※ Fate/EXTRA/CCCを未プレイの方は、ネタバレあります。 キャスターが真名バンバン喋ります。
「ご主人様ぁ〜☆ご覧くださいませ〜!レアアイテムゲットですっ!」
「レアアイテム?礼装じゃなくて?」
迷宮探索の中、キャスターが嬉しそうに走って、アイテムを持ってきた。
「はい!これは、と〜ッても良い物ですよ!」
「キャスターが言うんだから、そうなんだろうね・・・で、何?この、瓶に入った液体・・・あ、ポーション?」
ピンクの小瓶に液体。見た事もない、ソレを手にして私は色々考えた。
「あ、惜しいです!ご主人様!もっと日常生活に密着した、便利な品ですよ!」
「ん?日常生活?便利?回復薬とか魔力回復じゃないの・・・?」
エリクサーだったら嬉しいのに、見た目が違う。
日常生活・・・洗剤かファ○リーズ(ペットのにおい消し)かな?
考え込む私の二の腕を指でちょんちょんっとつついて、キャスターは言った。
「んもう、ご主人様ったら〜お鈍さん☆・・・正解は〜
ラブラブな二人の夜の必須アイテム!タマモちゃん印の ラブオイル でし・・・
”とぽとぽとぽとぽ・・・。”
「申し訳ございませんでした、御主人様。ちょっと、ちょっとだけ・・・ほんの少しだけ、私、調子に乗ってしまいました。
だから・・・無表情で、私の頭にMOCO’Sキッチン並に”追いラブオイル”をかけるのは、お止めくださいませ。
これじゃ私、イタリア料理じゃなくて、イタイコ料理・・・じゃ、ありませんのでして・・・うわ、自分で言っててサムッ!
じゃなくて!料理教室のウズメちゃんだって、こんなにオイル使わないです!あ〜ん!耳にオイル入っちゃいます〜!(泣)」
私は、ただひたすら、正座するキャスターの頭に”追いラブオイル”をかけ続けた。
これこそ、正しいオイルの使い方だろう。
[ キャスターと私。 Fate/EXTRA/CCC ]
「あぁん・・・まだヌルヌルする〜」
自業自得だと思う。
ラニに無理を言って、マイルームにつけてもらった浴室に私とキャスターはいた。
ラニは『校内での性的なオイルマッサージを控えるのと サーヴァントの速やかな洗浄を推奨します。』と何故か冷ややかな口調で言った。
私は無実だ!と言いたい気持ちをぐっとこらえ、キャスターを浴室に連れてマイルームへ戻った。
「お互い、ラブオイルでベタベタですね〜御主人様。さあさあ、お脱ぎになって下さいませっ」
「・・・誰のせいよ。」
私は、キャスターの頭に追いラブオイルをした。
しかしキャスターは、いつの間にか私の身体にまとわりついて、私の制服にもラブオイルをつけたのだった・・・。
2人共、オイル塗れなのだからラニに、そう思われるのも無理は無い。
「御主人様ぁ☆脱がせるのは私がお手伝いしま・・・あいた!」
私は、セーラー服のスカーフに手をかけようとするキャスターの手の甲を摘む。
「私はいいから、キャスター脱いで。」
私の一言に、目をぱちぱちとさせたキャスターは、脱衣室の壁にのの字を書いて、こちらをもじもじしながら見た。
「・・・脱げ、だなんて・・・タマモ的には〜・・・一枚一枚、旦那様に脱がされたい、かな?」
「先、入るね。」
「ああん!ツッコミもナシですか!?御主人様ぁ!待ってくださいましっ!」
浴室は、二人の入浴だけで精一杯の広さだった。
(とにかく、キャスターにシャワーをかけて、オイルを・・・)
振り向くと、浴室の床に三つ指をついて頭を下げているキャスターがいた。
「タマモです。よろしくお願いします。」
・・・なんだろう・・・なんか、いかがわしい店に来てしまった気分だった。
「じゃ、流すよ。」
「はーい♪」
温度調節をしてから、キャスターにシャワーのお湯をかける。
キャスターは嬉しそうに、耳をぴこぴこ動かした。
「うーん!やっぱり一日肉体労働したら、入浴に限りますよね♪」
そうやって(黙って)いれば、可愛いのに。
「ん?何かおっしゃいました?可愛いとか、ぎゅっと抱きしめたいとか。」
「言ってないよ。」
キャスターが、私の心の中を透視しているような気がしてきた。
シャンプー(狐用)を手に取り、泡立ててキャスターの頭に乗せる。
「じっとしててね。」
「まさか御主人様に洗ってもらえるなんて!感謝ですッ!・・・・・・追いラブオイル最高だな。」
目を閉じたまま、キャスターはニッと腹黒く笑った。
「・・・今度やったら、オイルの上からネギを撒く。」
「申し訳ありませんでした。」
キャスターの髪の毛を洗う。ラブオイルのヌメヌメを完全に取るなら、もう一回洗う必要がありそうだ。
指の腹で頭皮を洗い、更に泡立てる。髪の毛の一本一本に泡がいきわたるように、掌全体で揉み込むように洗う。
「素敵過ぎます!御主人様の指テク♪」
・・・褒めてくれるのは嬉しいけれど、素直に喜べないのは、どうしてかな。
(耳は、どうしようかな。)
耳の中に入ったら大変だから、指先で摘んで・・・
「うひゃう!?くすぐったいです!」
ビクンビクンと耳が動く。
「こらっ動くんじゃ・・・狭いんだから、倒れたりしたら」
そこまで言うと、キャスターはぴこーんと何かを閃いたように、耳を尖らせ、ゆっくりと私の方へ向いた。
「・・・ああっオイルの魔力で御主人様の方に吸い寄せられるように、タマモが転んでしまう〜!!」
「そんな説明的に転べるかッ!オイルにそんな魔力はなッ・・・!」
後ろに転倒、上からキャスターが覆いかぶさるように滑ってきた。
身体全体に、キャスターの身体に残っているオイルのヌメヌメが伝わる。
目を開けると、泡塗れのキャスターがいつになく妖しく微笑んでいた。
「御主人様・・・お背中及びお腹をお流しします・・・。」
やはり、そうきたか。
「・・・なんですか、御主人様・・・その”あーあ、やりやがった”っていう、ガッカリ感満載のリアクション・・・。」
「どうせ次は”私の身体で洗います”とか言うんだろうなって。」
私がそう言うと、キャスターはびくっと身体を起こして、驚いた。
「はうッ!?ど、どどどど、どうしてお分かりになったんですか!?もしやエスパー!?」
「はいはい、いいから、もう流すよ。」
私はシャワーのバルブを緩めた。
シャワーのお湯は泡という泡を流していく。
キャスターは、泡が目に入らないように目を閉じて、悔しそうに言った。
「あうー・・・折角、夫婦水入らずのお風呂タイムなのに〜!旦那様のお背中を流す、なんて良妻の基礎基本イベント!
流しているうちに、旦那様が『そんな事より、お前も洗ってやろう』とか言って〜
私が『あっダメ!そこは優しく洗ってくれなきゃ・・・あんっ』とか言ったりしちゃったり〜!!」
・・・夫婦水入らずのお風呂タイムって、そんなに卑猥なイベントでしたっけ・・・?
「・・・前から思ってたんだけど、キャスター・・・私、旦那でいいの?」
私は起き上がって、キャスターの頭の泡を流しながら聞いた。
前々から、キャスターは私を旦那様と呼ぶが、普通は・・・旦那と言ったら”男性”だろう。
「何をおっしゃってるんですか!?マスターが私の旦那様になってくれないなら・・・心を込めて、呪いますよッ!!」
「脅さないで!だ、だから・・・私が男のマスターなら、それは成り立つでしょ?」
しかし、私は女だ。
「・・・確かに貴女様がマスターと知った時、あー細マッチョ系男子じゃねえのかぁ、とは思いました。ぶっちゃけ。
しかし・・・貴女様と顔を合わせ、目と目を合わせ、貴女様の魂に触れた瞬間!・・・解ったんです。」
「・・・ん?」
「・・・これは、嫁げる!!!・・・と!」
ざっくばらん過ぎる!!!
「要するに。貴女様が私のマスターだから嫁ぎたい訳では、ないのです。
契約は、あくまで出会うキッカケ。
契約後、お付き合いを始めて、イケ魂の貴女と私は互いを深く深く知り合っていきました。」
・・・うん、確かに出会いはしたけれど、お付き合いはした覚えないんだけどな。
「知れば知るほどイケメン女子な貴女様を守る事が私の誇りです。」
「む・・・!」
なんか、改めてそんな事言われると照れる。
「実は・・・ご主人様が私の本性を知ってもドン引きせずに『うん、なんとなくわかってた。(笑)』
・・・とあっさり受け入れてくれたのが、私は何よりも嬉しかったのです。
ですから、私はその時、貴女様が私を受け入れてくれる限り、ずっとヘビロテで愛し続けていこう・・・と決意したのです。
何より、普通の殿方には無い男らしさ、女子らしい愛らしさを兼ね備え、あれ?別に性別どうでもよくね?と思える程の御主人様の私への優しさと想い・・・ッ!
・・・あと未開発で何も知らなさそうな体。
ご主人様と一緒だと毎日が嬉しくて、楽しくて・・・守りたくて。
貴女の隣で、貴女にとっての良妻でありたい・・・それが、私の願いです。
ですから・・・貴女様が、男であろうと、女であろうと、オカマだろうと・・・オカマは・・・アレかもしれないですけど。
・・・とにかく!
私は、貴女様の魂に惚れたのです。御主人様一筋!性別の壁を越えてでも、私は貴女の元に嫁いで、一生添い遂げてみせますッ!!」
裸の私の上で、裸のキャスターが拳を高々と挙げて宣言した。
なんか、途中で聞き捨てなら無い事も言われたような気もしたけれど。
ぼうっと見る私を見て、キャスターはチラッと目を合わせると、拳を下ろし目を逸らした。
「・・・まあ、いくら私がお慕いしても・・・御主人様次第なんですけど。
ですので!私の気持ちを利用するなら、バンバンしちゃって下さいな♪
ちょっと甘い言葉をかけてくだされば、私は・・・蟻のように働いて・・・みせますから・・・。」
キョトンとしたリアクションの私を見て、不安に思ったのか、キャスターの先程までの勢いが無くなる。
「あの・・・だから・・・・・・せめて・・・お傍に、置いてくださいますか?マスター。」
私は、当たり前だと即答する。
とにかく、キャスターは私を信じてくれていて、好きでいてくれている事だけは、確か。
こんなに他人を想い、恋焦がれ、つい暴走してしまう狐を、何度も傍で見てきた私。
彼女に愛されている事に慣れすぎていたのかもしれない。
「・・・利用なんて言い方は、やめて。私と貴女は・・・そんな仲じゃないでしょ?」
信じている。
私は、貴女を。
貴女は、私を。
私がそう言って笑ってみせると、キャスターは目を見開いた後、急にしんみりとした。
てっきり、喜んでくれるかと思ったのに。
「・・・私、浅はかでございました。ご主人様。
マンネリ化した関係に、ラブイベントの一つも起こせば、御主人様と既成事実が作れるんじゃないかってオイルを手にしましたが・・・。」
(おいおい。)
そんな事を考えていたのか・・・この狐・・・!
しかも、ラブイベントにラブオイルって・・・どういう作戦だったのか・・・。
「でも、そんなの、必要なかったんですね!・・・まだ。」
「うん、要らないよ。・・・これからも、ずっと。」
シャワーのお湯が泡を完全に流しきってしまい、温かい雨の中、私はキャスターを抱きしめて洗い立ての頭を撫でた。
「それから。・・・マスターの命令よ。ずっと、私の傍にいて。キャス・・・タマモ。」
「御主人様・・・御主人様!今のお言葉・・・もう惚れ直しましたッ!!”ずっと、私の傍にいて”・・・心に、魂に、しっかりRECしましたからねッ!というか、もう一回言って下さい!」
やっと、キャスターは笑ってくれた。
そのはしゃぎっぷりは、いつも通りというか。
とても愛おしいというか。
うっかり・・・普段やらかさない何かを引き出してしまう、というか。
「もう脳内再生余裕ですからね!これ、もうアレですよね!御主人様からのプロポーズと受け取っても・・・んっ!?」
キャスターの上唇を少し唇で挟んで、離した。
小さいチュッという音が、シャワーの音に紛れて消えていった。
「・・・オマケ。」
何してんだ、と自分でも思った。
今さっきまで、女同士で夫婦だなんてどうなんだ、という変な思い込みがあったのに。
サーヴァントの影響か、似た者夫婦、というものなのか。
「あ・・・あ・・・あ・・・!」
みるみる真っ赤になっていくキャスター。
「ふ、不意打ちなんて・・・ズルすぎますッ!萌えたッ!もうダメ!どんだけ乙女心を掴む女なんですか!御主人様ッ!!」
それは、怒ってるのか、喜んでいるのか、よくわからない。
「マジで、妊娠する5秒前でした。あーもう・・・ホント・・・好き・・・はぁ・・・。」
訳のわからないことをブツブツ言いながら、キャスターは溜息をついた。
うん、それでいい。好きでいて。
私は手で浴槽をかき回す。・・・適温だ。
二人で入るのは狭いけれど、私がキャスターを抱えればなんとかなるだろう。
『御主人様、私、Eカップです♪』
・・・・・・そういえば、Eだったよね・・・大きいなぁ・・・。
ハッ!?・・・今、ちょっと変な事を考えてしまった。関係ない、今キャスターの胸の大きさは関係ない!
ホント、いかがわしいのは私もだな、と思う。
頭を振って、私はボディソープ(人間用)を手にして言った。
「よし、じゃあ身体洗って、湯船にゆっくりつか・・・」
”タパタパタパタパタパ・・・”
不思議な音の先を見ると、キャスターが大きなペットボトルの液体を洗面器に移し、液体を両手でタパタパと撹拌させていた。
「・・・よしッ☆準備できました〜御主人様♪」
トロッとした液体。
どこからどう見ても、それは体を洗うものじゃない。
が、一応、聞こう。
「えーと・・・何かな?その洗面器の中身。」
私の問いに、キャスターは元気いっぱいスマイル満開で答えた。
「はいッ!こんな事もあろうかと用意しておいた・・・タマモちゃん印のローションで
”とぽとぽとぽとぽ・・・。”
「申し訳ございませんでした、御主人様。私、調子に乗ってしまいました。
いや、コレもうイケるかな、と思ってローションプレイの準備をしたんですけど。申し訳ありませんでした。
だから・・・無表情で、私の頭にMOCO’Sキッチン並に”追いローション”をかけるのはお止めくださいませ。
あ〜ん!耳にローション入っちゃいます〜!!(泣)」
私は、ただひたすら、正座するキャスターの頭に”追いローション”をかけ続けた。
・・・これこそ、正しい良妻狐の扱い方だろう。
[ キャスターと私。 Fate/EXTRA/CCC ・・・END ]
[ キャスターと私。2 ]
「お待たせしました〜ご主人様♪ラブリータマモ、春の装いで再登場です☆」
それは、購買部で購入したサーヴァント用の衣装。
言峰神父のおススメ、と聞いて購入し、早速キャスターに着替えてもらったのだが・・・。
「・・・い、いかがですか?ご主人様。」
・・・か・・・
・・・かわいい、だと・・・!?
よ、予想以上の可愛らしさだ・・・!
ウサギの耳のように長い耳がついたフード付きパーカー。
春らしいピンクのボーダーのパーカー、パーカーから見える、というか見せる下着、ショートパンツ、それらに合わせたゆるく二つ結びにし、毛先を緩くカールさせた髪型。
中身はともかく・・・雰囲気、ここまで変わるのか・・・!
どぎまぎする私の反応をキャスターは見逃さなかった。
すぐに私の顔に自分の顔をずずいっと近付け、目をかまぼこのようにして笑った。
「あら?あらあらあらあら?その表情、その反応・・・なるほど、ご主人様は、こういうのがお好みなんですね♪」
そう言って、更に私の身体にしなだれかかった。
別に、好み、というよりも単純に、キャスターに似合ってて可愛い、というだけの話だ。
「いや、なんか・・・いつもと違うし・・・あの、ホント・・・か、可愛いと思って。ホラ、フードに耳ついてるし。」
私はそう言って褒めた。
「ご主人様、それって・・・”衣装”が可愛いんですか?衣装を着た”私”が可愛いんでしょーか?」
そう言って、キャスターは目を細めた。
多分、この質問の回答次第で、今日のキャスターの機嫌と戦闘への意気込みが変わる・・・!
ここで、どちらか一方を選ぶ両極端な答えでは、ダメだ。だからと言って、どっちでも良い、というような答えもアウト。
私だって同じ女だし。何を求めているのか知っているつもり、だし。
私は、素直に答えた。
「たまには、そういう格好のキャスターも可愛くって、私は好きって意味だよ。うん、ホントよく似合ってるわ。」
そう、どちらであるかを無理に答える必要は無い。
キャスターが気にしているのは、そこではないからだ。
衣装を選べば、いつものキャスターの格好を否定する事になる。
かと言って、キャスター自体が魅力的である事も言い方次第では”じゃあ、さっきまで言ってた褒め言葉はなんだったのか”という事になる。
大事なのは、衣装と着た人間・・・どちらにしても、好きである事に変わりは無い、という事。
だから、それをシンプルに言えば良い。
「やっだ〜ん☆も〜ご主人様ってばぁ〜・・・”好き”だなんてぇ・・・・・・・もう一回言って下さい♪」
・・・良かった・・・私の答えは、どうやらキャスターにハマったようだ。
狐耳と尻尾が嬉しそうに動いている。
それが、やはりなんだか可愛らしく見えてしまい、ついつい頭を撫でてしまう。
「あ〜ん☆ご主人様からの撫で撫でタイム キタコレ〜ッ!」
嬉しそうにキャスターは私に抱きつく。
「ご主人様?タマモ、コレ着て〜二人っきりで〜デートとか〜した〜いな?」
そのビジュアルで、上目遣いとか・・・ほ、ホントに可愛いじゃないの・・・!
あざとい仕草とおねだりだって、わかってるのに、可愛い・・・!
はたから見たら、セーラー服の女と私服の狐耳娘がイチャイチャしてるなんて、シュール過ぎるのに・・・!
「・・・ふっふっふ・・・これは良いチャンスを根暗神父からいただきました。
キャスター×女主人公、と書かれていますが、良妻系サーヴァントとしては、やはり旦那様である、ご主人様に攻めていただきたいのが本音。
私から求めるばかりより、求められたいお年頃♪あの細く白い腕で、強引に私を奪って頂きたい!
というか、私受けが真理!普段ほんわかしているご主人様が私のイケてる格好に理性を失い、突如獣のように、私に覆いかぶさり、むさぼるように私の唇を・・・あ痛ッ!?」
「だ、だから!妄想、全部口に出てるから!自重してっ!」
確かに、普段抱かないような胸の高まりがあるのは事実。
それを、面と向かって指摘されると、この上なく恥ずかしいし、不覚だ!
「行くわよ!キャスター!」
すっと立ち上がり、早々にサクラ迷宮へ向かう。
「ああん!お待ちくださいませ!ご主人様〜!」
迷宮に入って、地道にレベルを取り戻す作業。
ご褒美の無いルーチンワーク乙、とジナコなら笑ってくれるだろうが、ご褒美のある無しは、この際関係なかった。
以前の状態に戻りたい。
記憶、レベル、キャスターと共に過ごし、乗り越えねばならない聖杯戦争の日々へ
「・・・よし!次で、一気に決めよう!」
「はいっ!早々に呪い殺します♪」
エネミーを倒し、経験値とsm(お金)を稼ぐ。
心の片隅で (これで、またキャスターに衣装を買ってあげられるかも) とか考えていた。
「マスター!蜂型のエネミーです!私、アイツ嫌ーい・・・じゃなくって、ご指示を!」
蜂型のエネミーは、攻撃力がなかなか高い。油断しなければ、勝てる相手だ。
「よし、じゃあ、まずガードを固めて・・・」
指示の途中で、エネミーが羽音を響かせ、こちらに向かってきた。
「ウソ!?こっちのターン中に攻撃とか!空気読めやゴラァっ!!」
咄嗟にキャスターが私に覆いかぶさり、庇う。
ドンっという鈍い衝撃がキャスターの身体から、私に伝わる。
「キャスター!?大丈夫!?今、回復のコードキャストを」
コードキャストの構えを制止し、キャスターは脂汗と苦笑いを浮かべ、立ち上がった。
「ぐぬぅっ!・・・うううう〜・・・な、なんの、これしき・・・これも愛の為ッ!
・・・こンのッ!!働き蜂は、黙って蜂蜜集めやがれってんですーッ!!」
キャスターのSKILL攻撃がエネミーを消滅させた。
消滅を確認すると、キャスターはその場に膝と両手をついた。
「〜〜〜っ!」
「キャスター!」
すぐにキャスターに駆け寄ると、キャスターは涙目で「大丈夫です」と言った。
しかし、全く立ち上がろうともしないし、ようやく立ち上がったかと思うと、生まれたての子鹿のような足並みで、全く走れない。
それは、もう大丈夫じゃない事は明らかだった。
すぐに旧校舎に戻り、桜に見てもらわないと・・・!
リターンクリスタルを使い、生徒会室まで戻ってきた。
「はぁ?蜂型のエネミーにやられた?なるほど、ドジったってワケね?油断大敵。それってマスターの責任よ?・・・桜、スキャンして。」
「は、はい!」
私の報告を聞くなり、遠坂 凛はズバリと私のミスを指摘した。
面目ない。でも、とにかくキャスターの調子を元に戻して欲しいと頼み込んだ。
「ま、言われなくても万全の状態で行ってもらわないと、サポート役のこっちも困るわけ。
・・・ていうか、キャスターのあの服どうしたの?中身はともかく、結構可愛いじゃない、あんたの趣味?」
そんな事言ってる場合か。中身はともかく、可愛いのは認めるけれど。
「あの、キャスターさん・・・動かないでもらえますか?スキャンしますので・・・」
桜がキャスターに近付くと、キャスターはカクンカクンと壊れかけのカニの玩具のように動いて、逃げた。
「い、嫌です!絶対嫌です!こんなの大した事じゃありません!一度寝たら治ります!」
「あ、あの・・・自然治癒するかどうか含めて、スキャンだけはさせてください。私は、皆さんの健康管理AIです。」
桜の言葉に、キャスターは素っ気無く答えた。
「今、貴女様に近づかれるのが、一番の健康被害というものです!良いから、ご主人様の方をスキャンして下さいまし!」
「何か、変ね・・・いや、あんたのサーヴァントって基本的に、いつも変だけれど、今日は輪をかけて変だわ。」
凛がそう言うので、私は思わず反論してしまった。
「・・・失礼ね。そんな、わかりきっている事をわざわざ。」
「ちょっと!?お二人共!?聞こえてるんですけどッ!!(凛さんは後で呪ってやる!)」
桜とキャスターがどたばたしている所を避けて、ラニ=[がやってきた。
「・・・ミス 遠坂。コレを見て下さい。先程の戦闘の解析結果が出ました。」
「サンキュー、ラニ!さっすが仕事早いわね!どれどれ・・・あら、やだ・・・モロ喰らってるじゃないの!!」
どれどれ、と私もラニの示す画面を見る。
そこには、蜂型のエネミーのお尻の針が、キャスターの尻に刺さっている静止画像が映っていた。
なんというか・・・い、痛そう・・・!見ているだけで痛々しい!!
「こんなの喰らった後で、よくも歩けたわね・・・」
「実際、歩くにもかなりの負担のはずです。・・・尻尾で隠してはいますが、動きに支障が出ています。」
「そんな・・・」
私を庇ったせいで、そんな大ダメージを受けていたなんて・・・。
「ごめんなさい・・・キャスター・・・お尻、大丈夫?」
私はキャスターの傍に近付いた。ラニの指摘通り、尻尾がだらりと下がったままだ。
「あ、いえ・・・そんな・・・あの、ご、ご主人様!ご安心下さいませ!穴は無事です!」
「良かった!・・・じゃなくて!!そんな事まで聞いてないわよッ!!」
こんな時までボケるとか、どこまでサービス精神旺盛なサーヴァントなんだろうか。
「いずれにせよ、蜂型のエネミーから受けた攻撃です。早急に治療が必要でしょう。」
「毒でも入り込んでいたら厄介だしね。」
「アナフィラキシーショックの危険もあります。」
「・・・よし。早速だけど、貴女、飼い主(マスター)としての責任を果たしなさい。」
凛とラニは話をどんどん進めていくので、全く私にはついていけない。
「え?」
「とにかく!抱っこでも何でもいいから、キャスターを抑えて。その隙に、あたし達が・・・尻を診るわ。」
そう言って、凛がいつになく楽しそうに笑った。
・・・この、ドS!そして、隠れドM!!
「い、嫌ですッ!こんな大人数に、特にあんな金に汚いドM女に尻を露出させられるなんて、屈辱以外の何物でもありません!!
ご主人様にだって、ちゃんと見てもらってないのに!!」
・・・尻をちゃんと見る機会なんて、そうそうあるもんじゃない。
「言ったわね?この駄狐ッ!!脱がす!絶対、脱がす!ホラ、抑えなさいよ!!」
凛が案の定怒り出し、ラニがそれを静かに抑止しようとする。
「・・・ミス 遠坂。脱がせるのは目的ではありません。あくまで、キャスターの治療です。あまり感情的にならない方が。」
「わかってるわよ!さあ、キャスターを治したいなら、抑えなさい!抱っこでもなんでもいいから!」
凛に言われるままに、私はキャスターに向かって、両手を広げて近付く。
「・・・るーるるるるる・・・。」
昔から、狐を呼ぶ方法って言ったらコレだ。
「それ、北の大地の狐にしか通用しませんからッ!!」
キャスターにツッコまれつつも、私はジリジリと距離を詰め、キャスターを捕まえた。
正面からの抱っこ。キャスターの毒舌は、私の胸で塞ぐ。
「・・・よし。大人しくしてね、すぐに終わるから。」
「○×☆■$%・・・(いや、これはこれでラッキー?ああ、ご主人様の胸の感触と匂い・・・たまんねーぜ!!)」
キャスターをがっちりと固定し、少し持ち上げる。
「OK!じゃ、桜、左足抑えて!あたしは右足、ラニは脱がせて!得意でしょ?」
「ミス遠坂、それ以上は禁句です。・・・脱がします。」
ラニの目に一瞬だが、すごい敵意が宿ったが、完全にキャスターは動けない。
するりとキャスターの下半身は晒された。
「ぷはっ!嫌〜!ご主人様以外のメス豚に脱がされて、尻尾もふもふされるうううう!!!」
「あ、私・・・もふもふしたいかも・・・。」
桜が、どさくさに紛れて尻尾を見た。
「こら!暴れるなッ!尻尾の毛、全部刈り取るわよ!?・・・あ、あたしも後でモフりたい。」
「・・・これは、ひどい。」
ラニがそう言った。
どっちが?と聞こうとしたがやめた。
その言葉を確かめようと、凛が尻を見る。
「何?・・・うわ!腫れてるなんてもんじゃないわよ!?これじゃ座れないじゃない!」
キャスターを抑えている私からは見えないが、どうやら相当ひどいらしい。
「桜、至急、治療プログラムの作成を。データ作成後、そのデータをサーヴァントの体内に挿入・・・これが一番早く治療効果が出ます。」
「あ、はい!治療プログラムデータ作成します。」
ラニの指示で、桜がバタバタと動き出す。
キャスターは低い声で尋ねた。
「あの、つかぬ事をお伺いしますけど・・・データを挿入って・・・まさか・・・」
ラニは、いつもと同じように穏やかに答えた。
「注射です。(ニコッ)」
「いいいいいいやああああああああああ!!ご、ご主人様!今すぐ私をお放し下さいッ!動物虐待ですッ!!」
かつて無いほど、キャスターは暴れ出した。
私は必死に抑える。キャスターの為だ!
「あ、ついでだから、エキノコックスの注射もしときましょ♪」
「狐が全部エキノコックス持ってるとおもってんじゃねー!私は寄生虫なんか飼ってませんッ!!」
かくして、治療データはものの1分もかからぬうちに、作成された。
「出来ました!」
「エクセレント。」
「じゃ、やりますか!」
なんか3人共嬉しそうだな・・・こうして見ると、皆、なかなかのS気質だ。
私の胸に顔を埋めていたキャスターは、ラニの持つ注射を見て、いよいよガタガタ震えだした。
「ちょ、ちょっと・・・?なんですか?あの注射・・・ナルトですか?それとも、ふ菓子?あんな太い注射必要ですか!?
私のキュートなお尻が、あんな太くて固くて大きい注射に壊されてしまう・・・ッ!初めては、マスターの指が良かったッ!」
「うるッさいわね!!言い回しをイチイチあっち系にしてんじゃない!この色欲サーヴァント!!」
「・・・では、行きます。」
顔を真っ赤にして怒る凛に対し、ラニは表情と冷静さを崩さない。
「ご、ご主人様ぁ〜!!助けてええええ!!」
助けを求められても・・・キャスターの治療の為だ。
「・・・キャスター・・・大丈夫、私が(抑えて)いるから。」
「良かったわね?キャスター。ご主人様が一緒よ〜。(棒読み)」
「アトラス院の誇りにかけて、すぐに終わらせます。痛みは一瞬です。・・・多分。」
「クッソ〜覚えてろ〜お前ら、末代まで呪ってやッ・・・」
”ブスリ。” ”コーン!(泣)”
キャスターの悲鳴が旧校舎全体に響いた。
そして、キャスターの全身から力が一気に抜けていき、例えようのない静寂が訪れた。
私は、キャスターの下半身をタオルで包むと、そのまま医療チームに深々と礼をし、キャスターを抱えてマイルームに戻った。
「・・・サーヴァント、大事にしなさいよ。」と凛。
「今日一日は入浴を控え、後は、うつ伏せで寝てください。」とラニ。
「あ、あの・・・これ、お尻が痛くなったら、塗ってあげてください。」
そう言って、桜は軟膏をくれた。
「ありがとうございました。」
ここにいる名医(獣医)に、感謝を。
マイルームに戻り、キャスターをうつ伏せに寝かせる。
キャスターの手が、まだ私の制服を掴んでいたので、離そうにも離れられず。
私は、そのままキャスターの傍にいた。
「う、ううん・・・ご主人様・・・?」
「気が付いた?もう、大丈夫だよ。」
私はそう言って、キャスターの頭を撫でた。
激痛による涙のあとが、頬にうっすら残っている。
「う〜ん♪寝起き一発目から、ご主人様の膝枕だなんて・・・タマモ、幸せ♪」
そう言って、キャスターは耳を嬉しそうに動かした。
・・・ここに来て、いつも通りの反応とは・・・尊敬に値する。
「頑張ったから、今日は甘えちゃっていいよ。」
「ま、マジですか!?・・・う゛・・・!!」
私の言葉にテンションを上げたキャスター。
しかし、言葉と共に尻尾の動きが止まる。
「し、尻尾動かす度に・・・尻が・・・尻がッ・・・!!」
やはり、相当痛いようだ。
「あのメス豚ぁ・・・割り箸割っても、必ずどっちかに偏って割れて、爪の間に爪楊枝が刺さる呪いをかけてやる〜・・・!!」
び、微妙な呪い・・・後半痛そう!!
「あ、そうだ・・・桜から軟膏もらったの。痛い時に塗ると良いって。」
「痛み止めですか?プリーズ!中に注入でも、止まって治るでも、痛みが取れるならウェルカムです!」
相当痛いらしいので、私は桜の特製軟膏の蓋を開けた。
「よし、塗ってあげる。」
「・・・え・・・あの、という事は・・・」
お尻出して、と言い掛けたが、不安そうにこちらを見つめるキャスターに、つい私は黙り込んでしまった。
尻を刺された上、同性とはいえ、大勢の前で尻を露出、とびきり大きな注射を打たれて、気絶。
・・・こんな思いしてまで、私を第一に優先して守ってくれた、私のサーヴァント。
「キャスター・・・守ってくれて、ありがとう。それから、ごめんね・・・」
改めて、今日の私は最低だったと反省する。
マスターとしても。
「そ、そんな!ご主人様を守るサーヴァントとして、当然の行為です!」
エスコート役としても。
「でも・・・デート、最悪な形になっちゃったし。」
「デート・・・!?」
「デート行きたいって言ってたでしょ?サクラ迷宮でデートなんて、あんまりな話だけど・・・行く所、他に無いし。でも、折角、そんな可愛い格好してるんだし・・・気分だけでもって。」
「な、なるほど・・・デート・・・してたんですね・・・そっか、私・・・今日は、旦那様とデートしてたんですね!きゃん☆」
それでも、最悪なデートだった。
相手が蜂に尻を刺される、とか。尻の治療とか。
その相手は、今、下半身をタオル一枚で隠したまま、嬉しそうに私の膝枕に頬ずりをしている。
思えば・・・デートって何をすれば良いのだろうか。
そして、相手は自分と同じ女の子。
デート先は危険がいっぱいの迷宮で、やる事といえばレベル上げ。
最後くらいは、まともにデートらしく締めたい。
「・・・キャスター・・・こっち、向いて。」
「なんですか?」
顔を近づけると、やっぱり涙のあとが目につく。
指で軽く擦ってみるが、とれない。
「ご、ご主人、様・・・」
キャスターは、何か感じ取ったらしく、私の目を見てそっと瞼を閉じた。
ごく自然な流れ。
いつもなら『やぁん☆イケ魂のご主人様の熱視線とキス出来ちゃいそうな、この超至近距離〜♪さあさあ、唇カモーン!』とか言うクセに。
・・・空気、読んだな。珍しく。と思った。
軽く触れ合わせて、一旦離す。
離した瞬間、なんだか離れてしまったのが、惜しく感じて、酸素を軽く吸い込み、また顔を近づける。
キャスターの舌が、ちろちろと私の唇と唇の間を刺激する。
それに応じて、少しだけ開き・・・。
「・・・ふ・・・・・・ぁ・・・」
マイルーム内には、呼吸と唇から発せられる音しかしなくなった。
キャスターが身を起こし、私の首に両腕をかける。
「起きて・・・大丈夫なの?」
私がそう聞くと、キャスターは優しく微笑んで答えた。
「マスター。どうか、今日の事は気になさらないでくださいまし。
私は、呪いの言葉を吐くよりも・・・こうやって、貴女様への愛を囁く事の方が、幸せなのですから。」
時々・・・
時々だけど、キャスターは・・・本当に、凄く・・・なんていうか・・・決める時は決めるというか・・・。
キャスターが私を押し倒し、小声で囁くように言った。
「お慕い申し上げております・・・これからも、ずっ・・・」
キャスターの唇が止まり、ジワジワと涙が出てきた。
・・・・・・ああ・・・そうか・・・。
「・・・お尻、痛いんだね・・・?」
「ううううううう・・・折角、良い所だったのに〜!!(泣)」
私は起き上がり、悔し涙を流すキャスターの尻尾を持ち上げて、お尻に軟膏を塗った。
「・・・痛くない?」
「うう・・・大丈夫ですぅ・・・もう恥じらいと痛みが合わさって、無茶苦茶です・・・!」
ホント、こういう所もいつも通りだ、と私は笑う。
キャスターは、ベッドのシーツの皺を指先でなぞりながら、愚痴をこぼし始めた。
「・・・ご主人様の指が、あともう少しズレて、パイルダーオンしたら、既成事実達成なんですけど〜・・・
さすがに雰囲気無さすぎっていうか〜・・・もはや、ただの事故だし〜・・・やっぱ、さっきの勢いで合体!!が良かったなぁ〜。
折角、濡れ・・・」
「だ・か・ら!!妄想、口から全部出てるっつーの!!」
”ぺちん。” ”コーン!!(泣)”
キャスターの悲鳴が旧校舎全体に響いた。
[ キャスターと私。2 ・・・ END ]