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  『樋口さんは熱唱中。』







― 敷島田商店街 は 今 不況の波に晒されている。 ―



敷島田商店街にある、五豆武神社(ごずぶじんじゃ)の巫女(アルバイト)のあたし、こと樋口咲の元に商店街を盛り上げる曲を作って欲しいと、おばさんに頼まれた。


・・・って・・・


あたしは今まで、愛をテーマに歌ってきた(?)のに、商店街を盛り上げろなんて・・・。

馬鹿にしてんのか!



……とも思ったんだけどさ…。


いや、せっかく、水島の御蔭でカタギになったんだ。アイツが利用するかもしれない商店街をこれ以上寂れさせる訳にはいかない、よな…


「・・・・・よし!やるか!」



『 敷島田商店街 活性化 テーマソング 』



〜ようこそ! NEBAR LOZE!敷島田へ!〜 

※注 NEVER LOSEと書きたかったようだが・・・。



コーラス: まったり〜まったり〜 すればいいじゃな〜い… 


ぴぎゃああああああああああああああああああああああ!(叫)


買ってイケよ!買ってイケよ!勝手に勝手に万は引くな!

買ってイケよ!買ってイケよ!勝手に勝手にドラッグアカン!


魚喰えよ!買うならやっぱり加・賀・商・店ッ!!

肉も喰えよ!買うならやっぱり不・破・精肉・店ッ!!

野菜も彩りYU・TA・KA!八百屋の木村ーァッ!!


生キャラメル今更、手を出す 洋菓子ピノキオーっ!!

エコポイントそれ以外は何にもつかない 電気屋佐藤ーっ!!


寄ってイケよ!寄ってイケよ!酔っても酔っても ゲロは吐くなァ!

寄って喰えよ!寄って喰えよ!喰っても喰っても ゲロは吐くなァ!


脱サラして、離婚寸前までして店を出した 人生かけてる 千・寿・庵ッ!!

屋台の頃からスープこだわり でも 一番人気はチャーハン 蓬・莱・軒!!

二股三股四股は当たり前!ボトルは絶対! スナック・菜々子ーッ!!



コーラス: まったり〜まったり〜 すればい〜いじゃな〜い… 


五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!


コーラス: まったり〜まったり〜 すればい〜いじゃな〜い… 

※繰り返し×2


コーラス: まったり〜まったり〜 すればい〜いじゃな〜い… 

ようこそ! 不況にNEBAR LOZE!敷・島・田・商・店・Gay!!!


※注 ”NEVER LOSE”と”商店Guy”と書きたかったようだが・・・。




「ふっふっふっふ・・・これで、盛り上がるな・・・この商店街も!!」


・・・その後、この曲が商店街で一回流れただけで、客が「なにコレ…」とドン引きしたのは言うまでも無い。








『樋口さんは熱唱中。その2』



― 敷島田商店街 は 今 不況の波に晒されている。 ―


敷島田商店街にある、五豆武神社(ごずぶじんじゃ)の巫女(アルバイト)のあたし、こと樋口咲の元に商店街を盛り上げる曲をもう一度作って欲しいと、おばさんに頼まれた。


・・・って・・・


前回全然ダメだったって聞いただけでもショックだったのに、またかよ!馬鹿にしてんのか!!



……とも思ったんだけどさ…。


せっかく、水島の御蔭でカタギになったんだ。アイツが利用するかもしれない商店街をこれ以上寂れさせる訳にはいかない、よな…やっぱり。

少しでも、アイツに届けばいい。

無表情なあの面を笑顔に出来る・・・そんな歌を作りたい・・・。


ああ、そうか。そうやって、最初からシンプルに作れば良かったんだよな。



『 敷島田商店街 活性化 テーマソング 』

〜 LABU☆TOREJYA敷島田商店街 〜 

※注 LOVE☆Treasureと書きたかったようだが・・・。


水島:(さあて、今日は何にしようかな〜・・・やっぱ鍋にしようかな・・・。)


♪あなたの探し物は〜なんですか?お買い物していきませんか?♪

水島:(あれ?こんなテーマ曲、商店街でかかってるのか・・・なんか声に聞き覚えが・・・。)


♪探してるのは、舞茸ですよね?エリンギも良いですよ。♪

水島:(いきなりきのこ類に限定して、押し付けてきたんですけど!?)


(叫び) ぴぎゃああああああああああああ!!!

水島:(な、な・・・なんだ!?デスメタルか!?)


♪この商店街は素敵な所〜働く人の笑顔〜つい消費税も忘れちゃいます〜♪

水島(忘れちゃダメだろ!)


♪HA〜 ノスタルジックでふふふ〜ん 大久保薬局〜♪

水島(どんな薬局だーッ!情報少ねえ!!)


♪HA〜 ナウでヤングな古着屋 TOMATO〜♪

水島(絶対、若者の洋服売ってないだろ!) 


♪一口召し上がれ!木口豆腐店のこんにゃく!!♪

水島(そこは豆腐を押してやれ!!)


♪一口召し上がれ!洋菓子店KOMONの大福!!♪

水島(だから、そこはケーキを押せ!!)


♪あなたに笑顔でいて欲しいから、いつでも笑顔でお迎えします♪

水島(ま、まともになったか・・・?)


♪見て、歩いて、感じて欲しい 楽しいあなただけのお買い物タイム☆♪

水島(お、おお・・・安定してき・・・)


♪買え!全部!全部買っていけ!冷蔵庫・タンスを埋め尽くす程ーッ!!!♪

水島(・・・てなかったーッ!!いきなりハードな売り込み始めたーッ!!)


♪買え!買っていけ!全部買っていけ!損得は各々で判断せえやーッ!面倒臭い!♪

水島(急に乱暴になって放り投げたーッ!!)


♪オンリーワン!ナンバーワン!あなたの探し物は沢山あるよッ!♪

水島(沢山あったら、オンリーじゃねえ!!)


♪世界一じゃなくても、あなたのお役に立ちたいの〜♪

水島(・・・この不安定な歌詞は、間違いない樋口さんだ・・・!)


五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

水島(自分の所の神社宣伝してる・・・しかも、いやらしい程、賽銭の札を要求してるーッ!!)


♪探し物なら、自分でみつけろ!血眼になって探しても無いなら諦めな!♪

水島(見も蓋も無い歌詞だ・・・!!)


♪いつでも、どこでも笑顔 LABUいっぱいの敷島田商店街♪

水島(や、やっと終わりか・・・これで、買い物に集中でき・・・)


五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!


♪いつでも、どこでも笑顔 LABUいっぱいの敷島田商店街♪


五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!

五豆武・五豆武・五豆武神社!賽銭なら札で頼むZE!



水島(落ちつかねえ!!!)



・・・その後、この曲が商店街で一回流れただけで、客が「ホントになにコレ…」とドン引きしたのは言うまでも無い。







 [ 樋口さんは熱唱中。〜水島さんに出会う前〜 ]




・・・水島と出会う前・・・あたしは、バイクに乗って歌うのが好きだった。


いや、歌うというより、単に騒ぐのが好きだったって言った方が正しいのかもしれない。

物足りない、と感じつつも、あたしは音程もリズムも何かもを無視して流行の歌を口ずさんだ。


でも、本当に歌いたかったのは・・・流行の歌なんかじゃなかった。



 ― 樋口咲 高校1年生 5月 ―


きっかけは、親が離婚だなんだと言い出した事。

毎晩毎晩耳を塞ぎたくなるような両親の言い争いに、あたしは・・・結構苦しんだ。


見るに見かねた神社の巫女やってる叔母さんがあたしを連れて家から出してくれた。


騒音も転校も免れたけど、気持ちは、なんだか空っぽのまま。

何もする気が起きなくて、叔母さんは”5月病ね”なんて笑ってはいたけど、あたしは笑えなかった。

本当に、どこか悪いんじゃないかってくらい、あたしは塞ぎこんだ。


そんな時、いつもあたしの傍にいたのは・・・『歌』だった。

聞いている時、何もしないで良いから、ずっと聞いていた。

雑音じゃなく、ちゃんとした歌を頭に入れる事で、楽になった。

だから、MP3プレーヤーにお気に入りの曲を入れて、暇さえあれば、ずっと聞いていた。


そんなある日。



「ねえ、樋口さん。良かったら、ウチらとカラオケ行かない?歌・・・好きなんでしょ?」


クラスメイトの中で面倒見が良い3人組が、あたしに声を掛けてきた。

何もやる事が無かったあたしは・・・こくりと頷いた。

3人組は嬉しそうに笑った。


「良かったー!断られたらマジショックだったよー!」

「行こ!行こ!TDFK48の新曲フリもばっちり覚えてきたんだから!」

「樋口さんの歌も聞きたいな〜・・・あ、ウチらに気を遣わないで、好きな曲なんでも歌って良いからね!」


笑顔でそう言われて、あたしは正直戸惑った。


「・・・好きな、曲・・・。」


好きな曲を歌えといわれたら、真っ先に思い浮かべる曲。

(でも・・・。)


あたしは迷っていた。

そして、案の定、カラオケ店に到着して、トップバッターで歌わされる事になった。


「樋口さんの歌ってなんだろ?洋楽かな?」

「演歌だったりして〜!」

「ウチらも懐メロとかアニソンも時々歌うから、本当に気にしないでね!」


その笑顔と「気にしないでね」の言葉を、あたしは・・・信じた・・・。


その結果。



「♪走れ!断ー罪ッ!切れ!散れ!飛べ!!ぼくらの宇宙警察〜ダンザイバーあああぁ!!♪」


よし。歌いだしは完璧だ。

最低視聴率だった上、P○Aから抗議殺到で、たった9話で打ち切られてしまった特撮ヒーロー『宇宙警察ダンザイバー』のテーマソング!!

ちょっとマニアックだけど、小さい頃これが好きだったあたしは、これが一番熱く上手く歌えるんだ!




・・・・・・・・・・・あ、あれ?



向けられたのは冷たい視線、そして・・・。





「「「・・・・・何ソレ・・・。」」」





その1週間後、あたしはグレた。





何が、気にしないでね♪だよ!!思いっきり気にしてるじゃねえか!!

もう何もかも嫌になったあたしは、不機嫌な面で夜の街を歩いて・・・。


そして・・・あの『愚麗都 死守蛇阿頭』のメンバーとつまんない事で喧嘩したんだった。


殴りあう事も、何も怖くなかった。

力いっぱい殴ること、喧嘩に勝った時の爽快感があたしを支配していた。


音楽を聴くだけで、何の目的もなく静かに過ごしていた自分とは違う自分を発見出来て、嬉しかった。

喧嘩に明け暮れる毎日が始まった。


そんなあたしに、愚麗都 死守蛇阿頭・・・当時総長だった、めぐみさんに声を掛けられた。


「アンタ、良い目して喧嘩するね・・・どうだい?あたしとやらないか?あたしに負けたら、うちのチームに入れ。」


そして、小さい喧嘩に勝っていい気になっていたあたしは、めぐみさんに見事ボコボコにされた。

でも・・・めぐみさんは、負けたあたしを馬鹿になんかしなかった。


「・・・まったく良い根性だ。来いよ!うちらの所に!」


こうして、あたしは愚麗都 死守蛇阿頭に入り、めぐみさんの片腕になった。


「咲、あたしらは自由だ。好きな事、真っ直ぐにやれ!」


めぐみさんはそう言って、いつもあたしに声を掛けてくれた。

悩みも聞いてくれた。やりたい事が見つからないなら、見つけるまでここにいろ、と言ってくれた。


やがて、両親の離婚を叔母さんの口から聞かされ、あたしはいよいよ本格的に居場所が無くなった。

このどうしようもない、持って行き場のない想いを、あたしは拳でぶつけた。


いつもの喧嘩で勝利を勝ち取った後、あたしは、なんとなく鼻歌を歌った。

最初はめぐみさんの好きな歌。めぐみさんは喜んでくれた。

それが妙に嬉しかった。


それから、あたしはめぐみさんに喜んでくれる為に、喧嘩に勝ち、歌を歌った。


そんなある日、めぐみさんがガタイの良い男と二人で現れた。


「あたし、ガキ出来たんだ。籍も昨日入れてきた。・・・今日から、愚麗都 死守蛇阿頭 総長は、この咲だ。いいね?みんな!」

「はい!」

「え?マジっすか?」


「咲、チーム頼むぜ。お前の自由に、やってくれ。」

「・・・は、はい!」



めぐみさんがいなくなって、あたしは、また何にも無くなってしまった想いでいっぱいになった。

好きな歌を口ずさんで、バイクで走り回った。

無茶な喧嘩もやってきたし、後輩だってたくさん出来た。

みんな、あたしの歌を褒めてくれた。

でも・・・それはあたしが総長だから、で・・・気を遣ってるんだろうなってあたしにはわかっていたし。


大体、本当に歌いたいのは、流行の歌じゃない・・・それが引っかかっていた。


でも、あのカラオケ店のような失敗はしたくなかった。


歌いたい歌が歌えない、悶々とした想いは募っていった。

多分、否定はされないだろうけど、それはあたしが総長って看板を背負っているからだ。


そんなある日、めぐみさんが、小さな赤ん坊を背負ってやってきた。

「よお。」

「あ、めぐみさん!チーッス!!・・・あ、生まれたんですね!」

「まあな。男の子。”龍貴”っていうんだ。」

「へえ〜!目と鼻がめぐみさん似ですね!」

「あ、やっぱ、そう思うか?」

赤ん坊をあやすめぐみさんには、すっかりあの頃の総長の影なんか無かった。

自分の子供を守る優しい母親。

めぐみさんには、やる事がある・・・あたしには、無い。


「なあ、咲。」

「あ、はい!」


ふと、めぐみさんがあたしの目を真っ直ぐに見つめて、言った。


「・・・お前さ、歌、本当に好きなのか?」

「・・・え・・・?」


「なんかさ、好きな事してるって割には、楽しそうに見えねえんだよなぁ・・・。」

「あ・・・それは・・・なんつーか・・・」


「・・・最初にあたしがお前に言った言葉覚えてるか?・・・”自由にやれ”ってな。咲は、まだまだ自由じゃねえよ。まだ、自分のルールに縛られてる。解いちまえ。そんなもん。」

「めぐみさん・・・。」


あたしは、何も言えなかった。


あたしは・・・自由に、歌を歌いたい。

だけど、その一歩に・・・情けない事に、まだ、ビビってたんだ。



そんな、ある日。


コンビニにバイクを停めて、入ろうとした時。

道をものすごい勢いで走ってくるOLっぽい女が見えた。


(な、なんだ・・・?)



「はあはあ!・・・♪走れ断〜罪!♪って歌ってる場合じゃねえよ!」



(なっ!?)


間違いない、あのフレーズは”宇宙警察ダンザイバー”だ・・・!

あのマニアックな特撮のテーマソングを知ってる・・・しかも、街中を走りながら思わず口ずさむなんて・・・アイツ、出来る!!


(・・・あいつ・・・一体・・・!?)


あたしは、すぐにバイクにまたがり、あのOLの後を追った。

OLはものすごい勢いで走っていて、バイクでやっと追いついた。あたしは、その女の横顔をチラリと見た。


「はあはあはあはあ・・・!」


真剣で、どこか必死な目。

誰も寄せ付けないような目。


”ドクン・・・!”


その女を見た瞬間、あたしの体に電気が走ったような衝撃が来た。

ま、まさか・・・そんな筈は、ない。

あたしは頭を振って、今抱いた想いを消した。



”ビビー!!”


「!!」



気が付けば、信号は赤信号で、あたしは急ブレーキをかけたが、バランスを崩し、道路に転がった。


(くっそ・・・ツイてねえな・・・!)


立ち上がれないあたしに向かって、車はクラクションを鳴らす。

レディースの女がバイクで事故るのは、自業自得だとでも言いたげに。


クソ・・・こうなったら自棄だ。轢くなら轢きやがれ。


あたしは、そのまま道路の真ん中に転がった。


すると。


「・・・大丈夫ですか?救急車呼びましたから!」

「・・・あんた・・・!?」


それは、さっきのOLだった。あたしの腕を取り、肩にかけると道路脇にすぐに連れて行かれた。

メットを被ったままのあたしは、フラフラで、されるがままだった。

そして、OLはまた道路に戻って今度はバイクを立て直し、こっちに持ってきた。


「・・・じゃ!私はこれで!!」

「・・・ちょ、ちょっと!待て・・・痛ッ!」


OLは、またものすごい勢いで走り去っていった。



(何者なんだ・・・?あの女・・・自由すぎる・・・!)



年上の女。

”宇宙警察ダンザイバー”を知ってるマイペースで自由な女。

そして、あの女の事を考えると決まって、胸が苦しくなる事。



それしか、解らない。

解らないが、これだけは確かだった。



あの自由な女みたいに・・・ダンザイバー好きなの、あたしだけじゃなかったんだって・・・。



あたしの目の前から走り去っていく、あの女のカッコイイ後姿が今だって目に焼きついている。


あいつに、あたしの歌を聞かせたい。

正真正銘、あたしだけの自由な歌を、あの女に聞かせたい。

あたしをもっと知って欲しい。アンタの自由な行動で、あたしがこんだけ変われたって事を知って欲しい。


それがわかった瞬間、あたしは何かが吹っ切れた。


・・・で、その時の想いを、あたしは詩にした。


好きな事を自由に。

あたしは、自分で歌を作る事にした。

流行の歌を歌うより、この方があたしに合っているという事に気付いたんだ。



どんどんフレーズが生まれてくる。


楽しくてたまらない。

こんな、こんな世界もあったのか、とあたしは驚きと共に夢中になっていた。



「・・・よし!出来た!”マイ・エンジェル”!!」



あとは、これに曲をつけて、歌にしたらいいんだ。

流行の歌は、もうやめた。



「総長!総長の言ってた女、見つかりました!名前は、水島だそうです!」



あたしはギターを、ギターケースに入れて、振り向いた。



「よし、連れて来い。あたしはそいつに用があるんだ。」

「はい!!」




― そして、現在 ―



「咲、また歌作ってるの?」

「あ、叔母さん・・・」


あたしは、神社の巫女をしている。

グレても、叔母さんはいつも温かい食事をあたしに作ってくれた。

だから、ここは好きだ。


居場所が無かったんじゃない。

居場所があった事に、あたしが気が付かなかっただけなんだ。

それを気付かせてくれたのは・・・



「”サクラ・ブルー”?また変わった歌ねぇ?」

「ああ、まあ・・・この歌を届けたい奴がいるんだ。」



『サクラ・ブルー(仮) 作詞作曲 樋口咲』


ねえ、サクラが散り始めたよ また季節が移っていくんだね

ねえ、夏はどうする? 海でもキャンプでもいいよ

あなたの行く所なら、競馬場でも、トイレでもついて行くわ


どうしよう 心の臓物DOKI☆DOKI!

あなたが5mm横にいるから・・・


サクラの花びらがヒラヒラ〜 私のお父さんもヒラヒラ社員〜

桜の木にドロップキックしたら、またどさっと散っていくわ

AH・・・ 儚いね!


本当は、秋が好き〜 本当は〜パスタを箸で音立てて食べたい派〜

あなたには、まだ言えない言葉たくさんあるけど・・・


これだけは言わせて!


AH・・・ 好きだよ!


台詞『ねえ、いつまでもサクラなんか見てないで、私を見て・・・あ、そうそう、今日は私が誘ったんだったね。メンゴ・メンゴ〜☆』


ねえ、象が突進したら サクラ散るどころか、木が折れるよね?

ねえ、夏はどうする? もうすぐそこまで来てるよ

あなたが行きたい場所に私を連れて行って。ていうか、連れてけ。



どうしよう 走り過ぎて片腹☆痛い!

あなたが横断歩道を渡ろうと急に走りだすから・・・


サクラの花びらヒラヒラ〜 私の髪の毛バッサバサ〜

桜の木は折ったらダメ!桜の下に死体が埋まってる話も出来ればしないで!

OH・・・ 飽きたから。


本当は秋が好き〜 本当は〜外出そんなに好きじゃない派〜

あなたには、まだ言えない生態を隠している私だけど・・・


これだけは言わせて!

AH・・・ もう帰ろ!




待ってろ、水島・・・あたしの歌、きかせてやるぜ。



水島「へっくしょん!・・・何故だ・・・悪寒が・・・!!」




― 樋口さんは熱唱中。・・・END ―




あとがき

困った時はコレだ、と神楽が勝手に思い込んでやってしまう、ストレス発散SSシリーズでした。