[ もしも水島キャラでキャバクラ営業したら。 〜 忍さん、ご指名ですけど、それ以上飲まないで下さい。編 〜]


はあ・・・。

今日は、本当に疲れたなぁ…。



なんでアルバイトだと、客はああも高圧的な態度で接してくるんだろう…。

正社員にもクレームつけて、土下座させようとするなんて…理不尽だ…。


たまたま、常連の婦警さんが止めに入ってくれたから良かったものの…。


あんな客がまた来たらって思うと、笑顔で”ようこそ、いらっしゃいました”なんて言えないよ…。


明日から、どんな顔でいらっしゃいませって言えばいいんだろ…。


はあ・・・。


ってな事を考えているうちに、また来てしまった・・・。

本当にクセになるわね、この店・・・百合は、まだあんまりわからないけれど・・・。



「いらっしゃいませー!おや、元気が無いですね?」


ええ、ちょっと仕事で色々あって落ち込んでしまって…

だから、なんというか…癒し系っていうか…落ち着いた感じの方を…。


「そうでしたか・・・では、忍さんはいかがですか?」


そういえば、彼女も人気だって聞いたわね。


「忍さんなら、色々話を聞いてくれますよ。聞き上手ですから。」

じゃあ・・・忍さんで。


「かしこまりました………あ、お客様、忍さんには3杯以上飲ませないように。」

・・・え?なんで?弱いの?


「・・・そういう訳では無いんですけど・・・お約束していただけますか?」

う、うん・・・別にいいけど・・・(お酒を飲む仕事なのに、制限されるなんて…。)

「ありがとうございます。それでは、忍さ〜〜〜ん!」


忍「はじめまして、ご指名ありがとうございます。忍です。」


(確かに・・・落ち着いた感じの大人の女性、なのに・・・)


忍「とりあえず、お酒飲みませんか?」


はい。(…笑うと、かわいい!)


忍「どれにします?」

(メニュー表をそっと広げてくれるし…)


忍「おススメは・・・この焼酎はどうです?芋だけど、すごく飲みやすいのよ?」

へえ〜…(丁寧な説明だなぁ…)

忍「あと・・・このワイン、値段の割にすごくフルーティーで甘みがあるタイプなの。こっちの白は辛口だけど、スッキリしてるの。」

へえぇ・・・(お酒詳しいっていうか…)

忍「でね?この日本酒は、先日の日本酒のコンテストで銀賞を取ったもので、個人的にはこれが金賞を取っても良かったんじゃないかなって思うくらい美味しいの。」


へ、へえ・・・(この人、お酒大好きなんだな…。)


忍「・・・あ、ごめんなさい・・・私、お酒の話を一人でべらべらと・・・!」


あ、いや…良いんです…えっと…じゃあ忍さんのおススメのヤツを下さい。


忍「クスッ…わかったわ、じゃあ芋焼酎二つね。」


(忍さん、嬉しそう…!)


忍「さて、と・・・凄く疲れたような笑顔だけど、どうかした?」

え!?わ、わかるもんなんですか!?



忍「ごめんなさい、今のは、カマをかけたの。」


あ・・・そ、そっか・・・。

実は……仕事で…色々…ああ、いや、ここで愚痴るのはマナー違反ですね…


忍「良いんじゃないかしら?愚痴って、流しすぎても毒だけど、溜めておくのも毒だもの。

飲み込むのは、お酒だけにして・・・はい、グラス。」


あ・・・ありがとうございます、乾杯。


忍「乾杯…(ゴクゴク…)」

お、意外と良い飲みっぷりですね。(・・・あれ?弱いんじゃなかったのか?)

忍「あ、つい…ホント、コレ美味しいのよね。さあ、話してみて?楽になるかも。」


あ・・・じゃあ・・・話します。実は今日、私のアルバイト先にすごく嫌な客が来たんです。

すごく横柄な態度だし、店の中で大声出して騒ぐから、こっちも注意したんですよ。

他のお客様の迷惑になりますのでお静かにお願いしますって…。

そしたら、逆ギレして”客に向かってその態度はなんだ”って物凄く怒り出して・・・挙句・・・

”お前みたいなアルバイトじゃ話にならない、店長か、せめて教育を受けている正社員を呼べ”って言い出して・・・。

正社員の人が出て来たら、今度は一緒に土下座しろって言い出して・・・。


忍「・・・うん、それは確かに迷惑なお客様ね。」

困ってた所に、常連の婦警さんが止めに入ってくれて…なんとかなったんですけど…

でも…情けなくって…

忍「どうして?貴女は、自分の仕事をしたんでしょう?」

そう、なんですけど…でも、アルバイトだからって言われて、何も出来なくなってしまった自分が…情けないなって。

・・・(ゴクゴク)・・・もしも、私が正社員だったら、あんな言われ方されなかったかも・・・。


忍「・・・アルバイト、正社員関係なく、その場にいた貴女が、その迷惑なお客さんを注意しなかったら

きっと他の沢山の人が、嫌な時間を長く過ごす事になっていたのかもしれないわ。(ゴクゴク…)

貴女は、他のお客様にとって良い事をしたのよ。」


そう、かな・・・?あ、すみません、コレもう一杯ずつ下さい。


忍「そうよ。お客様…いいえ、人との縁って不思議なものでね…(ゴクゴク)

残るべき縁は決まっているのよ。だから、本当に大事な縁…本当に大事なお客様を大事に出来ないお店は、長くないって言われてるの。

その縁を守る立場である店員さんに、アルバイトも正社員も関係ないと思う。(ゴクゴク)

だから…貴女は、今日、とても大事なお仕事を終えたのよ…でも、ちょっと辛かったのよね?」


・・・・あ・・・ゥ・・・うん・・・そうです・・・辛かったんです・・・ッ!(ゴクゴク)

ぷはあ…!もう一杯下さいッ!


忍「うんうん、頑張ったわね…飲もう?(ゴクゴク)」

はいッ!(ゴクゴク)おかわり!


忍「そういう風に笑ってた方が可愛いわよ?(ゴクゴク…)その笑顔で”いらっしゃいませ”って言われたら、私は嬉しいなぁ。」


あ・・・そんな・・・いや、私は忍さん程、笑顔可愛くないですよ・・・あれ?そういえば、忍さんってお酒弱くないんですね?


忍「んー?どうしてそんな事を聞くのー?」

受付の人が3杯以上飲ませないようにって・・・今、何杯目ですか?


忍「えーと・・・・・・・7杯目?いや・・・どうだったかしらぁ?もう数えてもないわよーあははははは!」


え!?そうなんですか?いや・・・あれ?忍さん?


忍「ほらぁ!飲みなさいよ〜!辛いって愚痴るより、今をしっかり生きろー!飲めぇ!」

え・・・!?さ、さっきまでのシリアスな空気は!?


忍「・・・おぉい・・・飲めよぉ!生きる為に飲めよ〜ぉ!ていうか、飲ませなさいよ〜!!」

 ※注 飲酒を強要してはいけません。


ちょ・・・ちょっと・・・あれ?も、もしかして、受付の人が3杯までで止めろって言ったのは・・・!!


「やってしまったようですね…?」

あ、受付のお姉さん!!ど、どうしちゃったんですか!?この人!!


「忍さんに飲ませすぎると、そうなるんですよ…だから言ったのに…責任取って、付き合ってください、お客様。」

え!?付き合うって・・・!!






― 1時間後 ―





忍「ふは〜ああぁっはっはっはっはっは!ほらぁボトルだー!!」


優しかった微笑が、今は魔王のような邪悪な笑みに見える・・・

すごい・・・人は・・・ここまで酒で変わるのか・・・!?

も、もう飲めません…!



忍「もう、飲めない?」

はい・・・


忍「・・・からの〜〜?」

いや、飲めないです!その続きは無いですッ!(泣)

た、助けて〜〜!!



「お客様が、飲ませたんですからね・・・」


・・・意外と冷たい!!



詩織「失礼・・・そのお酒、いただける?」

し、詩織さん!!


忍「・・・いただいちゃって〜♪あ〜おっきいおっぱ〜〜〜い☆」


・・・胸を揉まれながら、ボトル飲んでる詩織さん・・・か、カッコいいんだか悪いんだか・・・。


火鳥「忍ねーさん…いい加減にしなさいよ…何度目だと思って…」

忍「あー!ちょっとぉ〜どのくらいおっきくなったのか、お姉ちゃんに確かめさせなさいよ〜!!!」

火鳥「ちょ!?ぎゃああああああ!?やめろッ!つ、潰れるッ!!」


・・・あ・・・ああ・・・あんなに怖そうな女の人がカンタンに・・・!!


花崎「し、忍!お客さんの前で・・・ぎゃあああああ!!!」


ま、まだ指名していない人ーッ!!


忍「よーし!しこりがないか、触診してあげるわ〜マンモグラフィ忍でーす☆」


・・・・・ひ、ひどい・・・・!


忍「・・・ついでに・・・直腸検診もしてあげようかな〜・・・☆」

火鳥「み、水島!アイツを囮にすればなんとか・・・あ!いないッ!!」

「さっき、裏口から逃げました。」


あ、ああ・・・な、何故こんな事に・・・!?

お酒を飲んだだけなのに・・・!!



???「おわかりいただけましたか?愚痴もくすりも過ぎれば、ただの毒!」


だ、誰ですか!?反省しましたから、は、早く助けてー!!


君江「厨房担当・源氏名はキミティ…第一回からのおつまみや飲み物は全て私が用意して・・・」


どうでもいいから、助けてーッ!!!(泣)


忍「お?…熟女ー発〜見〜〜〜〜〜〜」


君江「・・・お嬢様・・・」


忍「・・・あ・・・」


君江「私、あれほど気をつけるように、言いましたよね・・・?」


忍「・・・ははっ・・・気をつけても、飲んじゃったも〜〜〜ん・・・」


君江「お嬢様・・・(怒)」






―――――店の空気が変わっ・・・!!



「お客様!こっち!こっちです!裏口から避難してッ!」


そ、そんな事言ったって・・・!!




君江「キミエ・ストライク・セカンド!!!!!」




ぎゃああああああああああ!!ば、爆風がああああああああ!?










  ― しばらくお待ち下さい。 ―












・・・・・・・・・。


はっ!?ここは!?私は・・・一体!?


「お客様、今日の営業はここまでです。またのお越しをお待ちしています。これ、おしぼりです。その返り血を拭いてください。」


え?あ・・・はい・・・なんかすみませんでした・・・でも、また必ず来ます・・・。


「・・・お待ちしています。お−い!誰かー!担架持って来てー!!」




何がなんだかわからなかったけど・・・また来たくなる不思議・・・!!






 ― 忍さんを指名するとやっぱりこうなりましたね。 END ―








[ もしも水島キャラでキャバクラ営業したら。 〜 海お嬢様、ご指名です。編 〜]





前回の記憶は曖昧だけど・・・また来ちゃった。




「いらっしゃいませ!どのホストガールに致しますか?」

えーと・・・前回はどの子と遊んだのかな?


「・・・・・・・・・・どのホストガールに致しますか?」

・・・答えないの?



「まだまだ、お客様とお会いできていないホストガールは、いっぱいいますよ!」


・・・うん、前回のホストガールは思い出せないけど・・・あ、この子は?

この気の強そうな子!この子はどうかな?前回遊んだ?


「・・・いいえ!大丈夫です!海さぁ〜んご指名です。」


海「・・・はい、呼ばれたから来たわよ。よくもあたしを呼んだわね?気が済んだ?…帰るわよ?」


え、ええ〜…?ま、待ってよ!せっかく初対面なのに!


海「・・・あたしで、いいのね?」


あ、はい・・・貴女がいいです。


海「もっと大声で宣言しなさい!!」

はい!海ちゃんが良いです!!


海「もっと!」

はいッ!私は海ちゃんが良いですッ!!



海「・・・じゃあ、聞くけど・・・どうして、一番初めにあたしを指名しなかったのよ?」


え・・・・?

いや、それは・・・(一番乗りの人が決めたから)・・・なんとなく。


海「・・・”なんとなく”ゥ・・・!?・・・じゃあ、今日あたしを選んだのは、仕方なくって訳?そういう事よね?」


い!?いやいや!何を言い出すの!?


海「初回で選びもしないホストガールを指名して何が面白いのよ?お試し気分であたしを選んだの?」


い、いやいや!そんな事ないってば!どうしてそんな事を言うの!?


海「一回選んだホストガールはポイなんでしょ?」

い、いや、そんな事は・・・!


海「今日だって、馴染みのホストガールじゃなく、あたしを選んでるじゃないの。」


いや・・・私は、ただ…いっぱい女性がいて、話してみたい人もいっぱいいるし・・・迷って迷って・・・先日は記憶喪失だし・・・。

そんで、迷った挙句今日は海ちゃんとお話したかった・・・それだけだよ!?


海ちゃんこそ、そんなに私とお話したくないの?


海「あ・・・いや・・・だ・・・だって・・・・・・妥協で選ばれてたら嫌じゃない・・・

ただでさえ、いっぱいいるしさ・・・皆、結構・・・可愛かったり、美人だったり、お酒もぐいぐい飲めちゃうし・・・


・・・それに比べて、あたしは・・・何も・・・。」


あ・・・。

(勝気だけど、本当は自分に自信がないのかな?)

あのね・・・私は・・・本当に今日、初めて海ちゃんとお話しながら飲みたいなって思ったから、指名したの。

だから、妥協でも何でもないの。


海「・・・わかったわよ。・・・じゃあ、ドンペリを注文して。」





・・・はい?





海「聞こえなかったの?ドンペリよ!ドン・ペリニヨン!」



あ、いや・・・庶民の私は、ビールで・・・。


海「誰があんたの注文聞いたのよ!あたしが飲むの!飲みたいの!」


え、ええ!?でも、すごい高いんじゃ・・・!?


海「ちょっと!ドンペリをグラスで・・・あと、この客に・・・キンキンに冷えたビールをあげて!」


ああ、勝手に注文しちゃった・・・。

(・・・あ、でもちょっとだけ気を配ってくれた・・・ちょっとは優しいのかな・・・)


海「はい、乾杯。」


・・・乾杯。

(グラスを持って静かに飲む姿は静かで気品たっぷりだ。

静かにしている横顔は、まるでお人形さんみたいで、見とれてしまう・・・!

・・・この人、ツンツンしてなければ、凄く美人だ!!)


海「うん、美味しいわ。」


あ、本当に?良かった・・・そんな風に笑ってくれるなら、注文してよかった!


海「な!?何言ってるのよ!!」

いや、笑顔がすごく可愛かったから・・・。


海「ほ、褒めても値引きしないわよ!?みえみえのお世辞言ってる暇があるなら、注文しなさいよ!・・・あと・・・ありがと。」


(うーん・・・これが、ツンデレか・・・!)


海「・・・じゃ、面白い話でもしなさいよ。」


ええ!?む、無茶振りでしょ!!


海「あたしを楽しませなさいよ!指名したんでしょ?何の為に、あたしが指名されてやったと思ってんのよ!」


う、うひゃああああああああ!?

飴と鞭の落差がひどいいいいいい!!!


海「・・・あたしが・・・鞭打ってるって言うの?そんなにひどい?楽しくない?」


(・・・あ、いや・・・そんな上目遣いで不安気な表情で見られたら・・・ドキッとしちゃう・・・!)


そ、そんな事はないです。楽しいです。




海「そうよね?じゃあ、面白くて百合っぽくて、エロくなくて、あたしの心を揺さぶるような話をしなさい。」



ハードルが高すぎる――ッ!!!



でも・・・また来たくなる・・・不思議・・・!!





 ― 海さんを指名するとこうなりました END ―










あぁ・・・今日もダメか・・・。

あれから、お店の前を何度も通りかかっているけれど『本日休業』の札が掛けられていて、行けない…。

やっぱり、私のせいなのかな…。


そういえば、ホストガール達はお店が休みの日って、何をしているのだろう?


・・・・あれ?よく見たら・・・店の中からうっすら光が見えるような・・・?



「や、やめて!二人共!」


ん?


忍「・・・いいの。止めないで頂戴。」

詩織「そうね、元はと言えば、自分の責任だもの。ねえ?忍さん。」


ああ!美人が二人睨み合ってる!


忍「私が不甲斐ないせいで…店を半壊させてしまった事は悪かったと思ってはいるわ…!」

詩織「そうね。私が酔った貴女の尻を…汚い汚いベッタベタの!その尻を拭った…その事実も認めた上で謝罪して。」



忍「た、例え話とはいえ、私、尻は汚くないわよッ!!貴女に助けてもらった事は感謝しているけれど…!」

詩織「だから、ちゃんと謝って。ほーら、頭(こうべ)を垂れなさい。」


・・・こ、これは・・・前回の事でNO.1とNO.2が喧嘩しているの!?

前回のキッカケを作ったのは私でもあるし、止めに入ろうかな…。


忍「ま、前々から思っていたけれど、貴女って…水島さんの前と彼女がいない時で態度が違うわよね?

お客さんの前でも、そういうの良くないと思うんだけど。ホストガールとして。」


ああ、いるよね〜二面性のある女。

男の前だけぶりっ子とか、古典的だけど…。水島って、あの水島さん?


詩織「ふっ…態度が違う?当たり前じゃない。女たるもの、態度や仕草も使い分けてこそ、よ。

ありのままだけでしか勝負出来ない貴女とは違うの。根本的にね。」


ああ・・・ある意味潔いけど、素直に褒められない!

すごい、ネチネチと嫌な会話してるなぁ・・・やっぱりダメだ!止めに入らなきゃ!


待ってください!!


詩織・忍「「貴女は、先日のお客さん(原因の一端)!?」」


二人共、喧嘩はやめて下さいっ!

お店だって、こんなに壊れているのに、ホストガール達の関係まで壊れちゃったら、私悲しいです!


蒼「そうだよ!お姉ちゃん(原因の一端)の言うとおりだよ!」

忍「蒼ちゃん…!?」


蒼ちゃん・・・それに貴女は・・・!?


水島「水島です。話は聞かせてもらいました。殆ど忘れてますけど。」




詩織「じゃあ、聞いていないって事ね。」

オイッ!!


水島「ここは、ひとつ・・・飲みましょう。」


へ?

水島「今まで、良い事も悪い事もありました。それをお酒と一緒に喉を通過し、飲み干したら、それらは全て自分のモノです。」


・・・・はあ?


蒼「つまり、誰かが悪いって責め続けるのはもう止めようって事。

それぞれ自分の悪かった所を反省して、お酒と一緒に飲み込んで忘れちゃおうって事・・・だよね?」


水島「・・・・・・・そうです。多分。」


適当すぎるわ!!!


まあ、いいか・・・仲良く平和に飲んで、忘れちゃいましょう!

ね?二人共!


詩織「・・・・・・・・。」

忍「・・・・・・・・・・。」


水島「・・・お願いします。二人の仲がクソ悪いのは知っていますが、露骨すぎるのも問題なんです。

周りが気まずくて仕方が無いんです。ぶっちゃけ、店の雰囲気壊すんで迷惑なんです!」


ぶっちゃけすぎる!オブラートに包んでッ!!


蒼「水島お姉ちゃん、素っ気無いけど、実はすごく心配してたんだよ?

お客さんのお姉ちゃんももう来ないんじゃないかって・・・。」


・・・え!?そうなの!?


忍「そうね・・・水島さんって、見ていないようで、私達の事よく見てるのよね…。」

詩織「そうだったわね、水島さんって…私達が本当に困った時にこうして手を差し伸べてくれるのよね…。」


・・・そ、そうなの?


水島「まあ、違いますけど・・・いいです。」


いいのかよ!!

もういいや!乾杯だーっ!楽しく飲んで忘れようッ!!


乾杯!!



 ― 3時間後 ―


蒼「ZZZZZZZ…。」



忍「うえぇはははははは!!」


”ガシャーン!”





 や っ ぱ り こ う な る の か ・ ・ ・ 。






やめて!それ以上、ドロップキックを乱発しないでッ!半壊の店で暴れないでッ!!


詩織「そうよ!忍さん!・・・・・・じゃあ、平和の為、脱ぎま〜す!うふふふふ!」





 更 に 酷 く な っ て い る よ ね ・ ・ ・ 。



平和の為に脱がずに一緒に忍さんを止めてーッ!!


”バサッ・・・!”


・・・あ、想像していたより、詩織さん、すごい・・・!!


いや、そんな事言ってる場合じゃない!

二人共、飲みすぎて完全にハメを外してしまって、大暴れ。

大体、考えてみれば酒を飲んでの失敗だったのに、酒を飲んで忘れようとか、愚策としか言えない…!


その愚策を出した張本人は!?水島さん!一緒に二人を止めてーッ!!







 影 も 形 も 無 し ・ ・ ・ !







・・・・・・いないし!!!



あの根暗女ああああああ!!


忍「飛ばせー鉄拳〜〜〜ブレストファイヤー〜〜」


歌いながら、壊すなあああ!!


”メリメリ・・・・バキバキバキバキ・・・ッ!”

はっ!?壁にヒビが・・・!?このままじゃ、店が完全に崩れる・・・!





水島「早く!こっちですッ!みんな!こっちに早くッ!」



あ!水島さん!逃げ道を確保してくれていたんですね!


水島「私は常に、安全かつ確実な逃走経路確保に関しては、店の誰にも負けません。」



・・・なんだろう、凄いんだけど・・・ホストガールとしては、イマイチ自慢できないっていう感じ・・・。

とにかく、忍さん達を連れて外に出よう!私が、誰かを抱きかかえて・・・


忍「水島さぁん」

詩織「水島さん、運んでぇ〜」

蒼「ZZZZZZZ」


水島「ふんっ!ぐぐぐ・・・!!」


成人女性二人がしっかり抱きついてるのに・・・更に未成年を抱きかかえて走るとか・・・人間じゃない・・・!

水島さん・・・なんだかんだで助けてしまうし、助けられる力も持っている・・・そこがいいのか・・・?



”ゴゴゴゴゴ・・・”



水島「店が・・・崩れていく・・・。」


”ゴゴゴゴゴ・・・・”


ああ・・・楽しい思い出の場所が・・・なくなってしまう・・・!



私、ここでかけがえの無い時間を過ごしたんだよね・・・。

もう、皆と一緒に楽しいお酒を楽しめないんだね・・・。



「あ、いたいた!皆さ〜ん!お客様もご無事でしたか!?」


ああ、受付のお姉さん!私達は全員無事だけど・・・お店が・・・。


「ああ、見事に解体しましたね・・・」


もう、私はドリーム百合クラブに行けなくなったんですね・・・夢の時間は終わってしまったんですね・・・。


水島「・・・それは、ちがいますね・・・。」


え?


「旧・ドリーム百合クラブの解体は終わりました。

これから、お客様を引っ越し先の新・ドリーム百合クラブZEROにご案内します!」


ええええ!?引越し!?


水島「二人には、騒ぎを起こした責任を取って、店の片づけを頼んだんですけど・・・まさか、解体作業までやってくれるとは・・・。」


いや、解体作業じゃないよ!事故だよ事故!!

でも・・・新しいドリーム百合クラブかぁ・・・楽しみが増えたわねッ!


水島「ホストガールのご心配をしてくださって、ありがとうございました。お客様。」


・・・え、あ・・・どうも、ご丁寧に・・・。

(ど、どうしたんだろう?丁寧に深々と頭を下げるなんて・・・!)


水島「クセのある人間ばかりですが、だからこそ・・・」


ええ、だからこそ楽しいんだと思います!


水島「・・・ホストガール一同、次回のご来店をお待ちしています。新しいお店で。」



はい、必ず行きます!!





[ もしも水島キャラでキャバクラ営業したら。 〜 ハーレム系の話だと思った?残念!全然関係ない話でした!編 〜END]




[ もしも水島キャラでキャバクラ営業したら。 〜 もしもも何も本業ですから。編 〜]


はあ…今日の今日は本当に疲れた…。

こんな日は、キャバク…いや、ドリーム百合クラブだよね。


・・・・・・。


なんだかんだで、百合って元気になるんだなぁ。こんなに通うことになろうとは…。

綺麗な女の人とお話するって結構楽しいんだって、今更だけど実感。


あ!そういえば、クラブが新装開店するんだったんだよね!



行かねば!!!(使命感)

『あ!お客様!その節は、お世話になりました!』


受付のお姉さん!新しくなって、ますます立派になったね!

『ええ、ホストガールもやる気いっぱいですよ!さあさあどうぞ!』


わあ・・・かつてないほど、お客さんがいっぱい・・・!

『ええ、もうすぐ一年が経ちますから、新規の会員様が多いのです。』


新規・・・一年・・・あ!そうだった・・・!

ここ、利用できるのって一年間・・・だったんだ・・・。


『あくまで、一夜の夢ですからね。』

・・・私も、そうなのね?もうすぐ一年が経つもの・・・。


『ええ、残念ながら例外はありません。ここでの出来事は”夢”なのですから。』


・・・そっか・・・よし!じゃあ今回のホストガールは、とにかく元気で明るい子にするわよ!


『かしこまりました!香里さーん!!』


香里ちゃん・・・あ!可愛い!ていうか、すごくキャバクラっぽい!!


香里「はじめまして☆香里でーす!!」

本当に元気いっぱい!今までにない、マトモな感じ!!


香里「えへへ〜楽しく飲んじゃいましょうね☆カンパーイ!」

カンパーイ!!


(疲れとか不安とか変な事、何も考えずに楽しく会話してお酒を飲む事ができそうだわ…

単純な事なんだけど…なかなか難しいのよね。

慣れない相手と気を遣いあって飲むより、こうやってプロの接客で楽しく飲む方がいいわ。)


ねえねえ、香里ちゃんはお酒よく飲むの?

香里「うん、お酒は好きだよ。プライベートでも飲むよ。お客さんは?」


あんまり飲む方じゃなかったんだけど、ここに来て楽しい飲み方を教えてもらったって感じかな?

香里「嬉しい!ていうか…うちのホストガール見たら、お酒控えようかなって人の方が多いくらいなのに〜」


・・・ふふっ確かに!

香里「でしょー?あはははは!あ、次の飲み物はどうしちゃう?」


あ、もう空っぽ!じゃあね〜ワインにしよっかなぁ〜

香里「あ、私もそれにしちゃおっと。あ、今日は白の良いのが入ったの。ちょっと甘口に近いんだけど、スッキリしているの。」


ほほう・・・じゃあ、それにしちゃおう!

香里「あ、でもお客さん、赤の方が好き、だったりする?」


ううん、白も好き!飲んでみたいの!

香里「良かったー!じゃあ、白二つね!」


・・・はぁ・・・

香里「お客さんって、すごく美味しそうにお酒飲んでくれるね?」

え?実際、美味しいもの。


香里「ほら、ワインだって渋いのはダメで、フルーティーで甘いのが好きって子、いるじゃない?

強いお酒はダメとか、ビールも苦くて炭酸があるからダメ、とか…甘いだけのお酒もダメとか。」


あー…なんか、今はそういうの考えずに飲めるわね。

とりあえず、飲んでみる。ここの女の子、酔ったSのぶさん以外、そんなにゴリ押しで飲ませようとしないし。


香里「う、うん…(忍ちゃんと飲むってなかなかなお客さんだなぁ…)」


なんでもそう・・・お酒って飲んでみないとわからない。

飲んで喉元をすぎても、わからなかった時だってあるし。

次の日になって、二日酔いが来ても、わからない時もあった。

だから、たまに一人で飲んでた。


でもね、そうすると解るの。

お酒の味とか好みじゃなくて、ここで楽しく飲んでいたから、なんでも美味しく感じたんだなって。


香里「そう・・・。」


だから、ここに来れて・・・色んな女の子とお酒に出会えて、良かった。


香里「うん。そう言われたら、私嬉しいな。」


うん、色々あったなぁ・・・。

仕事は上手くいかないし、遊ぶお金も無かったし、これといって趣味もないし、お酒でストレス解消なんて考えもしなかった。

このままの現状維持で我慢し続けていたら、壊れちゃうって思いながらそれでも動けなかった。


香里「・・・・。」


でも、それは違うってココは教えてくれた。

この店の入り口を通った瞬間から…私は変わった。

やってみなきゃ解らない事があるって。

可能性を信じて、やりきって初めて見えるモノがあるって。


香里「あははは、そ〜んなシリアスめいた事、この店の店員で考えている人はいないよ〜?

・・・でも、みんな楽しい事は大好きだから、そういう時間を一緒に過ごす為の努力は惜しんでないと思うよ。

なんにせよ、お客さんが新しい自分を発見出来たなら、お祝いだね☆」


くすっ・・・そうね!よーし飲むわよッ!!!




香里「カンパーイ☆」


あはははは!


香里「うへへへへ〜・・・あ!忍ちゃんがまた酔っ払ったー!」

きゃー!取り押さえろー☆


香里「詩織ちゃ〜〜ん!最近マスターしかけてるカポエラ見せて〜☆」

きゃー!鉄●みたいな動きー☆


香里「じゃあ、水島ゲームやろっかー」

えー?どんなゲーム!?


香里「王様引いたら、みーちゃんを好きに出来るのー!」

あははは☆誰得〜???

みーちゃんで好き勝手に出来るってのはー?


香里「あ、それ良いね!薄い本が厚くなる感じ〜!!あ、みんなが寄ってきたー☆」


ぃよーし!!ゲームを始めるぞー!!

水島だーれだ!!!





水島「いや、誰だって私しかいないだろ!!!!」





 ― 夢の時間はアッという間にすぎて・・・。 ―




『ちょっと。ちょっと、お姉さん?大丈夫?』


・・・あ、あれ?ここは・・・?


『ダメだよ、お姉さん。空き地だけど、一応ね私有地だから。』


え?あれ?ここ・・・ドリーム百合クラブじゃ・・・?


『お酒どの位飲んだの?とにかく、こんな所で寝たらダメだよ。』

『いい夢見てたんだろうけど、ちゃんと家帰りなさい。』


あ・・・。


そこは、もうあの店ではなかった。

警察官のお話によると

早朝4時。


辺りには建物など何も無く、誰かのゲロが空き地の四隅に吐かれているくらいだったそうで…。

空き地のど真ん中で、私は未開封のワインの瓶を抱えて寝ていたそうです。

私の生まれ年のワインの瓶を抱えて。


それから・・・


私は死に物狂いで バーテンダー の勉強をしました。

見習いでよければ、と気さくなマスターに拾われ、今修行中です。

カクテルを3種類くらい作れるようにはなりましたが・・・まだまだ奥が深い。


ドリーム百合クラブは、あれから見つける事すらできません。


夢の時間。

決して忘れる事は出来ない夢の時間です。

今度は、私が夢を誰かに見せる番なんです。

その為に必要な…最高のカクテルを作るのが私の目標です。


・・・あ、すみません。

長くなりましたが、これが私が今バーテンダーをやっているキッカケです。


『そうでしたか…』


あれ?貴女、どこかでお会いしましたっけ・・・?


『さあ?ところで、この恥ずかしい名前のオリジナルカクテル…いただいていいですか?』


あ、はい、” クレイジー百合・ソルティウォーターねちょねちょ ”ですね?


『・・・ええ、ソレで。』




 ―  もしも水島キャラでキャバクラ営業したら。最終回 END ―





香里さんは真面目にやれば、本当に良い接客ができる、かもしれないなと。

・・・途中まで、いい話のツモリだったんだけどなー。(棒読み)

ネタ提供をしてくださった皆様、ありがとうございました!