嫌な予感はするものの…この格好で通勤ラッシュの皆様の前には出られない。
ジャケットを着ても、生足魅惑のマーメイドが隠れる訳でもない。
そろりそろりと私は自分の家に向かう事にした。
まだ早朝だけあって、人通りは少ない。
細い路地を、地道に進んでいけば誰の目にも触れないまま、自宅に帰れる。
(もうすぐ・・・!)
私のアパートまでもう少し!
いくらなんでも、この格好は酷すぎる。
着替えてから、ちゃんと出かけた方が良いに決まってるじゃないか!
こんな格好、警察の職務質問の格好の餌食だ!
階段を上がって、自分の部屋のドアを開ける。
「よし!」
ドアを閉め、私は自分の部屋をすすみ、クローゼットを開けた。
動きやすく、まともな格好…。
(ん?なんか…汚れてるな…)
肘や膝、その他いろいろ黒いし汚い。
「…よし、シャワーを浴びよう!」
少し熱めシャワーを浴びて、冷えた身体を温める。
さっさと着替えて、もう一回出かけないと…。
”ぐうゥ〜…”
「うーん、死んだ後でも腹は空くのね。」
温まると今度は空腹が気になり始めた。
腹が減っては戦も出来ぬ、というし、ここは慌てず急がず食事を摂ろう。
下着姿で私は冷蔵庫の前に立った。
(…簡単な物でいっか。)
冷蔵庫から残り物を物色すると、メニューをひねり出した。
(ネギ、豚肉細切れ、にんじん、きゃべつ……ご飯は無いが、冷凍庫にうどんがあったはず…。)
焼きうどんを作った。
(うん、美味い。)
腹が満たされ、私の瞼は途端に重くなって来た。
昨日の疲れが今出たのか…。
動いて、着替えて出かけねばと思えど、億劫で仕方が無い。
(大体…全部終わったのに、まだ何かあるっていうの?)
祟り神は私が倒したし、私は生きてるんだし…それでハッピーエンドでいいじゃないか。
気にはなるけれど、こんなに眠いし、疲れて、今、そんな事どうでも…いいし…。
私は、そのまま眠ってしまった。
そして、次に私が瞼を開けた時、ジャケットの持ち主の事も何もかも記憶には残っていなかった。
私は気味の悪いジャケットをゴミ袋に入れると、ゴミ捨て場に捨てた。
「あ〜ァ…。」
私は軽い伸びをしながら、会社に向かって歩き出した。
頭の中には、私を軽蔑し嘲笑する他人の顔ぶれ。
あァ、ウンザリする。
人間を辞められたら、どんなにいいだろう。
そんな私を呼び止める声が聞こえた。
『ちょいと、そこのお嬢さん。』
私を呼び止めたのは、紫色の着物を着た怪しい占い師のおばさんだった。
「はい?なんですか?」
なんだか、どこかで会ったような…。
そんな事を考える私にむかって、オバサンはニヤリと不気味に笑いながら言った。
『アンタ、女難の相が出てるよ…。』
― BAD END 『我が家が一番って言った結果がコレだよ!』 ―
・・・ですよねー(笑)