私の名前は水島。

悪いが下の名前は聞かないで欲しい。


年齢は25歳。

性別は、女だ。生まれた時から私の性別は女だ。

事務課のどこにでもいる普通のOLをちょっぴり(?)根暗にした只の女だ。



だが。


私は、呪われてしまった。


何故か?


原因は、私が人嫌いだから、だそうで。

人嫌いの為、人との接触・・・他人との”縁”を遠ざけ、ことごとく縁をブチ切ってきた。

その為、本来私が関わる筈だった人との縁までもブチ切った為に、その縁に邪気が溜まりに溜まって・・・結果、私は呪われてしまったという訳だ。


呪われてしまった結果、私を待っていたのは・・・

結びたくもない同性との縁に雁字搦めにされ、トラブルまみれの日常を送る羽目になった上、死んでしまう(既に一回死んでるが。)という足枷付きの人生だった。



・・・あ。

ちょっと、そこのあなた。


もしかして・・・”何はともあれ、モテモテで良いじゃない、むしろ羨ましい〜”とか思ってるんじゃないでしょうね?


あぁ、それは、ね。


単にこれを見ているアナタが部外者だから、とか、アナタが私と違う”異性”だから、女性に囲まれる私を羨ましいと思える、とか・・・

そう・・・もしくは、アナタが”そういう性癖”か、妙な興奮を覚える変態さか何か得体の知らんものをお持ちだとか・・・

そういう事情とかは全く知りませんけどね、とにかく私は不純なアナタと違



 ※注 只今、主人公が不適切な発言をしました事をお詫び申し上げます。




・・・断っておくが、私は同性にも、人間にも興味というものが微塵もない。


だから、私にとって、今の状況は『地獄』としか言い様が無い。





( I Can Fly ――――ッ!!!)



心の中で叫びながら、私は走っている。

飛べるもんなら、国境も何もかも飛び越え、何もかも、すっ飛ばして、そのまま逃げてしまいたい。


ガードレールを飛び越え、軽やかに着地。そして走る。

真っ直ぐ走った後は角を曲がり、次は青信号の点滅している横断歩道を走り抜ける。


・・・わかっている。


自分で自分が悲しくなる程、私の身体能力が上がってしまった事に。

こんな事を繰り返しても、根本からどうにかしなくては女難は・・・

女難は減らないし、無くならないって事に!!



増えに増えた私の女難は・・・今や、本当に・・・”酷い!”としか言い表しようが無い。


世界中の女性が敵に見える。

そうですともよ!今やみんな敵だッ敵ッ!


自棄を起こしている場合じゃない。落ち着くんだ私。そして、走れ。

今日は、そんな事をしに街へ出たんじゃない。


「水島さーん!?」

「・・・・・っ!」


もう顔も知らない女の人に突然、まるで以前から知ってて当然のような「あら、顔見知り以上の関係でしょ?」みたいに親しげに声を掛けられ続けるのは嫌だ!


もう女の人に色っぽい目線で見つめられるのだって嫌だ!恋愛フラグなんか知った事か!こちとら女難ルート一択しか選択出来ないっつーのに!

ボキボキそこら辺からフラグというフラグを折りまくって、二度とおっ立たないようにしてやるわ!!

大体、私は人見知りなんだッ!人嫌いなんだ!


だが、その女難の処理が、残念ながら追いつかないのが現状で――。


・・・否。


フラグを折ろうとしたって何故か女難は増える一方だし、女難チームの皆様には余計に好かれてしまい、事態は悪化の一途を辿る始末である。

そう、そもそも・・・処理出来ていないのだ!もう、このシリーズも18話目だって言うのに何の進展も無い!


私は、未だに解決の糸口が「歳の数だけ・・・アレ・・・」

・・・つまり、『25回、他人と[ピ――](オエッ)にチャレンジしないと、この呪いは解けない!』という、卑猥な情報しか手にしていない。


・・・誰がチャレンジするか!そんなエロギネスの公式記録登録なんざ、されたくも無いわッ!

サイトの傾向とか、作者が二次創作でナニを微妙なオブラートに包みつつ、自由にナニを描いているかは、私には知った事じゃない!

 ※注 『・・・だって、そういうのが好きなんだもん。(作者談)』


百合もクソも、私の中に無いものは無いッ!

何度だって言おう!私は”人嫌いの女”なのだ!


「・・・何所だ・・・ッ!?くそっ・・・これじゃ何の為に街に来たのか、分かりゃあしないわッ!」


独り言で愚痴っていても、女難は無くならない。頭の女難センサーが反応しなくなるまで、私は力の限り、走るしかない。

街での人探しが、こんなに困難を極めた原因・・・それもこれも『火鳥』のせいだ。


火鳥が私に化けて、あちこちに女難の種を蒔いたせいで女難が大量に発芽してしまい、この街は今や私にとって『女難ジャングル』と化してしまった。


名も知らない人間の女性が、私に迫る毎日。

何度も言うが、私は人嫌いの人見知りの女だ。静かにひっそりと生きていれば、満足なのだ。

出世も、結婚も望んじゃいない。多くの幸せは望まない。タバコの増税されても、大きな声で文句は言わないし、禁煙には失敗したばかりだ。

 ※注 水島さんの禁煙失敗談はWEB拍手SS『水島さんは禁煙中。』でご覧下さい♪


「とにかく・・・探さなくちゃ・・・!」


私はハンカチで汗を拭き取ると、顔を上げ、もう一度走り出した。

コンクリートジャングルに吹く風は冷たいが、走り続けた体の熱に涼しさと冷静さを与えてくれるその風は、私にとってありがたいものだった。


おそらく・・・この呪いの事や、解決策やその他色々を知っているであろう・・・名も知らない”彼女”。

その”彼女”がいるであろう、その場所を求めて・・・私は朝から街中を走りまわっていた。


女難に遭い、逃亡、捜索、女難、逃亡を幾度となく繰り返し。・・・今や、昼の3時を過ぎようとしている。

私のイライラは頂点に達しようとし、大声で叫びたい気持ちを必死に抑えた。


(どこだ!?オバサン!いや、もう・・・ババア!どこだ!?ババア―ッ!!)

 ※注 必死過ぎて、心の中でオバサンをババア呼ばわりする主人公。



『あきらめないで。』


・・・真矢○きネタは、もういいっつーんだよッ!!いい加減にしろよ!そのフレーズ使いたいだけだろ!?作者!!

※注 某洗顔料は神楽の母が愛用してます。うちの母のお肌は、まだあきらめてません。





「・・・おやおや、なんて顔してるんだい?」



私が、かつてこんなに人に会いたいと思った事は無かった。

会いたかった人物に会えるとは、こんなにも感動的なものだとは思わなかった。

”いかにも占い師ですよ”と主張する紫色の着物を身に纏いながらも、街中にいると存在感はぷつんと消失してしまっている不思議な存在。


それが私の探し人・・・。



「お・・・おば、おばさあああぁあああぁあん!!」



私は叫ぶようにおばさんの元へ行くと、膝から崩れ落ちた。





[ 水島さんは考え中。 ]




「・・・随分、探し回ってくれたようだねェ。」

占い師のオバサンは、相変わらず、口の端を曲げて邪悪に笑っていた。

「・・・ええ、まあ・・・でも、出会えて良かった・・・。」


私は、情けない事にオバサンに会うと同時に体力が尽きてしまい、オバサンからペットボトルのお茶を貰ってそれを飲みながら息を整えていた。

喉が渇いていたせいもあり、お茶はみるみる減っていった。

オバサンの向かいに座りながら、私は、ひたすら汗を拭き、お茶を飲み、質問する機会を伺っていたが。

一方のオバサンは、片手で頬杖をつき、私のその様子を微笑ましそうに見ていた。


「しかし、皮肉なもんだね。人嫌いが人を探し求め、街中を走り回るなんてさ。」

口の端を曲げて邪悪に笑って言った台詞がそれか、と私は思ったが口に出さず、話を進める事に専念する事にした。

「そんな皮肉なんか、どうだっていいんです。それに私は・・・」


そこまで私が言うと、オバサンは数珠をつけた右手で私に向けて”待て”のポーズをして私の言葉を遮った。


「・・・?」

「ああ、アンタの聞きたい事は解ってるさ。今日は、ゆっくり話せるように場所を変えようじゃないか。」

そう言うとオバサンは、立ち上がった。

「よっこらしょ。・・・あ、よっこらしょなんて言っちまったよ。あたしも年かねェ・・・ホレ、ちょいと、持っとくれ。」

「え?・・・あ、はい。」


オバサンに、私はオバサンの商売道具の折りたたみ机を強制的に背負わされた。私はそのまま、オバサンの後ろを付いて歩いた。

どんどん歩いていくので私は机を背負ったまま、その後ろを必死に追う。

少し休んだだけなのに、また重労働かよと内心思ったが、女難に追い回されるよりはマシだと思う事にしよう・・・。


街から離れ、少し崩れた階段を上がる。

そして、着いた場所は『神社』だった。


古びた神社。


狛犬とか、置物も何もない。

草木は、伸び伸びと成長をしまくって、手入れが行き届いていない事をここを訪れる人間に知らせる。

いや、訪れる人なんかいないから、こんな状態になってるんじゃないか?

「・・・ここ、神社ですよね?」

私が一応確認の為にそう言うと

「キャバクラに見えるかい?」

「いや、見えませんけど。あんまりな状態なもんですから・・・。」

「まあ、仕方ないさ。誰も来ないし、手入れもされてないからねぇ。」


神社は、というと…腐っているんじゃないかと思う程の色の柱に、壁。

お賽銭箱の横には、穴が開いている。…中には、ゴミが入っている始末だ。


(ひっどい神社・・・。)


それが神聖な神社に対しての私の正直な感想だった。


オバサンは”よっこいしょ”と古びた神社の賽銭箱に腰をかけた。

・・・いくらなんでも、そこに座るのは、いかがなものだろうか。

私は背負っていた机をそっと降ろし、とりあえず一服しようとタバコを取り出すと、オバサンは私に向けて右手を出した。

…どうやら”タバコをわけてくれ”という意味らしい。


黙って私は、オバサンにタバコを一本渡すと、持っていたライターで火をつけた。

それから、私もタバコを咥え、火をつけて、煙を吸い込んだ。


「とりあえず、お疲れ様。水島。」

「・・・ふーっ・・・・・・・どうも。」


そして、私は賽銭箱の前の少し崩れかけた石段に腰をおろした。


「そういえば、病院のお見舞い・・・ありがとうございました。」

「・・・ああ、そんな事もあったっけねぇ。」


私の”社交辞令のお礼”に、オバサンはニヤリと邪悪な笑みで答えた。


そのまましばらく、タバコの煙が空へ舞い上がっていくのを、私はオバサンと2人で黙って見ていた。

空は雲に覆われ、風が寒さを伝えてくる。

私はこのタバコを吸い終わったら、話を切り出そうとしたが、それよりも先に、オバサンの方から話を切り出した。


「…で、どうだい?調子の方は。一人くらい目ぼしい人間は見つけたかい?」

「一人どころか、どんどん増えてますよ…ややこしい女の数だけが、ね。」


私は、溜息と一緒に、煙を吐きだした。


「・・・そうかい、そうかい。いや、一人くらい縁結べそうかと思ったんだけどねぇ、あたしゃ。」


そう言いながら、オバサンはのん気にケタケタと笑った。


「…結んでません。ていうか、結びたくないんで。」


私は、きっぱりと否定した。


「・・・どうして?」


オバサンは私の否定に、笑みを浮かべたまま、そう聞いてきた。


「・・・どうしてって…私、女性好きじゃありませんし。大体、人嫌いなんで、人と付き合うなんて、無理ですよ。」


返答はするものの、正直、答えに困る質問だった。


「…だから、”どうして無理”なんだい?」


「……”出来ない”から、ですよ。」


「それは『人と関わる事』が、かい? それとも 『人と縁を結ぶ事』が、かい?」


「………どっちも、だと思います。」



「…しかし、なんだかんだ言って、アンタどっちも出来てると思うけどね?…成長したじゃないか。」



……これまでの経緯や、説明は、不要なのだろうか。

不思議な事に、オバサンは何もかも知っている上で、私にこんな話をしているような気がしてならなかった。

私がこれまで、どんな女難やトラブルに見舞われてきたのか、まるでオバサンは当然知っているように思えたのだ。

それは、彼女の放つ不思議な雰囲気のせいか。それとも、彼女が”占い師”なんて看板を背負っているせいか…。

とにかく、オバサンは私を見透かすような目をして相変わらず、邪悪な笑みを浮かべている。

しかし、私が”成長した”とはどういう意味なのか。私自身は、ちっとも成長なんてした実感は無い。


「…前者の『関わる』ってのだけは出来てるというか、せざるを得ないというか…。」


そこまで言って、私は口を濁した。


「…すれ違うだけでも縁は出来る。アンタは、それを理解している。

そして、縁を切るだけだったアンタが、徐々に周囲の人間達と関わり、縁を結び始めている。

それが、例え強制だとしても、ね。…これを”成長”と呼ばずに、何と呼ぶんだい?ん?」


オバサンはそう言いながら、私を褒めてるのかどうなのか微妙な言葉を私に向けてくる。

私は心の中で困惑した。

それというのも・・・私は日々、強制的に、不本意ながら、私は周囲のややこしい女性に振り回されているだけ、だからだ。

それで、一体、私の何が成長したというのだろう。


「…そうですかね?これが、成長ですかね?…私はただ…『慣れただけ』じゃないんですかね…。

女性に迫られたり、事件とかトラブルに巻き込まれても、私…『ああ、またか』としか思わなくなってるんです。それに・・・」

「それに?」


「それに…やっぱり、女性を見ても縁を結びたいとか、そういうの全然思えないんですよ。多分、これは男性でも、同じだと思います。

だから、成長なんかしてません。結局、人嫌いなのは変わってないんですよ、私。」

私は、正直にそう答えた。

「……ふうん…まあ、アンタがそう言うなら、そうなんだろうねぇ。」

オバサンはそう言って、タバコの煙で器用に輪っかをポンポンと3つほど作り、空に舞い上げた。


「・・・大体・・・なんなんですか?縁切りの呪いって。どうしてそんなモンが存在して・・・いや、そもそも・・・

何故、そんなマニアックな呪いを貴女が知ってるんですか?」


「まず・・・”縁の力”ってのはね、人と人を繋げ、運命をも変える力がある・・・ってのは前言ったかね。まあ、その本人の努力でも縁の力は変わるモンだが・・・

稀に、アンタみたいに何もしなくとも、縁の力が特別強い人間がいる。アンタのソレは生まれ持って備わっている力さ。

だけど、強過ぎる力には当然ながらメリットもあれば、デメリットもある。」

「・・・あのー・・・私、この人生でメリット感じた事一度たりとも無いんですけど。呪われてからは、一層メリットとは無縁なんですけど。」


「そりゃ、アンタが人嫌いだから、そう感じるんだろうさ。」

私の言葉なんて、まるでテニスのボールのように、あっさりスパンッと打ち返される。

「・・・・・・・・。」

何も言えない。


「強い縁の力を持つ者は、人との縁を引き寄せやすい。時には、人の運命をも変える事が出来る・・・。

例えば、アンタが人の命を助けたいと思った時、それに応じた人間が引き寄せられた事は無いかい?」

「・・・・・・・・あります。偶然だけど。」


それは、城沢ビルの屋上から、投身自殺しようとしていた加藤さんとかいう女性を助けようとした時――。

本当にナイスタイミングで、警備の今岡さんと会長秘書の宮元さんが駆けつけてくれた事があったっけ・・・。


私は、それを”只の偶然だ”と思っていた。


・・・だが、オバサンに言わせるとそれが”私の縁の力のせい”であると言うのだ。


「いや、それがアンタの縁の力さ・・・まあ、信じる信じないはアンタに任せようかね。無理強いは、しないよ。

・・・とにかく、アンタの縁の力は使おうと思えば、人様を生かしもすれば、殺す事も出来る力なんだよ。

デメリットは、その力が”強過ぎるせいで周囲や自分に与える影響力”がものすごい、っていう・・・くらいかね。

・・・何しろ、アンタの力の場合、自分の運命から、他人の人生を変える事だって出来るくらい、強いんだからね。」


「・・・・・そんな・・・。」

(・・・そんな重苦しい設定の力なんか、私要らない・・・。)


私は、人様の人生に興味もなければ、関わりたくもないのだ。

・・・それが正直な気持ちだった。


「だけど、アンタは・・・その力を使おうともしなかったどころか、自分が関わらなければいけない縁すらからも・・・縁を断ち切って逃げた。

普通なら使わない縁の力は、衰退していくんだが・・・アンタの場合、縁の力が強過ぎて、力は行き場を無くし、力はアンタの中に溜まっていき・・・

更に行き場を無くした力は、その力をなんとか発散しようとするが、そんな状態になっても、なおもアンタは人との縁をブチ切り、縁の力を使う事も拒み続けた。

・・・その内、結ばれそこなった様々な縁には”邪気”が溜まり、アンタの中に溜まった縁の力は、やがてアンタ自身に牙をむくようになり・・・

こうして『縁切り』という”呪い”が完成する。」


「・・・それが『縁切り』ですか・・・」


「『縁切り』っていう名前が付いた由来というのはね・・・”縁の力とその力の持ち主との縁が切れちまった状態”の事を指すのさ。」


「・・・縁の力とその力の持ち主との縁・・・が切れる・・・?」


なんだか、ややこしいな・・・。


「そもそもアンタの力は、アンタのモノなのに、この縁切りという呪いにかかった途端

縁の力は、アンタの意思なんか無視して、力だけが勝手に暴れて、アンタの人生の縁を勝手に面白おかしく繋げたり、切ったりしちまうのさ。

・・・それが女難の原因さ。

つまり、今のアンタの呪われている状態ってのは、要するに、アンタ自身の強烈な縁の力だけが”暴走している状態”って事だね。

乗り手を失った暴れ馬みたいなもんだ。・・・まあ、今の今まで人との縁を断ち切ってきた”報い”ってヤツを受けてるんだ、と考えな。」


人と関わらなかっただけの人生の・・・む、報い・・・にしては、酷すぎる気がするが・・・。

大体、そんな縁の力の存在だって私は知らなかったのに、どう使えというのだ。

いや、そんな事は今はいい。


「で・・・そ、それを、どうすれば良いんでしょうか・・・!?」


問題はそこだ。

私が聞きたいのは、この異常事態の解決策に繋がる事だ。


「まず、縁の力を正しく使う事。・・・だから前に言っただろう?『恋をしろ』ってね。

基本は、アンタ自身が人との縁を結ぶ事!

そうさね・・・とりわけ恋愛関係に関して使う縁の力の消費は、なかなかのモンだからねぇ。恋がおススメ。」


・・・なるほど・・・でも正直、恋は嫌!!恋愛関係なんて、人間関係で最も面倒くさくて、ややこしい縁だからだ!!


「・・・じゃ、じゃあ・・・歳の数だけ25回ヤれってのは!?あの儀式には、何の意味がッ!?ていうか、なんで性行為が出てきちゃったんですかッ!?」


「邪気が溜まった縁の力を解放する手っ取り早い方法の一つさ。」

「・・・手っ取り早いって言いますけどね・・・。」


性行為だぞ!?性行為!それも歳の数だけって・・・!何が手っ取り早いんだよ!!


「大体、性行為25回分に付き合ってくれる相手なんて、よっぽど縁を強く結んでいない限り、いないんじゃないかい?

・・・あ、もしかして、水島には、もうそういう相手候補がいたりするのかい?」


「い、いませんよ!いや、したくもないし!!25回なんかヤッたら、それこそ私が死んじゃうじゃないですか!」


必死な私に対し・・・他人事だと思って、オバサンは笑っていた。


「あー・・・ははは。やっぱり、そうか。うん、そうかい、そうかい。」


「だ…大体…見せかけだけの縁を結んでも、ダメなんでしょう?死ぬんですよね?…私が…心から…お、ぉ…ぉぇ…想う、相手じゃないと…。」


「うん、縁の結びつきが弱けりゃダメだね。意味無いね。また死ぬね。サックリ死ぬね。・・・それから、軽くえづくんじゃないよ。」


「……じゃあ、ダメだ…また死ぬんですね、私…。」


私は、がっくりと肩を落とした。

そんな私にオバサンがこう聞いてきた。



「…アンタが、本当に嫌いなのは、なんだい?」


「・・・・・・は?」



「アンタは、本当に嫌っているのは、人は人でも…

『他人』かい? それとも  『自分』かい?」



「・・・・・・・・・。」



私は答えなかった。

正確に言うと・・・答えられなかった。



「…アンタは、きっと怖いのさ。自分を愛する人間が現れても、自分が嫌いな自分が存在する限り…

『きっと、そのうち自分は嫌われる。』って思ってるんだろ。」


「…私は…や、ややこしい人間関係が、嫌なだけです…。」


ずしり、と重くのしかかる言葉。

私は言い訳のような返答をするしかない。


「そして、他人との縁を切って、自分を隔離したんだろう?

 『傷つくのが、嫌だから』。」


「…そ…そんな…事は…。」


重くのしかかる言葉には、どこか鋭さがあり、私は言葉を失っていく。


「ああ、別に、アンタをイジメたい訳じゃないよ。勘違いしないでおくれ。・・・ただ、あたしゃ勿体無いと思ってるのさ。

そんな力に恵まれているのに、人嫌いなんてねぇ。

そうだ・・・アンタは、前に『人とつかず離れず、生きていきたい』と言ったね?」


「…ええ…。」

そうだ、それが私の・・・希望だ。


「…そんな人生はねェ、誰だって、いつだって、送らなくちゃいけない時があるんだよ。


前にも言った台詞だが、あえて言おうか?


誰しも、一握りの縁しか、強く保てない。

誰もが意中の相手と結ばれる訳じゃない。

結ばれたとしても、それは永遠に続くとは限らない。


人と人との繋がりは・・・脆いんだってね。」


「…………。」


「だが、脆いままじゃない。繋がりや縁は、”強くも出来る”。

アンタは、それが出来るのに、出来ない。・・・いや、怖くて出来ない・・・しようともしない、だけさね。」


そう言うとオバサンは、ふーっと煙を吐いた。

私は・・・反論は・・・出来なかった。

ただ、言い訳のように、同じ台詞しか出てこなかった。


「……私は…人なんか、嫌いなんです。ホントに・・・それだけです。」


ただ、子供の言い訳のように、そう言うしか無かった。


「…そうだねぇ。アンタは、確かに人嫌いだ。」


オバサンは私の言葉に軽く頷いた。

私は、ポツリポツリ出していった。


「…話を合わせたり、空気を読まなきゃ、ノリが悪いだの何だの、ややこしいし、面倒くさいし。

私の事、解ったようなフリして、自分の都合のいいようにしか解釈してないし。

自分の意見や感覚が合わないと、異物みたいな目で見て可笑しいと笑うし。

自分はハッキリ言うタイプだって言って、ズケズケ他人の傷つくような事言うし。

他人の容姿をキモイと笑って、自分が言われたら、世界が崩壊したみたいに泣くし。」


ポツリポツリが、段々・・・ボロボロのドロドロに変わっていくのに大して時間は掛からなかった。

まるで、ゲロを吐くように、次々と言葉が垂れ流れていく。


「・・・自分がされて、嫌な事を他人には平気でするんですよ。

匿名なら何書いても良い、何を言っても良いと思って、汚い言葉を浴びせた上、それに傷ついたらメンタルが弱いだけだって笑い者にするんです。

好き勝手な言葉をバラまいて、誰かを傷つけている事を知りもしないで、いい気になって、自分の、自分達の世界の中で酔って、笑ってるだけ。

誰かがその下で苦しんでいるのに、それを平気で笑ってるヤツもいるし・・・。


貴女の為だ、貴女の味方だなんて言って、結局、自分の意見を押し付けたり、自分の都合の良い様に振舞ったりして、他人を裏切っていくし。


・・・言葉だけじゃない。行動で、力で、平気で人を傷つける人もいる。

同じ人間なのに・・・心の中で何を思ってるんだか、解りゃしない。・・・そして、解ろうともしない。


それが・・・

それが・・・


・・・それが、私が見てきた・・・『人間』です・・・!」


私の持っていたタバコの灰がぽろりと地面に落ちた。

私は素早く携帯灰皿に火を消したタバコを入れると、2本目を咥え、火を点けた。


もう少し冷静になれ、と言い聞かせるように私はすうっとタバコの煙を吸い込んだ。


そんな私に向かって、オバサンはゆっくりと言った。



「…そうだねえ…アンタは…人間の”そういう一面”を、見過ぎたんだねぇ…。怖がるのも無理は無い。」


それじゃあ、まるで、人には”他にも良い面がある”というような言い方じゃないか。と私は思った。

私は冷静にタバコを吸って、煙を吐いた。


「・・・そういう一面を・・・それも含めての”人間”です。・・・所詮、私も”そんな生き物”なんです。

第一、自分の事しか考えてないし、自分の為だけに行動してる・・・この私がいい例です。」


「・・・だから、自分が嫌いなんだろう?アンタは。

他人を解ろうとしないのは、アンタだって同じじゃないか。

それにアンタ自身も本当は気付いている。だから、アンタは自分自身が嫌いなんだ。・・・違うかい?」


「・・・・・・・。」



私は、沈黙した。

オバサンも黙ってゆっくりと煙を吐いていた。



私は、ずっと人の記憶に残るのが嫌だった。

出来る事なら、誰の目にも留まらない・・・目立たない只の水島でいたかった。


・・・だって、私は・・・自分という人間が大嫌いだからだ。


別に、良い自分だけを見せたいなんて、理想はさらさら無いが、こんな自分を誰かの記憶になんて残したくは無かった。

とにかく、私は誰の目にも触れず、記憶にも残らない、そんな人間でいたかった。

誰かの話題の種になるのも嫌だったし、誰かと誰かの悪口等の話もしたくなかった。


まず、協調性、というモノが私には無い。

誰に合わせる気もない。合わないのだから。空気も読めないし。

第一、人と何を話したら良いのかだって・・・もはや自己紹介以外するべき会話の仕方など忘れた。

どうせ、私の人間関係など長くは続かないのだ。無縁に決まっているのだ。

面倒くさい。と思った。


だから、一人が良かった。

私は、人間関係を苦労して築き上げる事よりも、一人を選んだ。


それが、なんとも気楽なモンだと気付いた瞬間、私の生き方は変わった。


あの人が上だの下だの、いちいち悩まずに済むし、会話一つに考え悩む必要も無い。社交辞令だけ出来てりゃ、とりあえずOK。


・・・ああ、平穏だった、あの頃に戻りたい。


電車の窓から静かに無機質なコンクリートを見ながら、会社と自宅を往復するだけの、それなりの毎日。


静かな毎日。


人間関係なんて、それなりの社交辞令で避けられる毎日。

人付き合いが悪い、愛想が無いだの、嫌味を言われようと、私は聞こえないフリしていれば良い。

ムキになったり、下手に関わったり、逆らったりすれば、こじれると余計疲れるだけ。

そう、私がそれらに慣れてしまえば、私さえ我慢していれば大抵の面倒事は避けられるし、私にとっても都合が良かった。


可もなく不可もない毎日。

目の前の仕事をひたすら片付けていけば、なんとか生きていける生活。


自宅に帰る時が何より幸福。

一人の時間が何よりも幸福。


何よりも、それが楽だったのだ。


そんな・・・ただ、静かな毎日が好きだった。


私は、それで満足だったのだ。


・・・なのに・・・。


「水島・・・アンタは、もう嫌でも見てきたんだから、わかっている筈だよ。・・・人は、そういう一面だけじゃないって事を、ね。

現にアンタの周りには、アンタを好きだと言ってくれる人間がいるじゃないか。」

そう。

こんな私に好意を抱く人間が、私の周囲に増えていく。

なのに・・・気が付けば・・・次から次へと、人が、女性が・・・私に様々な想いや問題をふっかけてくる毎日が始まった。


・・・面倒くさい。と思った。


何度も拒否したのに。

何度も逃げたのに。


何度も・・・何度も・・・。


・・・それでも、彼女達は、こんな私に、まるで何事も無かったように、また近付いてくる。


こんな私なんかに、だ。

そんな彼女達が・・・私は・・・



「そ・・・それでも・・・私は・・・私は・・・ッ!」



 ”人なんか嫌いだ。”


・・・何故か、その後の言葉が続かなかった。


・・・・・・私は・・・一体、いつから、人嫌いになってしまったんだろう・・・?


私が人間関係なんて面倒くさいと思った時からか。

人の短所しか見られなくなってしまった時からか。

他人が信じられなくなった時からか。

他人が何を考えているのか、わからなくなった時からか。


・・・わからない。


とにかく、嫌いなモンは嫌いだ。面倒くさい。・・・で今までは通しては来たが。


いざ、”どうして人が嫌いなの?”と問われると、私は答えに詰まる。


・・・ただ。


・・・ただ・・・・・・こんな自分が嫌いなのだけは、確かだ・・・。


誰かから”好きだ”と言われも、それが本心なのかどうか、わからないから、そのまま言葉を受け取れない。


本当は、どうなの?

何が狙いなの?


”疑い”が、頭から離れない。


もしも、目の前の他人が、私が今まで見てきた『人間』という生き物と同じだったら…


私と同じ人間ならば。


嘘をつく事も。

自分を偽る事も。

本当は、違う事を考えていても、それを適当にごまかす事も、その他人は、私と同じように出来るはず。




”どうせ”が口癖のように頭に付く。


どうせ嘘に決まっている。

どうせ裏切るに決まっている。

どうせあっちだって、こんなの面倒くさいと思っているに違いない。



どうせ会社なんて。

どうせ世間なんて。


どうせ人なんて。


勝手に知ったフリをぶっこいて、”どうせ”を頭にくっ付けて、私は・・・ずっと・・・・・・・逃げてきた。


”どうせ”人なんて、とか。

”どうせ”自分なんて・・・と。


”どうせ”という言い訳をつけて、逃げてきたのだ。


期待なんてしない。

どうせ私の人生こんなもんだから。ってな感じで。


その方が、そう思っていれば、楽だからだ。

だから、逃げて逃げて逃げて。


逃げまくってきた。


・・・結局、私は自分が楽な方へ楽な方へと生きてきたに過ぎない。私とは、そういう人間なのだ。


そして、それを変えようとは思わない。

変われない。

いや、逃げ続けている事に関しては、今も少し前の生活も、全く違いは無いのかもしれない。


だから、こんな私が、仮に、万が一にでも、誰かを好きになったとして

その誰かと縁を結んだとして・・・その人は・・・その女性は”その後も”本当に私なんかを好きでいてくれるのか。


・・・いや、そんな事は考えるまでもないではないか。


だって・・・第一、私の周りにいる人達は・・・私の事を好きとは言っても・・・


「……”どうせ”…今の状況は”呪いの効果”によるモノなんでしょう…?」


私は、苦笑交じりにオバサンにそう言った。


・・・だから。


「・・・”どうせ”呪いが解けたら、私はその人達に嫌われる。私は、そんな人間なんです。」


そうだ。

彼女達は、私のこの馬鹿馬鹿しい呪いに巻き込まれているに過ぎないのだ。

こんな呪いの効果のせいで、本当は好きでもなんでもない私なんかに、いつまでもこだわるのだ。

本来、彼女達には、もっと・・・もっと、いい人がいる筈なのだ。

なのに、こんなフザケた呪いのせいで、私なんかにずっと関わっている・・・。

そんな彼女達と、あんなフザケた儀式して呪いを解こうなんて、出来る訳が無い!!


・・・だから。


「・・・だから、さっさとこの面倒臭くて、馬鹿馬鹿しい呪いを解いて、彼女達の目を覚まさせてあげたいんです。

それこそ、彼女達の縁を私なんかじゃなく、本来の縁に戻してあげたいんです・・・!

あんな馬鹿エロ儀式なんかしなくても済む方法があるなら、教えて下さい!

オバサン!この呪いを解く為に、私は一体、どうしたら良いんですかッ!?」



「・・・ふうん・・・やっと本音の一部分が出たじゃないか。水島。」


オバサンはどこか満足そうに笑ってそう言った。


「・・・・・え?・・・あ・・・いや・・・。」


・・・不本意だが、その通り。

それは私の本音の一部分・・・でも、”ほんの少しの一部分”にしか過ぎない。


どんな事を言おうが、繕おうが、飾り立てようが・・・所詮、私という人間は、自分の為だけに行動している事に変わりは無いのだ。


私が、心から願っているのは・・・『本来の・・・以前の自分の生活を取り戻す事』だ。結局は自分の為だ。

それで、彼女達も本来結ばれるべき縁に戻るのだから、万々歳ではないか。


私は、私の呪いのせいで、絡んで歪んでしまった縁を以前のように元の状態に戻す、それだけだ。

・・・それが、正しいのだ。


「・・・お願いします!時間が無いんです!あの儀式以外で、この呪いを解く方法があるなら教えて下さい・・・!」


私は吸いかけのタバコを消し、オバサンに向き直って、頭を下げた。


「ふむ・・・火鳥って言ったっけ?・・・あの女がアンタに化けて色々やったせいで、確かに今のアンタは無駄に複数の縁に雁字搦めになってるねぇ・・・

女難が増えに増えて、時間が無いと焦る気持ちは解るが・・・まあ、落ち着きな。その問題は、時期に解決するよ。

・・・そうさね・・・うん、クリスマスあたり、か。」


私は、やはり驚きを隠せなかった。

私が火鳥に関する一連の出来事を一言も喋っていないのにも関わらず、やはりオバサンは具体的に言い当てたのだ。


「・・・え!?そ、それどういう意味ですか?・・・ていうか、なんでオバサンが、火鳥とのそんな事まで知ってるんですかッ!?

ていうか、クリスマスに何が起きるんですかッ!?

ていうか!・・・あ・・・貴女は・・・ホント・・・何者なんですか?この縁の力やら、この呪いの事やらを知ってる事といい・・・まるで・・・」



目の前にいるのはタバコを咥え、ニヤリと邪悪に笑う、存在感だけがぷっつりと無い、怪しい占い師のオバサンだ。


・・・そう、”見た目だけ”は、ただの怪しいオバサン。


・・・だけど・・・この人は・・・どこかが違う。

前々から、なんとなくだけど・・・薄々感じていた。


ただの占い師のオバサン・・・というよりも・・・

漂う雰囲気もそうだが、人を見透かしたような言動だって・・・まるで”人間じゃない”みたいで・・・。


(・・・人間じゃ・・・ない・・・?)


「・・・ククク・・・アーッハッハッハッハッハッハッ!!!」


私の表情を見たオバサンが、高い声を出して豪快に笑った。

・・・今、笑う所、一つもありはしなかったのに・・・!何が可笑しい!?・・・私の顔かッ!?




「アーハハハ・・・・・・あたしの正体かい?・・・あたしゃあねぇ・・・じゃあ思い切って、ぶっちゃけちゃうけどぉ・・・


あたしゃ・・・”縁の神様”だよ。」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。









「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」


風がひゅーっと吹いた後、私は、思わず間抜けな声で聞き返した。


・・・私は今、またダークネクロマ帝国以来のぶっ飛び妄想女に出くわしているのだろうか?

妄想ストーカーは出会った事はあるが、今度は、自称:神様女とは。


「・・・だから、あたしゃ、縁の神様だよ。・・・ここ、あたしの神社。家みたいなモン。こう見えてね、縁を司ってんの。正真正銘の神様よ。」


そう言って、オバサンはタバコで後ろの古びた神社をくいっと指した。


「・・・あのー・・・冗談、ですよね?」


私が顔を引きつらせて聞き返すと、オバサンはまたプッと吹き出して笑いながら言った。


「ククク・・・冗談って事にしたいならそういう事にしといても構わないさ。

いや・・・それにしても、アンタは、本当に面白い人間だ。見ていて、本当に飽きなかったよ、水島。」


「・・・は、はあ、アリガトウゴザイマス・・・。」


私は、自称:縁の神様に心にも無い御礼を呟くように言った。

勿論、オバサンが神様なんて、信じてなどいない。


「まあ、アンタには強力な縁の力がある。・・・それは、今や、初めてあたしと会った時よりもず〜っと強くなっている。

縁の神様のお墨付きだ。自信持ちな。」


自称:神様のお墨付きなどで、自信など一ミリも起きない。


「・・・・・・なんなんですか、その週刊少年雑誌に出てくる師匠みたいな台詞・・・」


一応、ツッコんではみたものの・・・私はその先の言葉を失った。

ああ、なんだか頭まで疲れてきた・・・。


さっきまでのシリアスな雰囲気、全部飛んでいったわ・・・。

真剣に自分のこれまでの生き方回想して損した・・・。


「・・・まあまあ、とりあえず、聞きな。

アンタ達の縁の力は、呪われているとはいえ、今の状況に順応しようと変化して、更なる”新しい力”として開花しつつある。」


「・・・だから、なんなんですか、その週刊少年雑誌みたいな恥ずかしい台詞みたいなのは・・・!」


・・・・・・ちょっと、作者ー?まさか、このSSシリーズ、今更、バトルものSSに方向性変えようとか、してんですかぁー?

サイトの傾向と作者の文章能力じゃ無理でしょうにー。”このシリーズ終わりが見えない”とかまた言われるぞー。


私は天に向かって、誰ともわからん何かにそう語りかけた。無駄だとは解ってはいるが。


 ※注 うるせー!主人公!私だって痛感してるわッ!頑張ってこのザマだよ!!



「まあ、話を戻すよ?・・・いいかい?水島。この呪いを解く方法は、アンタが溜めに溜めた邪気の解放をするしかない。

心から愛する人と恋をして、縁を深めるなりして、縁の力を使って使って使いまくって、縁の力を解放して、縁から邪気を取り払わない限り、この呪いは終わらないよ。

とにかく、今出来る事は、アンタが無視してきた縁を結んでいくしか手はない。」


「それって・・・総合して考えると、結局は・・・」


「まあぁ・・・縁を深める手っ取り早い方法は、愛する人間見つけて歳の数だけ[ピ――]だね。ズッコンバッコンしかないねぇ。」


”諦めろ”とでも言わんばかりに、オバサンはフワーッとタバコの煙を吐いた。

”冗談じゃない”と私は、オバサンの肩を掴んで揺すった。


「だ・か・ら!!それ以外の方法教えて下さいってばッ!!もう!一応、縁の神様なんでしょう!?あと何ですか!?後者の卑猥な擬音はッ!!」


・・・この際、目の前のオバサンを”縁の神様”だとひっそり認めよう!認めるから何とかしてくれ!

これじゃあ何の為に私が、ワザワザ危険を冒してまで街に出てきたのかわかりゃしない!!


私の必死の形相に、オバサンは苦笑いでこう答えた。


「いやー実を言うと、この呪いは、すっごく稀に起こる事でねぇ〜。

起きたとしても殆どの人間は途中で諦めて、大体、皆、あの儀式で呪い解いてきたもんだから、あたしゃーこの呪いに関して、研究も何もしてないんだわぁ。

・・・つまり、アンタほどの強情な人間初めてだからねぇ。他の方法と言ってもねぇ〜・・・あたしもビックリする程無いんだわぁ、コレが。あぁ、驚いた。ねー?」


”ねー?”の部分でオバサンは首をかしげ、無邪気に笑い、舌をペロッ★と出した。

・・・・・・余計腹が立ってきた。


「”ねー?”じゃねえよ!フザケてるでしょ!?絶対、フザケてるでしょ!?他人の・・・人間の人生だと思って!神様か!?それが神様の取る態度か!?」

「いや、真面目よ。神様としては、真面目。・・・うーむ、仕方ないねぇ。一応、それなりに研究はしてみるからー。」


頷きながら、オバサンはタバコを地面に押し付けて火を消し、それを見た私は、ポケットから携帯灰皿を取り出して差し出した。


「・・・それなりじゃなくて、しっかり頼みますよ。・・・か、神様、なんだから。」


・・・とはいえ、期待してないけど。


・・・つーか、やっぱりこの人・・・自称:神様って事にしておこう。


それにしても・・・縁の力の解放・・・か・・・。

要するに、あのエロ馬鹿儀式以外で呪いを解く方法は・・・”縁の力を使う方法”を探せばいいって事よね・・・。


・・・私も少し考えてみようか・・・。


でも、待て。


でも・・・そもそも、縁の力なんていつ、どうやって使うんだ・・・?


大体、私、縁の力の使い方なんて知らないし・・・。

ここはコツコツと、ちまちまと人と交流して縁の力を発散させる・・・ダメ!却下!そんなの面倒くさいし、嫌だ!

ここはガツンと力を使う・・・や、やっぱり・・・歳の数だけ[ピ――]の儀式しかないのか?・・・いや!それは嫌だ!!私が認めない!嫌だ!!

考えよう!意地でも・・・!このまま、悪化していく女難の環境を考えると、私には時間が無いんだ・・・!!


あ、そうだ。

時間、と言えば・・・思い出したけど。



「・・・そういえば、クリスマスに私の抱えてる問題が解決するとかって言ってましたけど・・・どういう事なんです?」


私は立ち上がって、伸びをしながらなんとなく質問してみた。

すると、オバサンも立ち上がって伸びをして答えた。




「ん?ああ〜・・・それね〜・・・・クリスマスがくる頃にね〜・・・アンタか火鳥、どっちか死ぬ予定だから。





「・・・へぇ・・・・・・はあああああああぁッ!?



サラリと放たれたオバサンの言葉に、私は顎が外れる程驚き、奇声を発した。

だが、オバサンはのん気に口笛なんかを吹きながら私の肩をポンと叩いた。


「・・・まあ、頑張りな、水島。アンタなら、きっとどうにかなるさ。」


「そんな気安く言って・・・・・・あれっ!?」



ぽんっと私の肩に手が置かれたと同時に、オバサンは驚く私の視界からフッと消えていた。


ぼろっちい神社に、私は一人取り残されたまま。

気が付くと、オバサンの商売道具の机も綺麗サッパリ消えている。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジか・・・。



・・・あのオバサン・・・縁の・・・神、様・・・は、マジな話なのか・・・?



・・・いや、それよりも・・・





「・・・また死ぬのか!?私――ッ!!ちょ、ま、待って!縁の神様ーッ!神様ーっ!?」




私がいくら叫んでもオバサン・・・いや、神様は出ては来なかった。

・・・なんていい加減な神様だろうか。死の宣告だけして、消えるなんて・・・!



(・・・私か、火鳥が・・・死ぬ・・・?)



結局、私は、縁の神様らしき人物に会えただけで、満足のいく答えを貰えなかった。


・・・それどころか、死の宣告を受けたのだ。



・・・私か、他人の火鳥が、クリスマス・・・近日に死ぬ・・・。



私は淀んだ空を見上げ、呟いた。



「・・・・・・なんだよ、それ・・・。」



・・・もしかして、それもこの”縁切り”という呪いのせい、なのだろうか・・・。


・・・それが、人嫌いの私と火鳥の受けるべき・・・人との縁を断ち切ってきた”報い”というモノなのか・・・?





「・・・なんだよ!それぇ――ッ!!」





みるみる腹が立って私は、転がっていた石を思い切り蹴飛ばした。



新たに迫る死の予感。


複雑な思いを胸に仕舞い込み、私は神社の階段を下りた。


階段を下りている途中、雪がチラチラと降ってきた。


私は黙々と街中を歩き続けた。

女難がいつ襲ってきてもおかしくないのに、私は考える事に夢中で、ただ街を歩いていた。


季節は冬の到来を告げ、クリスマスまであと数日という所までカウントダウンを始めている・・・。

キラキラと輝く電飾のイルミネーションが、何故か物悲しく見えるから不思議だ。



サンタクロースの赤い服を見て、私はあの女を思い出した。



「・・・私か、火鳥が・・・・・・し・・・」



私はそこまで呟いて、考えても仕方のない事を考えた。

それしか、今の私には出来る事が無い。



あの女なら 『所詮、無駄なあがきよ。』 と鼻で笑いそうな気がしたが・・・。



それでも、私は考える事をやめなかった。







 ― 水島さんは考え中。・・・ END ―








あとがき


シリアス回の筈が、なんとなく中途半端な感じになってしまった回です。

もう、今回も何度でも手直ししますよ〜昼間見たヤツと夜見たら全く違うじゃん!先週見たのと違う!?ってのはこのサイトではよくある話です。


今回は、前夜祭みたいなもんです。・・・で、終わってみたら百合も何も無い、という。

・・・ああ、その・・・言い訳ですけど、今回、シリアス(笑)だからです。

オバサンの正体は・・・まあ、信じるも信じないも勝手ですけど、そういう事です。(笑)


水島さんも水島さんなりに色々人間関係で苦労した末に、楽な生き方を見つけてそれなりにエンジョイライフ・・・のハズだったんですが

それを阻むは、馬鹿馬鹿しい呪い(笑)です。


おフザケなのに笑えないSSシリーズ・次回は『水島さんは対決中。』です。第2部・火鳥対決編クライマックスです。


果たして、火鳥は何をするのか?死ぬのはどっちか?ていうか、水島さんは何を考えているのか?


次回まで、引っ張ります。・・・たまには、こんな水島さんもいかがでしょうか?ダメですか?

ええ、もうここまできたら次回の「対決中」まで、引っ張りますよ〜。(笑)