、セイバーは探索をはじめ・・・いや、ただ私のスカートのホックを外しているだけだ!

いや、これ以上、何を調べるというのか!


「余も、奏者に関しては、魔力・愛・感度・・・全ての値を10000%程には育てておきたい。」

「そんな数値ありませんッ!最後の感度に関しては上げなくていいッ!」


それに、このままでも十分・・・どうにかなりそうだ。



「遠慮するな。声も上げて構わんぞ・・・余が全面的に”許す”。」

「え、遠慮なんかじゃ・・・!」



暴君は、妖しい笑みを浮かべて、鎖骨の窪みに舌を這わせた。


「は・・・ッ・・・ぁ・・・!」


「良いぞ・・・奏者もなかなかの名器だな?」




(・・・この、暴君め・・・。)




心の中でそう呟きながらも、私の体の力は抜けていった。


「セイバー・・・」

「ん?」



「許してくれるなら・・・キスして。」




この時だけは、暴君も素直にマスターの指示に従った。




 ― END ―


加筆修正しましたけど・・・・・・エロくねぇなって感じです。